商品有高帳とは?記入方法や注意点をわかりやすく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.19
jinjer Blog 編集部
商品有高帳とは補助簿の1つで、商品を仕入れたり売り上げたりする度に数量や単価、金額を記録し、在庫管理を行うためのものです。
本記事では、商品有高帳とは何か、具体的な記入方法と注意点を解説します。
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1. 商品有高帳とは?在庫数量を把握するための帳簿
商品有高帳とは、商品を仕入れたり、売り上げたりする都度、数量・単価・金額を記録する帳簿です。商品がどれだけ動いたか、また、在庫がどの程度残っているか、実際の商品を数えなくても帳簿上で確認できます。
商品売買業での記録を対象とした日商簿記3級で登場する記録方法です。
1-1. 商品売買の流れ
商品有高帳の必要性を理解するために、商品売買業の流れを確認します。商品売買業とは、商品を外部から仕入れ、仕入れた商品をそのまま販売する業態です。
商品を販売する流れで発生する工程を分解すると以下になります。
- 商品を仕入れる(受け入れ)
- 在庫として保管する
- 販売する(払い出し)
仕入れた商品は即座に売れるわけではないため、一定期間、社内で保管します。このように保管されている商品を在庫といいます。
商品有高帳では、上記一連の流れを以下の項目に分けて記録することで、在庫数量を適切に把握できます。
- 受け入れ・払い出しをした日付
- 受け入れた商品の数量・単価・金額
- 払い出した商品の数量・単価・金額
- 商品ごとの残高(数量・単価・金額)
1-2. 商品有高帳を作成する目的
商品有高帳を作成する目的には以下があります。
現在の在庫状況を正しく把握するため
正確な売上総利益(粗利)を計算するため
棚卸時の差異の確認のため
①現在の在庫状況を正しく把握するため
商品を仕入れてから販売するまでの間にはタイムラグがあるため、在庫状況を正しく把握していないと欠品してしまいます。
商品が足りないと思い込み必要以上に受け入れると、過剰在庫が発生し値下げや破棄が必要になる可能性もあります。
そのため、現在の在庫数量を正しく把握することは、会社の信頼を維持し、無駄な費用の発生を押さえるうえでも大切です。
②正確な売上総利益(粗利)を計算するため
売上総利益は以下の式で計算できます。
売上総利益 = 売上高 – 売上原価
商品売買業では、商品の仕入れ値がそのまま原価になるため、在庫数量を適切に把握していないと、決算時に正しい売上原価を求められません。
売上原価が間違っていれば、当然、売上総利益も正しい数値とはなりません。
③棚卸時の差異の確認のため
実務で在庫を確認するときは、商品有高帳を見るだけでなく、実際の商品の数量を数え両者を一致させます。
帳簿残高を根拠として実地棚卸高を合わせ、盗難や破損などで生じた減少分を把握します。また、2つの数字を使うことで、帳簿上の間違いにも気付きやすくなります。
関連記事:棚卸とは?意味や目的や実施の時期、方法や流れについて解説
1-3. 在庫商品の原価の考え方
商品有高帳は在庫商品の原価の正しい把握も重要な役割です。在庫商品の原価(商品有高)は以下の式で求められます。
商品有高 = 数量 × 単価
単価は商品を仕入れたときの仕入れ原価です。しかし、多くの商品は仕入れ時期により原価が異なるため、同じA商品でも@100円のときもあれば、@150円のときもあり、原価がバラバラになってしまいます。
商品有高帳では払い出した商品1個あたりの原価(払出単価)の求め方の違いにより、記入方法が異なります。
2. 商品有高帳の記入方法
商品有高帳の記録方法のうち、簿記3級で学ぶものには以下の2つがあります。
- 先入先出法
- 移動平均法
先入先出法とは「先に仕入れた商品から先に販売(払い出し)した」と仮定して、払出単価を決める方法です。そのため、商品有高帳には同じ商品でも、仕入原価別に記載します。
移動平均法とは原価の異なる商品の仕入れ(受け入れ)の都度、平均単価を計算し、払出単価を求める方法です。記入数は少なくて済むものの、都度計算が必要です。
次に、以下の条件を例に、それぞれ具体的な記入方法を解説します。
11月1日 :A商品前月繰越 30個 @100円
11月10日:A商品仕入 50個 @200円
11月15日:A商品売上 30個 @300円
11月20日:A商品仕入 80個 @100円
11月25日:A商品売上 80個 @200円
2-1. 先入先出法の記入方法
商品有高帳
A商品
日付 | 適用 |
受入 |
払出 | 残高 | |||||||
数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | |||
11 | 1 | 前月繰越 | 30 | 100 | 3,000 | 30 | 100 | 3,000 | |||
10 | 仕入 | 50 | 200 | 10,000 | 30 | 100 | 3,000 | ||||
50 | 200 | 10,000 | |||||||||
15 | 売上 | 30 | 100 | 3,000 | 50 | 200 | 10,000 | ||||
20 | 仕入 | 80 | 100 | 8,000 | 50 | 200 | 10,000 | ||||
80 | 100 | 8,000 | |||||||||
25 | 売上 | 50 | 200 | 10,000 | |||||||
30 | 100 | 3,000 | 50 | 100 | 50,000 | ||||||
30 | 次月繰越 | 50 | 100 | 5,000 |
11月10日の残高のように、単価が異なるときは別々に記載します。
11月15日の売上では、先に仕入れた(前月繰り越し分)から払い出します。
11月15日の売上のように、払出単価が異なるときは別々に記載します。また、80個の仕入れ分のうち30個を払い出したため、50個を残高として記載します。
2-2. 移動平均法の記入方法
商品有高帳
A商品
日付 | 適用 | 受入 | 払出 | 残高 | |||||||
数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | |||
11 | 1 | 前月繰越 | 30 | 100 | 3,000 | 30 | 100 | 3,000 | |||
10 | 仕入 | 50 | 200 | 10,000 | 80 | 163 | 13,040 | ||||
15 | 売上 | 50 | 163 | 4,890 | 50 | 163 | 8,150 | ||||
20 | 仕入 | 80 | 100 | 8,000 | 130 | 124 | 16,120 | ||||
25 | 売上 | 80 | 124 | 9,920 | 50 | 124 | 6,200 | ||||
39 | 次月繰越 | 50 | 124 | 6,200 |
平均単価 = (残高金額 + 受入金額) / (残高数量 + 受入数量)で求めます。
11月10日の払出単価は(3,000 + 10,000 / 30 + 50)= 163です。
11月20日の払出単価は(8,150 + 8,000 / 50 + 80)= 124です。
なお、例題では払出単価を小数点以下で四捨五入していますが、会社により処理方法は異なります。
3. 商品有高帳に記入するときの注意点
3-1. 商品を販売したときは売価ではなく原価を記載する
商品を販売したときの「単価」は売価ではなく、払出単価(原価)のため注意しましょう。たとえば、販売価格100円、原価50円の商品なら、商品有高帳の「払出」欄の単価には50と記載します。
3-2. 返品も記載が必要
仕入れ時や商品販売時に返品があれば、その分も以下のように商品有高帳に記載します。
仕入れた商品を返品したとき:
摘要を「仕入戻し」とし、「受入」欄に返品分の数量・単価・金額をマイナスで記載する。
販売した商品が返品されたとき:
摘要を「売上戻り」とし、「払出」欄に返品された分の数量・単価・金額をマイナスで記載する。
3-3. 材料の増減は材料元帳で管理する
もし、会社で商品の製造をしており、材料の増減を管理したいときは「材料元帳」という別の帳簿に記載します。
商品有高帳はあくまでも商品売買業の商品残高を記載する帳簿のため、記録先を間違えないように注意しましょう。
4. 商品有高帳は記載方法により払出単価の求め方が異なる!
商品有高帳とは、商品の仕入れや販売の都度、数量・単価・金額を記録し、在庫管理をするための帳簿です。
記録方法には「先入先出法」と「移動平均法」があり、それぞれ払出単価の求め方が異なります。
商品有高帳は単価を間違えると、決算処理にも影響がおよぶ可能性があります。そのため、紙やエクセルで管理しているときは、会計システムを導入すると間違いの防止につながります。
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