法人カードは必要か?いらないか?利用すべき理由や個人利用のリスク
更新日: 2024.2.29
公開日: 2022.1.13
jinjer Blog 編集部
法人カードは、一般的な企業だけでなく、フリーランスやスタートアップ企業も発行・活用することが可能です。
ただ、これまで個人向けクレジットカードを利用してきた方は、「わざわざ法人カードを発行する必要があるの?」と疑問を抱くことも多いでしょう。
そこで今回は、フリーランス・スタートアップ企業、一般企業などケース別に法人カードの必要性をご説明すると共に、法人カードを個人利用するリスクや、法人カードを選ぶポイントについてまとめました。
目次
1. 法人カードはいる?いらない?
法人カードを自社で採用するか、しないかを考える上で、法人カードを利用すると会社にとってどのような影響があるのかを理解する必要があります。この章では法人カードを利用するメリットとデメリットを解説します。
1-1. 法人カードのメリット
法人カードを利用するメリットは大きく分けると下記の4つです。
1. 経理業務全体の効率化
2. ポイントやマイルなどを貯めて活用できる
3. 付帯サービスとして各種優待券や保険などを活用できる
4. 資金繰りに余裕を持たせられる
このように法人カードを導入すると全体の業務を効率化でき、また付帯サービスもあるので福利厚生のような形で活用すれば、社員のモチベーション増加にもつながります。
1-2. 法人カードのデメリット
その一方で、法人カードを利用するデメリットもあります。
1. 年会費がかかる
2. 法人カードを管理する体制が必要
3. 社員によるカード不正利用のリスク
法人カードは一般的に年会費を支払うケースが多く、経費がかさんでしまうことがあります。年会費が無料の法人カードもあるようですが、数としては少ないため、自社のニーズにマッチするカードを探すのは難しいかもしれません。
また、手元に現金がなくても支払いができるため、「社員が正しく利用しているか」「私的な利用をおこなってないか」など、不正利用を防止するためのチェックも必要です。
1-3. 法人カードの普及状況
法人カードを導入するにあたり、他社の利用状況も気になるところです。
(一社)日本クレジット協会が公表している「クレジットカード発行枚数調査」によると、2022年3月末時点での法人カード発行枚数が1,145万枚であったのに対し、2023年3月末時点では1,201万枚と前年よりも約5%発行枚数が増加しています。
なお、法人カードの発行枚数は右肩上がりで上昇しており、9年前と比較すると約88%も増加しています。この数字だけ見ても、法人カードを導入する企業は年々広がりつつあるようです。
2. ケース別!法人カードが必要な理由
法人カードを経費精算に利用するか否かは事業主の自由ですが、一般的にはフリーランスでも大手・中小企業でも、法人カードを利用した方が多くのメリットを得ることができるといわれています。
ここでは、法人カードを利用した方が良い理由を、フリーランス・スタートアップ企業・一般企業の3つにわけてご紹介します。
2-1. フリーランスに法人カードが必要な理由
フリーランスは社員を雇用せず、ひとりで事業をおこなっているので、個人向けクレジットカードを利用して経費精算している方も少なくありません。
しかし、個人カードを経費の決済に利用すると、プライベートの利用分と経費を区別しにくくなり、確定申告で経費を計算・申告する際にかなりの手間と時間がかかってしまいます。
仕事専用の口座を作った上で法人カードを発行すれば、私的な利用分と経費の決済を完全に区別して管理できるため、確定申告がぐっと楽になります。
また、これまで経費を現金取引あるいは銀行振込、コンビニ払いなどで対応していた方の場合、取引があるたびに事業主自らが必要なお金を下ろしてきたり、銀行やコンビニに足を運んで決済したりしなければならないため、手間と時間の浪費につながっていました。
法人カードがあればカード一枚で決済できるので、現金決済のような手間がかからず、浮いた時間を本業に費やすことができます。
2-2. スタートアップ企業に法人カードが必要な理由
創業したばかりのスタートアップ企業は、一般的に事業規模がまだ小さく、少人数体制で事業を始めるケースも多いでしょう。
そのため、「法人カードは事業規模が大きくなってから導入すればいい」と考える方も多いですが、既存の決済方法から新しい決済方法へ切り替えるのは簡単なことではなく、社員に対して決済のルールを周知させたり、システムを移行したりと、さまざまな手間がかかってしまいます。
創業直後から法人カードを利用していれば、こうした手間を丸ごとカットできるため、決済方法の移行にともなう労力や時間の節約につながります。
また、法人カードは一般的に個人カードよりも利用限度額が大きいため、何かと物が入用になる創業直後のさまざまなシーンで重宝するでしょう。
関連記事:設立1年未満でも法人カードは発行できる?審査に通りやすいカードの特徴も解説
関連記事:設立直後でも作れる法人カードの特徴や審査に落ちた場合の対策
2-3. 一般企業に法人カードが必要な理由
複数の社員を雇用する一般企業の場合、社員が一旦経費を立替払いし、後から経理で精算してもらうというスタイルを採用しているところも多いでしょう。
その場合、立替払いや領収書の管理、精算書の作成などをおこなう社員に負担がかかってしまうのはもちろん、領収書・精算書のチェックやシステムへのデータ入力をおこなう上司・経理の負担も大きくなり、一連のプロセスに多大な労力と時間を費やすことになってしまいます。
法人カードを導入して経費精算システムと連携させれば、カードの利用データを自動でシステムに取り込むことができるため、システムへの手入力の手間を丸ごとカットできます。
また、追加発行したカードを社員ひとりひとりに持たせれば、経費をすべてカード決済できるため、立替払いの必要もなくなります。
さらに、データを見ればいつ・どこで・何に・いくら使用したのかすぐに確認できるため、経費精算業務を大幅に効率化できるところが利点です。
経費精算業務の負担は社員の数に比例して大きくなりますので、「経理担当者の残業が常態化している」「経費精算関連のトラブルやミスが目立つ」といった問題を抱えている企業ほど、法人カードの導入が必要といえるでしょう。
関連記事:法人カードで経費精算を行うメリット・デメリットや手順とは
3. 法人カードと個人カードの違い
法人カードと個人カードは、いくつか違いがあります。
まず利用限度額です。法人での支払金額は個人利用と比べると大きくなる傾向があり、それにともなって利用する限度額も高く設定される傾向があります。
加えて付帯サービスの種類にも特徴があり、社内外の会食をおこなう際に飲食店の割引があったり、出張する際に法人カードを利用すれば、法人カード専用の割引があったりと、経費を利用する時に役立つような福利厚生が含まれていることが多いです。
4. 個人利用する場合は法人カードは控えるべき
法人カードの利用目的はあくまで会社の経費精算であるため、個人的な利用に使うのはNGです。
法人カードの支払いは法人口座を指定するのが一般的なため、仮に個人的な目的で法人カードを利用した場合、会社のお金を使い込むことになります。
後から個人口座のお金を移せば、最終的に帳尻を合わせることはできますが、たとえ一時的な仮払いであっても、やっていることは「横領」に当たるので、使用した金額や回数によっては税務署から指摘を受けるおそれがあります。
また、会社用の口座と個人口座の間で資金を何度もやり取りしていると口座の利用履歴が複雑になり、確定申告時の書類作成が煩雑になるというデメリットもあります。
4-1. どこからどこまでが経費なのか、ルールを徹底させることが大切
法人カードは会社の経費精算のみに利用するのが鉄則と説明しましたが、これまで現金決済をしていた場合や、経費精算に個人カードを利用していた場合、私的利用と経費のボーダーラインがあいまいになっているケースも少なくないようです。
そのため、法人カードを導入する場合は、どこからどこまでが経費なのか、あらかじめルールを設定しておくことが大切でしょう。
特に追加カードを交付する場合は、ルールの周知を徹底させることで、意図しない不正利用の予防にもつながります。
関連記事:法人カードの管理方法や不正利用を防ぐ社内ルールを徹底解説!
5. 法人カードを選ぶポイント
法人カードは国内に複数存在しており、それぞれ特徴が異なります。
自社に合わない法人カードを選んでしまうと、決済や経費精算に不満やストレスを感じやすくなるので、事業規模やニーズに合わせて適切な法人カードを選びましょう。
ここでは、フリーランス・スタートアップ企業・一般企業ごとに、法人カードを選ぶときのポイントをまとめました。
5-1. フリーランスの法人カード選びのポイント
フリーランスが法人カードを選ぶ際にチェックしたいポイントは、大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、法人カードの年会費です。
個人カードの場合、年会費永年無料のカードも多いですが、法人カードの場合、ほとんどのカードは年会費が有料に設定されています。
年会費の金額はカードによって異なりますが、ハイクラスの法人カードの場合、年間で10万円以上の年会費が発生するものもあります。
フリーランスの方にとって年間10万円以上のコストは大きな負担であり、事業規模が小さい場合はカード機能を持て余す可能性が高いので、費用対効果を考えて適切な年会費の法人カードを選ぶことが大切です。
なお、ポイント還元率が高い法人カードなら、ポイントを活用することで実質的なキャッシュバックを受けられるので、多少年会費が高くても元を取れる可能性が高くなります。
2つ目は、カードの利用限度額です。
カードの利用枠はカード会社の審査によって決まりますが、利用限度額が20~30万円程度しかない法人カードの場合、個人カードとほぼ変わらない仕様になってしまいます。
むしろ年会費が発生するぶん、個人カードより不利になってしまうため、法人カードを選ぶときは50~100万円程度の利用枠を付帯できるカードをチョイスすることをおすすめします。
5-2. スタートアップ企業の法人カード選びのポイント
法人カードを発行する際は、創業年や事業の経歴なども審査の対象となるため、創業から間もないスタートアップ企業は、一般企業よりも法人カード発行のハードルが高くなります。
そのため、スタートアップ企業が法人カードを選ぶ際は、「スタートアップ企業向け」をアピールしているカードをターゲットにするのがおすすめです。
スタートアップ企業向けの法人カードでは、通常の法人カードよりも創業年や事業経歴に対する審査が緩やかなので、開業から1年に満たない企業でもカードを発行できる可能性があります。
利用限度額については、当初は100万円程度でも問題ありませんが、企業の成長にともなって事業規模が大きくなると、利用枠が不足する可能性がありますので、コンスタントに利用枠を拡大できるカードを選ぶことも重要なポイントのひとつです。
5-3. 一般企業の法人カードの選び方
一般企業が法人カードを選ぶにあたり、まずチェックしておきたいのが追加カードの発行枚数です。
追加カード発行枚数の上限はカードによって異なり、5枚程度しか発行できないカードもあれば、1,000枚以上の発行に対応しているカードもあります。
また、追加カードの発行費用もカードによってまちまちで、一定枚数まで無料で発行できるものもあれば、一枚目から発行手数料がかかるものもあります。
さらに、追加カードの年会費の有無や金額にも差があり、永年無料のカードがある一方、1枚ごとに年会費が発生するケースもあります。
社員の数が多く、追加カードをたくさん発行する場合は、手数料と年会費だけでかなりの出費になりますので、なるべくコストを抑えたい場合は、追加カードの発行手数料や年会費も比較して検討することをおすすめします。
一方、カードの利用限度額については、300万円程度は確保したいところです。
中には利用限度額に一律の制限を設けない法人カードも存在しますので、月々の経費の平均を確認した上で、利用枠に余裕のあるカードを選ぶようにしましょう。
関連記事:法人カードを比較!選ぶポイントや特徴別でカードを紹介
6. 法人カードの作成手順
法人カードを作成する手順はおもに下記の4つです。
▼法人カードを作る手順
1. 自社にあった種類の法人カードを選定する
2. カード会社に申し込みの手続きをおこなう
3. カード会社の審査を受ける
4. カードが発行される
事前に情報収集をおこない、自社に必要なカード機能を揃えたカードを選定しましょう。
申し込みをしてから、実際にカードを利用できるまでに時間がかかる場合もあるので、利用を開始したい日時から逆算して申し込みをしておきましょう。
関連記事:法人カードとはどんなクレジットカード?選ぶポイントや作る手順に関して
7. フリーランスも一般企業も、法人カードを利用して経理業務を効率化しよう
法人カードというと、ある程度の事業規模・事業歴のある一般企業が利用するカードというイメージがありますが、実際はフリーランスや創業したばかりのスタートアップ企業でも発行することが可能です。
法人カードを利用すると、私的な利用と経費を区別して管理できるため、確定申告の手続きが断然楽になります。
また、経費精算システムと連携すれば、カード利用データを自動で取り込めるので、普段の経理業務の効率化にもつながります。
法人カードにもさまざまな種類がありますので、「フリーランスだから」「創業したばかりだから」といった先入観にとらわれず、自社のニーズに合った法人カードを導入して、経理業務にかかる手間と時間の節約を図りましょう。
「中長期的に法人カード導入を検討しているけどなにからはじめたらいいかわからない」
「法人カードを実際に利用するイメージをつけたい」
「法人カード連携した経費精算システムの導入を検討している」
などなど法人カードをもちいた経費精算の効率化に興味がある方に、実際の法人カード導入の手順からそのメリット、また 法人カードを用いた精算業務の効率化方法まで網羅的に解説している資料を配布しております。
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