労働契約法17条の「契約期間中の解雇」とは?やむを得ない理由を解説
更新日: 2026.1.29 公開日: 2021.10.3 jinjer Blog 編集部

労働契約法17条では、有期労働契約の契約期間中であっても「やむを得ない理由」がある場合には、解雇を認めると規定されています。一般的に有期契約は契約期間満了まで継続されることが前提とされていますが、企業側にとっても業務遂行上どうしても解雇が避けられない場面が想定されます。
しかし、単に労働者の勤務態度や企業の経営上の都合といった理由では直ちに認められるものではなく、客観的に合理性があり社会通念上相当とされる状況であることが必要です。また、労働基準法や関連条文との関係を理解し、適切な手続きを踏むことが求められます。
本記事では、労働契約法17条における契約期間中の解雇の考え方や具体的な事例について解説します。
▼そもそも労働契約法とは?という方はこちらの記事をご覧ください。
目次
改正労働契約法の3つのポイントを解説
改正労働契約法によって、有期雇用契約に関するルールが大幅に変わりました。自社の運用はこの3つのポイントに沿ってルール更新、できていますか?
比較的新しいルールであるため前例も少なく、対応にお困りの人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そんな方に向けて、当サイトでは、法律に違反することなく労働契約を結ぶために参考になる資料を無料配布しています。
◆押さえておくべき3つのポイント
- 無期転換ルール:勤続5年を超えると、従業員から無期雇用への転換を求められる 。
- 雇止め法理:安易な契約更新を繰り返すと、正当な理由なく契約終了(雇止め)できなくなる 。
- 同一労働同一賃金:正社員との間で、手当などの不合理な待遇差が禁止される 。
資料ではこの3つのポイントについて、よりわかりやすく解説しています。正しく理解しておくことで、労働者とトラブルに発展する可能性やリスクを軽減できるでしょう。
参考にしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上お役立てください。
1. 労働契約法17条のやむを得ない理由による「契約期間中の解雇」とは?


労働契約法17条は、契約社員やアルバイトといった「契約期間」を設けられた有期契約労働者を保護するためにつくられた法律です。
この法律では、有期契約労働者をやむを得ない事由がない限り、契約期間中に解雇してはならないと定めています。
ここでいう「やむを得ない理由」は極めて限定的に解釈されるもので、例えば企業側の一方的な経営判断や業績不振といった一般的な事情は「やむを得ない理由」にはなりません。裁判例でも、客観的な合理性と社会的相当性を基準に有効性が判断されており、企業には慎重な対応が求められます。
契約期間の途中で解雇されるのは、労働者にとっては予期せぬ出来事です。収入が突然途絶えると生活に大きな影響を及ぼすことから、このような法律が制定されています。
1-1. 契約期間に配慮する
労働契約法17条では、雇用主は契約期間に関しても配慮すべきである旨が明記されています。具体的には、労働者を使用する目的に照らし合わせて、必要以上に短い契約期間を設け労働契約を反復させて更新するようなことがないよう、配慮することが求められています。
例えば、1年かけて完成させるプロジェクトに従事させる有期契約労働者に、「1ヵ月の契約期間を設けて更新を繰り返す」というような契約は配慮にかけています。この場合は、プロジェクトの期間も考慮し、初めから1年間の契約期間を設けなければなりません。
有期労働契約は、契約期間の満了まで労働者の雇用が保障されることを前提としています。そのため、「契約期間」は労働者の生活基盤を安定させるものであることを認識し、配慮する必要があるのです。
1-2. 契約期間満了で更新をしない場合はどうなる?
労働契約法17条によって、有期契約労働者を契約期間中に解雇することは、やむを得ない事由がない限り原則できないことになります。そのため、「契約期間満了をもって解雇すればいいのでは」と考える方も少なくないでしょう。
しかし、有期契約労働者を契約期間満了をもって、雇用期間を更新せずに終了することは「雇止め」と呼ばれ、雇止めが濫用されないよう労働契約法19条によって規定されています。この規定は、以下に該当する有期契約労働者に適用となります。
- 過去に契約が反復更新されており、その雇止めが無期労働契約の解雇と同様である
- 契約の満了時に、契約更新がされると期待するような合理的な理由がある
上記に該当する有期契約労働者の雇止めは、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は従前の労働条件で申込みされたものを承諾したものとみなされます。
関連記事:労働契約法19条に定められた「雇止め法理の法定化」とは?
2. 労働契約法17条による「契約期間中の解雇」の有効性


労働契約法17条に基づく契約期間中の解雇が有効とされるためには、極めて限定的な「やむを得ない事由」が必要です。これは、一般的な業務上の不都合や経営上の困難といった抽象的な理由ではなく、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が認められることに加え、数字的に事業の継続が著しく困難な場合など厳格な状況に限られます。
また、労働基準法や関連する判例も考慮され、解雇の有効性は厳格に判断されます。そのため、企業は契約期間中の解雇を安易におこなうのではなく、代替措置や改善指導を先に検討しなければなりません。解雇に「有効性がない」と判断された場合、損害賠償請求や労働審判などの法的リスクに直結するため、適法性の確保が重要となるのです。
ただし、「解雇」に関する法律は労働契約法17条だけではないため、他の法律に抵触しないよう違いを把握しておきましょう。
2-1. 民法628条と労働契約法17条との違い
民法628条、労働契約法17条どちらも、労働者の解雇に関して規定している法律です。
ただし、民法628条は雇用契約全般に適用されるもので、「雇用期間が決まっている場合でも、「やむを得ない事由があるとき」は、直ちに契約を解除できる」と規定しています。ただし、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合の取扱いについては、条文内で明らかにしていません。
一方、労働契約法17条は、有期労働契約の契約期間中における解雇について明確に規定しており、労働者保護の観点から適用範囲や条件が厳格に定められています。解雇が認められる「やむを得ない事由」は客観的合理性と社会通念上の相当性が必要で、単なる民法の規定よりも限定的に解釈されるというのが大きな違いです。
つまり、労働契約法17条は、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合は契約期間中に解雇できないと明言することで、有期労働契約における解雇の制限を強化し、労働者保護をより明確にしているのです。
労働契約法第17条で企業が契約期間中に解雇を検討する場合、民法だけでなく労働契約法17条の要件を遵守することが不可欠であり、法的リスク回避の観点から慎重な対応が求められます。
2-2. 労働契約法16条と労働契約法17条の関係
労働契約法16条は、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする「解雇権濫用の法理」を定めた規定です。
一方、労働契約法17条は有期労働契約の期間中の解雇を制限する規定であり、労働契約法16条は期間の定めのない労働契約における解雇権濫用の法理を定めた規定であるため、直接的な関係はありません。ただし、17条の「やむを得ない事由」という要件は、16条の解雇権濫用の法理よりも厳格な基準であり、有期契約労働者の期間中の雇用安定を強く図っています。
このような関係があるため、企業は16条と17条の両方を理解することで、有期契約者への適切な対応が可能となります。
関連記事:労働契約法16条に規定された「解雇」の効力と無効になるケース
2-3. 事前に契約期間内の解雇に合意があっても無効となる可能性がある
契約締結時に、契約期間中の解雇について労働者と合意をしていた場合でも、その合意が労働契約法17条に反する内容であれば無効となる可能性があります。労働契約法17条は、有期契約の安定性を確保するため、契約期間中の解雇を原則として制限しており、例外的に認められる「やむを得ない事由」が必要です。
事前の合意があっても、社会通念上相当と認められない場合や合理的理由が欠けている場合には無効と判断され、解雇自体が違法となるリスクがあります。
例えば、営業ノルマ未達成が5ヵ月続いたら契約期間中でも解雇するといった内容を雇用主と従業員で合意しているようなケースです。この場合は、解雇事由の内容から、やむを得ない事由に該当するのか個別に判断されることになり、解雇に合意していたとしても無効とされてしまう可能性があります。
そのため、企業は契約書や労働条件通知書で解雇の条件を明示する際も、法令との整合性を確認し、労働者の権利を侵害しない形での契約作成が重要です。法的リスクを避けるためには、安易な合意に頼らず慎重な運用が求められます。
3. 労働契約法17条による「契約期間中の解雇」のよくある事例


契約期間中に解雇するというケースはそれほど多くないものの、実務的におこなわれることはあるのが実情です。
実際に解雇する場合、企業は事前に問題の内容や影響を客観的に評価し、法令や判例に基づいた適切な手続きを踏むことが求められます。とはいえ、どういった状況が、労働契約法に基づいた解雇になるのかわからないという担当者もいるでしょう。
労働契約法第17条の「やむを得ない」の認識は、当事者である企業と法律で乖離がある可能性もあり、無効になることも少なくありません。
そこでここでは、「契約期間中の解雇」のよくある事例を紹介します。
3-1. (事例1)労働者の行動を問題とした契約期間中の解雇
学校法人の塾長として4年間の有期労働契約を締結した労働者が、普段の行動に問題があることを理由に契約期間中に解雇されたため、解雇権の濫用であると主張し、労働契約上の地位確認等を求め提訴しました。
労働契約法17条において、契約期間中の解雇が有効とするためには「やむを得ない事由」があることが条件です。「やむを得ない事由」の有無を判断する際には、客観的に合理的であり、社会通念上相当であることが求められます。単なる軽微なミスや一時的な態度不良では解雇は認められません。
そのためこのケースでは、確かに問題となる行動はあったが、極めて不適切とまでは言い切れず、「やむを得ない事由」には該当しないとされ、契約期間中の解雇は無効とされました。
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構:個別労働関係法ハンドブック
3-2. (事例2)派遣先企業の業績不振による契約期間中の解雇
6ヵ月の有期労働契約を締結し、派遣業務に従事していた労働者が、派遣先企業の経営状態悪化により、契約期間中に派遣会社から解雇を予告されましたが、当該労働者はこれを不服とし、契約期間満了までの賃金の仮払いを求める申し立てをしました。
契約期間中の解雇で見られるもう一つの典型例は、派遣先や事業所の業績不振による場合です。業務縮小や事業撤退に伴い、契約を継続することが著しく困難となった場合、労働契約法17条に基づき解雇が認められることがあります。ただし、単なる経営上の都合だけでは直ちに有効とはならず、合理性と社会的相当性が求められます。
そのため、派遣会社が、他の派遣先を探すなどの努力をせず、契約期間中に一方的に解雇することは「やむを得ない事由」に該当しないとされ、契約期間中の解雇は無効となりました。
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構:個別労働関係法ハンドブック
4. 解雇手続きは関係法令に則っておこなうこと


労働契約法17条は、有期雇用契約の期間中における解雇の要件として、「やむを得ない事由」がある場合に限定しています。これは、期間の定めのない正社員などの労働契約に適用される労働契約法16条の「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」よりも、より厳しい要件となっています。
解雇予告手当や解雇理由通知の記載は、法令上義務付けられており、企業側の適切な対応が求められます。法律に則って解雇手続きがおこなわれないと、解雇が無効になるだけでなく、損害賠償の支払いを命じられる可能性もでてきます。労働契約法17条をはじめ、解雇に関する法律の知識をしっかりと身につけて、解雇をおこなう場合は慎重に手続きを進める必要があるでしょう。
改正労働契約法の3つのポイントを解説



改正労働契約法によって、有期雇用契約に関するルールが大幅に変わりました。自社の運用はこの3つのポイントに沿ってルール更新、できていますか?
比較的新しいルールであるため前例も少なく、対応にお困りの人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そんな方に向けて、当サイトでは、法律に違反することなく労働契約を結ぶために参考になる資料を無料配布しています。
◆押さえておくべき3つのポイント
- 無期転換ルール:勤続5年を超えると、従業員から無期雇用への転換を求められる 。
- 雇止め法理:安易な契約更新を繰り返すと、正当な理由なく契約終了(雇止め)できなくなる 。
- 同一労働同一賃金:正社員との間で、手当などの不合理な待遇差が禁止される 。
資料ではこの3つのポイントについて、よりわかりやすく解説しています。正しく理解しておくことで、労働者とトラブルに発展する可能性やリスクを軽減できるでしょう。
参考にしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上お役立てください。
人事・労務管理のピックアップ
-


【採用担当者必読】入社手続きのフロー完全マニュアルを公開
人事・労務管理公開日:2020.12.09更新日:2026.01.30
-


人事総務担当がおこなう退職手続きの流れや注意すべきトラブルとは
人事・労務管理公開日:2022.03.12更新日:2025.09.25
-


雇用契約を更新しない場合の正当な理由とは?伝え方・通知方法も紹介!
人事・労務管理公開日:2020.11.18更新日:2025.10.09
-


社会保険適用拡大とは?2024年10月の法改正や今後の動向、50人以下の企業の対応を解説
人事・労務管理公開日:2022.04.14更新日:2025.10.09
-


健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届とは?手続きの流れや注意点
人事・労務管理公開日:2022.01.17更新日:2025.11.21
-


同一労働同一賃金で中小企業が受ける影響や対応しない場合のリスクを解説
人事・労務管理公開日:2022.01.22更新日:2025.08.26
労働契約法の関連記事
-


労働契約申込みみなし制度とは?禁止事項や企業への影響について
人事・労務管理公開日:2022.03.23更新日:2026.01.29
-


労働契約法18条に定められた無期転換ルールを分かりやすく解説
人事・労務管理公開日:2021.10.04更新日:2024.10.21
-


労働契約法16条に規定された「解雇」の効力と無効になるケース
人事・労務管理公開日:2021.10.04更新日:2025.10.17















