評価制度への不満が発生する原因と適切な対応方法を解説
更新日: 2024.1.16
公開日: 2023.3.10
OHSUGI
職能資格等級制度や業績評価制度など、既存の人事評価制度への不満が高まっています。パーソル総合研究所の「人事評価と目標管理に関する定量調査」によると、自社の評価制度に不満を感じる人の割合は38.3%です。[注1]
およそ5人に2人の割合で、評価制度がうまく機能していないことがわかります。なぜ従業員による会社の評価制度への不満は発生するのでしょうか。本記事では、評価制度への不満が発生する原因と対策を解説します。
[注1]人事評価と目標管理に関する定量調査|パーソル総合研究所
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 評価制度への不満が発生する原因
なぜ評価制度に不満が出るのでしょうか。パーソル総合研究所の調べによると、自社の評価制度に不満を感じる人の割合は、20代~40代にかけて徐々に高くなっています。また、評価プロセスに不満を感じる人の割合は36.3%、評価結果に不満を感じる人の割合は33.2%です。[注1]
評価結果に納得感がなかったり、評価プロセスに公平性が感じられなかったりする場合、評価制度への不満が大きくなることがわかります。
年代 | 結果への納得感のなさ | 公平性の欠如 | 評価全体不満 |
男性20代 | 3.08 | 3.18 | 3.14 |
男性30代 | 3.24 | 3.32 | 3.28 |
男性40代 | 3.27 | 3.39 | 3.31 |
男性50代 | 3.23 | 3.36 | 3.28 |
女性20代 | 2.91 | 3.02 | 2.98 |
女性30代 | 3.02 | 3.24 | 3.15 |
女性40代 | 3.18 | 3.36 | 3.28 |
女性50代 | 3.23 | 3.43 | 3.35 |
※数値はパーソル総合研究所が不満の大きさを独自にスコア化したものです。
評価制度への不満が発生する原因は「結果への納得感がない」「評価プロセスに公平性がない」の2点です。
- 結果への納得感がない
- 評価プロセスに公平性がない
結果への納得感がない評価制度の例として、従業員の能力・実績が賃金制度にきちんと反映されていないケースが挙げられます。評価制度と賃金制度が連動していても、人事担当者の評価エラーによって正当な人事評価がおこなわれず、結果への納得感が低くなっているケースもあります。後者の場合は人事担当者の見直しや、評価者訓練を実施して人事評価の制度を高めることが大切です。
評価への納得感、評価プロセスが不公平といった理由以外にも、給与に反映されていない、管理者から十分なフィードバックがおこなわれていない、評価者に不満があるということも評価制度に不満が生まれる理由と考えられるでしょう。
[注1]人事評価と目標管理に関する定量調査|パーソル総合研究所
1-1. 評価が給与に反映されないと納得感が生まれづらい
評価が給与に反映されないと、従業員に納得感が生まれづらい傾向にあります。このような不満が発生してしまう理由はどのような行動や姿勢、能力が評価されるのかが明確でないためです。評価の基準が明確でないと、従業員は自身の評価について不満を抱きかねません。また、評価が偏っていることも適切な給与につながらない可能性があります。例えば数値面での成績は評価されるものの努力については評価されない、年功序列が優先されるといった評価に偏りがあると、適切に給与に反映されづらくなってしまいます。
1-2. 評価者によるフィードバックが不足すると納得につながらない
企業は従業員を評価しますが、なぜそのような評価になったかをフィードバックする必要があります。このような評価者によるフィードバックが不足すると、従業員はなぜ自分にそのような評価が下ったかを把握できません。そのため、評価について不満を抱く可能性があります。
フィードバックは従業員の納得感を得るためだけではありません。フィードバックをおこなうことで、従業員は今後自分はどのように行動していけばいいのかを把握できます。
1-3. 評価者に不満があると納得してもらえない
従業員が評価者に対して不満を抱いていることも、評価に納得してもらえない理由のひとつです。評価者には公平性が求められますが、主観が入ってしまう可能性があり、評価にバラつきが生じます。このような評価者によって評価に誤差が生まれると、従業員は公平性に欠けると感じてしまいます。このような評価の誤差は職場の人間関係と密接につながっています。例えば評価者と従業員との関係が良好ではない場合、不満をより大きくなるかもしれません。
2. 評価制度への不満を放置すると発生する問題
評価制度への不満を放置すると、どのような問題が生じるのでしょうか。まず挙げられるのが、優秀な人材の外部流出です。評価制度に不満を抱く人が増えると、離職率が高まるリスクがあります。また、従業員のやる気やモチベーションが低下し、組織の生産性に悪影響を及ぼす可能性もあります。評価制度への不満を放置するリスクを知り、評価基準や評価プロセスを見直しましょう。評価制度への不満を放置すると発生する問題を2つ紹介します。
2-1. 従業員の離職率が高まる
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、自己都合退職による転職者のうち、15.3%が「能力・実績が正当に評価されないから」を離職の理由に挙げています。評価制度への不満を理由とした離職は、結婚・出産・育児(6.2%)や介護・看護(2.7%)を理由とした離職よりも多いのが現状です。[注2]
離職の理由 | 割合 |
満足のいく仕事内容でなかったから | 26.0% |
能力・実績が正当に評価されないから | 15.3% |
賃金が低かったから | 23.8% |
労働条件(賃金以外)がよくなかったから | 28.2% |
安全や衛生等の職場環境がよくなかったから | 18.2% |
人間関係がうまくいかなかったから | 23.0% |
雇用が不安定だったため | 8.3% |
会社の将来に不安を感じたから | 23.3% |
結婚・出産・育児のため | 6.2% |
介護・看護のため | 2.7% |
病気・怪我のため | 4.0% |
他によい仕事があったから | 16.1% |
いろいろな会社で経験を積みたいから | 15.9% |
家族の転職・転居のため | 2.2% |
その他 | 14.8% |
評価制度への不満を放置していると、能力・実績が正当に評価される企業への転職を目指す従業員が増加します。離職率が悪化し、優秀な人材が流出するリスクが高まります。
[注2] 令和2年転職者実態調査|厚生労働省
2-2. やる気やモチベーションが低下する
能力・実績が正当に評価されない職場環境は、従業員のやる気やモチベーションを失わせます。従業員のパフォーマンスが下がり、組織全体の生産性が悪化する可能性があります。
このように評価制度への不満を放置すると、企業はさまざまな課題に直面することになります。能力・実績がきちんと人事評価に反映され、従業員の努力や頑張りが目に見える形で評価される制度設計が必要です。
3. 評価制度への不満を解消するための対策
評価制度への不満を解消するための対策は2つあります。
- 評価基準を全従業員に公開する
- コンピテンシー評価を取り入れる
- 定期的なフィードバックを実施する
- 評価者への教育を実施する
まずは評価基準を全従業員に公開し、人事評価がおこなわれるプロセスを透明化しましょう。また、コンピテンシー評価を取り入れるのも効果的です。
3-1. 評価基準を全従業員に公開する
評価制度への不満が大きい場合は、評価基準を企業全体に公開してみましょう。評価基準が不明瞭だと、誰がどのような基準で人事評価をおこなっているのかがわからず、評価制度に不信感を抱く従業員が増加します。パーソル総合研究所の調べでも、人事評価で低いスコアを付けられた従業員ほど「結果への納得感のなさ」や「公平性の欠如」を強く感じることがわかっています。[注1]
評価基準を全従業員に公開し、評価制度の透明性を保ちましょう。仮に低いスコアを付けられても、評価基準が公開されていれば、従業員が人事評価に納得しやすくなります。また、従業員からのフィードバックを評価基準に反映させ、既存の評価制度を改善することも可能です。
[注1]人事評価と目標管理に関する定量調査|パーソル総合研究所
3-2. コンピテンシー評価を取り入れる
評価基準が実績や成果に偏っていると、人事評価制度の不公平感を強める可能性があります。
- 自分の努力や頑張りが考慮されず、不当な人事評価だと感じる
- 自分が蓄積してきたスキルやノウハウが有効活用されていないと感じる
- たまたま結果を出した人が高く評価されている
その場合は、従業員の実績や成果ではなく「行動」に焦点を当てたコンピテンシー評価を取り入れてみましょう。実績や成果以外の要素も人事評価に盛り込むことで、不公平感の解消につながる可能性があります。
3-3. 定期的なフィードバックを実施する
従業員に評価を納得してもらうためには、定期的なフィードバックの実施が大切です。フィードバックの場では評価についての理由だけを伝えるわけではありません。次の目標に達成するためのフィードバックも実施しましょう。フィードバックの場を設けないと、従業員は独自の解釈で行動に移してしていまいます。間違った方向に力を注いでしまっては労力の無駄遣いになりかねません。そのため、フィードバックの席で目標にどのように向かっていけばいいのかを適切に導いてあげましょう。
3-4. 評価者への教育を実施する
評価プロセスに公平性を生むためには、評価者へ教育を実施しましょう。可能な限り公平な評価をつなげるには、評価者に評価制度や評価方法、評価基準、フィードバックなどの理解を深めてもらう必要があります。評価者が評価についての教育を受けることで、公平な評価によって評価者からの不満を軽減できるでしょう。評価者への教育は外部セミナーに参加する、講師を自社に招くといった方法で実施可能です。なお、評価者への教育は講義に参加するだけでなく、シミュレーションとして評価を実施することも大切です。シミュレーションを実施することで、評価の癖や人事評価で発生しやすい問題なども把握しやすくなるでしょう。
4. 評価制度への不満が発生する原因を知り、適切に対処しよう
評価制度への不満が発生する原因は、大きく分けて3つあります。
- 結果への納得感がない
- 評価プロセスに公平性がない
- 評価基準が曖昧ではっきりしない
従業員が自社の評価制度に不満を抱いてしまうと、離職率の向上やモチベーションの低下につながりかねません。評価制度に対する不満を取り除くため、評価基準を全従業員に公開し、透明性を高めましょう。また、従業員へのヒアリングやアンケートを通じ、評価制度のどの部分に不満が集中しているのかを分析することも大切です。例えば、成果偏重の評価方法に不満が集中している場合、コンピテンシー評価を取り入れるのがおすすめです。評価制度への不満が発生する原因を特定し、適切に対処しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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