契約書管理の最適な方法とは?システムやエクセルなど細かく解説
更新日: 2023.1.20
公開日: 2022.1.17
HORIUCHI
膨大な量の契約書の管理が追いつかない、そのような悩みを抱えている方も多いでしょう。契約書が適切に管理されていない企業では、契約情報の確認に時間を要し業務効率が悪化するだけではなく、最悪のケースでは契約書の紛失など重大なトラブルも起こりかねません。
契約書には法的な保管義務があるため、管理書類を減らすことはできません。長期間に渡って管理するためには管理体制のルール化が必要です。
本記事では、契約書をどのような管理すべきなのかお悩みの方に向けて、契約書管理の重要性や適切な管理方法を解説します。
関連記事:契約書の作成から郵送までの手順・ルールは?押印や保管の方法も詳しく解説! | jinjerBlog
目次
「契約書が見つからない」
「まだ契約期間が残っている契約書を破棄してしまった」
そんなトラブルが発生する前に、契約書の管理を見直す必要があります。
契約書は一定期間、適切に管理する必要があります。
ですが、実際には取引を担当している部署や各従業員単位で保管している場合もあるでしょう。
適切な保管期間を知らない担当者が誤って契約書を破棄してしまうこともあるかもしれません。
紛失などを防ぐためには、法務部で契約書を管理するほかにも、全従業員が契約について理解を深めることが重要です。
本資料では契約に関する基礎知識から契約書の保管期間、保管方法についても解説しています。運用方法の見直し理由を説明する際にも活用できるので、ぜひご覧ください。
1.契約書管理の理想とは
契約書管理の理想とは以下の項目が保たれている状態です。
・コンプライアンス体制が強固
・契約の締結から保管までの手順が明確で簡単
・必要としている契約情報をすぐに確認できる
・更新期限や保管期限を管理できている
ここでは各項目について解説します。自社の現状と比較し、契約書管理の課題を洗い出しましょう。
1-1.コンプライアンス体制が強固
まずはじめに意識することは、契約書管理のコンプライアンス体制です。契約書には自社の資産(お金やモノ)の流れが記載されており、このような書類は法律上の「重要書類」として扱われます。また、契約相手の会社情報・個人情報も記載されているため、情報の流出や書類の紛失・消失は確実に防がなければなりません。
紙の契約書の場合、書類の持ち出しによる紛失や火災・水害による消失が考えられます。これらのリスクを排除するためには契約書の電子化が有効です。法律上は電子契約書であっても要件を満たせば原本として扱えるため、積極的に電子化を検討しましょう。
一方、契約書を電子化して管理する場合には、「オープンすぎる状態」にしないことが重要です。不特定多数の人が全ての契約書を容易に閲覧できてしまう状態は好ましくありません。契約書ごとにステータスを設定し、閲覧制限を設けるなどの対策が必須です。
1-2.契約の締結から保管までの手順が明確で簡単
1枚1枚の契約書を適切に管理するためには、契約書の締結から保管までの手順が明確にルール化されている必要があります。契約書管理が上手くいかない要因の一つが、管理部門と現場の契約書の扱いに関する認識の違いです。管理部門と現場が統一されたルールで契約書を管理することにより、スムーズな業務遂行が可能となります。
なお、この点に関しても、契約書の電子化や電子契約システムの導入は有効です。「誰が」「どのような契約を」「どの程度の進捗で」進めているのかが一元管理できるため、現在社内で進行している契約の所在が把握しやすくなります。
関連記事:契約書の保管でお悩みの方必見|法律と電子化の方法を合わせて解説 | jinjerBlog
1-3.必要としている契約情報をすぐに確認できる
必要な契約情報にすぐに確認できることも、契約書管理の重要な要素です。
たとえば、ある契約を進めていくうえで、過去の契約情報を参照する必要が生じたとします。ここで必要な情報がすぐに見つかれば、相手にとってより良い提案を迅速におこなうことが可能です。一方、必要な情報が見つからなければ契約が破談になってしまうことも考えられます。
「ビジネス機会の損失」や「自社に損害を与えるトラブルの防止」のためにも、必要書類へのアクセスは簡単かつ迅速におこなわれる必要があります。契約書管理の利便性を高めることは、業務効率改善に加えて自社の利益にも直結することを覚えておきましょう。
前項で説明した通り、誰でも契約書を参照できる状態は好ましくありませんが、管理部門にリクエストすればいつでも契約内容を確認できるような状態にしておくなど、ルール化することで適切な契約書管理をおこないましょう。
1-4.契約書の有効期限を管理できている
契約の有効期限を管理することは、事業を営むうえで非常に重要です。
たとえば、気づかないうちに契約期間が終了していた場合、毎月おこなっている発注ができないなどの事象が発生し、企業にとって大きな損失につながる恐れがあります。
一方、自動更新の契約の場合、本来であれば解約予定であったのにもかかわらず、解約期限を過ぎてしまったために契約を継続させなければならず、一定期間余剰の金額支払わなければならないという状況に陥る可能性もあります。
こういった状況を避けるためには、契約書の有効期限を全体で管理して、有効期限や解約期限をリアルタイムで把握できている状態が理想的です。
2.契約書管理が適切されていないと生じる問題
契約書が正しく管理されていない場合、企業の正常な事業活動に支障をきたすことが予想されます。企業にとって甚大な損害に繋がることもあるかもしれません。ここでは契約書の管理不全で起こり得る問題・トラブルを紹介します。
2-1.トラブル時、迅速に対処できない可能性がある
契約内容を巡ってトラブルが発生した場合、該当の契約書をすぐに参照できないと迅速な対処ができません。契約書は契約に関するルールに当事者が同意したことを示す書類であり、問題に対する責任の所在を明らかにするための証拠です。証拠の確認に時間が掛かってしまうと、一方的に不利益な対応を迫られる恐れもあります。
また、契約期間中に担当者の異動や退職などが発生しているのにもかかわらず、引継ぎが上手くおこなわれていなかった場合、部署内で誰も契約の内容を把握していないといった状況に陥り、契約に関する責任の所在が不明瞭になってしまいます。
2-2.別部署に不正確な契約情報が伝達されてしまう
契約書管理が属人化してしまうと、他部署が契約内容を確認したいときに正しい情報が共有できません。一定のルールに基づいた一元管理ができていないと、契約書の所在確認に時間が掛かるばかりか、有効期限のチェック漏れといった業務上のトラブルに繋がるリスクもあります。
2-3.原本の紛失、重複契約の発生
不適切な契約書管理は、原本の紛失や重複契約といった重大なトラブルにも発展しかねません。仮に契約内容からトラブルに発展した場合、原本が紛失してしまっては一切の反論ができなくなってしまいます。そればかりか、情報漏洩を指摘されて更なるトラブルに発展する可能性もあります。
また、過去の契約内容が参照できなければ、同様の契約を二重で締結してしまうリスクも高まります。特定の得意先に対して、複数の部署が関わっている場合などは特に注意が必要です。
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・対象となる電子取引データの保管方法
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3.具体的な契約書の管理方法・手順
社内で契約書の管理体制を確立するための具体的な手順を解説します。管理体制を確立した後はそれを維持するための社内ルールの周知も重要です。
3-1.契約書管理の課題を洗い出し、管理体制の枠組みを決める
まずは、現状の契約書管理に関する課題を洗い出しましょう。
正しく管理できていなかったことでどんな問題が発生したのかを洗い出すことで、今後目指すべき管理方法を具体的にイメージできます。
そのイメージを元に、次は契約書の管理体制の枠組みを決めましょう。ここでは「誰が」「何処で」「どの書類を」管理するかを明確に定めます。契約書管理に関わる業務内容や課題に応じて、目的を持って枠組みを作ることが大切です。
契約書を本社で一括管理する場合であれば、一般的には総務部や経理部、法務部といった管理部門が管理を担当します。また、企業によっては各部署・各事業部単位で契約書の管理を集約するケースもあります。いずれの方法でも契約書を管理する担当部署、担当者を明確に定めることが重要です。
書面の契約書の場合には、鍵付きのキャビネットへの保管が必須になるので保管スペースを確認しておきましょう。
3-2. 原本を適切に集約する
次に、管理担当者の元に該当する契約書を全て集約します。なお、すでに保管義務がない契約書の原本を大量に溜め込んでいるケースも珍しくありません。集約と同時に契約書の棚卸しをおこない、不要な原本は適切に処分することで、作業がスムーズになります。
別の拠点から契約書を集める際は、発送方法にも注意を払いましょう。契約書は重要書類なので、万が一紛失してしまった場合、大きなトラブルにつながります。配送記録が残るレターパックや特定記録郵便、簡易書留など、受け取り時に署名・押印が必要な手段で送付してもらうと、確実に受け取ることができます。
3-3.確認しやすいように契約書類を分類して仕分ける
集約された契約書をあらかじめ決めておいた分類に従って仕分けしていきましょう。なお、ここでの分類は後述する管理台帳の管理項目にも関わります。
分類の方法として以下のものが代表的です。
・名称別分類(契約者の名称で分類する方法)
・テーマ別分類(契約内容で分類する方法)
・プロジェクト別分類(各プロジェクトや事業所単位で分類する方法)
・数学的分類(契約締結日や有効期限等の日時別で分類する方法)
複数の分類方法を組み合わせ「大分類」「中分類」「小分類」と仕分けることで体系的な管理が可能です。
3-4. 管理台帳に記載する項目を明確にする
契約書管理台帳に記載する管理項目を明確にしましょう。契約書管理台帳は社内における全ての契約書の情報を集約し一元化するためのものです。紙媒体であっても、エクセルやシステムのような電子媒体であっても、契約書を検索する際は管理台帳のデータを参照します。
契約書の管理台帳に記載すべき主な項目は、以下の通りです。
・契約書の種類(書類名)
・契約の管理部門
・契約の担当者名
・契約書番号
・契約書名
・締結年月日
・契約終了日
・契約の有効期限
・相手方の担当者名
・自動更新の有無
・解約通知期限
・原本の保管場所
・管理番号
記載項目に特定の決まりはないため、自社の都合にあわせて必要な項目を追加していきましょう。
3-5. 整理された管理台帳を社内に共有する
契約書の仕分け作業や管理台帳の入力作業が終了したのち、社内に向けて管理台帳の共有と新しい契約書管理フローの周知をおこないます。
重要なのは、全社員が新たなフローに従った契約書管理を実行することです。枠組みだけ確立しても実際に運用されなければ以前の管理状況に戻ってしまいます。不適切な書類管理をおこなっている社員には指導をおこない、適切な管理体制の定着を目指しましょう。
このときに注意したいのは、「従来のやり方を変更することは従業員の負担になる」という点です。なかには、面倒や失念していて以前の管理方法で運用してしまうこともあるかもしれません。
管理を徹底させるためには、正しく管理されているかを確認するとともに、「管理方法の変更をおこなう背景」を伝えることが重要です。契約書を紛失した場合のリスクや契約の意味を理解していなければ、従業員のなかで「契約書を適切に管理する」ということの重要度が下がる恐れがあります。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の基本知識から契約書の役割、契約に関するよくある質問についてまとめています。契約書はいつまで保管する必要がある?というような従業員からのよくある質問もまとめており、ほか従業員の勉強用資料として活用できます。気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
4.契約書管理は電子化で圧倒的に楽になる
契約書管理は電子化することにより業務の負担を大幅に減らすことができます。電子契約書を原本として扱うには電子署名やタイムスタンプなどの電子的な仕組みが必要なため、専用システムの導入を検討するとよいでしょう。ここでは契約書を電子管理するメリットを解説します。
4-1.膨大な保管スペースが不要になる
電子化の大きなメリットは、物理的な保管スペースが不要になることです。電子契約書は要件を満たせば原本として扱うことが認められています。その場合、紙の契約書の保管義務はないので、これまでオフィスを圧迫していた保管スペースを有効活用できるようになります。
電子契約書の保存要件については、下記記事をご覧ください。
関連記事:電子帳簿保存法とは?|満たさなければならない要件をご紹介!
4-2.検索すれば簡単にデータを探し出せる
全ての契約書を電子化すれば、必要とする契約書を探し出すことが簡単になります。スキャンして出力された電子契約書はただの画像データですが、契約書電子化システムの中には画像の文字列を自動的に読み取る機能(OCR機能)を備えたものもあります。このような管理システムであれば、文字情報から特定の契約書を検索することも可能です。
4-3.台帳記入、期限の自動アラートで管理効率アップ
文字列読み取り機能(OCR機能)を備えた管理システムであれば、契約書をスキャンしただけで自動的にデータベース化できます。従来のように、契約書ごとに管理台帳へマニュアル入力する必要はありません。
また、更新期日が近づいた契約書をアラートで知らせる機能を備えたシステムもあり、これらの機能を活用することで作業効率の飛躍的な向上が期待できます。
4-4.権限管理設定でガバナンスを強化できる
契約書管理システムでは、従業員ごとに操作範囲の限定や閲覧権限を設定可能です。エクセルのような誰でも容易にアクセス・編集ができるアプリケーションで契約書を管理していた場合、情報の公開範囲が限定できないうえ、必要な情報を誤って削除されてしまう恐れもあります。
契約書のような重要書類を適切に管理するためには、書類の重要度に応じてアクセス制限を掛けることが重要です。契約書管理システムの導入は社内ガバナンスの強化にもつながります。
5.適切な契約書管理を実現させるにはシステムの導入がおすすめ
コンプライアンスが重要視される現代では、契約書も適切に管理されなければなりません。契約書は各種トラブルへの対処や税務調査時の資料として参照されるので、必要に応じて迅速に情報へアクセスできるよう、社内における管理体制を整備することが大切です。
また、契約書にアクセス制限を付けたり、有効期限を管理するためには、契約書管理システムが非常に便利です。また、ここ数年ではペーパーレス化が進み、契約書の電子化に対する需要も高まっています。契約書管理システムを導入して、契約書データの電子化や業務効率化を推進していきましょう。
「契約書が見つからない」
「まだ契約期間が残っている契約書を破棄してしまった」
そんなトラブルが発生する前に、契約書の管理を見直す必要があります。
契約書は一定期間、適切に管理する必要があります。
ですが、実際には取引を担当している部署や各従業員単位で保管している場合もあるでしょう。
適切な保管期間を知らない担当者が誤って契約書を破棄してしまうこともあるかもしれません。
紛失などを防ぐためには、法務部で契約書を管理するほかにも、全従業員が契約について理解を深めることが重要です。
本資料では契約に関する基礎知識から契約書の保管期間、保管方法についても解説しています。運用方法の見直し理由を説明する際にも活用できるので、ぜひご覧ください。
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