問題焦点型コーピングとは?導入方法や活用例を解説
更新日: 2025.5.27
公開日: 2025.5.16
jinjer Blog 編集部
現代社会では仕事や人間関係など、さまざまなシーンでストレスを感じる人が多くいます。ストレスとうまく付き合うためには、コーピングの理解と実践が重要です。
なかでも「問題焦点型コーピング」は、ストレスの原因そのものに対処するアプローチ方法として注目されています。企業は、コーピングについて理解を深め、従業員のストレス管理を徹底することが求められているでしょう。
本記事では、問題焦点型コーピングの定義やメリット・デメリット、導入方法について解説します。ストレスマネジメントを効果的におこないたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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1. 問題焦点型コーピングとは
問題焦点型コーピングとは、ストレスの原因を明確にし、問題を解決しようとする対処方法のことです。ストレスの根本に向き合い行動することで、精神的負担を軽減できます。
問題焦点型コーピングは、アメリカの心理学者リチャード・S・ラザルスが「ストレス理論」をもとに提唱し、1980年代から世界に広まりました。
例えば、業務量が多すぎてストレスを感じている場合、以下のような対処法が挙げられます。
- 上司に相談して業務を調整する
- スケジュール管理を見直す
問題の本質を捉えて自ら動けるようになるため、従業員の主体性を高める効果も期待されるでしょう。
2. 情動型コーピングやストレス解消型コーピングとの違い
情動型コーピングは、ストレスの要因そのものにはアプローチせず、ストレスによって生じた不安や怒り、悲しみなどの感情を緩和することが目的です。
ストレス解消型コーピングは、運動やリラクゼーションなどを通じ心身がリラックスできる状態に整えてストレスを緩和することを指します。
それぞれの違いは以下のとおりです。
アプローチの対象 | 主な目的 | |
問題焦点型コーピング | ストレスの原因 | 問題解決や状況の改善 |
情動型コーピング | ストレスに対する感情・考え方・捉え方 | 気持ちの整理・自己受容 |
ストレス解消型コーピング | ストレスによる身体的・精神的な疲労 | ストレスの緩和・解消 |
コーピングに良し悪しはありません。例えば、部下が落ち込んでいる場面では情動型やストレス解消型で気持ちを整え、問題焦点型で業務上の課題にアプローチするなど、状況に応じて使い分けることが大切です。
コーピングを組み合わせて精神的なバランスを取ると、より効果的にストレスを解消しやすくなるでしょう。
3. 問題焦点型コーピングの導入方法
問題焦点型コーピングの導入方法は、以下のとおりです。
- ストレスの原因を明確にする
- コーピングリストを作成する
- 対処法を検討し実践する
3-1. ストレスの原因を明確にする
まず、ストレスの原因を洗い出し明確にします。ストレスが何に起因しているのかを客観的に把握することが重要です。
従業員が自分で感じているよりも、大きなストレスを抱えていることも珍しくありません。現状を正確に把握するためにも、第三者としての視点で冷静に状況を分析しましょう。
「業務量が多い」「コミュニケーションがとりづらい」など、ストレスの元となる要因を明確にすることで、適切に対処できます。
3-2. コーピングリストを作成する
ストレスの原因を把握したら、問題を解決するためのコーピングリストを作成します。コーピングリストとは、ストレスに対する対処方法をリストアップしたものです。
コーピングリストを作成することで、ストレスを感じた時に、冷静に対応できるようになります。問題を解決するための対策をすべて書き出し、有効な対策をピックアップしましょう。
タスクを分担する、業務量を見直すなど、具体的な対策をリストアップしておくと効果的です。
3-3. 対処法を検討し実践する
コーピングリストを作成したら、有効な対策を選んで実践しましょう。従業員が実践可能な対処法をリスト化したうえで、取り組みやすいものから試してもらいます。
無理をせずに続けられる対処法を選ぶことで、ストレスが和らぎやすくなるでしょう。
実施したあとは面談などで確認し、必要に応じて人事側がサポートや調整をおこないます。PDCAサイクルのように、継続的に見直すことが重要です。
4. 問題焦点型コーピングのメリット
問題焦点型コーピングのメリットは、以下のとおりです。
- 意欲向上につながる
- 問題解決能力が高まる
4-1. 意欲向上につながる
問題焦点型コーピングを取り入れることで、従業員の意欲向上につながります。
問題焦点型コーピングは、ストレスの要因そのものに直接アプローチするため、成果がわかりやすいことが特徴です。
ストレスを緩和することで、仕事の業務効率やモチベーションの向上が期待できます。結果として、企業全体の生産性の向上につながるでしょう。
4-2. 問題解決能力が高まる
問題焦点型コーピングを取り入れることで、従業員一人ひとりの問題解決能力が高まります。
問題解決のノウハウや、同様の問題が再発したときにも応用できるスキルが身に付くため、長期的なストレスマネジメントが可能です。
問題焦点型コーピングはストレスの要因に直接働きかけるため、一時しのぎではなく根本的な改善が見込めます。ストレスをうまく対処できれば、従業員の心身の健康を維持しやすくなるでしょう。
5. 問題焦点型コーピングのデメリット
問題焦点型コーピングのデメリットは、以下のとおりです。
- 本質的な解決に至らないことがある
- 感情面のケアが疎かになる場合がある
5-1. 本質的な解決に至らないことがある
問題焦点型コーピングは、本質的な解決には至らないことがあります。
ストレスの原因そのものに働きかけて解決を目指すものの、必ずしもすべての問題が自分で解決できるとは限りません。
例えば、人間関係や組織の体制など、個人だけでは解決しにくい問題もあるでしょう。
また、問題解決に向けた行動には、ある程度の時間やエネルギーが求められるので、ストレスが強すぎる状況ではかえって負担になる可能性があります。
5-2. 感情面のケアが疎かになる場合がある
問題焦点型コーピングは、感情面のケアが疎かになる場合があります。
問題だけに焦点を当てすぎると、ストレスにともなう感情へのケアが後回しになり、精神的な疲れが蓄積する可能性があります。
本人が気づかないうちに疲れが蓄積すると、業務に対するモチベーションの低下や心身の不調につながるリスクもあるでしょう。
感情面のケアを同時におこなうためには、情動型コーピングを同時に取り入れるなどの対策をしましょう。
6. 問題焦点型コーピングの活用例
問題焦点型コーピングの活用例は、以下のとおりです。
- メンター制度や1on1ミーティングの導入
- コーピング研修やeラーニングの実施
- 職場環境の見直し
6-1. メンター制度や1on1ミーティングの導入
問題焦点型コーピングの活用方法として、メンター制度や1on1ミーティングの導入が挙げられます。
従業員がストレスの原因を把握し、問題解決に向けたアクションを取るためには、信頼できる相談相手がいることが重要です。
メンター制度を導入すれば、相談相手を明確にできるので従業員の不安や不満を解消しやすくなり、ストレス問題に対処しやすくなります。
1on1ミーティングを実施することで、従業員は自身の感情や問題を整理できるため、前向きな意識の転換やストレスの軽減につなげられるでしょう。
6-2. コーピング研修やeラーニングの実施
コーピング研修やeラーニングの実施も有効です。
問題焦点型コーピングを効果的に活用するためには、従業員自身がコーピングの方法を理解し実践できなければなりません。
具体的には、以下のような内容を含めると有効です。
- ストレスのメカニズム
- コーピングの使い分け方
- 問題焦点型コーピングの実践例
研修では、従業員同士で意見交換ができたり、新たな視点から気づきを得られたりします。eラーニングは、業務の合間やリモートでも学べるため柔軟な運用が可能です。
6-3. 職場環境の見直し
問題焦点型コーピングでは、ストレスの原因に働きかけることが重要なので、職場環境の見直しは不可欠といえるでしょう。
具体的には以下のような対策をおこなえます。
- 業務負担の偏りの調整
- コミュニケーションの促進
- ハラスメント防止策の強化
- リモートワークの導入
こうした取り組みによって、物理的・心理的な職場のストレス要因を軽減しやすくなります。あわせて、従業員が問題に主体的に向き合える職場環境づくりにもつながるでしょう。
7. 問題焦点型コーピングを活用し従業員のストレスを管理しよう
問題焦点型コーピングは、ストレスの要因に直接アプローチし、問題を根本的に解決する方法です。ストレスを適切に管理することで、従業員の意欲が向上し、結果として生産性の向上につながります。
企業が問題焦点型コーピングを促進することで、従業員は自発的に課題を見つけやすくなり、改善に取り組む土壌が育ちやすくなるでしょう。
また、情動型コーピングやストレス型コーピングを併用することで、感情面のケアや気分転換もしやすくなり、バランスの取れたストレス対処が可能になります。
従業員一人ひとりが安心して働ける環境をつくるためにも、問題焦点型コーピングの活用をぜひ検討してみてください。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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