電子委任状法とは?|契約実務で気になる法律について解説! - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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電子委任状法とは?|契約実務で気になる法律について解説!

ペーパーレス化や非対面化ニーズの高まりを受け、電子署名が大きな注目を集めています。しかし、会社の代表印を電子署名とした場合、押印の代行が法令に沿わないことはあまり知られていません。

法令を遵守した上で電子署名代行を実施するためには「電子委任状」の作成が不可欠です。

今回は電子委任状の運用ルール等を定めた電子委任状法について、分かりやすく解説します。契約実務における電子署名に疑問を持たれている方は、ぜひ参考にしてください。

関連記事:電子契約に関する法律を徹底解説|電子契約導入を検討している方向け | jinjerBlog

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1.電子委任状法とは

2018年1月に施行された「電子委任状の普及の促進に関する法律」(電子委任状法)は、電子契約における電子委任状の基本的な運用方法を定めるとともに、それを国民に普及させることを目的とした法律です。
なお、電子署名の運用について定めた「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)とは異なる点に注意しましょう。

ここでは法令や国が定める指針を参考に、実務で覚えておくべき電子委任状の基本を解説します。

1-1.電子委任状とは?役割と記録事項

電子委任状とは、法人の代表者が従業員に対して契約の代理権を付与したことを表示する電子データのことです。
代理権を明確にすることで代理人が施した電子署名の法的効力が担保されます。

なお、総務省・経済産業省の指針では電子委任状に記録すべき事項を以下の通り定めています。

● 委任者(法人の代表者)
● 受任者(代理権を付与される従業員)
● 代理権の具体的内容
● 代理権の制限
● 代理権の有効期間
● その他、委任者または電子委任状取扱事業者が必要と認める事項

1-2.電子委任状法が定める3つの記録方式

電子委任状法の規定では、法的効力が認められる電子委任状を以下3つの方式いずれかで記録されたものに限定しています。

●委任者記録ファイル方式
●電子署名方式
●取扱事業者記録ファイル方式

委任者記録ファイル方式は、委任者(法人の代表者)が自身で委任状を作成し、PDF等の電子ファイルで書類を保管する方式です。

この場合、作成した電子ファイルには電子署名を施し、本人性と非改ざん性を担保しなければなりません。

電子署名方式は、受任者が使用する電子署名の電子証明書に委任状の必要事項を記録する方式です。電子証明書とは電子署名の本人性を証明するための情報を記録した電子データのことであり、実印における印鑑証明に該当します。

取扱事業者記録ファイル方式は、受任者の電子証明書とは別の電子データに委任状の必要事項を記録する方式です。
なお、電子署名方式と取扱事業者記録ファイル方式において電子委任状の記録を委託できるのは、国の認定を受けた電子委任状取扱事業者に限られます。

当サイトでは、本章で簡単に触れた本人性に関して、実際に電子契約を結ぶ際の画像を参考にしながら解説した資料を無料で配布しております。本人性に関してより正確に理解したいご担当者様は、こちらから「本人確認性の担保ガイドブック」をダウンロードしてご確認ください。

2.なぜ電子委任状が必要になるのか

電子委任状は、法令を遵守する形で電子署名の代行を実施するために不可欠なものです。ここでは企業における実務の観点から、電子委任状を作成すべき理由を解説します。

2-1.電子委任状の作成により電子署名法との整合性が取れる

なぜ法令遵守のために電子委任状が必要なのかというと、代理権が明確でない電子署名は電子署名法との整合性が取れないためです。

法人同士で契約を交わす場合、その契約書には法人の代表者の印鑑(代表印)が必要となります。しかし、実務において代表者が直接押印するのではなく、従業員による押印の代行も珍しくありません。

これは電子署名でも同様です。

電子署名法第3条の条文では法的に有効な電子署名を「本人のみがおこなえるものに限る」と規定しており、従業員が代理で施した電子署名はその効力に疑いの余地が生じてしまいます。

これを解消するためには、代理権を明確にする電子委任状が必要です。

2-2.電子委任状の作成により職場のデジタルファーストが促進される

電子委任状の作成は法的な観点からも必要とされますが、業務効率化の観点からもメリットがあります。先述したように、実務においては代表者以外の従業員が電子署名を利用するケースが大半です。

法令上代表印の電子署名をおこなえるのは、その持ち主である法人の代表者のみに限られます。

しかし、代表者が全ての契約書に電子署名を施すことは、小規模企業ならいざ知らず、数千人規模の従業員を抱える大企業のワークフローにおいては、現実的ではありません。

電子委任状によって現場のマネージャークラスに代理権を付与すれば、従来のワークフローを維持しつつ電子契約の導入が可能となります。コンプライアンス遵守しつつ業務効率化を実行するためには、電子委任状が必要になるのです。

2-3.裁判の証拠としての電子署名の有効性を証明できる

電子委任状を作成することで、契約トラブルから裁判に発展した際に電子署名の有効性を証明できます。契約書は裁判における重要な証拠となるため、その真正性が曖昧であれば不利な立場に追い込まれかねません。

なお、電子委任状や代理権の確認は法令による義務づけはありません。これはデジタルファーストが業務の効率化を目的とすることから、いちいち委任状を確認していては余計な手間が掛かるためです。

実務において契約相手から代理権の確認を求められるケースは非常に稀でしょう。

しかし、確認されることがないからと言っても、電子委任状が不要という訳ではありません。トラブル防止の観点からも、電子契約と合わせて電子委任状の作成を検討しましょう。

3.電子委任状の仕組み

ここでは電子委任状の仕組みについて解説します。

委任状は、代理権の付与が真正に成立した旨を証明できなければなりません。悪意ある人間によって、代表者の承認を得ていない契約が締結される可能性があるためです。

紙の委任状では、書類のほかに免許証や印鑑証明等の本人確認書類が必要となる場合もあります。

一方、電子委任状の場合は、電子証明書そのものが電磁的方法によって本人性を担保しているため、それ以外に必要な書類はありません。

なお、電子委任状を記録・管理しているのは国の認定を受けた電子委任状取扱事業者であり、その内容は高く信頼されます。

法人同士で契約を締結する際、契約の相手方は必要に応じて取扱事業者に対して電子委任状の閲覧申請が可能です。

4.実際に電子委任状を取得・利用するには

実際に電子委任状を取得・利用するには、総務省および経済産業省が認定する電子委任状取扱事業者に依頼する必要があります。

電子委任状法において、電子委任状の記録・管理ができるのは、認可を受けた事業者のみに限定されています。

しかしながら、諸外国と比べると日本における電子契約の普及は、大きく遅れているのが現状です。

電子委任状の仕組みについては特に対応が遅れており、2021年8月時点で電子委任状取扱事業者は以下のわずか8社しか認可を受けていません。[注1]

電子委任状の認知と普及に合わせ、取扱事業者の増加にも期待したいところです。

(事業者名:電子委任状業務の名称・方式・認定日・認定番号の順に記載)

SECOM Passport for G-ID:セコムトラストシステムズ・株式会社電子証明書方式・2018年6月27日・第1号

e-Probatio PS2サービス:NTTビジネスソリューションズ株式会社・電子証明書方式・2018年6月27日・第2号

TDB電子認証サービスTypeA:株式会社帝国データバンク・電子証明書方式・2019年10月11日・第3号

DIACERTサービス:三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社・電子証明書方式・2019年12月17日・
第4号

DIACERT-PLUSサービス:三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社・電子証明書方式・2019年12月17日・第5号

マイナトラスト電子委任状[委任者記録ファイル方式]:株式会社サイバーリンクス・委任者記録ファイル方式・2020年7月14日・第6号

マイナトラスト電子委任状[取扱事業者記録ファイル方式]:株式会社サイバーリンクス・取扱事業者記録ファイル方式・2020年7月14日・第7号

AOSign サービスG2:日本電子認証株式会社・電子証明書方式・2021年8月20日・第8号

[注1]総務省|電子委任状の普及の促進に関する法律(電子委任状法)

5.電子委任状法を理解して電子署名を正しく運用しましょう

近年、テレワークを始めとした働き方改革が普及し始め、それに伴い電子契約を導入する企業も増加傾向にあります。

しかし、それに伴った法律の整備や企業の認知が遅れている現状も見えてきており、今回紹介した電子署名の委任が良い例です。

法人同士の契約において、電子委任状を作成せずに従業員が電子署名を代行した場合、厳密にいえば法令違反にあたります。コンプライアンスを遵守して電子署名を運用するためには電子委任状の作成が不可欠です。

電子署名法、そして電子委任状法の規定をよく理解し、適切な電子署名の運用を心がけましょう。

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