同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?
2018年6月に働き方改革関連法が成立し、パートタイム・有期雇用労働法によって同一労働同一賃金の規則が強化されました。同一労働同一賃金とは、同じ仕事に対しては、雇用形態に関係なく同じ給料を支払うべきという考え方です。
大企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から、派遣労働では一律で2020年4月から適用されています。
今回は、同一労働同一賃金で業務における責任の程度の変化点、考え方を詳しく解説していきます。また、最近では「雇用形態で差別されているのではないか」と実際に最高裁が決議を下した判例もあります。
思わぬトラブルが発生しないように対策もご紹介するので、ぜひご覧ください。
▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
目次
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 同一労働同一賃金で業務責任はどう変わる?
厚生労働省によると、責任の程度にはいくつかの基準があります。
- 職務内容と職務内容・配置変更の範囲が同じ:責任の程度も同じ
- 職務内容のみ同じ:責任の程度も同じ
- 職務内容のうち業務の内容のみが同じ:責任の程度は異なる
- 職務の内容・配置変更の範囲のみが同じ:責任の程度は異なる
- 上記のすべてが異なる:責任の程度は異なる
上記の職務には業務内容と責任の程度、2つの意味が含まれる点に注意してください。職務のうち、責任の程度が同じなら他が異なっていても、同じ業務責任を負うことがわかります。
1-1. 責任の程度の例をご紹介
責任の程度では、緊急時の判断や対応、繁忙期の休日出勤や残業の有無が含まれます。対応や繁忙期の責任に差がないのにも関わらず賃金に差を設けると、場合によっては同一労働同一賃金に反する可能性があります。
すでにご説明した通り、同一労働同一賃金は、同じ労働に対しては同じだけの賃金を支払わなければならないという決まりです。この原則が生まれたのは、深刻化する労働人口減少を見据え、多様な働き方を広く普及するためです。
また、同一労働同一賃金は、何に対して同一の労働と判断するかも重要。法律上では職務の内容と定義していますが、職務の内容には業務内容だけでなく、責任の範囲も含まれます。
▽職務の内容とは
- 業務の内容
- 業務に対して与えられている権限の範囲
- 業務に対するノルマ・成果義務
- 緊急時の対応
- 残業や休日出勤の有無
また、同一労働には転勤の有無や転勤する範囲、人事異動などの内容も含まれています。転勤や人事異動に関する事項を定めるのが、職務の内容・配置の変更の範囲です。
▽職務の内容・配置の変更の範囲とは
- 転勤の有無
- 転勤の範囲
- 人事異動の有無
- 昇進の有無
同じ仕事と言い切ると判定が難しくなりますが、業務内容だけでなく昇進や転勤の有無なども含めて考えるとわかりやすくなります。
2. 同一労働同一賃金における待遇の考え方
また、同一労働同一賃金では、待遇の考え方も大切。待遇面では、均衡待遇と均等待遇の規定がもとになっています。
均衡待遇は、職務の内容と職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情に差があれば待遇差を設けてよいことを指します。
従って、合理的な差があれば待遇に差を設けてもよいが、雇用形態を理由に差を設けてはならないというのが、同一労働同一賃金における待遇の考え方です。
3. 同一労働同一でトラブルを起こさないための対策
最後に、同一賃金同一労働でトラブルを起こさないための対策をご紹介します。同一労働同一賃金は思わぬところでトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
実際に令和2年10月15日に日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件で、雇用形態の違いに応じて待遇差を設けることは不合理とする判決が出ています。本判決では、扶養手当・祝日給・年末年始勤務手当・夏期冬期休暇・有給の病気休暇の待遇差が不合理と判断されました。[注1]
[注1]福岡労働局「同一労働同一賃金に関する最高裁判決がありました!!」
関連記事:同一労働同一賃金で各種手当はどうなる?最高裁判例や待遇差に関して
関連記事:同一労働同一賃金における福利厚生の待遇差や実現するメリットとは
3-1. 対策①:均等待遇と均衡待遇を理解する
先述しましたが、以上のようなトラブルを防ぐには、「均等待遇」と「均衡待遇」の考え方が大切です。
均等待遇と均衡待遇は、それぞれ、
- 業務の内容(責任の範囲も含む)
- 労働者を活用する仕組みや運用方法
以上の2点において、通常の労働者と同じかを比較し、短時間・有期雇用の労働者の待遇を決定することを指します。
均等待遇と均衡待遇の違いは、均衡待遇の「合理的な違いがあれば待遇差は問題ない」に対し、均等待遇では「同じ労働であれば同じ待遇でなければならない」という意味を持っている点です。
従って同じ労働内容に対しては同じ待遇を適用しなければならないものの、能力や経験などの違いがあれば、待遇差は認められます。
3-2. 対策②:待遇差の説明内容をあらかじめ決めておく
ただし、待遇差があり、短時間・有期雇用労働者の求めがある場合には説明義務が課されます。説明を行う際は、次の3点に注意してみてください。
- 比較する通常の労働者は業務内容が近い労働者に絞る
- 待遇差の理由として何を説明するかを定める
- 資料や書類と口頭での説明を併用する
まず、比較する通常の労働者は業務内容ができるだけ近い人物に絞るのが大切。選定基準は業務内容・責任の程度と、業務や配置を変更する際の範囲が同じ人物を選びましょう。該当者がいない場合は、業務内容と責任の程度が同じ人物を。さらに該当者がいない場合は、業務内容と責任の程度のいずれかが同じ人物を選びます。
また、説明する際は何を説明するのか、具体的な根拠が必要です。先述した能力差や経験の差の他に、賃金テーブルも根拠になります。
そして、説明時は資料を用意して口頭での説明と併用するのが大切です。書類には就業規則や賃金に関する規約、通常の労働者に対する待遇を記載しましょう。 また当サイトでは、どのように説明すれば合理的な待遇差だと認めてもらえるかについて、具体例を用いて解説した資料を無料で配布しております。
万が一不合理であると判断された場合の対処法もまとめておりますので、待遇差の説明に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。
3-3. 対策③:同一労働同一賃金を正しく導入・再確認する
同一労働同一賃金の原則は法律が成立してからしばらく経ちますが、定期的に再確認するのが大切です。また、未導入の企業の場合は、トラブルを避けるためにも早めに対応するのがおすすめです。
同一労働同一賃金の導入・確認方法は次のとおりです。
- 短時間・有期雇用労働者の有無をチェックする
- いる場合は正社員との待遇差を確認する
- 待遇差がある場合は、働き方と役割の違いに対応しているか納得できる説明ができるか確認する
以上で3項目の説明ができない場合は、待遇の改善が必要です。不合理な待遇差を取りやめ、差別的な取り扱いがある場合は、ただちに是正しましょう。
4. 同一労働同一賃金は原理や考え方を理解してトラブルを避けよう
同一労働同一賃金は、何を同一労働ととらえるか、不合理・差別的な待遇差とは何かを理解するのが大切です。
同一労働とは、業務の内容と責任が同じで、転勤や昇格、人事異動の可能性も同じ働き方を指します。待遇差として認められるのは、能力や経験に差がある場合のみで、同じ労働内容ならアルバイトやパートだからという理由だけでは待遇差を設けられません。
思わぬトラブルが発生しないよう、雇用形態が複雑な企業は改めて各従業員の待遇をチェックしておきましょう。
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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