試用期間でも社会保険は必要?加入対象や罰則について解説
更新日: 2025.12.24 公開日: 2022.9.16 jinjer Blog 編集部

企業は、本採用をする前に試用期間を設けているのが一般的です。試用期間中と本採用の労働契約の違いは、広い範囲での解雇が可能だという点です。
それ以外は基本的に本採用と同等の契約になりますが、社会保険についてはどうなっているのでしょうか。
結論から言うと、試用期間中であっても要件さえ満たしていれば社会保険に加入させる義務があります。
そこで今回は、試用期間中の社会保険の加入について、また加入対象や対象外となる条件、加入義務違反をした場合の罰則などを解説します。
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 試用期間でも社会保険は必要?


試用期間中でも、給料が発生する雇用形態であれば社会保険の加入義務は発生します。社会保険とは一般的に厚生年金保険と健康保険です。そのため、担当者は速やかに加入手続きを完了させる必要があります。
ここでは、試用期間について、また加入義務が発生する日を解説していきます。
1-1. 試用期間とは
試用期間とは、文字通り「お試し期間」のことです。試用期間は労働者の能力や資質、性格などを企業が把握し、従業員としての適性を吟味するための期間とされています。試用期間の長さは法律で決まっておらず、就業規則によって自由に決めることが可能です。一般的には6ヵ月以内に定めており、なかでも「3ヵ月」と設定している企業が多いでしょう。
試用期間中は、解雇する権利を留保している状態となっており、「解約権留保付の労働契約」と理解されています。
1-2. 試用期間中の従業員が加入する社会保険の種類
試用期間中であっても、社会保険に関しては一般の正社員やパート・アルバイトと同じ扱いとなります。ここで、社会保険について今一度おさらいをしておきましょう。
社会保険と言うと一般的には、健康保険、厚生年金保険、介護保険を指すことが多いです。ただし、これは社会保険の狭義を指します。広義ではさらに雇用保険と労災保険が加わります。
試用期間中の従業員は、健康保険、厚生年金保険、介護保険に加えて、雇用保険、労災保険も加入条件を満たしていれば、加入手続きをおこなわなくてはいけません。
1-3. 加入義務が発生する日
社会保険の加入義務が発生するのは、原則として入社した初日です。
「まだ試用期間中だから」と対応しないでいると罰則対象になるので注意しましょう。
また、社会保険の加入は法律によって決められているため、従業員が加入を希望しなかったとしても、義務が免除されるわけではありません。社会保険未加入の労働者がいる場合、従業員個人だけでなく企業にも大きなリスクが発生するので、加入義務が発生する日を間違えないようにしてください。
2. 試用期間の社会保険への加入対象


本採用を前提とした試用期間中は、原則一日目から加入義務が発生しています。しかし、すべての企業に加入義務があるわけではありません。
ここでは、試用期間の社会保険への加入対象について説明します。
2-1. 加入義務が発生する要件
企業だからといって、必ずしも社会保険加入義務が発生するわけではありません。
- 株式会社などの法人事業所(事業主一人だけのケースも含む)
- 従業員が常時5人以上在籍する個人事業主(一部業種を除く)
以上の要件を満たすことにより強制適用事業所となるので、例外なく社会保険への加入対象となります。
ただし、飲食店や理容業、農林・水産・畜産業、接客娯楽業、お寺や神社といった宗教法人などは「非適用業種」となります。そのため、個人事業主であって従業員が常時5人以上在籍しているとしても、加入対象にはなりません。
なお、労働保険(雇用保険・労災保険)は、正社員やパート・アルバイトなど雇用形態に関係なく、従業員を1人でも雇っている場合は強制的に加入しなくてはいけないため注意しましょう。
2-2. 試用期間が短い場合も加入する?
例えば「試用期間が2ヵ月だったら社会保険に加入しなくてよい」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、正確には誤りです。
期間が短く、加入しなくても良い場合とは、「2ヵ月以内の契約」で「延長する見込みがない場合」に限ります。試用期間が2ヵ月だったとしても、その後に正式雇用する可能性があれば「短期の有期契約」に当てはまらないため、社会保険の加入義務は発生することに注意しましょう。
2-3. パートとアルバイトの加入条件
パートやアルバイトなど、短時間労働者の雇用の場合にも試用期間を設けることが可能です。この場合であっても、社会保険の加入義務は発生します。ただし、パートやアルバイトの場合は加入義務の条件が正社員と異なるのでチェックしておきましょう。
勤務日数と勤務時間が正社員の3/4以上
パート・アルバイトの社会保険加入には、フルタイム正社員の勤務日数や勤務時間が関係します。
加入対象となるのは、1ヶ月の勤務日数と1日または1週間内の勤務時間が、フルタイム正社員と比較して4分の3以上(75%以上)だった場合です。
つまり、勤務日数と勤務時間両方が正社員の75%以上でなければ、加入対象にならないということです。
例えば、勤務日数が正社員と同じでも、勤務時間が4分の3に満たないと適用対象外です。逆に、勤務時間が4分の3以上であっても、勤務日数が満たないようであれば加入対象にはなりません。
事業所の規模によって変わる
2022年から2024年にかけて「従業員規模における被保険者の適用拡大」が実施されているため、上記の条件を満たしていない場合でも、企業の規模などによって加入できる可能性があります。
2022年9月までは、社会保険加入義務の対象となる企業の規模は、「常時501人以上の被保険者が在籍している企業」とされていました。しかし、制度改正により2022年には「常時101人以上の被保険者が在籍している企業」2024年10月からは、51人以上となっています。
この要件に該当する企業の場合には、次の3つの条件を満たした方も社会保険の加入対象です。
- 従業員数が51人以上である
- 1週間当たりの所定労働数が20時間超
- 残業代や交通費を除く一ヶ月の賃金が88,000円以上
- 学生じゃない(夜間・通信・定時制はOK)
- 2ヵ月を超える雇用の見込みがある
ただし、1つでも条件に当てはまらない場合は加入対象にはなりませんので注意が必要です。とくに社会保険料は給与から控除して支払うため、この法改正によって適用範囲が変更されることによって対象従業員の給与にも大きく関係します。確認ミスや漏れによるトラブルがないように対応しなければなりません。
当サイトでは「社会保険料を抜けもれなく控除したい」という担当者の方の役に立つ、最新の法改正に対応した「社会保険の加入条件ガイドブック」を無料配布しております。 ガイドブックでは加入条件をわかりやすく図解していますので、参考にしたい方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
3. 社会保険の加入条件


社会保険というのは、健康保険と厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険の総称です。このように5つの種類に分かれているため、細かくみていくとそれぞれの保険で加入条件が異なります。「社会保険の加入条件」とかぶる部分もありますが、ここでは「健康保険・厚生年金保険」と「雇用保険・労災保険」の加入条件を紹介します。
3-1. 健康保険・厚生年金保険の場合
健康保険・厚生年金保険の適用事業所となっている企業の従業員は、健康保険の場合は75歳未満の従業員、厚生年金保険の場合は70歳未満が被保険者となります。パートタイマーやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合は被保険者として扱われます。
また、2024年10月からは51人を超える企業に勤務している場合、1週間の所定労働時間が4分の3未満であっても、前述している「事業所の規模によって変わる」の3つの要件すべてに該当する場合は被保険者となります。
加入手続きの方法は正規雇用と同じであるため、加入義務が発生した日から5日以内に手続き済ませるようにしましょう。
3-2. 雇用保険・労災保険の場合
雇用保険の場合、正社員や臨時雇い、アルバイト・パートなどの名称や雇用形態は関係なく、すべての従業員が被保険者です。
ただし、以下の要件に当てはまる人は適用除外となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
- 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
労災保険では、労働の対価として賃金をもらっているのであれば、すべての従業員が対象となります。そのため、労働の対価として賃金もらっているのであれば、すべての従業員が保険給付の対象です。そのため、加入手続きを従業員ごとにおこなう必要はありません。
ただし、初めて従業員を雇用する場合は労働基準監督署に届け出る必要があります。手続きの期日は、雇い入れ日の属する月の翌月 10 日までのため、期日に間に合うよう手続きをしましょう。
4. 社会保険加入対象外の条件


基本的には、給与を支払っている以上、試用期間中であっても労働者を社会保険に加入させる義務があります。
正社員のケースでいうと、健康保険・厚生年金保険への加入が必須になっており、試用期間と求められる要件はありません。
しかし、以下のように社会保険に加入できない要件もあるので注意が必要です。
- 日々雇い入れられる場合(1ヵ月を超えて引き続き雇用される場合は除きます)
- 2ヵ月以内の期間を定めて雇用されている場合(2ヵ月を超えて引き続き雇用されるに至った場合は除きます)
- 事業所または事務所で所在地が一定しない場合
- 季節的業務に雇用される場合(継続して4ヵ月を超える雇用の場合は除く)
- 臨時的事業の事務所等で雇用される場合(継続して6ヵ月を超える雇用の場合は除く)
- 国民健康保険組合の事業所に臨時に雇用される場合
- 後期高齢者医療の被保険者が臨時雇用される場合
つまり、臨時の雇用や季節雇用、高齢者の臨時雇用の場合には社会保険に加入できないと理解しておけばわかりやすいでしょう。
ただし、他にも対象外になる条件はいろいろあります。健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険によって適用除外の要件はそれぞれ違うので、その都度確認するようにしましょう。
5. 試用期間に社会保険に加入していない場合の罰則


社会保険加入対象となる従業員がいる場合、本人の希望に関係なく、企業は従業員を加入させる必要があります。故意であってもなくても、未加入の場合は罰則があるので注意してください。
ここでは、未加入の場合の罰則について説明します。
5-1. 遡及適用
調査によって、加入義務があるにもかかわらず加入していなかったことが明らかになった場合、最大で過去2年分遡って社会保険に加入することになります。
保険料は2年間にさかのぼって徴収されます。毎月きちんと支払う場合と遡及して徴収される場合、どちらも支払う金額は変わりません。
遡及して保険に加入する場合に、2年分まとめて支払う必要があります。未加入者が多かった場合、一回に支払う金額が膨大なものになる場合もあり、企業経営の観点から考えると大きな痛手となるでしょう。
また、罰則に関しては健康保険法第208条により、試用期間であっても社会保険に加入させるように義務付けられているので、未加入の場合は違法になります。
罰則は、6ヵ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となるので注意しましょう。
同様に、雇用保険に関しても未加入の場合は、雇用保険法第83条により6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となるため、加入漏れがないよう留意しなくてはいけません。
5-2. 延滞金支払い
社会保険に加入していても、保険料の支払いが滞っていた場合には延滞金がかかってきます。
支払期間を過ぎても納付していない場合は督促状が届きます。督促状に記載されている期日を過ぎても未納だと、経過した日数に応じた延滞金が課されるため注意しましょう。
6. 遡及適用された場合の流れ


試用期間中に社会保険の加入手続きを怠った場合、後に年金事務所などの調査で発覚すると、未加入期間に対して「遡及適用」が行われます。訴求適用は本来加入すべき日までさかのぼって強制的に社会保険に加入させる措置です。遡及が命じられると、会社・従業員双方に金銭的負担が発生するため、対応手順を正確に理解しておきましょう。
6-1. 遡及保険料の計算と通知
健康保険法および厚生年金保険法では、社会保険料の時効が2年と定められています。そのため、未加入が判明した場合、最大で2年前まで遡って保険料を再計算しましょう。例えば、試用期間終了後に加入させていた場合でも、加入要件を満たした入社日に資格取得日が修正されます。
遡及期間中の健康保険料と厚生年金保険料については、会社負担分と従業員負担分の合計額が算出され、年金事務所から事業主に一括納付が命じられます。
また、雇用保険も同様に2年を上限として遡及加入が可能です。2年以上さかのぼる場合は、実際に保険料が支払われていたことを証明するため、賃金台帳などの提出を求められる場合があります。
6-2. 従業員負担分の回収
会社は、遡及保険料をまず全額立て替えて納付し、その後、従業員負担分を本人から徴収します。徴収方法は一括または分割が可能ですが、長期間の遡及になると従業員側の負担が大きく、支払いをめぐってトラブルに発展するケースもあります。そのため、徴収計画を丁寧に説明し、合意のうえで進めましょう。
また、在職中の従業員であっても、給与天引きなどの回収方法には上限があるため、労使双方の合意が欠かせません。
6-3. 会社負担分の経理処理
遡及適用によって会社が負担する保険料は、通常の社会保険料と同様に「法定福利費」として経費処理されます。支払年度が異なる場合は、修正仕訳が必要になることもあります。特に、過年度の保険料を当期にまとめて支払う場合には、経理上の期間帰属に注意が必要です。
また、納付が遅延したことで発生する延滞金や加算金がある場合は、これらを損金として処理できるかどうかを税理士などに確認すると安心です。
7. 試用期間中の従業員にも社会保険の加入手続きをしよう


試用期間中の社会保険は、加入条件が決まっているものの、基本的には加入となることが多いため未加入にならないよう注意する必要があります。ただし、条件に該当しなければ加入対象外となる「例外」もあるので、特にパートやアルバイトなどは条件に照らし合わせてみて判断するようにしましょう。
社会保険は、企業や従業員の判断で加入するものではないため、未加入だと違反になってしまうことがあります。しかし、社会保険に関する違反を避けることで、企業にとって不利益はなくなります。
企業と労働者がお互いに気持ちよく働くためにも、社会保険加入要件について正しい知識をもっておきましょう。



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