被保険者住所変更届の手続き方法とは?記入方法や注意点を解説
健康保険や厚生年金に加入する従業員の住所変更があった場合、事業者には日本年金機構に対する住所変更手続きの実施が求められます。その際に使用する書類が「被保険者住所変更届」です。
従業員が引越しをした場合や海外への転勤を命じる場合などは、被保険者住所変更届を作成・提出し、適切に手続きを済ませましょう。今回は被保険者住所変更届の手続き方法について詳しく解説します。
関連記事:社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
目次
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社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
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1. 被保険者住所変更届とは?
被保険者住所変更届とは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険加入者(被保険者)の住所変更手続きで用いられる書類です。会社勤めの人は、雇用先の会社を通じて健康保険に加入します。住所変更手続きに関しても、被保険者本人ではなく雇用主が実施しなければなりません。
協会けんぽの健康保険料は毎月の給与から天引きとなるため、仮に住所変更手続きを怠ったとしても保険料や年金が未払いとなることはありません。ただし、協会けんぽや日本年金機構からのお知らせが適切に送付されず、トラブルになる可能性も考えられます。被保険者の従業員から住所変更の申し出があった際は、速やかに手続きを済ませましょう。
なお、被保険者住所変更届の提出先は事業所を管轄する年金事務所です。協会けんぽではありませんので間違えないようにしましょう。
2. マイナンバーと基礎年金番号が紐づいている被保険者は届出不要
マイナンバーと基礎年金番号の紐づけが完了している被保険者については、原則として住所変更の届出は不要です。これは日本年金機構が被保険者のマイナンバー情報から住所変更の事実を把握できるためであり、住所変更手続きは省略が認められています。
ただし、マイナンバーと基礎年金番号の紐づけは、必ずしも全ての従業員で実施されているとは限りません。紐づけは自動的におこなわれるものですが、何かしらの理由により紐づけが完了していないケースも発生します。
なお、日本年金機構では、マイナンバーと基礎年金番号の紐づけが確認できない被保険者を雇用する事業所に対して、定期的に通知書(マイナンバー未収録者一覧)を送付しています。通知が送付された場合は、該当の被保険者の「個人番号登録届」を提出し、マイナンバーと基礎年金番号の紐づけを済ませましょう。
また、基礎年金番号が紐づいているか曖昧である場合は、「本人のねんきんネット」または「年金事務所」で確認することができます。
3. 被保険者住所変更届の提出が必要なケース
マイナンバー制度の施行により、現在では多くのケースで被保険者の住所変更手続きが不要となっています。しかし、以下のケースに該当する被保険者が転居した際は、被保険者住所変更届の提出が必要です。
- マイナンバーと基礎年金が紐づいていない
- 被保険者のうち、健康保険のみに加入している
- 海外居住者、短期在留外国人
- 住民票に登録されている住所以外の住所で登録する場合
マイナンバーは日本国内に住民票を持つ人にのみ割り当てられるため、住民票を抜いて海外移住された方や短期在留外国人はマイナンバーによる住所照会ができません。上記に該当する被保険者が転居する際は、必ず健康保険・厚生年金の住所変更手続きを実施しましょう。
4. 被保険者住所変更届の手続き方法
ここからは、被保険者住所変更届の手続き方法について解説していきます。前述で説明したとおり、被保険者住所変更届の提出が必要なケースに該当する従業員は、企業側で手続きをおこなわなくてはいけません。
被保険者の区分や申請内容によって手続き方法が異なる点に注意しましょう。
4-1. 被保険者住所変更届をダウンロードする
被保険者住所変更届の書式は、日本年金機構のホームページでダウンロードできます。必要な枚数分を印刷し、手元に書類を用意しましょう。なお、被保険者住所変更届は3枚綴りとなっており、その内訳は以下のようになります。
- (1枚目)健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届
- (2枚目)国民年金第3号被保険者住所変更届
- (3枚目)記入見本
このうち提出に用いるのは1枚目と2枚目です。被保険者本人のみ住所変更を申請する場合は1枚目のみ、被扶養家族の住所変更も必要な場合は2枚目の書式も提出します。
なお、国民年金第3号被保険者とは、厚生年金の被保険者に扶養される配偶者(被扶養配偶者)のことです。
4-2. 被保険者の区分・住所変更対象者ごとの提出書類
被保険者の区分は「協会けんぽの健康保険+厚生年金保険加入の場合」と「協会けんぽの健康保険のみ加入の場合」に分けられます。それぞれの区分、住所変更対象者ごとの提出書類は以下の通りです。
【協会けんぽの健康保険+厚生年金保険加入の場合】
住所変更対象者 | 提出書類 |
被保険者本人+被扶養家族 | 1枚目と2枚目 |
被保険者本人のみ | 1枚目のみ |
被扶養配偶者のみ | 2枚目のみ |
【協会けんぽの健康保険のみ加入の場合】
住所変更対象者 | 提出書類 |
被保険者本人+被扶養家族 | 1枚目のみ ※1枚目の被扶養配偶者の住所変更欄は記入不要 |
被保険者本人のみ | 1枚目のみ |
被扶養配偶者のみ | 届出不要 |
5. 被保険者住所変更届の書き方と注意点
被保険者住所変更届では主に被保険者の氏名や生年月日、マイナンバー、旧住所と新住所などを記入します。予め必要な情報を被保険者本人に提供してもらい、書類の作成を進めましょう。ここでは書式の記入方法で間違えやすいポイントを紹介します。
5-1. 書式上部の「健康保険」または「厚生年金保険」を〇で囲む
1枚目の書式は被保険者の区分に応じて書式上部の「健康保険」または「厚生年金保険」いずれかを〇で囲みます。
- 健康保険+厚生年金保険に加入・・・囲い不要
- 健康保険のみ加入・・・「健康保険」の文字を〇で囲む
- 厚生年金保険のみ加入・・・「厚生年金保険」の文字を〇で囲む
これらは書式3枚目の記入例の注意書きに指示が記載されています。忘れずに記入しましょう。
5-2. 基礎年金番号を記入する場合は左詰めにする
被保険者住所変更届ではマイナンバー記入欄が12桁のマス目となっています。1桁につき1文字の数字を記入するようにしましょう。
なお、マイナンバーの代わりに基礎年金番号の記入も認められています。基礎年金番号は10桁であるため、マス目が余らないよう左詰めで記入してください。
5-3. 被保険者と被扶養配偶者が同居している場合は「レ点」で省略可能
1枚目の書式は上半分が被保険者、下半分が被扶養配偶者についての記入欄となります。被保険者と被扶養配偶者が同居している場合は、被扶養配偶者の欄については住所の記入を省略可能です。その際は被扶養配偶者の記入欄上部にあるチェックボックスに「レ点」、もしくは「〇」を記入しましょう。
なお、2枚目の書式では上半分が被扶養配偶者、下半分が被保険者についての記入欄となりますが、同様に下半分の住所記入は省略できます。
6. 被保険者住所変更届の提出方法
被保険者住所変更届の提出方法は管轄の年金事務所(事務センター)の窓口へ持参するほか、郵送することも可能です。また、日本年金機構では、簡易的に住所の変更・提出ができる「住所一覧表サービス」も用意しています。
6-1. 書類の提出時期
被保険者住所変更届の提出時期について明確な決まりはありませんが、日本年金機構では「転居後の速やかな手続き」を推奨しています。被保険者の従業員が転居した場合は必ず申し出てもらい、必要書類を集めて早急に手続きを進めましょう。
6-2. 書類の提出先
被保険者住所変更届の提出先は、事業所の所在地を管轄する年金事務所(事務センター)です。予め管轄の年金事務所を確認しておき、窓口へ持参する場合は必ず営業時間内に訪問しましょう。書類の提出は窓口持参のほか、郵送でおこなうこともできます。
6-3. 「住所一覧表サービス」で簡易的に変更・提出もできる
住所一覧表サービスとは、日本年金機構が事業者向けに提供しているサービスです。
このサービスに申し込むことで、後日、日本年金機構から「住所一覧表」が送られてきます。従業員の現住所と突き合わせて相違があれば朱書きで訂正し、日本年金機構へ返送することで簡易的に訂正・提出できるのが特徴です。
マイナンバーを確認する面倒がなく、住所変更が必要な従業員が複数人いる場合はまとめて変更することできます。少しでも手続きを簡略化させたい場合は、このサービスを上手く活用してみても良いでしょう。
参照:登録されている従業員及び被扶養配偶者の住所を確認したいとき|日本年金機構
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7. 被保険者の住所変更を適切に実施しよう
マイナンバーと基礎年金番号が紐づけされていない被保険者が転居した場合、雇用主は被保険者住所変更届を提出して住所変更手続きを済ませなければなりません。住所変更手続きを怠ると被保険者に必要な情報が行き渡らないなどの弊害が生じます。
電子申請も活用することで、被保険者の住所変更手続きを適切に実施していきましょう。
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