150万円の壁とは?特定扶養控除の要件引き上げで学生バイトの年収の壁はどう変わる?
現在、政府・与党が進めている特定扶養控除の引き上げは、多くの学生に影響を及ぼす可能性があります。特に、現行の年収要件が103万円以下から150万円以下に緩和されることで、学生たちの働き方が大きく変わることが予想されます。この変更は2025年から適用される予定であり、子が年収要件を超えた場合でも、世帯全体の手取りが減らない仕組みの導入も検討されています。これにより、親の税負担が増える心配が少なくなるため、学生たちはより自由にアルバイトを選択できるようになります。
今回はこの150万円の壁と呼ばれる「年収の壁」について、とくに制度改正にフォーカスして解説します。
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2024年末頃から”従業員の手取りが減少してしまう年収のボーダーライン”「年収の壁」の見直しを巡る動きが強まっています。
所得税の発⽣や社会保険加⼊の義務に関わる改正であるため、給与計算担当者の業務に直結します。そのため、担当者は正しく改正内容を理解し、メリットだけではなくデメリットも正しく把握しておく必要があります。
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資料では、100万、103万、106万、130万、150万、210万それぞれ年収の壁についての概要から、ボーダーラインを超えた際への影響を図解でわかりやすく解説しています。「年収の壁について手っ取り早く理解したい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
1. 150万円の壁とは?
150万円の壁とは、配偶者控除や特定扶養控除の対象になるボーダーラインのことを指します。特に、学生アルバイトや扶養されているパート勤務者にとって、年収がこの金額を超えると税制上の優遇が受けられづらくなるため、多くの人がこの金額を意識して働くことになります。まずは150万円の壁について正しく理解するため、概要を説明します。
関連記事:年収の壁とは?税金や社会保険の負担が生じる103万、106万、130万、150万の壁を解説
1-1. 配偶者特別控除(2018年以降)
配偶者特別控除は、主に配偶者が扶養されている際に所得税の軽減を図るための制度です。この控除は、配偶者の年収が一定の範囲内であれば、納税者である配偶者が税金を軽減されるという仕組みです。
2018年以降、この制度の内容には重要な変更があり、特に年収の上限が引き上げられました。具体的には、配偶者の年収が150万円未満で、その配偶者を支える夫の合計所得金額が900万円以下の場合、夫は38万円の控除を受けることが可能です。これは、これまでの103万円の壁から大きく引き上げられたことで、主婦やパート従業員として活動する女性には新たな可能性をもたらしました。
具体的な事例として、例えば夫の年収が750万円で、妻がパートで年収130万円の場合、夫は配偶者特別控除の対象になり、38万円の控除を受けることができます。この結果、夫の課税所得が減少し、支払う税金も軽くなるため、家庭全体の経済的負担が軽くなるメリットがあります。
ただし、配偶者特別控除には一定の要件がありますので、これを利用する際にはそれらをしっかりと確認しておくことが重要です。また、夫の年収が900万円を超えると控除が受けられなくなるため、所得調整を考える必要がある場合もあります。このように、配偶者特別控除は家庭の経済状況に大きく影響を与える制度として、多くの家庭に利用されています。
1-2. 特定扶養控除が150万円に引き上げ予定
特定扶養控除については、現在引き上げが予定されており、これは学生アルバイトにとって大きな影響を与える可能性があります。政府および与党は、親が大学生などを扶養する際の税負担軽減策として、特定扶養控除を現行の103万円以下から150万円以下に緩和する方針を明らかにしました。
これは学生の年収が150万円未満であれば、親に対する税負担は増加しない仕組みが検討されています。この変更により、学生たちがアルバイトで得られる収入の上限が引き上げられ、経済的な余裕を持って学業に専念できる環境が整うことが期待されます。
現行の103万円の壁は、学生がアルバイトをする際に就労時間を制限する要因となっていました。親が扶養控除を受けられなくなるリスクを避けるため、学生は働く時間を短縮せざるを得ない状況でした。これがサービス業などの人手不足につながっており、企業側にとっても深刻な悩みの種でした。
2. 特定扶養控除における150万円の壁はいつ廃止される?
特定扶養控除の要件は、2025年以降の新制度において収入制限が103万円から150万円に引き上げられることが検討されています。この変更によって、学生バイトや若年層の就労を促進し、特に人手不足の問題を解消する効果が期待されています。
この背景には、国民民主党が求めていた税制改正の意向が反映されており、実際に親の税負担を軽減することで、学生がアルバイトをする際の障害を取り除く狙いがあります。これまで、103万円の壁が存在したために多くの学生が就労時間を制限せざるを得ず、結果的にサービス業などでの人手不足に影響を及ぼしていました。このような制約が緩和されることで、学生たちは自らの生活資金や学費を稼ぐ手段を大幅に増やすことができるのです。
したがって、特定扶養控除の引き上げは、学生バイトの年収の壁をなくすだけでなく、社会全体においても労働力を確保しやすくなるという二重のメリットをもたらすでしょう。これにより、学生が職を持ちながら学業に専念できる環境が整備され、より良い生活スタイルが実現されることが期待されています。
関連記事:「年収の壁」撤廃はいつから?103万円・106万円それぞれの時期を解説
3. 特定扶養控除の引き上げで学生バイトの年収の壁はどう変わる?
またこの150万円の壁の改正で、学生バイトや社会にとってどんな影響があるのでしょうか。考えられるポイントを紹介します。
3-1. 学生にとっては自由に働ける幅が広がる
特定扶養控除の引き上げにより、学生は自由に働ける幅が大きく広がります。
これまで、特定扶養控除の適用には年収の上限が103万円と定められており、多くの学生はアルバイトの時間を調整し、家計への影響を最小限に抑えようと苦心していました。しかし、年収制限が150万円に引き上げられることで、学生たちはより多くの時間をアルバイトに充て、学費や生活費を稼ぐことが可能になります。
例えば、大学生がアルバイトで月に12万円を得ると、年収は144万円に達します。この場合、特定扶養控除を受けることができ、家庭の扶養に影響を及ぼさないため、学生は安心して働けるようになるのです。また、150万円を超えても、188万円までは新設される「特定親族特別控除」の適用もあり、段階的に控除が進むことで、年収があがっても依然として家計に対する負担が軽減されることが期待されます。
この制度改革は、特に学生世代の子どもを持つ親にとって重要な影響を持つと考えられます。経済的余裕が生まれることで、家庭は子どもに対して質の高い教育をより容易に提供することができるようになります。結果として、学生たちは学びながら自己資金を確保する機会を得て、自律的な経済感覚を養うことも可能となるでしょう。
このように、特定扶養控除の引き上げは学生に新たな選択肢を提供し、学業とアルバイトを両立させる環境を整うことに寄与します。
3-2. 社会にとっても労働人口が確保しやすくなる
特定扶養控除の引き上げにより、学生バイトの年収の壁が緩和されると、社会全体の労働人口確保にも良い影響を及ぼすことが期待されています。
学生がアルバイトに参加することで、企業側も人手不足の解消が見込め、労働市場が活性化します。例えば、特にサービス業や飲食業では慢性的な人手不足が問題となっていますが、学生層の確保が進むことで、これらの業界でも必要な人材を確保しやすくなります。これにより、顧客サービスの向上や業務効率の改善が期待されるでしょう。
また、学生がアルバイトを経験することで、社会人としてのスキルやコミュニケーション能力が磨かれ、若者がより早く社会に適応できるようになります。これは、企業にとっても即戦力となる人材を育成することにつながります。学生が早い段階から社会経験を積むことで、労働市場に新しい風を吹き込むことができるのです。
このように、特定扶養控除の引き上げがもたらす労働環境の変化は、学生一人一人だけでなく、ひいては社会全体の労働力の質を高め、労働人口の確保が容易になると考えられます。従って、これは今後の社会において非常に重要な政策となるでしょう。
4. 「150万円の壁」制度改正の動向に注目しよう
150万円の壁は、学生バイトにとって大きな変化をもたらす可能性があります。この壁は、特定扶養控除が適用される年収の上限を指し、以前は103万円が上限だったために多くの学生がバイトを通じて稼ぐ上での制約となっていました。
今後、この特定扶養控除の引き上げが進むことで、学生が自由に働くことができる環境が整うでしょう。2024年度から具体的な検討が進められており、今後の税制改正では150万円の壁が正式に廃止される方向に向かっています。この改正が実現すれば、学生がより多くの収入を得ることが可能になり、経済的な面での自立を促進すると考えられます。
加えて、この取り組みは社会全体にもポジティブな影響を与えると期待されています。労働市場においても、若年層の労働力を確保しやすくなるため、サービス業などの業界は安定した人材を確保できる側面があります。若者が自らの生活費や学費を賄えるようになれば、就業意欲が高まり、消費活動も活発になるでしょう。
今後の動向に注目し、特定扶養控除の引き上げがどのように実施されるのか、またその影響を受ける学生バイトの生活がどのように変わるのかを見守っていく必要があります。
関連記事:178万円の壁とは?引き上げはいつから?社会保険加入のメリット・デメリットまで解説
関連記事:年収201万の壁をわかりやすく!配偶者特別控除とは?配偶者控除との違いも解説
2024年末頃から”従業員の手取りが減少してしまう年収のボーダーライン”「年収の壁」の見直しを巡る動きが強まっています。
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