労働契約法15条に定められた「懲戒」の対象者と無効にする権利について解説 - ジンジャー(jinjer)| クラウド型人事労務システム

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労働契約法15条に定められた「懲戒」の対象者と無効にする権利について解説

労働基準法

懲戒処分は、無断欠勤や遅刻、不正行為など社内の規律を乱す行為のあった従業員を戒めるために行われます。しかし、従業員が懲戒処分の内容を不服とし、トラブルとなるケースも数多くあります。適正に懲戒処分を行うためにも、労働契約法15条について理解する必要があります。

本記事では、労働契約法15条で定められた懲戒の対象者や無効にする権利について解説します。

▼そもそも労働契約法とは?という方はこちらの記事をご覧ください。
労働契約法とは?その趣旨や押さえておくべき3つのポイント

1.労働契約法15条に定められた「懲戒」の対象者

懲戒の対象者

懲戒処分とは、業務命令や社内規定に違反した従業員に対して、制裁を与えることで不利益措置を行うことをいいます。つまり、懲戒処分の対象者となるのは、業務命令や社内規定に違反するといった、会社の秩序を乱すような行為をした従業員が該当します。

しかし、懲戒処分の対象となる行為や処分に関しては、法律で具体的に内容が定められていません。そのため、就業規則で「懲戒事由」と「処分の内容」を定めることで、懲戒の対象となる範囲を決めておく必要があります。就業規則の「懲戒事由」と「処分の内容」にどのような内容を盛り込むのか、次に紹介します。

1-1.就業規則に明示する事項「懲戒事由」

懲戒事由に関しては、以下のような内容が挙げられます。

  • 職務怠慢
    無断欠勤や遅刻過多、職場離脱といった勤怠に不適切な行動がみられることです。
  • 業務命令違反
    上司の指示や命令に従わないことです。たとえば、時間外労働や休日労働、出張、配転、出向に関する命令に違反することが挙げられます。
  • 職場規律違反
    職場で定められている規律に違反することです。たとえば横領や備品類の窃盗、ほかの従業員への暴行などが挙げられます。
  • 経歴違反
    採用時に経歴を偽って入社することです。たとえば、最終学歴や職歴、犯罪歴といったものが該当します。
  • 犯罪行為
    会社の信用を陥れるような犯罪行為を犯すことです。会社の名前を使って詐欺行為を働くようなことが挙げられます。

1-2.就業規則に明示する事項「懲戒の種類」

懲戒の種類に関しては、一般的に以下のようなものがあります

  • 戒告
    書面や口頭によって注意することで、将来を戒める処分です。
  • 譴責(けんせき)
    始末書を提出させ注意を促すことで、将来を戒める処分です。
  • 減給 
    賃金の一部を減らすことによって、注意を促す処分です。なお、労働基準法第91条で「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定されています。
  • 出勤停止
    一定期間において出勤を禁止する処分です。出勤停止期間中は賃金の支払いはありません。出勤停止期間が長くなると不当とみなされる場合がありますので、注意しましょう。一般的には1週間から1ヵ月になることが多いようです。
  • 降格
    役職や職位などを引き下げる処分です。降格は出勤停止よりも、収入に大きく影響を及ぼしますので、不当に降格が行われないようにしなくてはいけません。どのような事由が、降格に該当するのか、就業規則に明示しておく必要があるでしょう。
  • 諭旨解雇 
    懲戒解雇にするだけの理由はあるが、情状酌量の余地があるような場合に、処分が重い懲戒解雇ではなく自主退社を求める処分です。
  • 懲戒解雇 
    退職金や解雇予告手当を支給することなく解雇処分にすることです。懲戒処分の中では一番重い処分となります。

2.労働契約法15条による「懲戒」の効力

懲戒の効力

労働契約法15条は、雇用主による懲戒権の濫用を抑止する目的でつくられた法律です。
ここでは、労働契約法15条にはどのような効力があるか、また適正に懲戒処分を行うには何が必要かについて、詳しく解説します。

2-1.懲戒処分を無効にすることができる

会社の規律や業務命令に違反した労働者を戒める懲戒処分ですが、懲戒処分の内容を巡るトラブルは後をたちません。労働契約法15条は、労働者が不当に不利益を被らないように、雇用主の懲戒権濫用を抑止する目的でつくられました。

労働契約法15条では、雇用主が労働者を懲戒できる場面において、懲戒処分の内容が「客観的に合理的な理由を欠き」、「社会通念上相当であると認められない」場合は権利の濫用とみなされるため、懲戒は無効とするとされています。
これにより、懲戒処分の内容が、労働契約法15条に定められている内容を満たしていないと判断される場合は、懲戒処分は無効とされてしまいます。

2-2.懲戒を行うには就業規則への明記が必要

懲戒処分を行うにあたっては、就業規則に懲戒に関する規定を明示しなくてはなりません。これは、労働基準法でも義務付けられていることです。懲戒を法的に効力のあるものとするには、懲戒となる具体的な根拠(懲戒事由)や処罰の内容(懲戒の種類)を明示しておく必要もあります。

ただし、労働契約法15条にも、「使用者が労働者を懲戒できる場合で、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない懲戒に関しては、権利濫用とみなし無効とする」となっています。そのため、就業規則に盛り込む内容も、労働契約法15条の内容に沿ったものでないと、無効とされる可能性があります。

関連記事:就業規則に違反した社員に対する正しい対処方法

3.労働契約法15条による「懲戒」を無効にする権利 

懲戒無効の権利

労働契約法15条によって、懲戒を無効にできるケースには以下のようなものが考えられます。

3-1.労働契約法15条の条件を満たしていない

懲戒の内容が、労働契約法15条にも明記されている「客観的に合理的な理由を欠いてる」「社会通念上相当であると認められない」場合には、権利濫用とみなされて懲戒は無効となります。合理的な理由や社会通念上の相当性があるかどうかは、懲戒の対象となる行為の性質や態様、そのほかの事情によって考慮されます。

従業員から懲戒の無効を主張されないためにも、上述のように、就業規則で懲戒に関する事項をしっかりと明記しておかなければなりません。ただし、就業規則で明記するだけでは足りず、従業員に就業規則を周知していなかった場合も無効とされるため、注意が必要です。

3-2.懲戒の事由に対して処分が相当ではない

懲戒処分の事由に対して処分が重すぎると判断される場合は、その懲戒処分は無効とされてしまいます。これは、違反した行為の内容や経緯、情状酌量の余地など鑑みて、不当な処分を行ってはいけないとした「合理性・相当性の原則」に基づいて考慮されるからです。
たとえば、初めて遅刻した社員に、出勤停止という処分を課すのは、会社が受けた損害と従業員が受ける損害を比べると相当とはいえず、無効となる可能性があります。

3-3.懲戒の処分が平等に行われていない

特定の社員や特定の行為に対して、例外的に処罰を重くするような場合も、「平等取扱の原則」に反しているとみなされ、懲戒処分が無効とされてしまいます。
たとえば、懲戒処分の内容が全く同じであるにも関わらず、Aさんの処分が戒告であったのに対し、Bさんの処分が減給といったようなことです。また、役職の上位にある者にだけ、特別に処罰を重くするといったようなことも、懲戒が無効となる可能性があります。

4.懲戒処分は平等かつ慎重に行わなければならない

懲戒処分は労働契約法15条によって、一定の条件を満たしていない場合には無効とされる可能性があります。このため、就業規定で懲戒事由と処分の内容について、あらかじめ明記しおき、従業員に周知しなくてはいけません。

ただし、就業規定に従って懲戒処分がされていても、相当性の原則や平等の原則に反するような処分がなされていた場合には、懲戒処分は無効となる可能性があります。懲戒処分を行う際は、労働契約法15条に反しないよう慎重に行わなくてはいけないでしょう。

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MEGURO

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HR NOTEのライター、総合求人サイトとシニア向け情報メディアの立ち上げを経て、現在はjinjer blogの運営に携わっています。 事業視点から、バックオフィスの重要性を啓蒙するコンテンツを作っています。 保有資格:ファイナンシャル・プランニング技能士(3級)

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