評価制度がない会社は問題ある?メリットや新しい査定方法を解説
更新日: 2025.6.13 公開日: 2025.4.21 jinjer Blog 編集部

評価制度は従業員の能力や実績を評価し、給与や職位を決定する制度のひとつです。
評価制度にはメリットがありますが、評価に対する不満や従業員同士の競争が激しくなりすぎるなどというデメリットも存在します。また、多様化する働き方に評価制度が対応しきれないという問題も出てきているため、近年は評価制度を大幅に見直しや、評価制度そのものを撤廃する会社も増えてきています。
本記事では評価制度を廃止するメリットや制度を見直す際のポイント、ノーレイティングなどについてわかりやすく解説していきます。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
1. 評価制度を廃止する会社は増えている

労働に対する考え方や働き方が変化しつつある現代では、従業員の待遇を決定する方法にも変化が求められています。
従来の評価制度には問題があると考える企業も増えてきており、評価制度の大幅な見直しや撤廃もされています。なぜ評価制度を撤廃する会社が増えているのか、評価制度がなくなった場合の待遇はどうなるのか、知っておきましょう。
1-1. 評価制度を廃止する背景
評価制度を廃止する会社が増えている背景には、多様化する働き方と人材確保の重要性が挙げられます。
近年はリモートワークやフレックスタイム制などを採用する会社が増えており、働き方が多様化しました。そうした労働環境では、決められた項目による評価だけでは従業員の能力や会社への貢献度を十分に知ることができません。評価エラーの多発や評価者の負担増などの問題がでてくるため、評価制度の廃止を検討する会社が増えています。
評価制度を廃止すれば、評価に対する不満からモチベーションの低下や離職が発生するリスクもなくなります。人材流出の防止という観点からも、従来の評価制度を撤廃して柔軟な評価ができる新しい制度を導入する流れが強まっています。
1-2. 評価制度がない会社における従業員の待遇
評価制度がない会社では、一般的には管理職や上司、会社の方針などによって待遇が決定されます。評価制度に多いランク付けや年功序列は存在せず、従業員が自ら設定する目標や上司のフィードバックが判断基準になります。待遇に対する不信感を抑えるために、面談をおこなって待遇を決定する会社も多いです。
従業員の能力や成果が無視されるわけではありませんが、評価制度のように明確な評価基準がないため、保有スキルや業績による明確な差が発生しにくいです。従業員一人ひとりの成長や貢献にウエイトがおかれます。
細かい待遇の決定方法や内容は会社によってさまざまですが、給与が部署や役職単位で同一にされているケースや、業績によって一律の賞与が支給されるケースなどがあります。
2. 評価制度がない会社のメリット

評価制度がない会社のメリットは、従業員が働きやすく人間関係も円滑になりやすい点や、評価者の負担が発生しない点などがあげられます。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
2-1. 従業員へのプレッシャーが少ない
評価制度がない会社のメリットの一つは、従業員が感じるプレッシャーが少ない点です。
自分が今とっている言動がどう評価されるかを気しすぎることや、萎縮することがなくなるため、プレッシャーが少なくのびのびと働けます。結果として自由な発想や積極的なチャレンジが生まれやすく、革新的な事業や商品の誕生を期待できるでしょう。
また、評価を気にしすぎるあまり従業員間で過度の競争が発生し、人間関係が悪化するリスクも下げられます。メンタルヘルスを良好に保ちやすくなるため、休職や離職につながる問題も減るでしょう。
2-2. チームの連携が強い
評価制度がない会社のメリットにはチームの連携の強さもあります。評価にとらわれず働ける分、自分の利益よりも組織全体の利益を重視した働き方ができるからです。
評価制度を気にするあまり、点数稼ぎに重きをおいてチームワークを軽視して個人プレーに走ることは珍しくありません。評価制度は社内での競争心が営業利益を生むこともありますが、社内の雰囲気が悪くなる、離職率が高まるなどが問題点です。
評価制度がない場合は、結果や数字になった部分だけではなく、その過程や結果を出すためにサポートした働きも評価されやすいです。そのため、「協力して成果を上げる」という思いが生まれやすく、チームの連携や絆が強くなりやすいです。
2-3. 評価者の業務負担や育成の必要がない
評価制度では評価者が対象となった従業員を細かい項目で評価しなければなりません。そうした評価業務の負担は大きく、精神的にも重く圧し掛かることもあります。
また、評価制度では評価者は公平で客観的な判断をしなくてはなりません。そのためには評価者の育成が必要であり、企業は育成コストがかかり、評価者は評価スキルを習得するという負担が増えます。
評価制度がなければこうした問題はなくなります。評価制度がない場合でも何らかの形で待遇を決定しなければなりませんが、柔軟な対応ができるため評価制度がある場合と比べると評価者への負担は大きく減らせるでしょう。
3. 評価制度がない会社のデメリット
評価制度がない会社のメリットは、従業員がのびのびと働けて、評価者の負担が少ないという部分が大きかったです。しかし、従業員の能力が把握しにくいことや、待遇決定の明確な基準がないことによるデメリットもあります。
3-1. 管理職の負担が増える可能性がある
評価制度がない会社では管理職の負担が増える可能性があります。
一律の評価基準がないため、従業員の昇進や昇給は管理職の判断によっておこなわれます。高いマネジメントスキルが求められるため、経験や知識が重要です。
機械的に評価できる従来の評価制度のほうがマネジメントが簡単だと感じる管理職もいるでしょう。
部下との人間関係にも影響するため、とくに精神的な負担を考慮する必要があります。評価制度を廃止する際は、管理職側のスキルが足りているかを考慮してください。
3-2. 人材配置が複雑
評価制度がない会社のデメリットには、人材配置が複雑である点もあります。
評価制度がない場合、一律に従業員の能力を比べられません。客観的な事実にもとづいた実力やスキルの測定が難しいため、だれがどのプロジェクトにより適しているか簡単に判断できなくなるおそれがあります。
人材の配置が複雑で時間がかかるため、適材適所の配置ができずに生産性が低下する可能性もあります。
また、適性のない業務に配置された従業員が不満やストレスを抱え、休職や離職が発生するリスクがあることも覚えておきましょう。
3-3. 従業員が目標を失う可能性がある
評価制度がない会社では従業員間の競争が起きにくくなります。
ライバル意識や競争心が芽生えず、刺激がない状態が長く続くと従業員のモチベーションが下がりやすくなります。
さらに社内における明確なキャリアパスが描きにくいため、何を目標にしたらよいのかわからない従業員もでてくるでしょう。従業員自身が自分の理想をしっかりと持っていない場合、評価制度のない会社では成長が難しいかもしれません。
評価制度をなくした結果従業員がやる気を失わないよう注意しましょう。
4. 評価制度がない会社で採用されるノーレイティング

評価制度がない会社にはメリットがある反面、気になるデメリットもありました。そうした課題を解決するために、評価制度を撤廃した会社ではノーレイティングを採用することが多いです。ノーレイティングとはどのような制度なのか、課題も含めて解説していきます。
4-1. ノーレイティングとは
人事評価におけるレイティングとは、期末や年度末などの決められた区切りで従業員にSランクやAランク、Bランクなどのランクを付けることを指します。このレイティングは給与や賞与、職位の決定など待遇を決定する柱になります。
ノーレイティングとは、このランク付けをおこなわない査定方法です。ただし、人事評価を一切しないわけではなく、あくまでも「ランク付けによる人事評価をしない」というものです。
ランク付けをおこなわない代わりに、上司との定期的な1on1ミーティングで従業員を一人ひとり査定します。部下それぞれの目標設定と上司からのフィードバックで待遇や報酬が決定されるしくみです。
4-2. ノーレイティングのメリットと課題
ノーレイティングのメリットは、ランク付けによる従業員のモチベーション低下を防げることや、柔軟な運用がしやすいという点です。
従来の評価制度によるランク付けでは、評価を気にするあまり「失敗しないこと」や「評価を下げないこと」を重視した行動になりやすいです。そのため、新しいことへの挑戦や能動的な動きがしにくく、従業員の個性や成長意欲をつぶしてしまう可能性がありました。
ノーレイティングでは従業員をさまざまな角度から評価でき、ランク付けもされないためのびのびとした働き方がしやすくなります。面談で上司としっかりと話し合う機会も設けられることで、従業員が目標を見失うこともありません。
しかし、ミーティングをおこなって部下を評価する上司にマネジメント能力が強く求められ、同時に負担も増えやすい点や、上司と部下の関係を適切に保つ必要がある点などの課題もあります。こうした課題を解決するには、導入前に対応できるリソースがあるか十分に調査し、評価者の負担を減らす運用方法を考えなくてはなりません。
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5. 評価制度を見直す4つのポイント

評価制度の変更は会社と従業員双方に大きな影響を与えます。新しい評価制度がより効果的で納得感のあるものになるように、見直す際は以下の4つのポイントに気を付けるようにしましょう。
5-1. 経営方針と人材育成の方針が一致するか
評価制度を見直すときは、経営方針と人材育成の方針が一致しているかチェックしましょう。
人材育成は会社の理想とする従業員を育てるためにおこなわれます。また評価制度は人材育成の方針に沿って作られるため、経営方針と人材育成の方針がずれていると評価制度は存在意義を果たせません。
会社が求めている人材や能力を適正に評価し、同時に従業員にも会社が求める人材像を提示できるように、経営方針と人材育成の方針は一致させましょう。
5-2. 評価と待遇が結びついているか
評価制度を見直すときは、評価の結果が待遇と結びつくようにしましょう。
高い評価を得たにもかかわらず待遇が変わらなければ、従業員のモチベーションは上がりません。評価と待遇を結びつけることでやる気を向上させられ、高いパフォーマンスを期待できます。
前回より評価が高くなると昇格や昇給できるなど、待遇には評価制度を反映しましょう。
また、この評価と待遇の結びつきは公平でなければなりません。同等の評価を得た人がいた場合に、その待遇に差が生まれてしまっては従業員は大きな不満を抱えることになってしまいます。
5-3. 評価の過程や結果は透明性が高いか
評価制度を見直す際は、評価の過程や結果の透明性の高さを確認してください。
業務内容や結果が具体的にどのように評価されるのかがわからなければ、従業員は評価結果に納得できないでしょう。評価に納得できなければ仕事へのエンゲージメントが落ち、離職するおそれもあります。
評価の過程や結果はなるべく透明性の高さにこだわり、従業員が納得できる評価制度にしましょう。
従業員から評価に対する質問があった場合には、十分な説明ができることも重要です。
5-4. 従業員の意見を反映しているか
評価制度の見直しを実施する際は、従業員の意見を反映しましょう。
現状の評価制度で考慮できていない点はあるか、改善してほしい点はあるかなどを従業員に確認してください。現状の評価制度に対する要望や不満を深掘りすることで、より的確に能力を評価できる制度が作れます。
評価制度は従業員の給与や賞与に直結するものであるため、不満の温床になりやすいです。企業側の一方的な方針を押し付けることは絶対にあってはなりません。
従業員側の意見をすべて受け入れる必要はありませんが、アンケートや面談などを実施して、評価制度に対する意見を聞いてみましょう。
6. 評価制度は自社の規模や業種に合わせて適切なものを導入しよう

評価制度のない会社には、従業員へのプレッシャーの少なさや高いチームワークなどのメリットがあります。一方、管理職に負担がかかりやすい点や人材配置が複雑になる点などに注意が必要です。
従来の評価制度を廃止する場合は、代わりにノーレイティングの導入を検討してみてください。
従来の評価制度を廃止しなくても、内容を見直すことでより良い評価制度を作れます。評価が待遇に反映されるようにしたり、従業員の意見を反映したりして、評価制度を改善しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
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