源泉徴収票の保管期間は?会社側の管理方法と保管義務のある書類を解説
更新日: 2025.11.21 公開日: 2022.8.24 jinjer Blog 編集部

源泉徴収票そのものに会社側の法律上の保管義務は定められていません。しかし、再発行や税務調査時の証拠保全のために、控え(写し)を一定期間保存しておくことが望まれます。
本記事では、源泉徴収票の保管すべき期間とその具体的な管理方法をわかりやすく解説します。また、年末調整関連書類の法令で定められた保管期間についても紹介します。
目次
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
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1. 源泉徴収票の保管期間


会社はその年の給与や源泉徴収税額などを記載した「源泉徴収票」を従業員に交付する義務があります。ここでは、会社と従業員それぞれの立場から、源泉徴収票をどのくらい保管すべきかについて詳しく紹介します。
1-1. 会社側の源泉徴収票の保管期間は定められていない
会社側には源泉徴収票そのものを保管する義務は法律上定められていません。源泉徴収票は従業員への交付や税務署への提出に用いられるため、原本は会社に残らないからです。
ただし、源泉徴収票に誤りが見つかった場合には、最初に提出したものを無効にする手続きが必要です。また、従業員が紛失して再発行を求めてくることも想定されます。
そのため、会社としては発行済み源泉徴収票の写し(控え)を保存しておくことが実務上望ましい対応といえます。一般的には年末調整書類などとあわせて少なくとも7年間保管しておくことが望ましいでしょう。
参考:提出した法定調書に記載誤りを発見した場合の訂正方法|国税庁
1-2. 従業員には源泉徴収票を正しい期間保管するよう周知する
従業員側についても、源泉徴収票の保管義務は定められていません。しかし、副業をしている場合や医療費控除を申請する場合など、会社がおこなう年末調整だけでは対応できないケースでは、従業員自身で確定申告をする必要があります。
また、住宅ローンの申請や金融機関での信用審査の際には、過去の源泉徴収票の提出を求められることがあります。そのため、会社としては、源泉徴収票の利用目的を従業員に説明し、一定期間保管するよう周知しておくとよいでしょう。
目安として、税金を納め過ぎた場合におこなう還付申告は、原則としてその年の翌年から5年間有効です。したがって、少なくとも5年間は源泉徴収票を保管するよう従業員に伝えておくと、控除の申告漏れがあった場合でもスムーズに還付手続きがおこなえます。
関連記事:年末調整とは?【令和7年最新】確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説
2. 年末調整に関わる書類の保管期間は7年


源泉徴収票自体の保管義務は法律上定められていません。しかし、源泉徴収票の作成に必要な年末調整関係書類には明確な保存義務があります。これらの書類は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります。主な対象書類は次の通りです。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 配偶者控除等申告書
- 基礎控除申告書
- 特定親族特別控除申告書(※令和7年度税制改正により2025年分年末調整から新設)
- 所得金額調整控除申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書 など
なお、仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿類や、損益計算書・貸借対照表、契約書・領収書などの取引関連書類についても、基本的に7年間の保存義務があります。しかし、これら帳簿書類の保存期間の起算日は「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」です。同じ7年間の保存でも起算日が変わるので注意して管理することが求められます。
参考:No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間|国税庁
2-1. 源泉徴収簿の保管期間には注意が必要
源泉徴収票を効率よく作成する際に用いられるツールとして「源泉徴収簿」があります。源泉徴収簿自体の作成義務は法律上ありませんが、年末調整の計算基礎として作成する場合には、税務上のトラブルに備え、ほかの年末調整関係書類と同様に7年間保存することが推奨されます。
また、源泉徴収簿が賃金台帳を兼ねる場合、労働基準法第108条、第109条に基づき5年間(当分の間は3年)の保存が義務となります。そのため、兼用する場合は法定期間に従い、正しく保存する必要があります。
参考:A2-2 給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成|国税庁
参考:未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省
関連記事:源泉徴収簿を作成する必要性やその手順・注意点を解説
2-2. 正しい期間保管しなかった場合のリスク
年末調整に関する書類を法定期間保存していないと、従業員から控除額や源泉徴収額の根拠を求められた際に証拠を提示できず、トラブルの原因となり、会社の信用低下につながるおそれがあります。
また、税務署が年末調整の適正を確認するための調査で必要書類を提出できない場合、書類不備を指摘され行政指導を受ける可能性があります。さらに、計算ミスや申告漏れがあれば、延滞税や不納付加算税などが課されることも考えられるでしょう。
このような事態を防ぐため、年末調整に関連する書類は法令に基づき、定められた期間きちんと保存しておくことが重要です。
3. 年末調整に関わる書類の保管方法


年末調整に関わる書類は、紙だけでなく電子データでの保管も認められています。また、近年は年末調整の手続き全体が電子化されつつあります。
計算から源泉徴収票の作成・交付、そしてその写しの保管に至るまで、一連の手続きを電子化すれば、大幅な業務効率の向上が期待できます。ここからは、紙と電子データそれぞれの具体的な管理方法について詳しく解説します。
3-1. 紙で保管する方法
年末調整に関わる書類を紙で保管する場合は、まず従業員ごとに分類し、さらに年ごとに整理します。整理した書類はフォルダーやファイルにまとめ、キャビネットなどに立てて保管しましょう。横に積み重ねると下の書類が取り出しにくくなり、税務署からの提出要請に迅速に対応できなくなる可能性があるので注意が必要です。
なお、従業員が少ない場合は、複数年分(例:2023年~2025年)をまとめてファイリングする方法も有効です。フォルダーやファイルの背表紙には、保管年度や書類の種類がわかるラベルを貼っておくと、中身を確認せずに取り出せるため便利です。
3-2. データで保管する方法
年末調整の手続きは電子化が可能です。年末調整関係書類を電子データでやり取りすれば、物理的な保管スペースを削減でき、ファイリングの手間も軽減されます。また、クラウドサービスを活用し、適切なフォルダ構成や検索機能を整えることで、必要な書類を迅速に閲覧できるため、業務効率化につながります。ただし、電子化する際は電子帳簿保存法などの法令に則った保存が求められるので、システムの構築や選定時には要件を満たしているか確認することが重要です。
さらに、源泉徴収票も電子化し、e-Taxで税務署に送信すれば、従業員はマイナポータルを通じて給与情報を取得できるようになります。これにより、従業員の確定申告手続きの負担軽減にも寄与します。ただし、マイナポータルでの情報取得には従業員側の連携設定やマイナンバー登録が必要なので事前に案内をしてあげるとよいでしょう。
参考:年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)|国税庁
参考:「給与所得の源泉徴収票」はe-Taxで!【事業者用ページ】|国税庁
関連記事:年末調整の電子化とは?やり方、企業におけるメリット・デメリットを解説
4. 年末調整に関わる書類を保管するときの注意点


源泉徴収票を含む年末調整に関連する書類には、住所や年収などの重要な個人情報が含まれています。ここでは、これらの書類を保管する際の注意点について詳しく紹介します。
4-1. 個人情報の取り扱いに注意する
源泉徴収票や年末調整に関する書類には、氏名や住所、給与額、マイナンバーなど、多くの個人情報が含まれています。そのため、取り扱いには十分な注意が必要です。
紙媒体の場合は、整理してファイルに収納したうえで、施錠できる棚や倉庫に保管しましょう。電子データの場合は、アクセス権限を制限するとともに、暗号化やパスワード管理などセキュリティ対策を強化することが重要です。
また、個人情報の重要性や適切な取り扱い方法について、担当者だけでなく全従業員に周知することも、情報漏えい防止には効果的です。
4-2. すぐに検索や提出ができるようにする
年末調整に関連する書類は、税務調査の際や従業員から源泉徴収票の再発行を依頼された場合に必要になることがあります。突然の提出や再発行に対応できるよう、紙・電子問わず、分類や整理をおこないましょう。
年末調整に関わる書類は種類が多く、内容も複雑なものがあります。名称が似ている書類もあるため、正しく整理し、必要なときにすぐ検索・提出できる状態にしておくことが重要です。
4-3. 廃棄する際は適切な方法を選ぶ
法令で定められた保管期間を過ぎた書類は処分が可能です。ただし、通常の書類と同じように破棄するだけでは危険があります。個人情報や会社の機密情報が流出する可能性があるため、適切な方法で処理する必要があります。
特に電子データは注意が必要です。保管メディアを物理的に破壊したり、専用ソフトで安全に削除したりして、復元不可能な状態にしてから処分しなければなりません。電子データは簡単に復元できる場合が多いため、必ず安全な方法で消去することが重要です。
5. 重要書類は適切な方法で保管してトラブルを防ごう


源泉徴収票自体には法的な保存義務はありません。しかし、税務トラブルや従業員からの再発行依頼に備え、扶養控除等申告書など年末調整に関連する法定保存書類と同様に、少なくとも7年間保管しておくことが望ましいでしょう。
書類を効率よく管理するには、紙の書類は整理・ファイリングして保管し、必要なときにすぐ参照できるよう分類しておくことが大切です。電子データとして管理する場合は、セキュリティ対策やバックアップを講じたうえで、フォルダ構成やアクセス権限を適切に設定し、書類を迅速に取り出せる体制を整えるとよいでしょう。



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