業務委託契約と雇用契約の違いは?メリット・デメリット、労働者性も解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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業務委託契約と雇用契約の違いは?メリット・デメリット、労働者性も解説

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企業が業務を依頼する際の契約形態は、大きく分けて「業務委託契約」と「雇用契約」の2つがあります。一見すると似たように見える契約ですが、契約の内容や法的な位置づけが大きく異なるため、誤った理解のまま運用するとトラブルに発展するリスクもあります。

この記事では、業務委託契約と雇用契約の基本的な違いやメリット・デメリット、実務で重要となる労働者性の判断基準や契約形態を見極めるポイントについて、詳しく解説していきます。フリーランスや副業が一般化するなかで、2つの契約をよく理解して、適切な契約選択と労務リスクの回避につなげましょう。

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◆押さえておくべきポイント

  • 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
  • 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
  • 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
  • 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策

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1. 業務委託契約と雇用契約の違いとは

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業務委託契約と雇用契約は、いずれも企業が人に業務を依頼する際の契約形態です。

「雇用契約」とは、企業(使用者)の指揮命令のもとで従業員が労働力を提供し、その対価として賃金を受け取る契約です。

一方「業務委託契約」は、企業が個人や他の法人に業務を依頼する契約で、指揮命令関係はありません。業務委託には、成果物の完成を目的とする「請負契約」、法律行為や事務処理など業務遂行を目的とする「委任契約」「準委任契約」などがあります。

ここでは、両者の違いを具体的な観点から整理していきます。

1-1. 契約の性質と目的の違い

雇用契約は、「労働力の提供」を目的とした契約で、使用者が労働者に業務を指示し、労働時間に対して報酬を支払います。

対して業務委託契約は、「業務の完成」や「一定の業務遂行」が目的です。成果物の納品や、一定の業務範囲をこなすことが報酬の支払い条件になります。

1-2. 指揮命令と働き方の自由度

雇用契約では、従業員は会社の就業規則に従い、勤務地・勤務時間・業務内容などについて、会社の指示に従って働く義務があります。

一方、業務委託契約では、業務の進め方や作業時間などは受託者の裁量に任されるのが原則で、発注者が具体的な指示を出すことはできません。

1-3. 報酬の支払い方と税金(所得税・住民税)の違い

雇用契約の場合、支払いは「給与」として扱われます。企業は毎月決まった給与を支払い、源泉所得税・住民税を給与から天引きして納付します。また、年末調整も必要となります。

一方、業務委託契約では、報酬が源泉徴収税の対象となります。原則として、報酬から10.21%(※)の所得税を源泉徴収されますが、年末調整はおこなわれません。受託者は個人事業主として確定申告をおこなう必要があり、住民税も受託者自ら納付が必要です。

※税率は内容や相手の属性により異なる場合があります。

1-4. 社会保険・労働保険の違い

雇用契約の労働者は、所定労働時間が一定以上であれば、社会保険(健康・介護・厚生年金保険)・労働保険(労災・雇用保険)の加入対象となり、企業側も保険料を負担する義務があります。

一方、業務委託契約では、基本的に受託者は個人事業主として扱われます。そのため、社会保険や労働保険には加入せず、自ら国民健康保険・国民年金に加入します。ただし、労災保険に関しては、企業等から業務委託を受ける場合、特別加入制度によって加入が可能です。

1-5. 労働基準法など関わる法律の違い

雇用契約では、従業員は企業の組織の一員として働き、「労働者」として労働基準法や労働契約法、労働安全衛生法などの保護を受けます。このため、企業には労働時間や最低賃金、健康管理といった労働条件に関するルールの整備と遵守が求められます。

一方、業務委託契約はこれらの労働関連法の適用を受けず、主に民法上の契約の性質を有すると考えられています。そのため、発注者には労働法上の義務や保護責任は課されません。ただし、2024年11月には、「フリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行されており、一定の取引においては新たなルールが適用される点に留意が必要です。

参照:フリーランス法特設サイト|公正取引委員会

1-6. 働き方や責任の違い

雇用契約で働く従業員は、業務の過程で発生した過失などについて、企業が最終的な責任を負うことが原則となります。また、働き方や業務遂行の手順についても、企業が管理をおこないます。

一方、業務委託契約では、業務の遂行方法や働き方は受託者の自由です。ただし、成果に対する責任や損害が発生した場合の賠償責任は、原則として受託者が負うことになります。

2. 業務委託契約の種類

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一口に業務委託契約といっても、その中身はさまざまです。民法上では、主に「請負契約」「委任契約」「準委任契約」といった形態に分けられ、それぞれ契約の目的や責任の範囲が異なります。

ここでは、代表的な3つの契約について、それぞれの特徴と実務での活用場面を解説します。

参考:民法|e-Gov法令検索

2-1. 請負契約

請負契約とは、民法第632条に基づく契約形態で、「一定の仕事の完成」など成果を目的とする契約です。受託者は、自らの裁量で業務を遂行し、完成した成果物に対して報酬を受け取ります。

【特徴】

  • 成果物が完成してはじめて報酬が発生する
  • 完成した成果物に瑕疵がある場合、契約不履行として修補や損害賠償の責任を負う
  • 典型的な例:建設工事、システム開発、Webサイト制作など

【実務上の留意点】

発注者が過度に業務遂行の手順を細かく指示すると「偽装請負」とみなされる可能性があるため、業務の指揮命令は原則として避ける必要があります。

2-2. 委任契約

委任契約とは、民法第643条に基づく契約で、「法律行為の代理や事務処理を他者に任せる」契約です。例えば、弁護士や社会保険労務士などの専門家に依頼する契約が典型です。

【特徴】

  • 法律行為の代行が主な目的(例:訴訟代理、契約締結など)
  • 完成義務ではなく、業務を遂行することが求められる
  • 委任者がいつでも契約を解除できる(片務契約・諾成契約)

【実務上の留意点】

法律上の手続きや代理行為を含むため、報酬の支払時期や範囲、責任の所在を契約書に明確にしておくことが重要です。

2-3. 準委任契約

準委任契約は、民法第656条に基づき、委任契約の一種として位置づけられます。準委任契約は法律行為以外の事実行為(事務作業・ITサポート・事務代行など)を委託する場合に適用される契約形態です。

【特徴】

  • 業務の「遂行そのもの」が目的で、成果物の完成は求められない
  • 善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)が発生
  • 典型的な例:コールセンター業務、システム運用監視、バックオフィス代行など

【実務上の留意点】

業務遂行の過程で発注者とやり取りが生じやすいため、業務の範囲と権限分担を明確にしておかないと、指揮命令関係と誤解される恐れがあります。

3. 業務委託契約のメリット・デメリット

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業務委託契約は、企業にとっても受託する個人事業主にとっても、それぞれメリットとデメリットがあります。ここでは、双方の立場から利点と注意点を整理します。

3-1. メリット

【企業側のメリット】

  • 人件費の固定化を避けられる:雇用契約と異なり、社会保険料の負担や福利厚生の提供義務がないため、コストを業務単位で調整しやすくなります。
  • 専門性の高い業務を任せられる:特定分野のスキルや知識を持った外部人材に、即戦力として業務を委託できます。
  • 必要な時期に必要な業務だけ発注できる:繁閑に応じて柔軟に契約できるため、リソースの調整がしやすいです。

【個人事業主側のメリット】

  • 働き方の自由度が高い:勤務時間や場所を自分で決められ、複数のクライアントと契約することも可能です。
  • 業務選択の自由がある:契約内容によっては、業務の受諾を断ることもできます。
  • 高い報酬を得られる可能性:成果や専門性に応じた対価を得られやすく、収入の上限を自ら広げられます。

3-2. デメリット

【企業側のデメリット】

  • 指揮命令ができない:業務委託は対等な契約関係のため、勤務時間や手順の細かな指示はできません。
  • ノウハウ流出のリスク:外部人材が複数の企業と関わっている場合、自社の情報や重要なノウハウが他社に伝わる可能性があります。
  • 契約不履行・トラブルのリスク:成果物が期待通りでない、納期が守られないなど、契約内容によるトラブルが起こる場合もあります。

【個人事業主側のデメリット】

  • 労働法の保護がない:最低賃金や有給休暇、社会保険などの制度が適用されず、自己責任が基本となります。
  • 収入が不安定になりやすい:業務量やクライアントとの契約状況によって、報酬が大きく変動する可能性があります。
  • すべてを自己管理する必要がある:確定申告や税務、保険加入などをすべて自分でおこなう必要があります。

4. 雇用契約のメリット・デメリット

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雇用契約は、企業にとっても労働者にとっても、安定性が得られるなどのメリットがある契約形態です。一方で、企業・労働者双方にとっての制約などデメリットも存在します。

4-1. メリット

【企業側のメリット】

  • 長期的な人材育成ができる:人材が組織に一体化しやすく、知識やノウハウの継承が期待できます。
  • 業務管理がしやすい:勤務時間、作業手順、業務内容などを細かく指示でき、組織内での統一がとりやすいです。
  • 組織への帰属意識を持ってもらいやすい:安定した雇用関係を築くことで、従業員が企業に対する責任感や協調意識を持ちやすくなります。

【労働者側のメリット】

  • 労働法による保護がある:労働時間管理や解雇規制などの法律に守られており、安心して働けます。
  • 安定した収入が得られる:毎月決まった給与が支払われ、生活が安定します。企業によっては退職金制度なども利用可能です。
  • 福利厚生が受けられる:公的な社会保険制度の適用、健康診断、休暇制度、各種補助制度など、企業の支援を受けられます。

4-2. デメリット

【企業側のデメリット】

  • 固定費がかかる:雇用に伴い、社会保険料や福利厚生費など継続的なコストが発生します。
  • 柔軟な人員調整が難しい:景気や業務量の変動に応じてすぐに人員を減らすことが難しく、法的な制約も多くあります。

【労働者側のデメリット】

  • 働き方の自由が制限される:勤務時間や勤務地、業務内容が会社のルールに従う必要があります。
  • 成果に対する報酬の変動が少ない:成果を上げても報酬に直結しにくい場合があり、モチベーション維持が難しいと感じられる場合があります。

5. 雇用契約と業務委託契約の違いの見分け方と注意点

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契約書の名称や形式が「業務委託契約」となっていても、実際の働き方や関係性によっては「雇用契約」とみなされるケースがあります。いわゆる「名ばかりフリーランス」や「偽装請負」として近年問題となることが多々発生しており、企業・個人の双方にとって注意が必要です。

ここでは、雇用契約と業務委託契約の違いを見極めるための判断基準や注意点を解説します。

5-1. 労働者性の有無と判断基準

雇用契約か業務委託契約かを見分ける際、もっとも重要な視点が「労働者性」です。労働基準法第9条では、労働者を「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定しており、以下に該当する場合は、「労働者性」が判断されます。

  • 労働が他人の指揮監督下においておこなわれているかどうか、すなわち、他人に従属して労務(労働勤務)を提供しているかどうか
  • 報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか

上記の2つの基準を総称して「使用従属性」と呼びます。「使用従属性」は、契約書の名称や当事者の合意だけでなく、実際の就労実態に基づいて認められるかどうかが決まります。これは、労働基準法や判例の考え方でも一貫しています。

5-2. 使用従属性が認められる具体的な要素

使用従属性が認められる要素には主に以下のものがあります。

【指揮命令関係の有無】

  • 仕事の依頼や業務指示があった場合に、受けるかどうかを自分で決められるか
  • 業務の内容や遂行方法について、企業から具体的な指揮命令を受けているか
  • 業務時間や出退勤時刻が企業によって定められているか
  • 勤務場所が指定されているか
  • 補助者の使用や本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているなど、労務提供の代替性があるか
  • 報酬に残業手当が支払われている、または欠勤や遅刻早退控除がおこなわれているか

これらの要素が複合的に検討され、実質的に企業の管理下で働いていると認められた場合は「労働者」と判断される可能性があります。

参照:労働基準法における「労働者」とは|厚生労働省

5-3. 業務委託契約は実態で判断される

前述の通り、契約上は業務委託契約であっても、実態として指揮命令関係や拘束性が強く、「労働者性」が認められる場合には、雇用契約と判断される可能性があります。

労働者性が認められた場合、企業は労働基準法や社会保険関係法令の義務を遡って履行しなければならず、未払い残業代の支払いや社会保険への遡及加入といった対応が求められることになります。さらに、悪質な事案と判断された場合には、企業名が公表されるなどの行政措置が取られる可能性もあり、企業にとって大きなリスクとなります。

したがって、契約形態の選定にあたっては、書面上の形式だけでなく、実態に即した判断を行い、適切な契約内容と業務運用を徹底することが重要です。

6. 業務委託契約と雇用契約の同時契約・二重契約は可能?

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結論として、業務委託契約と雇用契約を同時に締結することは、法的には可能です。実際に、同じ企業やグループ会社と、異なる契約形態で並行して働くケースも見られます。

ただし重要なのは、「雇用契約としての働き方」と「業務委託としての働き方」が明確に区別されていることです。業務内容や働き方が曖昧なままでは、後のトラブルの原因となる可能性があります。

契約書では業務委託となっていても、実態として企業の指揮命令下で就労している場合には「労働者性」が認められ、雇用契約とみなされる可能性があります。同時契約・二重契約をおこなう場合は、契約書の内容と実態の整合性を常に確認し、明確に区別したうえで慎重に運用することが重要です。

6-1. 二重契約の事例(副業・自営型テレワーク)

近年、テレワークの普及に伴い、副業や自営型(非雇用型)テレワークを始める人も増えてきました。例えば、以下のような事例があります。

■社内副業制度

本来の所属部署では雇用契約のもとで勤務しながら、副業として業務委託契約により他部署や事業部の業務に従事する制度です。従業員にとっては通常業務では得られない経験を通じてスキルや知識の幅を広げる機会となり、企業にとっても人手不足の補完や離職防止、社内人材の有効活用といったメリットが期待できます。

■ 複合型就業

学生や主婦など、就労時間に制限がある人材が、曜日や時間帯ごとに契約形態を分けて働くこともあります。例えば、週2日は在宅で動画編集を業務委託としておこない、他の曜日にはパートタイムの雇用契約で店舗勤務をするなど、柔軟な働き方を組み合わせるケースです。

■ 自営型テレワーク

ライターやデザイナーなどのフリーランス型在宅ワーカーが、普段は業務委託契約で働きつつ、特定の業務やイベント時には短期間の雇用契約を結んで働くという事例もあります。

このように、雇用契約と業務委託契約の併用は条件付きで可能ですが、契約と実態が一致していないと法的トラブルに発展するリスクがあります。ポイントは、「役割と契約内容を分けておくこと」と「労務管理上、混同しない体制を整えること」です。契約時には内容の明確化と適切な運用体制の整備を徹底しましょう。

関連記事:自営型テレワークの適切な実施のためのガイドライン|厚生労働省

7. 雇用契約と業務委託契約の違いを正しく理解しよう

虫眼鏡

雇用契約と業務委託契約の違いを正しく理解することは、トラブルの予防や適切な労務管理につながる重要な一歩です。

契約形態によって働き方や責任の範囲、適用される法律が大きく異なるため、形式だけでなく実態に即した判断が求められます。

企業も働く側も、契約の内容を丁寧に確認し、双方が納得できる形で契約を結ぶことで、コンプライアンスを遵守して、健全な業務関係を構築しましょう。

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