モチベーションサーベイとは?導入手順や成功させるポイントを解説
更新日: 2025.2.14
公開日: 2023.6.17
OHSUGI
優秀な人材の育成や、生産性の向上を目指す際に、重要な指標になるのが社員のモチベーションです。企業としては、モチベーションの向上が組織成長の鍵になるため、いかにして社員を鼓舞しようかと悩んでしまいがちです。
そこで導入したいのがモチベーションサーベイです。いわゆる意識調査の一種ですが、正確に実施することで社員のモチベーション向上に効果を発揮します。ここでは、モチベーションサーベイの内容や、導入メリット、実践手順について詳しく解説していきます。
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このようなお悩みを抱えていませんか?
従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、「従業員満足度のハンドブック」を無料でお配りしています。
従業員満足度調査の方法や調査ツール、調査結果の活用方法まで解説しているので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方はこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. モチベーションサーベイとは
モチベーションサーベイとはどのような手法なのか、導入の目的や従業員満足度調査との違いをまずは知っておきましょう。
1-1. 従業員のモチベーションを把握する手法
モチベーションサーベイとは、社員のモチベーションを調査し、その結果を定量的に把握する手法です。
そもそもモチベーションとは、「やる気」「目的意識」「仕事への動機づけ」などを意味する言葉で、サーベイは「調査」や「測量」などを意味する言葉です。モチベーションサーベイでは、通常可視化できない従業員の精神面を数値にし、総合的に分析していきます。
モチベーションの状態に加え、社員個々が持つ能力も計測することで組織的な強み・弱み、また離職の原因分析にも活用できます。
1-2. モチベーションサーベイ導入の目的
モチベーションサーベイの導入をしている企業では、主に以下のような目的を持っていることが多いです。
- 経営理念の浸透
- 企業文化の醸成
- 従業員満足度の向上
- 従業員の生産性の向上
- 離職率の低減
会社の方針や文化を言葉だけでなく体感や経験として浸透させたり、従業員の満足度ややる気を底上げして課題解決を目指したりすることが主な目的です。
モチベーションサーベイでは、このような目的を達成するために必要なデータを収集していきます。実施する際には、その導入目的をしっかりと明確化しておくことで、必要なデータ内容の整理や調査後の分析をスムーズに進めていくことができます。
1-3. 「従業員満足度調査(ES調査)」とは何が違う?
モチベーションサーベイと同じく、社員の意識調査を測る手法として「従業員満足度調査(ES調査)」があります。
従業員満足度調査は、働きやすさを中心に従業員の満足度を分析するために実施されます。そのため、一見するとモチベーションサーベイと同じものであると考えがちです。
しかし、個人の内面状態の把握を主な目的とするモチベーションサーベイに対し、従業員満足度調査では、報酬・福利厚生・労働環境・人間関係などの外的要因を含めた分析項目から、労働施策の課題発見・解決を目的としておこなわれます。
いずれも、企業の組織的成長を最終目的としている点では同じですが、その分析過程でどこにフォーカスを当てているかは異なります。
2. モチベーションサーベイを実施するメリット
モチベーションサーベイを企業に導入して得られるメリットは、主に以下の4つが挙げられます。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
2-1. 従業員のモチベーションを可視化できる
モチベーションサーベイでは、分析結果を数値化して導き出すため、従業員個人の精神面を把握しやすくなります。
やる気や意識などの個人内で醸成される事柄は、他者からの評価がしにくいうえ、評価者の主観が入りやすい部分です。また、一定ではないためタイミングによって結果にばらつきが生じます。
そのため、正確に分析することは容易ではありません。しかし、モチベーションサーベイであれば、数値化されたスコアから診断し、詳細を知ることが可能です。
外面から見て取れない心の状態を可視化できることが、モチベーションサーベイ導入の大きなメリットです。
2-2. モチベーションを左右する要素を明確化できる
数値化した診断結果をもとに分析・検討することで、社員のモチベーションを左右している要因の把握が可能です。
モチベーションの向上もしくは著しい低下が起こっていた場合、どのような要素が深く関係しているのかを調査し、課題の発見および解決策の検討につなげることができます。
ここで明確になった課題を解決していくことで、社員にとって働きやすい職場環境が構築され、結果的に企業風土の改善にも役立つでしょう。モチベーションをあげている要因もわかれば、それをほかの従業員にも適用させることで部署全体やチーム内の士気を高めることも可能です。
2-3. 事業目的や人員構成にマッチした調査ができる
モチベーションサーベイには、決められた項目やルールはありません。事業所や店舗、企業ごとに独自の内容を設定できるため、自社に適した内容で作成できます。
組織形態やビジネスモデル、事業目的、人員構成などに合わせたサーベイを導入することで、社員のモチベーションに対してより深いアプローチが可能になるでしょう。また、モチベーションサーベイを導入する目的を意識した内容にすれば、より効果的な調査ができます。
ただし、独自のモチベーションサーベイを実施するには、項目の設定や評価基準など、さまざまな部分を決めていかねばなりません。最適な形のモチベーションサーベイにするには、繰り返しブラッシュアップをする必要があります。
2-4. サーベイ結果から生産性の向上を目指せる
社員のモチベーションを定量化することで、組織的売上高や利益率、一人当たりの生産性との数値比較が可能です。
従業員のモチベーション向上に対してどのようなアプローチが効果的かを把握できれば、従業員全体の士気も高めやすくなるでしょう。
組織に必要な投資の程度も算出できるため、効率的な企業運営で生産性の向上を目指せます。
3. モチベーションサーベイの導入手順
モチベーションサーベイを実施する際は、「目的設定」「調査内容(項目)の設定」「調査の実施」「回答分析」「最終評価」の5ステップで進めていきます。
それぞれ確認しましょう。
3-1. 目的設定
モチベーションサーベイを実施する目的を事前に明確化しておくことで、その後の調査をスムーズに進められます。
調査項目も目的を意識したものにできます。
たとえば、従業員の満足度を向上させたい場合や、離職率を下げたい場合は、職場環境やライフワークバランス、評価、スキルアップの機会など、不満が発生しやすい部分に対する調査を重点的にするとよいです。
社員一人当たりの生産性向上や企業文化の浸透など、サーベイの最終ゴールとなる判断軸を定めておくようにしましょう。
3-2. 調査内容(項目)の設定
設定した目的に応じた調査項目を作成していきます。項目が増えるほどコスト負担も増えるため、必要項目を精査して設定することが大切です。
モチベーションサーベイの質問として用いられることが多いのは、以下のような項目です。目的に合わせて加減しましょう。
項目例 | 調査する内容 |
従業員の基本的な情報 | 入社歴や所属部署など |
戦略・方針について | 会社の戦略や方針についての理解度や共感度 |
企業風土・人間関係について | 抱えている問題や不満の有無 |
職場環境について | 労働環境の快適性や働きやすさ |
仕事量・待遇について | 仕事量は適正か、待遇に対してどう感じているか |
評価について | 不公平さはないか、承認欲求は満たされているか |
価値観・やりがい | やりがいを感じて仕事ができているか、社会貢献できていると感じるか |
成長機会の有無 | 成長するための機会は得られているか |
離職に対する意識 | 離職意識の有無 |
目標・達成感について | 目標をもっているか、それに向かって進めているか |
ライフワークバランスについて | 適正に保てているか |
3-3. 調査の実施
調査内容を設定したら、次は調査の実行です。この時に重要なのは、社員が回答しやすい調査方法を選ぶという点です。
社員の媒体利用状況に合わせて、メールやWebシステムを活用し、アンケート回答を集計しましょう。複数の調査方法を導入してもよいですが、モチベーションサーベイは繰り返しおこなうものです。集計する際に混乱したり、業務の負担が大きくなりすぎたりしないような工夫をしましょう。
集計ミス防止や提出のしやすさなど、調査の正確性と効率を重視したい場合には、Webで自動集計できるサービスを利用するのもよいでしょう。
3-4. 回答分析
集計データをもとに回答を分析していきます。社員のモチベーションに関わる要素や、企業ミッションへの理解など、数値化されたスコアから傾向を分析します。
モチベーションサーベイの回答分析は、モチベーションサーベイの効果を左右する重要な部分です。自動集計や分析ができるサービスを利用していない場合は、分析に時間がかかります。
担当者の負担を考えて、繁忙期は避けて回答の集計や分析ができるようにするのが望ましいです。
3-5. 最終評価
分析結果から表出した傾向を照らし合わせ、企業が取り組むべき課題を導き出します。最初に設定した目的達成に向けてどのように解決していくべきか、改善案の立案に役立てましょう。
必要に応じて個人的に面談したり、企業の取り組みとしてできるものがあれば全従業員に通達して取り組んだり、課題の解決に取り組むことでモチベーションサーベイの有用性を高めることができます。
モチベーションサーベイは従業員が回答をする時間と、回答内容を集計して分析する時間を要しています。最終評価を出して終わりにしてしまってはもったいないため、調査結果を活かすための仕組みづくりも大切です。
4. モチベーションサーベイはサイクル化が重要
モチベーションサーベイをより効果的に実施するためには、サイクル化を図り、システムとして定着させていくことが大切です。一度の実施で終わらず、PDCAサイクルを回していくようにしましょう。
4-1. 定期的な調査
「モチベーションサーベイを実施する」→「課題を明らかにする」→「改善策を講じる」を一回転として、何度か回転させていくことで、社員のモチベーションへのより深い理解や、さらなるニーズの把握につながります。定期的に調査を実施していき、定点観測をおこなうようにしましょう。
この時、最初に設定した目的を見失わないようにし、調査の実施そのものが目的とならないよう注意が必要です。
4-2. 改善策の立案と実施
モチベーションサーベイは、その結果から課題を見つけ、改善策を講じることで効果を発揮します。調査の実施だけで終わらせず、必ず課題の発見と改善策の立案・実施をしましょう。
課題が見つからない企業はほとんどありません。調査の結果、改善点が見つからない場合は回答や分析に問題がある可能性が高いため、質問内容や分析方法の見直しをしましょう。
また、企業や市場の状況が変化して企業方針が変化していくこともあります。そのような場合はモチベーションサーベイの内容も見直し、常に自社に最適な状態を保つことが大切です。
4-3. 必要に応じた臨時調査
企業に大きな変化が発生すると、それまでは安定したモチベーションを維持していた従業員が急にやる気を失うことがあります。それが広まってしまうと、企業全体の生産性を低下させたり、大量離職を招いてしまったりします。
そうした問題を予防するには、組織や制度改革など、企業にとって大きな転換点を経験した際にモチベーションサーベイを実施すると効果的です。モチベーションサーベイで個人内の変化を早い段階でキャッチできていれば、対応も迅速にでき大きな問題に発展する前に解決しやすくなるでしょう。
5. モチベーションサーベイ実施の注意点
モチベーションサーベイを初めて実施する際は、従業員の感情や負担に配慮することが重要です。正しいサーベイ結果を引き出し、企業の発展に結びつけるために以下の点に注意して実施しましょう。
5-1. 従業員に事前告知をする
モチベーションサーベイを導入することや実施することは、必ず事前に全従業員に告知しておきましょう。その際には、調査目的やサーベイ結果の活用法を明確にしておくことが重要です。
事前告知をおこなうことで、従業員からの反発や不信感を抑えやすくなります。マイナスの感情があると、調査への協力意識が低く、回答がなかなか集まらなくなることもあるでしょう。
また、モチベーションサーベイの実施目的が不明瞭であると、自分の評価を落とさないために虚偽の回答をする可能性があります。
5-2. 不利益が発生しないことを説明する
モチベーションサーベイの質問事項には、労働環境や人間関係、評価などに対する満足度を回答するものが多いです。そのため、従業員は回答が評価や待遇に影響するのではないか?と不安を抱き、印象のよい回答をする恐れがあります。正確な回答を得るために、回答内容による不利益が発生しないことを十分に説明しましょう。
そして実際にモチベーションサーベイの結果は評価とは全く別のものとして考えなければなりません。数字的な評価だけでなく、感情的にも回答内容による変化がないように分析や評価に携わる人物には注意喚起が必要です。
5-3. 回答者の負担にならない質問量にする
従業員の意識をより詳細に調査するために、質問事項を増やすことは決して悪いことではありません。しかし、質問量が多すぎる、内容が複雑すぎる場合などは回答に時間を取られてしまい、負担になる可能性があります。質問項目や文章は無駄を省き、可能な限り短時間で回答できるように調整しましょう。
モチベーションサーベイはサイクル化して繰り返しおこなわれるものです。従業員が「またこの時期が来たのか」とうんざりしてしまうと、回答も流れ作業になり雑になってしまいがちです。そのような事態を招かないように、負担が少なく、面倒だと思われないような質問を意識しましょう。
6. モチベーションサーベイを導入して社内状況や課題を可視化しよう
社員のモチベーションは組織の成長に欠かせない要素の一つです。しかし、内面的なものゆえに他者からは読み取りづらいといった問題があります。そんな時にモチベーションサーベイを利用すれば、社員の期待や不満を数値で可視化し、労働環境の改善や報酬の検討といった具体的なアクションを考えることが可能です。
モチベーションサーベイを積極的に実施し、社内状況の把握や課題解決に役立てていきましょう。
関連記事:部下のモチベーション管理をうまく成功させる具体的な方法
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