計画年休時に有給休暇がない人の対処法は?間違った対処や注意点も解説
更新日: 2025.7.16 公開日: 2024.11.22 jinjer Blog 編集部

計画年休制度(年次有給休暇の計画的付与制度)は、従業員の年次有給休暇のうち5日分以上を、企業が休暇取得日に設定できる制度です。有給休暇日数が6日以上の従業員が対象となりますが、この制度を導入すれば、企業は「年5日の有給休暇取得義務」を果たすことができます。
計画年休の導入は、企業にとって従業員の労働環境を整える重要な施策です。しかし、有給休暇が不足している従業員に対してはどのように対応すべきか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
本記事では、特別有給休暇の付与や前倒しでの有給付与、休業や休日としての取り扱いなど、具体的な対処方法を詳しく解説します。間違った対処法や注意点も解説しているので、公平性を維持して従業員の不満を軽減したい人はぜひ参考にしてみてください。
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1. 計画年休制度(年次有給休暇の計画的付与制度)とは?


計画年休制度とは、正式名称は「年次有給休暇の計画的付与制度」というもので、年次有給休暇のうち5日を超える日数を、企業が計画的に休暇取得日として振り分けることができる制度です。
対象者は、年次有給休暇が6日以上の従業員となっていますが、すべての休暇日数を計画年休にできるわけではありません。厚生労働省では、年次有給休暇日数の内、5日は自由に取得できる日数として残しておくことを義務付けています。
例えば、有給休暇が6日ある従業員の場合、5日を残さなければならないので、計画年休は1日となります。10日ある場合は、5日は計画年休にできるので、残りの5日が従業員が自由に有給休暇を取得できる日数になるということです。
ただし、前年度に有給休暇を消化しきれず次年度に繰り越した日数がある場合は、繰り越した年次有給休暇と本年度の有給休暇を合算するので、年次有給休暇が6日の従業員であっても5日を超える部分は計画的付与の対象とすることができます。
2. 計画年休付与時に有給休暇がない人への適切な対処方法

計画年休付与時に有給休暇がない人への適切な対処方法は、以下のとおりです。
- 特別有給休暇を付与する
- 有給を前倒しで付与する
- 休業として取り扱う
- 休日として取り扱う
ここからは、それぞれ具体的に解説します。
2-1. 特別有給休暇を付与する
計画年休の対象日に有給休暇の残日数がない場合、特別有給休暇を付与する方法があります。
特別有給休暇とは、福利厚生の一種として企業側の裁量で付与される休日のことです。通常の年次有給休暇とは異なり法律上の義務はなく、労使協定や就業規則に基づいて実施することができます。
ただし、特別有給休暇を導入する際は、ほかの従業員との不平等性を避けるための配慮を怠らないようしなければなりません。計画年休付与時に有給休暇がないということは、すでに消化しているか、6日以上の有給休暇を付与されるほどの就業実績がないということです。
そのため、有給休暇が残っている従業員と比較して破格な特別待遇とならないよう、公平性を保つための基準を設けることが大切です。
2-2. 有給を前倒しで付与する
計画年休制度を導入する際に有給休暇がない場合の対処法として、有給を前倒しで付与する方法も挙げられます。有給休暇の前倒しとは、法定の基準日よりも早く有給休暇を付与する施策です。
前倒しにすれば、特別有給休暇を付与する必要がないので、有給休暇が残っている社員に対しては公平性が保てます。
ただ、前倒しで有給を付与した場合、その後の基準日も前倒しが必要になります。結果、有給管理が複雑になる可能性がある点には注意が必要です。
また、従業員が本来の基準日までに退職した場合でも、前倒しで付与した有給は後から欠勤扱いにはできません。従業員の退職リスクも考慮して慎重に検討しましょう。
2-3. 休業として取り扱う
計画年休が付与される際に有給休暇が残っていない従業員には、休業手当を支払って休業扱いにする方法もあります。休業手当を支払えば、半強制的に休暇となってしまっても、従業員の不満を抑える効果が期待できます。
ただし、労働基準法第26条に基づき平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務がある点に注意が必要です。
平均賃金は、直前3ヵ月間の賃金総額を暦日数で割って算出します。基本給だけでなく残業手当や各種手当も含まれますが、賞与や臨時に支払われた賃金は除外しましょう。
上記の計算によって得られた平均賃金に60%を乗じて得た数字が、休業手当として支払われるべき最低額です。
平均賃金額 =直前3か月間の賃金の総額(総支給額)/直前3か月間の総日数(総日数)×0.6
休業手当は平均賃金の60%以上を支払うのが義務となっているので、会社都合で減給するのは違法となるため注意してください。
2-4. 休日として取り扱う
計画年休制度を導入する際に有給休暇がない従業員には、計画年休日を「休日」として扱う方法もおすすめです。
計画年休の日を「休日」として扱うことで、会社が休業手当を支払う義務を回避できます。「休み」として減給されることもなく、ほかの従業員と同じように休暇が取れるため、不公平感を軽減することも可能です。
また、会社側は「休日」とすることで、有給管理や休業手当の計算など複雑な手続きを簡略化できるため、人事部門の負担軽減にもつながります。
ただし、計画年休日を「休日」として扱う場合は、就業規則や労働協約にその旨を明記しなければなりません。そのため、従業員に周知をし、事前に十分な説明と理解を得ることを忘れないようにしましょう。
3. 計画付与時に有給休暇がない人への間違った対処方法


計画付与時に有給休暇がない人に対し、以下のような対処をすると会社に対する不満の原因となります。
- 有給休暇がない人だけ出勤させる
- 欠勤扱いにする
有給休暇が残っている人との公平性を考えると、上記のような対応が適切と思うかもしれません。しかし、「計画年休」は会社側が主導でおこなうことなので、従業員からは不満が出るリスクがあります。
ここでは、これらの対処について解説していきます。
3-1. 有給休暇がない人だけ出勤させる
有給休暇がない人だけ出勤させるというのは、一見合理的ですが避けるべきです。
労使協定に定めることで、有給休暇がない人だけ出勤扱いにすることは可能ですが、公平性を保つためにできるだけ避けましょう。
有給休暇がない従業員だけを出勤させると不満を招く可能性が高く、職場の士気にも影響を及ぼすおそれがあります。不満を持ったモチベーションの状態で業務をおこなっても、生産性が低下するリスクが高くなるでしょう。
中には、離職する従業員が現れる可能性もあります。
特別休暇を付与したり、有給休暇を前倒しで付与したりと、前述した方法を検討することをおすすめします。
3-2. 欠勤扱いにする
計画年休の際に有給休暇がない従業員を、賃金の支払い義務がない「欠勤扱い」にすることも避けましょう。
例え、すでに有給休暇を消化しまったとしても、ほかの従業員が計画年休を享受しているなか、会社が決めた計画年休のせいで自分だけが欠勤扱いされるというのは納得できるものではありません。
強いて言えば、会社が計画年休を導入した時期が悪いので、不平等感や会社への不信感を持ってしまう可能性があります。
従業員のモチベーションが下がって職場の士気が低下すると、結果的に生産性にも悪影響を及ぼすかもしれません。また、従業員のやる気がなくなれば職場の雰囲気も悪くなるので、「欠勤」という扱いはやめましょう。
4. 計画付与時に有給休暇がない人によくある原因


計画付与時に有給休暇がない人によくある原因は、主に以下の3つです。
- 有給を使い切っている
- 入社して6ヵ月を経過していない
- 出勤日数が少ない
ここでは、これらの原因について解説していきます。
4-1. 有給を使い切っている
計画年休時に有給休暇がない人によくある理由として、計画的付与日が来る前に有給休暇を使い切っていることが挙げられます。
近年は有給休暇取得を推進する企業も増えており、取得することに後ろめたさがないような環境作りをしている会社もあります。そのため、有給休暇を早めに使う従業員も多くなっています。
また、急な病気や家族の看病などの事情で休まざるを得なくなった場合、使い切ってしまう従業員も少なくないようです。
いずれにしても、有給休暇取得への認識が変わってきているので、企業と従業員の間で十分なコミュニケーションを図り、計画的付与日までにどれだけの有給が残っているかを明確化しましょう。その後、前倒しで有給を付与したり、休日として扱うなど、労使協定に従いどのような対処をするか決めてください。
4-2. 入社して6ヵ月を経過していない
計画年休の実施時に有給休暇がない原因の一つに、入社から6ヵ月が経過していないことも挙げられます。
労働基準法において、有給休暇というのは入社から6ヵ月経過し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合に付与することと義務づけられています。そのため、入社直後の社員は有給休暇がまだ付与されていません。
有給休暇がない従業員は、基本的には計画年休の対象にならないので、新入社員や中途採用への対応を事前に決めておきましょう。中途採用をしない場合は、新入社員に有給休暇が付与される9月あたりを目安に計画年休を導入するなど、時期を考慮するのがトラブルを回避するポイントになります。
4-3. 出勤日数が少ない
計画年休時に有給休暇がない理由として、出勤日数が足りていないことも考えられます。
先述したように、労働基準法では年次有給休暇を付与する条件として「全労働日の8割以上の出勤日数」が求められているためです。上記の条件を満たさない場合、企業はその年に有給休暇を付与する義務はありません。
ただし、法律は最低基準のため、出勤率8割未満だとしても独自の規定で有給休暇を付与することは可能です。出勤日数が足りていないとしても、何年も真面目に働いてくれているのであれば、計画年休対象の従業員からの不満も抑えられるかもしれません。
そのため、ほかの従業員との公平性を考慮し、不公平感やトラブルを防ぐよう努めましょう。
5. 計画付与を導入する際の注意点


計画付与を導入する際は、以下の3点に注意しましょう。
- 労使協定を締結する
- 従業員の意志を尊重する
- 柔軟性をもたせる
それぞれ、詳細に解説します。
5-1. 労使協定を締結する
計画年休制度を導入する際には、労使協定の締結が欠かせません。労使協定の締結が必要なのは、計画年休は従業員が自由に取得日を決められず、企業側に委ねられるためです。
労使協定が締結されていない場合、企業は従業員に対して計画年休の取得を強制できません。計画年休制度自体が無効となり、従業員は通常の有給休暇の取得方法に戻ることになります。
また、労使協定を締結しないまま計画年休をおこなうと、労働基準法第39条第7項に違反することになり、30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。
計画年休に関しては、従業員との合意形成をしっかりとおこない、適切な手続きを踏みましょう。
参考: 労働基準法|e-Gov法令検索
5-2. 従業員の意志を尊重する
計画的付与制度を導入する際は、従業員の意志を尊重するようにしましょう。
有給休暇は本来、従業員が自身の判断で取得する権利であり、その取得時期も個々の事情に応じて選択できる制度です。それを、企業側の目的によって取得日を決定するのですから、従業員を考慮せずに導入してしまうと反発を招くことになります。
まずは、導入意義や目的をしっかり周知し、従業員に納得してもらったうえで方式を決定するのが望ましいでしょう。あくまでも、主導権は従業員にあるということを前提に計画することが重要です。
企業は、無理に制度を押し付けることなく、従業員の意向やニーズを十分に考慮して導入しましょう。
5-3. 柔軟性をもたせる
計画的付与日を労使協定で締結したら、会社側も従業員側も原則として変更することはできません。休暇日を変更する場合は、再度労使協定を締結する必要があります。
しかし、会社の状況や従業員のライフスタイルが突然変わるということも考えられるため、計画年休は柔軟性をもたせることが望ましいでしょう。
柔軟性をもたせるには、労使協定に「やむを得ない事由のため指定日を変更とするときは、会社は従業員代表と協議の上、前項に基づき定められた指定日を変更するものとする。」などの文言を入れるという方法があります。
自身の病気や家族の介護など、従業員が有給休暇を必要とした場合、いつでも対応できるようにしておけば、導入への抵抗感もなくなるかもしれません。
6. 計画年休制度は有給のない人の不利益を考慮して導入しよう


「年次有給休暇の計画的付与制度」は、従業員に確実に有給休暇を取得してもらうことができる制度です。また、企業側も「年5日の有給休暇取得義務」を遂行できる制度なので、双方にメリットがある制度ともいえるでしょう。
しかし、導入のタイミングによっては有給休暇が残っていない従業員がいる可能性があります。
そのため、計画年休制度を導入する際に有給休暇がない従業員には、公平性を維持しつつ労働環境を整える柔軟な対応が求められます。その際には、公平性を保ちつつ、特別有給休暇の付与や有給の前倒し付与、休業・休日としての取り扱いなどで対応しなければなりません。
また、制度導入時には有給のない人の不利益を考慮しつつ、労使協定の締結や就業規則への明記を忘れず、従業員との合意形成をおこなうことが大切です。



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