150万円の壁とは?特定扶養控除の要件引き上げで学生バイトの年収の壁はどう変わる?
更新日: 2025.10.3 公開日: 2025.3.25 jinjer Blog 編集部

年収150万円の壁とは、上限38万円の配偶者特別控除を適用できるボーダーラインとして使われていました。しかし、令和7年度(2025年度)税制改正によって、給与所得控除の最低保障額が引き上がり、配偶者特別控除の150万円の壁はなくなります。
ただし、同時に特定親族特別控除が創設され、特定扶養控除の合計所得金額の要件が引き上がることで、新たな150万円の壁ができるようになります。この記事では、150万円の壁の改正内容や、学生バイトなどに影響を与える特定親族特別控除の内容についてわかりやすく解説します。
目次
2025年から本格化する「年収の壁」の見直し。従業員への説明や社会保険手続きの増加など、労務担当者の業務負担は増すばかりです。
さらに働き控えの原因となっていた「年収の壁」の見直しは、パート・アルバイト従業員の労働時間増加を後押しし、人手不足の緩和につながる可能性があります。この機会を活かすための準備はできていますか?
▼この資料でわかること
- 結局どう変わる? 複雑な制度改正の要点と企業への影響
- 今後急増する社会保険手続きへの、具体的な備え
- 法改正対応で想定される、システム更新のコストと工数
- パート・アルバイト従業員への適切なアナウンス方法
複雑化する「年収の壁」問題について、2025年からの最新動向から企業がとるべき実務対応まで解説していますので、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
1. 150万円の壁とは?なくなる?


そもそもの150万円の壁とは、配偶者特別控除の控除額(38万円)が満額適用されるボーダーラインのことを指していました。しかし、令和7年度(2025年度)税制改正により、扶養親族等の所得要件が見直しされ、この150万円の壁がなくなります。ここからは、配偶者特別控除が関係する150万円の壁について詳しく紹介します。
関連記事:年収の壁とは?税金や社会保険の負担が生じる103万、106万、130万、150万の壁を解説
1-1. 元々は配偶者特別控除の控除額が減少する基準
配偶者特別控除とは、配偶者を扶養されている際に所得税の軽減を図るための制度です。この控除は、配偶者の年収が一定の範囲内であれば、納税者である配偶者が税金を軽減されるという仕組みです。
配偶者特別控除の控除額の上限は38万円です。この上限38万円の控除を受けるには、納税者本人(配偶者特別控除を適用する人)の合計所得金額が900万円以下であることに加え、その配偶者の合計所得金額が95万円以下である必要があります。令和7年度税制改正がおこなわれる前は、給与所得控除の最低保障額は55万円であり、給与収入のみの配偶者の場合、年収150万円を超えなければ38万円の配偶者特別控除を受けられることから「150万円の壁」とよばれていました。
関連記事:年収201万の壁をわかりやすく!配偶者特別控除とは?配偶者控除との違いも解説
1-2. 令和7年(2025年分)から従来の150万円の壁は160万円の壁へ
令和7年度(2025年度)税制改正により、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円へ引き上げられます。給与所得のみで年収160万円以下の配偶者の場合、合計所得金額は95万円以下となり、本人の所得要件を満たせば38万円の配偶者特別控除を適用できます。
そのため、従来の配偶者特別控除における年収150万円の壁はなくなり、年収160万円の壁へと切り替わります。なお、令和7年度税制改正では扶養親族等の所得要件の見直しもおこなわれ、以下のように同一生計配偶者(配偶者控除)の所得要件が変わり、配偶者特別控除の対象となる基準も変更になる点に注意が必要です。
| 配偶者の区分 | 所得要件(給与収入のみの場合) | |
| 改正後 | 改正前 | |
| 同一生計配偶者(配偶者控除の基準) | 58万円以下(123万円以下) | 48万円以下(103万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象になる配偶者 | 58万円超え133万円以下(123万円超え201万5,999円以下) | 48万円超え133万円以下(103万円超え201万5,999円以下) |
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)|国税庁
2. 特定親族特別控除が創設(150万円の壁あり)


令和7年(2025年分)から配偶者特別控除の年収150万円の壁はなくなり、新たに年収160万円の壁となります。
令和7年度税制改正により特定親族特別控除が創設され、特定扶養控除の要件を超えた場合でも一定の条件を満たせば控除を受けられるようになります。ただし、特定親族特別控除は、特定親族の給与収入が150万円を超えると、段階的に控除額が下がる仕組みとなっています。そのため、令和7年分から新たな150万円の壁が生じます。
ここでは、特定扶養控除とは何かを説明したうえで、新たに設計された特定親族特別控除について詳しく紹介します。
2-1. 特定扶養控除とは?
特定扶養控除とは、所得税法上の控除対象扶養親族のうち、特定扶養親族(19歳以上23歳未満の者)がいる場合に受けられる扶養控除を指します。特定扶養控除の控除額は63万円です。一般の控除対象扶養親族がいる場合に受けられる扶養控除の控除額は38万円であるため、控除額に大きな違いがあります。
2-2. 給与収入150万円を超えると控除額が段階的に減少する(新たな150万円の壁)
従来、特定扶養親族を適用するためには、その扶養親族の合計所得金額48万円以下(改正後:58万円以下)であることが要件の一つでした。しかし、令和7年度税制改正によって、その親族の合計所得金額が58万円を超え85万円以下(給与収入のみの場合は150万円以下)に収まる場合、そのほかの要件を満たしていれば、63万円の特定親族特別控除を適用することが可能です。
なお、合計所得金額が85万円を超えると、段階的に控除額が減少しますが、123万円以下(給与収入のみの場合は188万円以下)であれば、特定親族特別控除を適用できます。このように、その年の給与収入150万円を基準にして控除額が変化することから、新たな150万円の壁とよばれています。
参考:令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A|国税庁
2-3. 令和7年(2025年分)から扶養親族等の所得要件の改正にも注意
令和7年度税制改正では、特定親族特別控除が創設されるだけでなく、配偶者特別控除の章で紹介したように、扶養親族等の所得要件も見直しされます。扶養親族の合計所得金額の要件は48万円以下から58万円以下へと緩和されます。
また、勤労学生の合計所得金額の要件も75万円以下から85万円以下へと緩和されます。そのため、給与所得控除の引き上げも踏まえ、その年の給与収入が150万円以下で、そのほかの要件を満たせば、勤労学生控除を適用できる可能性があります。
一方、給与収入が150万円を超えると、勤労学生控除を適用できないので注意が必要です。このように、特定扶養控除とは別に、勤労学生控除の判断基準についても150万円の壁が用いられることがあるでしょう。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
3. 特定親族特別控除の創設で学生バイトの年収の壁はどう変わる?


年収150万円の壁の変化(特定親族特別控除の創設)により、学生バイトや社会にどのような影響があるのでしょうか。ここでは、考えられるポイントについて詳しく紹介します。
3-1. 学生にとっては自由に働ける幅が広がる
特定親族特別控除の創設により、学生は自由に働ける幅が大きく広がります。
これまで、特定扶養控除の適用には給与上限が年収103万円と定められており、多くの学生はアルバイトの時間を調整し、家計への影響を最小限に抑えようと苦心していました。しかし、年収制限が150万円(※63万円の控除を適用する場合)に引き上げられることで、学生たちはより多くの時間をアルバイトに充て、学費や生活費を稼ぐことが可能になります。


例えば、大学生がアルバイトで月に12万円を得ると、年収は144万円に達します。この場合、特定親族特別控除が受けられ、家庭の扶養に影響を及ぼすことなく、学生は安心して働けるようになるのです。また、150万円を超えても段階的に控除額が減少しますが、188万円までは特定親族特別控除を適用できます。そのため、年収があがっても依然として家計に対する負担が軽減されることが期待されます。
この制度改革は、特に学生世代の子どもを持つ親にとって重要な影響を持つと考えられます。経済的余裕が生まれることで、家庭は子どもに対して質の高い教育をより容易に提供することができるようになります。結果として、学生たちは学びながら自己資金を確保する機会を得て、自律的な経済感覚を養うことも可能となるでしょう。
このように、新たな特定親族特別控除の創設は学生に新たな選択肢を提供し、学業とアルバイトを両立させる環境を整うことに寄与します。
3-2. 社会にとっても労働人口が確保しやすくなる
特定親族特別控除の創設により、学生バイトの年収の壁が緩和され、社会全体の労働人口確保にも良い影響を及ぼすことが期待されています。
学生がアルバイトに参加することで、企業側も人手不足の解消が見込め、労働市場が活性化します。例えば、特にサービス業や飲食業では慢性的な人手不足が問題となっていますが、学生層の確保が進むことで、これらの業界でも必要な人材を確保しやすくなります。これにより、顧客サービスの向上や業務効率の改善が期待されるでしょう。
また、学生がアルバイトを経験することで、社会人としてのスキルやコミュニケーション能力が磨かれ、若者がより早く社会に適応できるようになります。これは、企業にとっても即戦力となる人材を育成することにつながります。学生が早い段階から社会経験を積むことで、労働市場に新しい風を吹き込むことができるのです。
このように、特定親族特別控除の新設がもたらす労働環境の変化は、学生一人ひとりだけでなく、ひいては社会全体の労働力の質を高め、労働人口の確保が容易になると考えられます。従って、これは今後の社会において非常に重要な政策となるでしょう。
4. 「150万円の壁」の改正内容を正しく理解しよう


令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上がります。そのため、配偶者特別控除の年収150万円の壁はなくなり、新たに年収160万円の壁ができます。
また、特定親族特別控除が創設されたことで、その年の給与収入が150万円までであれば63万円の控除を適用することが可能です。なお、150万円を超えても188万円までであれば、控除額は減りますが控除を適用できる点にも留意が必要です(150万円の壁)。
年収の壁の変化を正しく理解し、学生バイトの勤務時間を増やし収入を増やすなど、ワークライフバランスが実現しやすい環境を整備しましょう。
関連記事:178万円の壁とは?引き上げはいつから?社会保険加入のメリット・デメリットまで解説
関連記事:年収201万の壁をわかりやすく!配偶者特別控除とは?配偶者控除との違いも解説



2025年から本格化する「年収の壁」の見直し。従業員への説明や社会保険手続きの増加など、労務担当者の業務負担は増すばかりです。
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