モチベーション3.0とは?注目される背景やメリットなどを要約してわかりやすく解説
更新日: 2024.10.25
公開日: 2023.6.16
OHSUGI
健全な企業運営を維持するためには、従業員一人ひとりの働きが大きな力となります。そのためには、従業員がモチベーションを高く持って業務を遂行できる環境づくりが欠かせません。
より効果的にモチベーションアップを図るのであれば、モチベーションに関する正しい知識や概念を理解する必要があります。ここでは、今注目されている「モチベーション3.0」について、基礎知識やメリットなどを解説します。
目次
昨今では、少子高齢化による労働人口の減少が年々激化しており、今後の採用・人材確保はますます難しくなるばかりです。
そんな中で、従業員の定着率をいかに上げるのかという課題が企業各社を悩ませる問題になっており、従業員の待遇改善のため、ボーナスや給与のベースアップを試みたとしても、
「そもそも物価高騰も進む中で、会社にもそんなに余裕はないし、単純な賃上げでは持続性がない...」
「支給額の分だけ税負担が増えるため、従業員の手取りは増えずに、思ったよりも効果が出ない」このように、会社の負担額は増える一方なのに、従業員満足度は上がらないという結果に陥りやすいのが現状です。
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1. モチベーション3.0とは?要約して解説
モチベーションという言葉は日常的にも耳にするかと思いますが、「モチベーション3.0」についてはご存知ない方も少なくないでしょう。
モチベーション3.0とは、アメリカの作家ダニエル・ピンクの著書で提唱されたモチベーションの新たな概念です。この著書はアメリカでは2009年、日本では翻訳版が2010年に発売されており、モチベーション3.0は比較的新しい概念といえるでしょう。著書の中では、外発的動機付けがメインの過去のモチベーションの考え方に疑問を呈し、内発的動機付けを重視した新たなモチベーションの概念について、ビジネスへ活用するための方法が解説されています。
内発的動機付けとは、自身の内面から発生するモチベーションを指し、趣味に没頭するときのような「自分がやりたいからやる」というものです。自身の欲求から湧き出るモチベーションなので、より高い効果を発揮し長く維持されやすいのが特徴です。
2. モチベーション3.0が注目される理由
モチベーション2.0の考え方は19世紀後半ごろから現代にいたるまでモチベーション管理の基本と考えられてきましたが、近年では環境やビジネスの発展などからフィットしない面も見られるようになりました。さらに、外発的動機付けでは創造性や自律性が損なわれる、維持が難しい、報酬のために手段を選ばなくなる恐れがあるといった危険性を指摘されることも増加しています。
そのなかで、新たなモチベーションの概念として生み出された、内発的動機付けを考えるモチベーション3.0は大きな注目を浴びることとなりました。
2-1. モチベーション1.0との比較
モチベーション3.0が内発的動機付けを重視しているのに対して、モチベーション1.0は生理的動機付けがモチベーションの根源としています。生理的動機付けとは生きるために必要な本能的な動機付けです。例えば、美味しいものを食べたい、他人から高い評価を受けたいなどが生理的動機付けです。
2-2. モチベーション2.0との比較
モチベーション2.0は外発的動機付けがモチベーションのもとになるという考え方です。例えば報酬があるから頑張る、上司に怒られないように頑張るといった行動が外発的動機付けです。
3. モチベーション3.0の3つの要素
モチベーション3.0は次の3つの要素で構成されています。
自律性:課題解決のために必要な行動を自身で主体的に決定し取り組めること
成長(熟達):自身の目標達成に向けて努力を重ねること
目的:社会やチームへの貢献、組織の成長など利他的なもののこと
3-1. 自律性
自律性は独立性とは異なり、他人からの指示や制約を受けずに自発的に動けるだけでなく、他人とも円滑に助け合える関係性を指します。自律性の高いモチベーションによって全体の理解が深まる、生産性が向上するなどのメリットがつながります。
3-2. 成長
モチベーション3.0における成長とは自分の目標を達成するために、鍛錬を積むことです。成長に基づくモチベーションでポイントとなるのは、掲げた目標が成長によって達成できるようになるという強い意志を持つことです。
3-3. 目的
モチベーション3.0における目的とは自分だけの目的ではありません。利己的な目的ではなく、社会やチームの目的を指します。
4. モチベーション3.0を取り入れるメリット
大きな注目を浴びるモチベーション3.0ですが、取り入れることでどのようなメリットがあるのでしょうか。
4-1. 本質的な目的・目標が明確になる
モチベーション2.0のようなインセンティブや外部からの評価といった外発的動機付けでは、自身の欲を満たすことがモチベーションとなります。そのため、手段を選ばないモラルハザードや不必要な競争が発生するなどのリスクがあり、本来目指すべきゴールから外れてしまうおそれがありました。
しかし、モチベーションが自身の内から湧き出る内発的動機付けでは、目標や目的を達成することがモチベーションとなるため、より本質に近い形でモチベーションが活用されます。
4-2. 長期的な目標達成を目指せる
アメとムチによるモチベーションコントロールは、「報酬を手に入れてやる気が失われる」「怒られて自信喪失してしまう」といった恐れがあることから、長期的なモチベーションの維持は簡単ではありません。
一方で、内発的なモチベーションに従って活動するケースでは、周囲からの影響を受けにくく長くモチベーションを維持することが可能です。そのため、長期的な目標達成も見込むことができます。
4-3. 創造性の発揮にも効果的
モチベーション2.0までの外発的動機付けによるモチベーションコントロールでは、自身で物事を工夫し成し遂げる創造性の発達を阻害することが懸念点として挙げられています。そのため、現代では一般的なクリエイティブな業務ではあまり効果的とはいえません。
自律性や成長を重視したモチベーション3.0を取り入れることで、創造性の発揮や新たな価値の創出を促すことが期待できます。
5. モチベーション3.0の活用方法
モチベーション3.0は現代にマッチした概念であり、そのメリットも大きいといえるでしょう。では、実際に活用するうえで、どのような点を意識するべきなのか解説します。
5-1. モチベーション1.0、2.0を満たしていることが前提
モチベーション3.0を活用する前提として、まずはモチベーション1.0、2.0が満たされている必要があります。「毎日の生活が苦しい」「給料が少ない」「仕事にやりがいが見いだせない」という状況でモチベーション3.0を取り入れても、内発的なモチベーションを呼び起こすことは難しいでしょう。まずは、給与、労働環境、仕事上の役割などをしっかりと提供することが重要です。
5-2. 従業員自身に目標を決めさせる
「何を目標にするのか」「達成したいことは何か」を従業員自身に決めさせることで、内発的な動機に呼びかけることができます。また、自身で目標を決めることで、「達成するためにはどんな工夫が必要か」というさらなる自律性や成長の発生を促すことが可能です。まさに、モチベーション3.0のキーワードである「自律性」や「成長」にかかわる部分といえるでしょう。
5-3. 仕事の裁量を与える
細かい管理や仕事の指示をされている状態では、従業員の自律性が育まれません。また、「やらされている」という感覚になり、モチベーションアップも難しいといえます。ある程度の裁量を持たせ、自身で判断できる状況を与えることで、自律性や創造性の発揮やモチベーションアップが期待できるでしょう。さらに、自身の裁量で上手く目標の達成ができた場合は成功体験が生まれ、より一層モチベーションを高めることにもつながります。
5-4. 組織の仕組みを変えることも視野に入れる
表面上だけ取り繕ってモチベーション3.0を活用しても、組織にマッチしていなければ真の効果を発揮できません。必要に応じて、裁量を振り分ける仕組みや評価制度、労働環境、人員配置など組織全体を見直すことも大切です。従業員一人ひとりが持つ能力を存分に発揮できるような組織作りを検討しましょう。
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6.モチベーション3.0の活用事例
モチベーション3.0を実際に活用している企業は、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。ここではモチベーション3.0を構成する自主性、成長、目的にフォーカスして実際の活用事例を紹介します。
6-1. 自主性を高める取り組み
自主性を高める取り組みとして、「勤務時間のうち一定時間を自分の個人的な取り組みであるサイドプロジェクトに使用しても良い」というルールを定めた企業があります。このルールにより、従業員自身が自主的に業務に取り組め、さまざまなアイディアが生まれました。
6-2. 成長を促進する取り組み
成長を促進するために、部下を持つ従業員に対して、自分の後継者を育てることを定めた企業があります。このルールができたことで、上司は部下に成長のための情報やチャンスを与えるようになり、部下も成長の道筋が分かりやすいためモチベーションを高く持って取り組めています。
6-3. 目的を活用した取り組み
世界で広く使用されているWikipediaもモチベーション3.0を活用しています。非営利団体であるウィキメディア財団が運営するWikipediaはページの執筆や編集には報酬が発生しません。執筆者や編集者は報酬を受け取ることを目的としているのではなく、それぞれの目的で作業を進めています。
7. モチベーション3.0を取り入れて、従業員のやる気を引き出そう
モチベーション3.0は現代の働き方にマッチした概念といえます。従業員のモチベーションアップや維持に悩みを抱えているのであれば、モチベーション3.0の考え方を人事評価や人材配置に取り入れてみてはいかがでしょうか。
関連記事:部下のモチベーション管理をうまく成功させる具体的な方法
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