人的資本ROIとは人的資本経営の重要指標!情報開示を行う企業事例を紹介 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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人的資本ROIとは人的資本経営の重要指標!情報開示を行う企業事例を紹介

人への投資という考え方が一般的になったことで、人的資本ROIを指標として取り入れる企業は増えています。人材を資本として捉える人的資本経営では、人的資本ROIを向上させることが重要です。

一方で「人的資本ROIが何かわからない」「向上させるにはどうすればいい?」など、疑問を感じている方は多いでしょう。自社の経営や人材戦略に取り入れるためには、正確な知識が求められます。

本記事では、人的資本ROIの基礎知識や計算方法をまとめました。効果や向上させるポイント、注意点、開示している企業例とあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

人的資本経営って結局なにをすべき?
企業の対応状況や取り組みが知りたい方へ

2023年から人的資本の情報開示が義務化されたことにより、人的資本経営に注目が高まっており今後はより一層、 人的資本への投資が必要になるでしょう。

こういった背景の一方で、人事担当者の皆さんの中には「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も多くいらっしゃるでしょう。
そのような方に向けて、当サイトでは人的資本経営に関する実際調査の調査レポートを無料配布しています。

資料では、実際に人事担当者にインタビューした現状の人的資本経営のための取り組みから、現在抱えている課題までわかりやすくレポートしています。
「人的資本経営に関して、大企業や他社ではどのような取り組みをしているのか、課題や現状の実態が知りたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 人的資本ROIとは

人的資本ROIとは、人的資本に対する投資利益率を示す指標をさします。人的資本とroiの意味は以下の通りです。

人的資本 スキルやノウハウなど従業員の能力を資本とする考え方
roi(投資利益率) 投資に対して得られる利益を示す指標

つまり「人材に対しておこなった投資の収益を評価するための指標」と考えれば、わかりやすいでしょう。人的資本ROIにより、人事領域で実施した施策の成果の評価が可能です。

関連記事:なぜ人的資本経営が注目されているのか?注目されている背景をわかりやすく解説!

2. 人的資本ROIの計算方法

人的資本ROIの計算式は「営業利益÷人件費」です。営業利益は「売上高-売上原価-販売費・一般管理費」で計算できます。

人的資本ROIの数値が高ければ、人的資本への投資の成果がでているということです。業界によって異なりますが、一般的には20〜30%ほどが目安とされます。

3. 人的資本ROIを活用することで企業が得られる効果・メリット

人的資本ROIを活用した際の効果は以下の通りです。

  1. 施策の効果を可視化できる
  2. 公表することで企業価値を示せる

なぜ人的資本ROIを活用すべきなのか、詳しく解説します。

3-1. 施策の効果を可視化できる

人的資本ROIを計算することで、人事施策の効果を可視化できます。人事部門の管理指標として取り入れれば、取り組みの成果を定量化できるでしょう。

採用や育成、配置転換など人事施策の分析に役立てられます。数値を把握して向上するための施策を実行することが、人的資本経営のポイントです。

3-2. 公表することで企業価値を示せる

人的資本ROIなど人的資本開示により、ステークホルダーに企業価値を示せるでしょう。投資先を検討する際の指標として、人的資本ROIを取り入れるケースは増えてきています。

人材など無形資産の価値が高まっており、人的資本開示を重要視する動きはより活発になるでしょう。人的資本ROIを分析して人材の価値を高める施策をおこない、企業価値の向上につなげることが大切です。

4. 人的資本ROIを向上させる2つのポイント

ポイントを紹介する

人的資本ROIを向上させるためのポイントは以下の2つです。

  1. 人的資本ROIが低い場合は戦略を見直す
  2. 領域に優先順位をつけて投資する

2つのポイントをチェックして、施策を実行してください。

4-1. 人的資本ROIが低い場合は戦略を見直す

人的資本ROIが予想を下回っていた場合は、人事戦略の見直しを検討しましょう。人事マネジメントに関するデータを収集・分析して、課題を明確にすることが重要です。

採用や配置など領域のどの部分に改善が必要なのか検討しながら、施策を実行します。人的資本ROIで施策の効果を測定して、さらなる改善につなげてください。

4-2. 領域に優先順位をつけて投資する

どの領域に優先して投資するべきなのか分析することが、人的資本ROIの向上につながります。ISO30414の11領域を参考に優先順位をつけましょう。

例えば「能力やスキル」の領域に投資するなら、研修など学習の機会を提供する方法があげられます。人的資本ROIを高めるためにどこに投資すればいいのか、検討したうえで施策を実行することが大事です。

内閣官房の人的資本可視化指針(案)では、開示事項の例を示しています。領域ごとに「リスクマネジメント」と「価値向上」の観点で分類されているので、優先順位をつける際に参考にしてください。

参照:非財務情報可視化研究会(第6回)配布資料|内閣官房

5. 人的資本情報開示のガイドラインISO30414とは

ISO30414とは、ISO(国際標準化機構)が示した「人的資本開示に関する情報開示のガイドライン」です。ステークホルダー(企業の利害関係者)に人的資本に関する報告をする際の指針とされます。

ISO30414の人的資本に関する開示項目は「11領域58指標」です。11領域と主な指標をチェックしておきましょう。

法令遵守と倫理 懲戒処分の件数・種類

苦情の件数・種類

第三者に解決を委ねた内部係争

外部監査指摘の情報源・種類・項目と具体的な対応

コスト 総人件費

総給与に対する特定職の報酬割合

平均報酬額

1人あたりの採用コスト

雇用コスト(総雇用・1人あたり)

離職コスト

外部労働力コスト

ダイバーシティ(多様性) 経営陣の多様性

年齢・性別・障がい・国籍などの多様性

リーダーシップ リーダーシップに関する施策

管理職に対する信頼度

管理職1人に対する部下の数

組織文化 従業員満足度

定着率

エンゲージメント

コミットメント(積極的な関与)

福祉・健康・安全 労働災害の件数

労働災害による損失時間

労災災害による死亡者数

健康・安全研修の受講率

生産性 人的資本ROI

従業員1人あたりのEBIT(利払前・税引前利益)

従業員1人あたりの売上高・収益・利益

採用・離職・異動 書類選考通過者数

採用人材の質

採用にかかる平均日数

離職率

離職理由とその内訳

重要ポストの内部登用率・割合

全欠員ポストに対する重要ポストの割合

内部登用率

内部異動率

能力やスキル 人材開発・研修にかかる費用

研修参加率

コンピテンシー(成果を創出する人材の行動特性)

後継者の育成計画 内部継承率

後継者候補の準備率

労働力 総従業員数

欠勤率

臨時の労働力

FTE(フルタイム当量)

参照:ISO 30414:2018 – Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting|International Organization for Standardization

ISO30414の生産性の領域には、人的資本ROIが含まれています。人材の価値を引き出すために、そのほかの領域もあわせてチェックしておきましょう。

6. 人的資本ROIを活用する際の3つの注意点

人的資本ROIを活用する際の注意点は以下の3つです。

  1. 長期的な視点で施策を実施する
  2. そのほかの要素を参考に判断する
  3. 結果だけではなくプロセスを評価する

人的資本ROIを正しく活用するために、あらかじめ確認しておきましょう。

6-1. 長期的な視点で施策を実施する

人的資本ROIを向上させる施策は、長期的な視点で実施することが重要です。例えば能力やスキルなど人材育成に関する領域の場合、成果がでるまでに時間がかかります。

初期投資の段階では、人的資本ROIが低くでることもあるでしょう。長期的な投資を前提にして人事戦略を立てることが、人事施策の成果につながります。

6-2. そのほかの要素を参考に判断する

人的資本ROIはあくまで要素の一つとして考え、そのほかの要素を参考に判断することが重要です。人的資本ROIだけでは人的資本経営の成果を正確に評価できません。

さまざまな指標を用いることで、多角的な評価が可能になります。エンゲージメントや離職率など、領域ごとにそれぞれの指標を取り入れましょう。

6-3. 結果だけではなくプロセスを評価する

人的資本ROIの数値だけではなく、プロセスをあわせて評価することが大切です。人的資本ROIはKPI(重要業績評価指標)ではなく、KGI(重要目標達成指標人的資本)の位置づけとされます。

KPIを中間目標として、最終目標である人的資本ROIの達成を目指すと考えるとわかりやすいでしょう。採用や育成、人事評価、配置などプロセスごとにKPIを設定して、検証しながら人事施策を実行してください。

7. 人的資本ROIを開示している2つの企業事例

人的資本ROIを開示している企業事例を2つ紹介します。

  1. 豊田通商の例
  2. リンクアンドモチベーションの例

詳細をチェックしておきましょう。

7-1. 豊田通商の例

豊田通商株式会社は、GlobalVisionの実現を目指し、経営戦略として6つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を設定しています。それには、安全で快適なモビリティ社会の実現、脱炭素社会への移行、循環型社会の推進、開発途上国との共生、安全とコンプライアンスの遵守、人権尊重と人材育成が含まれます。

このような包括的な取り組みを背景に、豊田通商は人的資本の投資効果を最大化するために長期的な人材育成計画を実施しています。特に人材開発と健康経営に力を入れており、個々の能力を最大限に引き出す環境を整備しています。また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンや適材適所、人権尊重に基づく強力な組織作りを実現し、社員の参画度を高めています。

豊田通商の人的資本ROIは、経常利益÷人的資本コストで計算されています。2019年には2.91%、2020年には2.05%と低下したものの、2021年には4.17%と大幅に回復しました。しかし、2022年には再び3.44%に下落しています。この変動は、同社が直面する市場のダイナミクスと、それに対する人的資本戦略の即応性を反映しています。

7-2. リンクアンドモチベーションの例

リンクアンドモチベーションは、独自のモチベーションエンジニアリングプログラムを展開し、人的資本ROIの向上を実現しています。このプログラムは従業員のモチベーションを高め、生産性と企業パフォーマンスを向上させます。株式会社リンクアンドモチベーションのミッションは、モチベーションエンジニアリングを駆使して組織と個人に変革の機会を提供し、意義ある社会を実現することです。

同社は生産性向上を目的として、採用・育成・制度・風土の4つの領域で施策を展開し、これを人的資本ROIの指標としてモニタリングしています。具体的には、調整後営業利益÷人的資本コストで計算され、人的資本コストには従業員の給与や賞与、福利厚生費、通勤交通費などが含まれます。この結果、リンクアンドモチベーションの人的資本ROIは2020年に24.2%、2021年に33%、2022年には41.1%と年々向上しています。

これらの詳細な数値と取り組み事例を通じて、企業経営者や人事担当者に対して自社の人的資本ROIの計算方法、活用方法、向上方法の参考となる具体的な情報を提供しています。

8. 人的資本ROIを開示し数値が下がっている例はある?

悩んでいる男性

人的資本ROIの数値が一時下がるケースもあります。しかし投資において効果がでるまでにリードタイムが発生する事例もありますので、ここでは実際に低下した企業の例を紹介します。

8-1. 人材派遣会社A社

人材派遣会社A社は、組織と個人の目的整合を促すことで社員のキャリア実現と事業加速の両立を目指しています。人的資本への投資を事業成長につなげることが目的です。
A社の人的資本ROIは、2019年が20.5%、2020年が17.4%、2021年が16.4%と低下傾向にあります。
低下の背景は、人材価値を高めるために、人材採用と能力開発への投資を強化したことです。A社では、未経験者雇用への積極的投資と平均2ヶ月の研修実施に取り組んでいます。
人的資本ROIは一時的に低下したものの、継続してモニタリングしながら生産性の向上を目指している段階です。

9. 人的資本ROIを指標に企業価値を高めよう

人的資本ROIは、人的資本に対する投資利益率を評価するための重要な指標です。数値が高いほど、人的資本への投資の成果がでていると考えられます。

計算方法や効果など、人的資本ROIの基礎知識をチェックしておきましょう。ISO30414についてあわせて学ぶことで、人的資本経営についての理解を深められます。

人的資本ROIを向上させるためのポイントや注意点を、人事施策にぜひ役立ててください。長期的な視点で施策を実施して企業価値を高めましょう

なぜ人的資本経営は注目されている?
人材に投資すべき理由を経営者目線で解説

企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、人事担当者の皆さんの中には「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。
資料では、欧州欧米の動向や企業価値を高める観点から、人的資本経営が注目される理由を簡単に解説しています。
「注目されている背景を知って、人的資本経営への理解を深めたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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