定期昇給とは?ベースアップとの違いや平均昇給額を解説
更新日: 2025.5.27 公開日: 2025.5.20 jinjer Blog 編集部

「定期昇給とはどのようなものだろう」
「定期昇給とベースアップとの違いがわからない」
上記のように、定期昇給に関する疑問を抱える人事労務担当者は多いでしょう。
定期昇給とは、企業が一定期間ごとに従業員の昇給審査を行う制度です。従業員の評価査定を1年に1〜2回おこない、昇給するか判断する企業が一般的でしょう。
この記事では、定期昇給についてのより詳細な概要やベースアップとの違い、定期昇給による平均昇給額や、定期昇給実施のメリットやデメリットなどを解説します。
定期昇給制度の導入に悩む人事労務担当の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
当サイトではそのような企業のご担当者に向けて「人事評価の手引き」を無料配布しています。
資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 定期昇給とは?

定期昇給とは、企業が定める規定に基づいて、従業員の昇給審査の機会を定期的に設けることです。
一般的には年に1回〜2回程度、従業員の年齢や勤続年数、業務の成績によって昇給の判断をします。
なお、定期昇給はあくまでも昇給の機会を設ける制度であり、必ずすべての従業員を昇給させる必要はないことに注意しましょう。
また、定期昇給は年功序列制度とも異なります。昇給を判断する基準の中に業務成績が含まれていれば、年齢だけではなく業務成績によっても昇給判断ができるためです。
定期昇給は、必ずしも全従業員の昇給を保証するものではなく、定期的な昇給の評価機会を提供する制度であることを覚えておきましょう。
2. 定期昇給とベースアップとの違い

定期昇給とベースアップの違いは、昇給判断の基準や昇給の対象などです。定期昇給とベースアップの違いをまとめたものが下表です。
| 定期昇給 | ベースアップ | |
| 昇給判断の基準 | 個人の状況
(年齢、勤続年数、個人成績など) |
会社や社会の状況
(会社の利益の継続的な上昇、社会全体の物価高など) |
| 昇給の範囲 | 従業員一人ひとり | 従業員全体 |
| 昇給金額や昇給割合 | それぞれの従業員で異なる | すべての従業員で均一 |
定期昇給は個人の年齢や勤続年数、成績によって従業員一人ひとりに対して、昇給判断をすることが多いでしょう。昇給金額や昇給割合もそれぞれの従業員で異なります。
一方でベースアップは、企業全体の業績や社会状況によって、従業員全体の昇給判断をすることが一般的です。
昇給金額や昇給割合はそれぞれの従業員で均一で、例えば2%のベースアップであれば、すべての従業員が2%昇給します。
このように、個人で昇給を判断するか、従業員全体で判断をするかが定期昇給とベースアップの違いと考えればわかりやすいでしょう。
3. 定期昇給の平均額

2024年に経団連が公開した資料によれば、中小企業における昇給の平均額は10,712円で、大企業における昇給の平均額は19,210円です。
2024年は円安が加速し多くの商品の物価が高騰したことから、従来よりも多くの企業で例年より大きな昇給がおこなわれました。
定期昇給に加えてベースアップを実施した企業も多く、従業員の生活維持のために多くの企業が昇給をした結果、全体的な賃上げになったといえるでしょう。
参考:2024年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(最終集計)|週刊経団連タイムス
参考:2024年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(最終集計)|週刊経団連タイムス
4. 定期昇給実施のメリット

定期昇給を実施する企業側のメリットは以下の通りです。
- 給与の管理や変動予測がしやすい
- 従業員が定着しやすい
- 優秀な人材のモチベーションを保てる
企業側では、昇給のタイミングや金額を計画的にコントロールできるため、人件費の管理・予測が容易になります。
また、定期昇給制度があると従業員の定着率が高まり、能力に応じた昇給によって優秀な人材のモチベーション維持にも役立つでしょう。
5. 定期昇給実施のデメリット

定期昇給を実施する企業側のデメリットには、次のようなものがあります。
- 若手のモチベーションを維持しにくい
- 昇給しない従業員のモチベーションが低下しやすい
- 人件費を抑えることが難しい
年功序列型の定期昇給制度では若手がモチベーションを保ちにくく、成果主義型の定期昇給制度では昇給しない従業員のモチベーションが低下しやすいでしょう。
また、会社の業績悪化時に人件費の抑制が難しいことも定期昇給のデメリットと考えられます。
6. 定期昇給の計算方法

定期昇給の計算方法は次の二つの式で表せます。
- 昇給額(円) = 昇給前の給料 × 昇給率 – 昇給前の給料
- 昇給率(%) = (昇給後の給料 – 昇給前の給料) ÷ 昇給前の給料 × 100
例として、毎年の昇給率を2%、昇給前の給料が25万円の場合の昇給額を計算した表が下表です。
| 勤続年数 | 給料 | 昇給率 | 昇給額 | 初年度との差分 |
| 1年目(初年度) | 25万円 | 初年度のため昇給なし | 初年度のため昇給なし | 0円 |
| 2年目 | 25万5千円 | 2% | 5千円 | 5千円 |
| 3年目 | 26万100円 | 2% | 5千100円 | 1万100円 |
| 5年目 | 27万608円 | 2% | 5千306円 | 2万608円 |
| 10年目 | 29万8千773円 | 2% | 5千858円 | 4万8千773円 |
毎年2%の昇給率で計算すると、初年度25万円の給料が10年後には約30万円になり、月額約5万円の増加となります。年収では約60万円の昇給に相当します。
また、同じ昇給率でも元の給料自体がより大きな金額であれば、昇給額はさらに大きくなることにも留意する必要があります。
7. 定期昇給実施の注意点

定期昇給実施の注意点として、代表的なものは次の三つです。
- 昇給の時期や評価基準を明確にしなければならない
- 昇給の規定は法令を遵守する
- 長期的な視点から定期昇給の規定を定める
7-1. 昇給の時期や評価基準を明確にしなければならない
定期昇給を実施する場合は、昇給の時期や評価基準を明確にしたうえで、すべての従業員に通知しなければなりません。
定期昇給について不満や誤解があると、定期昇給のメリットである従業員のモチベーションの維持や長期的な雇用維持が難しくなるためです。
また、定期昇給が必ず昇給するものではないことも同時に従業員に周知するとよいでしょう。
周知するだけでは従業員が理解しているか不安な場合は、規定の中で明確に昇給しない条件を設けておくことも有効です。
7-2. 昇給の規定は法令を遵守する
昇給の規定は必ず法令を遵守したものにする必要があります。
性別や国籍、勤務体系などを理由として昇給判断を見送るような規定を定めた場合、違法となり処分の対象になる可能性があるためです。
ただし、パートやアルバイトスタッフ、契約社員などの非正規雇用の方は、正社員とは扱いが異なる可能性もあるため、顧問弁護士や法務担当と相談しながら規定を定めましょう。
7-3. 長期的な視点から定期昇給の規定を定める
定期昇給の規定を定める場合は、長期的な視点をもつ必要があります。
なぜなら、定期昇給規定を定めた後に定期昇給を廃止することは、従業員に対する不利益変更となり非常に難しいからです。
従業員に対する不利益変更をおこなう場合は、原則としてすべての従業員の同意が必要になります。
同意が得られなければ、定期昇給制度を継続するか、従業員に発生する不利益の有無や大きさ、就業規則を変更する高度な必要性、もしくは代替措置の用意などが必要です。
このように、定期昇給制度を開始すると廃止することは非常に難しいため、長期的な視点をもって制度の導入を始めましょう。
8. 定期昇給で人件費を効率的に管理しよう

定期昇給とは、企業の規定に基づき定期的な従業員の昇給審査をおこなうことです。
必ずしも定期的に昇給をしなければならないものではなく、昇給基準をあらかじめ定めておくことで、昇給率や昇給額をある程度コントロールできるでしょう。
定期的に昇給機会を設けることで、企業側は人件費の管理と予測が容易になるほか、従業員の長期雇用や優秀な人材のモチベーション維持ができるなどのメリットがあります。
ただし、一度定期昇給を開始すると廃止することは難しいため、長期的な視点で導入を検討しなければなりません。
人件費を効率的に管理したい人事労務担当者は、ぜひ定期昇給で人件費の管理や予測を効率化しましょう。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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