有給の会社指定は違法?例外ケースや労働者とのトラブル防止策を解説
公開日: 2025.5.28 jinjer Blog 編集部
「労働者の有給休暇を会社が指定するのは違法?」
「有給取得日を指定しても問題ないケースは?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。
会社が労働者の同意なく有給休暇を消化したり、正当な理由なく申請を拒否したりすることは、原則として違法です。
ただし、有給取得日を会社が指定できるケースもあり、制度として正しく運用すれば問題にならない場合もあります。
本記事では、有給の会社指定が違法になるケース、違法にならないケースをそれぞれ示し、労働者とのトラブルを防ぐ具体策を紹介します。自社の有給付与ルールを見直し、組織の生産性向上を実現したい方はぜひ参考にしてください。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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1. 有給の会社指定は違法なのか?
労働者の有給休暇を会社側が指定することは、状況によって違法とされる場合があります。
年次有給休暇とは、雇用形態に関係なく、以下の要件を満たしている労働者に付与される「有給」の休暇のことです。
- 雇用された日から6ヵ月経過している
- その期間の労働日数の8割以上出勤している
会社には、年10日以上の有給休暇を付与された労働者に「年5日を取得させる」ことが義務付けられています。労働者が年5日の有給を取得できているか、各自の取得状況を管理することも会社の責務です。
以下では、有給の会社指定が違法とされる具体的なケースを見ていきましょう。
1-1. 会社が勝手に有給を使用するのは違法
会社が労働者の同意なく、勝手に有給取得日を使用させることは違法です。
例えば、以下のようなケースが該当します。
- 労働者の欠勤を、本人の確認や同意なしに有給休暇扱いにする
- 会社都合の休業日を、有給休暇で処理するよう指示にする
- 本来の休日を有給休暇として振り替える
労働者の意志に反して、自動的に有給が消化されることは、たとえ就業規則で定めていたとしても法的には無効です。
1-2. 正当な理由なく有給申請を拒否することは違法
労働者からの有給申請を、正当な理由なく拒否することは違法です。
原則として、有給休暇は労働者が希望する時季に取得できるものです。会社は、有給の利用目的を理由に有給取得を拒否することはできません。
労働基準法では、労働者に対して「有給休暇の取得理由を会社に説明すること」を義務付けていないためです。
2. 有給の会社指定が違法にならないケース
労働者の有給休暇を会社側が指定することが、違法にならないケースもあります。
- 有給の計画的付与制度を利用する場合
- 有給を時季指定により付与する場合
- 時季変更権を行使して有給取得日を調整する場合
それぞれの詳細を見ていきましょう。
2-1. 有給の計画的付与制度を利用する場合
有給休暇の「計画的付与制度」を利用する場合は、会社が有給取得日を指定できます。
計画的付与制度とは、有給休暇のうち5日を超える分について、会社側が計画的に休暇取得日を割り振れる制度のことです。多くの企業では、以下の形式で活用されています。
- 夏季や年末年始に有給を付与し、事業所の一斉休業日とする
- 休日が平日をはさんで続いている合間に有給を付与し、大型連休とする
- 年間計画表を用いて、班・グループ交替制で連休を設ける
計画的付与制度を活用して有給休暇を取得させる場合は、労使協定の締結が必要です。取得時季は会社が決定でき、労働者の同意は制度上不要とされています。
2-2. 有給を時季指定により付与する場合
労働者に希望日をヒアリングしたうえで、会社が有給取得日を指定する「時季指定」は法令上認められています。
時季指定による付与は、労働者から有給取得の申請がなく、年5日の取得義務を果たせない場合に用いられることが多い方法です。
時季指定の対象となる日数は「5日」と定められています。以下の合計が年5日を上回る場合、時季指定による付与は認められません。
- 労働者が希望日を申請する形で取得した有給休暇の日数
- 会社が「計画的付与制度」を利用して付与した有給休暇の日数
時季指定により有給を付与する場合は、可能な限り労働者の希望に沿うよう配慮することが大切です。
2-3. 時季変更権を行使して有給取得日を調整する場合
労働基準法で定められた「時季変更権」を行使する場合は、会社が有給の取得日を変更できます。
時季変更権とは、労働者の希望日に有給を付与することで業務の正常な運営が妨げられる場合、会社側が取得日を変更できる権利です。
過去の裁判で「業務の正常な運営が妨げられる場合」に該当すると認められた事例の一部を紹介します。
- 希望日の業務において専門的な知識や経験が求められ、代替要員を確保できないケース
- 業務上必須となる知識や技能を修得するための研修が、希望日と重なっているケース
- 業務の定員が決められており、正常運営が妨げられることが予知できるケース
参考:日本電信電話事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)
参考:西日本ジェイアールバス事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)
参考:日本電信電話(年休)事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)
参考:此花電報電話局事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)
時季変更権をめぐるトラブルを避けるには、労働者への配慮を十分に示すことが重要です。可能な限り労働者の希望に沿えるよう、時季変更権を行使するまえにシフトや業務の調整を図りましょう。
3. 有給休暇に関するトラブルを防止するポイント
有給休暇に関する労働者とのトラブルを防ぐポイントは以下のとおりです。
- 労働者とのコミュニケーションを重視する
- 有給を取得しやすい環境を構築する
- 有給休暇の取得計画を作る
それぞれの詳細を解説します。
3-1. 労働者とのコミュニケーションを重視する
労働者とのトラブルを防止しつつ、有給休暇の取得を促進するためには、労使間の円滑なコミュニケーションが重要です。
労働者には「有給を自由に取得できる権利」があるものの、繁忙期に一斉に休まれては業務に支障をきたす可能性があります。時季変更権が認められるケースは限られているため、双方の理解や配慮が欠かせません。
労働者から協力的な姿勢を引き出すためには、日常の意思疎通を重視し、信頼関係を築くことが大切です。
会議で取得ルールを共有したり、1on1ミーティングで労働者の取得希望時季を把握したりなど、情報共有しやすい体制を整えましょう。
3-2. 有給を取得しやすい環境を構築する
有給を容易に取得できる体制を構築し、労働者に不満を抱かせない環境をつくることが大切です。労働者の希望を最大限尊重するためには、以下の取り組みが有効です。
- 業務の属人化を防ぐために、マニュアルや教育制度を整える
- シフトを調整しやすくするために、社内SNSを導入する
- チーム内の人間関係を良好に保ち、業務の調整やサポートをしあう文化を醸成する
こうした仕組みがあれば、時季変更権を行使せずとも安定した業務運営が可能になり、長期的に働きやすい職場づくりにもつながります。
3-3. 有給休暇の取得計画を作る
有給休暇の「取得計画表」を用いることで、労働者とのトラブルを未然に防止できます。
労働者間の業務量やスケジュールを調整しやすくなり、組織内のコミュニケーションが円滑化するためです。
部署やチームごとの「有給取得数」や「取得予定日」を可視化・共有することで、以下のような効果が得られます。
- 特定の従業員に有給取得機会が偏るのを防げる
- 管理者が休暇状況をふまえたリソース調整を行いやすくなる
- 休みづらさを感じている労働者にも自然に取得を促せる
仕事と休暇のバランスを保てる環境が整うと、働きやすさの向上とともに、労働者からの信頼アップにつながるでしょう。
4. 自社の有給付与ルールに問題がないか確認しよう
有給休暇は労働者に与えられた権利であり、原則として本人の意思にもとづいて取得させる必要があります。有給を会社が指定する行為は、状況によって違法とされることもあるため注意が必要です。
トラブルを回避するためには、労使の信頼関係を築くだけでなく、社内の有給制度が法令に沿った内容になっているか定期的に確認しましょう。
有給を取得しやすく、働きやすい環境を整備することは、従業員満足度の向上や組織全体の生産性向上にもつながります。ビジネスの成長を目指すうえで、今一度有給休暇に関する自社の制度を見直してみてはいかがでしょうか。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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