エンゲージメントとは?重要性や向上させる方法を徹底解説
更新日: 2024.7.2
公開日: 2022.11.7
OHSUGI
「契約」や「約束」といった意味があるエンゲージメントという単語は、ニュアンスとしては「信頼関係」や「深い絆」と捉えられますが、使うシチュエーションによって意味が異なります。
人事の場でも「エンゲージメント」を使うことがありますが、企業で使う場合には「企業と従業員の関係性」という意味になり、さらに深く掘り下げると「企業と従業員の信頼関係」もしくは「企業と従業員の深い絆」となります。
企業の成長のためには、従業員との信頼関係や絆がとても重要になるので、人事におけるエンゲージメントを正しく把握する必要があります。
ここでは、人事におけるエンゲージメントの重要性と向上させる方法などについて解説します。
目次
従業員の定着率の低さなどが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、「従業員満足度のハンドブック」を無料でお配りしています。
従業員満足度調査の方法や調査ツール、調査結果の活用方法まで解説しているので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方はこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. エンゲージメントとは?
エンゲージメントを翻訳すると、契約や約束といった意味になります。マーケティング領域においては、ユーザーが企業や製品に対して持つ愛着を示す言葉です。このように様々な意味を持つエンゲージメントという単語は、人事の場でも使われることがあります。
人事におけるエンゲージメントとは、社員が会社に持つ愛社精神や思い入れを意味します。
社員が会社に対して愛社精神を持つことで、会社と一体となって同じ目標に向かって動いていけます。
1-1. ワークエンゲージメントとの違い
「エンゲージメント」と似た言葉に「ワークエンゲージメント」というものがあります。
エンゲージメントにワークをプラスしただけの言葉なので、同じ意味だと思う方もいるかもしれません。しかし、エンゲージメントとワークエンゲージメントは、対象が異なります。
エンゲージメントは会社が対象ですが、ワークエンゲージメントは仕事・業務が対象です。
ワークエンゲージメントは、下記の3つの要素で構成されています。
- 活力(仕事に取り組むエネルギー)
- 熱意(仕事に挑戦する意欲)
- 没頭(仕事に取り組むことへの幸福感)
つまり、仕事に対するポジティブな心理状態を表わすのがワークエンゲージメントなので、会社への信頼感や絆を感じるエンゲージメントとは意味が異なるのです。
1-2. ロイヤルティとの違い
ロイヤルティ(Loyalty)を翻訳すると「忠誠心」という意味です。人事におけるロイヤルティは「従業員の会社に対する忠誠心」といった意味合いになります。
一方で、人事におけるエンゲージメントは「会社と従業員が相互に歩み寄る」という意味合いが強いです。エンゲージメントは、企業から従業員への一方向ではなく双方向の関係にあるのが特徴です。
2. 企業におけるエンゲージメントの定義
エンゲージメントというのは、シチュエーションや立場によって意味合いや使い方が変わってきます。
企業におけるエンゲージメントは、「従業員エンゲージメント」と「顧客エンゲージメント」の2つに分けられ、それぞれに定義を持って使われること多い傾向にあります。
ここでは、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの定義について解説していきます。
2-1. 従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、従業員と企業の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合い、共に必要な存在となっている関係を指します。従業員は会社の理念に共感しており、貢献する意欲を持っています。また会社は、従業員が期待しているものを提供します。双方が貢献し合っている状態であるため、会社の業績に影響をもたらします。
従業員エンゲージメントと類似した言葉に「従業員満足度」という単語があります。
「従業員満足度」は会社から与えられた待遇に対して、従業員がどれだけ満足しているかを示した度合いです。「従業員エンゲージメント」と比べ、会社から従業員へ一方向の関係性である点が違いです。特徴としては、業績に影響をもたらしにくいといわれています。
2-2. 顧客エンゲージメント
顧客エンゲージメントとは、企業や製品と顧客の関係を表す概念です。
長期間にわたって、顧客と企業が親密な関係を築き上げることで生まれる、信頼性や絆といった意味があります。顧客エンゲージメントが高いと、商品の購入の頻度が増えたり、友人知人にサービスの紹介をしてくれたりするなど、顧客が商品に対してポジティブな行動がしてくれる状態のことを表わします。
また、SNSを用いたWebマーケティングでは、いいね!の数やコメントの量を指標として、エンゲージメントを測ります。
3. エンゲージメントを高めるメリット
企業によっては、「信頼や絆がなくても、仕事さえきちんとしてくれればよい」という考え方もあるかもしれません。
しかし、エンゲージメントの向上をおこなっている会社の多くは、エンゲージメントによるメリットを実感しているといわれています。
エンゲージメントのメリットは、離職率の低下や生産性の向上などが挙げられるので、人材の確保や企業の成長という嬉しい効果が期待できます。しかし、これ以外にもたくさんのメリットがあるので、ここで1つずつ解説していきます。
3-1. 離職率の低下
エンゲージメントの向上における一番のメリットは、離職率の低下です。
厚生労働省が発表した「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況」によれば、令和3年上半期に、個人的理由で離職した人は、調査対象となっている企業のうち5.7%でした。前年同期と比較すると0.5%低下しているものの、社員の離職は企業に痛手となるケースがあります。
人材が不足すれば新たな求人・採用の手間がかかりますし、優秀な人材を確保できる保証もありません。そもそも、離職率が高い会社には求人も集まりにくいので、慢性的な人手不足が続くリスクも考えられます。
エンゲージメントが高い会社であれば、このような離職を食い止める効果が期待できるので、向上のための対策をおこなうのは決して無駄なことではありません。
3-2. 社員の生産性の向上
エンゲージメントを高めることで、生産性の向上も期待できます。
社員のエンゲージメントが高まると、企業の目標をしっかりと理解し、全体が掲げている目標に向かって能動的に行動することも可能です。
例えば、上司が指示しなくても任せられた業務に対しての工夫を凝らすなどして、効率的に作業を進めていく可能性があります。
社員の生産性が向上すれば、結果的に企業の利益につながるでしょう。
3-3. 優秀な人材の確保
社員のエンゲージメントを高めるためには、企業としての目的やビジョン、社員に求めることなどを明確にしたうえで伝えることが求められます。
目的やビジョンが明確になっていることは、既存の社員だけではなく、新入社員の採用にも効果的です。
目的やビジョンがあいまいでは、応募する側もどのような人材を求めているのか理解できませんし、面接する側も自社に適しているのか判断するのが難しいため適切な人材を見極められません。
採用面接において、自社がどういった目的としているか、どういった社員を求めているかを明確に伝えることで、自社に適した新入社員の獲得が可能になります。
3-4. 顧客満足度の向上
社員のエンゲージメントが高まると、顧客満足度の向上が期待できるのもメリットです。
エンゲージメントが高いと、顧客に対して丁寧な接客をしたり、自ら知識を得ることで商品・サービスをわかりやすく説明したりできるようになります。顧客は商品・サービスだけでなく、接客態度を重視するので、ハイクオリティな接客ができると満足度が大幅にアップします。
顧客満足度が向上すれば、新規顧客の紹介やリピーターなどが増えるので、結果的に企業の成長につながるというメリットもあるのです。
3-5. 人事施策の効果の可視化
社員のエンゲージメントが向上しているかを調査すると、教育制度や人材配置などの人事施策がどのくらい効果を出しているかが可視化できるというメリットがあります。
エンゲージメントが上がっていれば、適切な教育ができている、配置に満足していると判断できます。逆に、エンゲージメントが低ければ、教育制度や人材配置を改善した方が良いという判断ができます。
人事施策の効果を正確に測る方法はありませんが、エンゲージメントの高さをチェックすることで、改善が必要か不要かを的確に判断できるというのは大きなメリットといえるでしょう。
当サイトでは、従業員満足度調査の方法や結果の活用方法をわかりやすく解説した資料を無料でお配りしています。
従業員のエンゲージメントをどのように把握してよいのかわからない方は、こちらから「従業員満足度のハンドブック」をダウンロードしてご活用ください。
4. エンゲージメントを把握する方法
- 働きやすさ
- 働きがい
- ビジョンへの共感
これらの要素にもとづいて調査をすることで、エンゲージメントが測れるので、ここでは「働きやすさ」と「働きがい」の調査方法を解説します。
「ビジョンへの共感」は人事評価に基づいて調査をするのが一般的なので、人事評価制度を導入していない場合は下記の記事を参考に導入を検討してみてください。
人事評価制度の作り方!納得感のある評価基準でモチベーションアップ
4-1. 「働きやすさ」は社員満足度をヒアリング
働きやすさを把握するには、社員に会社や業務への満足度をヒアリングしましょう。
その際の質問としては、以下のような項目が挙げられます。
1. 業務に必要な設備が整っているか
2. 業務過多がないか
3. 業務内容が合っているか
4. なにかあった際の相談先があるか、相談しやすい環境か
5. 給与を含めた評価に納得しているか
社員満足度はオフィスの環境や業務の負荷、給与など幅広い視点から把握するのがおすすめです。他にも、自社でヒアリングしておいた方がよい項目があれば、質問に加えてください。
4-2. 「働きがい」は「Q12」で把握
アメリカのコンサルティング会社、ギャラップ社が提唱しているのが「Q12」です。
「Q12」は次のような12の質問を、5段階で回答する調査方法です。
1. 仕事上で、自分が何を期待されているかがわかる
2. 自分の仕事を正確に行なうために必要な設備や資源がある
3. 仕事上で、自分の最も得意とすることを行う機会が毎日ある
4. 直近一週間で、仕事について誰かから褒められたり、認められたりした
5. 上司または職場のスタッフが、自分を一人の人間として気遣ってくれている
6. 仕事上で、成長を励ましてくれる人がいる
7. 仕事上で、自分の意見が考慮されていると思う
8. 自分の会社の使命/目標は、自分の仕事を重要なものに感じさせてくれる
9. 同僚は、質の高い仕事をすることに専念している
10. 仕事上で、最高の友人と呼べる人がいる
11. 半年の間に、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
12. 一年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った
この点数が高いと、社員が前向きな姿勢で業務をこなしていて、自分が役立っていることを実感できている状態にあるといえます。
5. エンゲージメントを向上させる方法
向上させるためには、従業員の価値観を把握したり、企業の理念を丁寧に伝えるなどさまざまな対策が必要です。
ここでは、多くの企業でおこなわれているエンゲージメント向上の方法を紹介するので参考にしてみてください。
5-1. 従業員の価値観を把握する
エンゲージメントを向上させるためには、従業員の価値観を把握することが重要です。
価値観は人によって異なるため、アンケートなどで把握するのではなく、1on1のミーティングでおこないましょう。
ミーティングの際には、社員とコミュニケーションを取り溝を埋めることに加えて、モチベーターとして成長を促すことも大切です。
また、リアルタイムで従業員の価値観を把握することで、良い点だけでなく課題も浮きぼりにできるので、解決に向けての対策が早期に打ち出せます。
5-2. 企業の理念や方向性を共有する
エンゲージメント向上のためには、企業の理念や方向性を共有することも重要です。
「なぜこの業務をおこなうのか」「目指すべき場所はどこなのか」「今何をすべきなのか」が分からないと、適切かつ効率的な業務はおこなえません。
それを示したのが、ビジョンやミッションやバリューです。
ビジョンやミッションなどが無かったり、従業員に浸透していなければ、人や部署によって判断基準がバラバラになり、何をよりどころに業務を進めればいいのか不安や不信感が蓄積するかもしれません。
従業員に企業の理念や方向性を理解・共感してもらうことで、個々人が目指すべき姿やそれにむけて何をすればいいのか自ら考え、行動できるようになります。
また、自ら考え行動した結果を会社が評価してくれることで業務への意欲が沸き、最終的には企業への愛着へと繋がるでしょう。
5-3. ワークライフバランスを充実させる
ワークライフバランスは、エンゲージメントのひとつの要素である「働きやすさ」に関係します。
社員のワークライフバランスを充実させるためには、テレワークやフレックスタイムといった多様な働き方の導入を検討してみましょう。
例えば、テレワークを導入することで社員の睡眠時間向上が期待できます。
厚生労働省が発表した「令和4年版過労死等防止対策白書」によれば、テレワークを毎日実施している企業と未実施の企業では以下のとおり社員の睡眠時間が異なりました。[注2]
7時間以上8時間未満 |
8時間以上 |
|
テレワーク毎日実施 |
22.3% |
8.0% |
テレワーク未導入 |
15.9% |
4.0% |
睡眠は生産性と関係しているとされているため、社員が十分な睡眠を得られる職場は効率的な業務が期待できます。
5-4. 社員同士のつながりを強化する
上司や同僚、役職者とメンバーの間に隔たりをなくすという取り組みも、社員が自社に対して帰属意識を持ちやすくするため、エンゲージメント向上が期待できます。
社員同士の風通しの良し悪しは、エンゲージメントに大きく影響します。上司や部下とのコミュニケーションがうまくいかない、同僚なのに協力体制が取れないなどの悩みがあると、エンゲージメントは低下しやすいです。
しかし、つながりを強化するサポート体制が整っていたり、コミュニケーションを取れる場が設けられたりすれば、自分からアクションを起こせない社員の不満を解消出来る可能性があります。
役職に関係なく同様のテーマについて、忌憚のない意見を交わし合うことで、共通の目標に向かっていけるでしょう。
5-5. 教育・研修を実施する
企業の理念やビジョン、目指している姿を従業員に理解してもらう場の提供として、教育や研修を実施するのもエンゲージメント向上に効果的です。
自分の仕事がどのように企業に還元されるのかを理解してもらうことで、エンゲージメントの向上に繋がります。
また、従業員を評価する管理者層へ、マネジメントスキルの強化を狙いとしたキャリアアップに関する研修や教育プログラムの受講が出来る環境を用意するのもいいでしょう。
企業が従業員に対して、挑戦や成長できる機会を用意しておくことで従業員の主体性が高められ、エンゲージメントの向上に繋がります。
6. エンゲージメントを高めて生産性をアップ!
エンゲージメントを高めるには、多様な働き方の導入や従業員が自由に意見交換できる場を設けるなどの改革が必要です。また、的確な改革をおこなうには、現時点での課題の洗い出しもしなければなりません。
こういった改革には手間も時間もかかるので、先延ばしにしたくなるかもしれませんが、エンゲージメントの向上は会社の成長に直結します。そのため、例え時間がかかるとしても改善に取り組み、従業員が働きやすく生産性を高められる職場を目指しましょう。
従業員の定着率の低さなどが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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従業員満足度調査の方法や調査ツール、調査結果の活用方法まで解説しているので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方はこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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