人事評価規程とは?義務・届出・作成手順・作成の注意点をわかりやすく解説
更新日: 2025.6.13 公開日: 2025.4.21 jinjer Blog 編集部

「人事評価規程の概要を知りたい」
「人事評価規程の作成や届出の義務について知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
人事評価規程とは、人事評価制度のルールを定めたものです。条件にあてはまる企業は、作成や届出の義務が生じます。
本記事は、人事評価規程の概要や作成手順、作成の注意点や作成・届出が必要なケースについての解説です。
そのほかに、就業規則への記載が必要な場合についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
1. 人事評価規程とは

人事評価規程とは、会社が定める社内規程の一つで、人事評価制度のルールを定めたものです。評価項目や評価方法、評価の対象者などが記載されることが一般的です。
人事評価制度では、一定期間の各従業員の能力や成果などを一定基準で測り評価し、従業員の賃金や等級などの判断に評価結果を反映します。
企業は、人事評価規程により客観的な指標にもとづいた人事評価を実現でき、人事評価の公平性や透明性が増し、従業員の労働意欲や満足度の向上が期待できます。人事評価規程では、こうした評価結果の活用方法なども記載します。
人事評価規程と類似した規程に人事考課規程がありますが、明確な違いはありません。
2. 人事評価制度導入により人事評価規程の作成義務が生じる

常に10人以上の従業員を使用する事業場をもつ企業が人事評価制度を導入した場合には、人事評価規程の作成義務が生じます。人事評価制度の定めは、就業規則に関する定めの一つである相対的必要記載事項に該当するためです。
一方、常に9人を超えない従業員が働く事業場をもつ企業や、人事評価に関する定めがない会社は人事評価規程の作成義務はありません。
相対的必要記載事項とは、会社が規則を設ける場合、就業規則に必ず記載しなければならない事項を指します。
就業規則本体に人事評価制度で定めた内容を一つひとつ記載しても問題ありませんが、人事評価規程を別に作成する企業が多いです。就業規則本体にすべての定めを記載した場合は、人事評価規程を別に作成する必要はありません。
人事評価制度の定めがある企業が就業規則に記載しなかったり人事評価規程を作成しなかったりした場合、労働基準法違反に該当します。
参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省
3. 人事評価規程は就業規則への記載が必要
人事評価規程の内容は企業が自由に決められるものですが、規定を定めた場合は就業規則への記載が必要になります。
また、その記載によって就業規則に変更が生じた場合は届け出が必要です。この2つのルールを詳しく解説していきます。
3-1. 規程を定めたら就業規則への記載が必須
人事評価規程の定めは、就業規則への記載が必要な相対的必要記載事項に該当します。就業規則本体に人事評価の定めをすべて記載していない場合は、別規則を人事評価規程で定めたことを就業規則へ記載しなければなりません。例えば、「人事評価については別に定める人事評価規程による」と、人事評価規程が別にあることを就業規則に明記します。
ただし、就業規則の作成義務は常に10人以上の従業員が働く事業場をもつ企業に限られます。上記の条件に該当しない企業は、就業規則自体を作成する必要がありません。
つまり、上記の条件に該当しない企業が人事評価のルールを定めた場合、人事評価規程の作成や就業規則への記載は不要です。
一方、人事評価の定めがあり上記の条件にあてはまる企業が人事評価の定めについて就業規則へ記載しなかった場合は、労働基準法違反です。
参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省
3-2. 就業規則に変更が生じた場合は届出が必要
就業規則に変更が生じた場合は、就業規則変更届を管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。
人事評価規程の作成や変更により就業規則に変更が生じた場合も例外ではなく、所轄労働基準監督署への届出が必要です。
就業規則を作成・変更する場合、届出前に事業場の過半数組合か従業員の過半数代表者への意見の聴取も義務づけられています。
なお、作成した就業規則と人事評価規程に加えて、上記の聴取の意見書と就業規則(変更)届の届出も必要です。就業規則とは別に人事評価規程を作成していない場合は、3点のみ届出ます。
参考:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省
4. 人事評価規程の作成手順

人事評価規程を作成する際は、対象や項目、ルールの決定やサンプルの作成などをおこない、円滑に運用できるようにしなくてはなりません。一般的な人事評価規程を作成する流れは以下のようになっています。
4-1. 現状把握
人事評価規程の作成で最初におこなうのは、現状把握です。現状の自社の評価システムを把握し、抱えている課題や問題点を洗い出すことから始めます。
従業員から、現状の評価システムに関する意見を聞き取る方法も一つです。人事評価の内容は労使間の信頼関係や、従業員のモチベーションなどに大きく関係します。現在の人事評価制度がどのように思われているのか、評価される側の意見も聞き取ることが大切です。
あいまいな評価基準に対する不満が多い場合は、明確な評価基準や評価項目を設定し、人事評価規程の作成を進めましょう。
4-2. 評価対象の決定・分類
現状の把握や抱えている課題の洗い出しが終わったら、次は評価対象を決めていきます。
職種・等級・階層別に決定するのが一般的です。例えば、生産部門・販売部門・営業部門などのように、部門で分けるだけでも効果的です。
分類ごとに人事評価をおこなう目的を明確にしておけば、評価項目や評価基準も設定しやすくなり、より精度が高く人材育成につながる評価が下しやすくなります。
4-3. 評価基準・項目の決定
続いては評価基準・項目の決定です。明確な評価基準や適切な評価項目を設定することで、人事評価制度の公平性や満足度が向上します。
一般的な評価項目の種類は、以下の3つです。
| 業績 | 業績目標達成度、課題目標達成度など、数値化できる結果で評価する |
| 能力 | 知識評価、能力評価など、業務遂行に関わるスキル・知識・資格などで評価する |
| 情意 | 積極性、チームワーク、法令遵守など、仕事への意欲や姿勢などを評価する |
評価基準として、5段階評価や等級制度などを利用する企業も多く見受けられます。
| 5段階評価 | 業務遂行能力・成果・姿勢などを5段階に区分した基準で評価する |
| 等級制度 | 能力・職務・役割などをレベル別に区分した等級により評価する |
評価基準・項目は、文章化・数値化した際に明確でわかりやすいかどうかも大事なポイントです。
4-4. 規程の項目の設定
評価基準が定まったら、次は人事評価規程の項目の設定です。一般的な項目を表にまとめました。
| 対象者 | 正社員、契約社員、アルバイト、パートタイマーなど |
| 評価者 | 自身、指導監督者など |
| 評価時期 | 毎年2回4月と10月、毎年1回4月の実施など |
| 評価対象期間 | 4月~9月・10月~3月の6ヵ月間、4月~3月の12ヵ月間など |
| 評価項目 | 規律性、成果、職務能力、貢献度など |
| 評価基準 | 評価区分、評価基準書など |
| 評価方法 | 自己評価後に指導監督者による最終決定評価を実施など |
| 評価結果の処遇への反映方法 | 評価結果を12月と7月の冬季・夏季賞与に反映、毎年1回の賃金改定時に反映など |
記載する事柄が多岐にわたる評価項目や評価基準について、別に評価基準書を作成するケースも多いです。
4-5. ルールの決定
ここまでで決めてきた評価基準・項目や人事評価規程の項目に関して、それぞれのルールを決定していきます。
例えば、営業職は業績項目の売上目標達成度、事務職は能力項目の正確性など、職種別に適した評価項目の種類を選び評価するなどです。
さらに、人事評価規程の各項目についてもルールを決めましょう。例えば、評価時期は毎年1回4月に実施し、評価対象期間は4月から3月の12ヵ月間とするなどです。こうしたルールは評価の透明性を保つとともに、評価者が客観的な評価を下すためにも役立ちます。
4-6. サンプルの作成
内容が決まったら、人事評価規程のサンプルを作成してみましょう。
人事考課規程のひな型やサンプルシートはさまざまなサイトで無料で配布されています。それを自社向けにカスタマイズして使用するとスムーズです。
サンプルを作成することでここまでで決めてきたことがまとまり、具体性が高まります。また、サンプルを作ることで見えてくる問題もあるため、修正を繰り返して人事評価規程を完成させましょう。
各部門の管理職や従業員代表にサンプルを見せ、運用テストをしてみることもおすすめです。
参考:人事労務諸規程モデル集|お社会保険労務士法人 大野事務所
5. 人事評価規程の作成の注意点

人事評価規程の運用を成功させて効果を得るには、公平性や透明性、そして法律の順守が求められます。以下の4つのポイントには特に注意しましょう。
5-1. 明確な評価基準になっているか
人事評価規程作成の注意点の一つは、明確な評価基準です。
評価基準が明確でないと、評価者の主観により評価される可能性があります。また、従業員が不満を感じて労働意欲が低下したり離職の原因になったりするでしょう。
作成前に従業員へアンケートを実施し、現状の人事評価に対する不満や不安点について調査し、結果を分析して評価基準を決める方法も一つです。
人事評価制度をスムーズに運用するには、評価基準や評価内容などを従業員に周知し、目的や評価項目を理解してもらうことも重要です。明確性を維持しつつ、従業員が人事評価について適切に理解できるような工夫もしていきましょう。
5-2. 公平で客観的な評価ができるか
公平で客観的な評価を目指すことも、人事評価規程の作成の注意点です。評価者の感情や価値観で偏った評価をすることはあってはなりません。評価者は評価エラーや評価基準を十分に理解し、客観性を維持するように努める必要があります。
公平で客観的な評価にもとづく人事評価規程であれば、従業員のモチベーションアップによる生産性の向上が見込まれるでしょう。
労働契約上では人事評価における裁量権は企業にありますが、企業が優位的な立場を利用して不利な評価をしてはなりません。
5-3. 就業規則の不利益変更がないか
人事評価規程の作成の注意点には、就業規則に関する定めの一つである不利益変更もあります。不利益変更とは、企業が一方的に現状よりも待遇悪化の可能性がある労働条件の導入により、就業規則を作成したり変更したりできないことです。
ただし、以下のような合理的な理由がある場合は適用されないケースもあります。
- 労働組合や大部分の従業員の合意がある場合
- 不利益の程度が少ない場合
- 変更の必要性がある場合
- 代償措置や経過措置などがある場合
人事評価規程の作成の全手順において、不利益変更に該当しないかどうか熟慮しましょう。就業規則作成の専門家である社会保険労務士に、人事評価規程の作成を依頼する方法も一つです。
5-4. 法律に違反していないか
人事評価規程は会社が自由に決められるものすが、法律を守った内容でなければなりません。
労働基準法や労働契約法、男女雇用機会均等法などは就業や人事評価に大きく関連する法律です。評価基準や評価プロセスに問題はないか、十分に調査してから運用しましょう。
評価も評価者が下すものですが、低評価を理由に降格や減給を一方的におこなうことは法律違反になる可能性があります。自社内のルールだとしても、法律が優先されるため違法行為に該当しないように注意が必要です。
6. 人事評価制度を導入したら人事評価規程を必ず作成しよう

人事評価規程とは、人事評価に関する定めです。人事評価の定めは就業規則へ記載が必要な相対的必要記載事項に該当するため、就業規則へ記載して労働基準監督署へ届出をする義務が生じます。
また、人事評価規程の内容を変更した場合も届出が必要です。
ただし、常に10人以上の従業員が働く事業場をもつ企業以外は、就業規則の作成義務がありません。つまり、就業規則の作成義務がない企業においては、人事評価のルールを定めた場合でも人事評価規程の作成や届出は不要です。
人事評価規程について理解を深めつつ、自社の人事評価規程を作成する際には、ぜひ本記事の作成の手順・注意点なども参考にしてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
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