有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説 | jinjerBlog

有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説

カレンダーに印を付けているイラスト

従業員の健康的で文化的な生活のために与えられる「有給休暇」。休んでも一定の給料をもらえる有給休暇は、雇用形態にかかわらず一定の条件を満たした労働者に付与することが義務付けられています。

しかし、なかには休むタイミングがなかったり退職までに消化しきれなかったりして、「有給休暇がいらない」と思う労働者もいるようです。こういった場合、労働者によっては買い取りを希望することがあります。しかし、そもそも有給休暇の買い取りは可能なのでしょうか。

今回は、有給休暇の買い取りについて解説します。買い取りが可能なケースとよくあるトラブルをしっかりと押さえて、違法にならない買い取りを行ないましょう。

関連記事:【図解付き】有給休暇付与日数の正しい計算方法をわかりやすく解説

自社の有休管理に不安はありませんか?

3分でわかる徹底解説BOOK「有給付与ルール」

「自社の年次有給休暇の付与や管理は正しく行われているのか確認したい」という方に向け、当サイトでは有給休暇の付与ルールから義務化、管理の方法まで年次有給休暇の法律について包括的にまとめた資料を無料で配布しております。

「自社の有休管理が法律的に問題ないか確認したい」「有給管理をもっと楽にしたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

1. 有給休暇の買い取りは違法?

電球を持つ男性

まずは、有給休暇の買い取りの是非について見ていきましょう。大前提として、有給休暇の買い取りは原則違法です。なぜなら、有給の買い取りは制度の趣旨に反する行為であるためです。

ここでは、有給休暇の詳しい役割と買い取りが違法になる根拠について詳しく解説します。

1-1. 有給休暇とは

有給休暇とは、一定期間勤続した従業員の心身のリフレッシュを図ることを目的として与えられる、通常通り賃金が支払われる休暇のことを指します。原則として、使用者は従業員が請求する日にちに取得させることが義務付けられています。

また、有給休暇の付与日数は勤務日数・勤続年数で決まっています。

入社6か月後が最初の有給付与日となり、雇用契約開始日から6ヶ月間にわたって8割以上出勤した従業員は、10日間の有給休暇を取得することができます。このルールは、管理監督者や有期雇用労働者を含みます。

またパートタイム労働者などの所定労働日数が少ない従業員は、所定労働日数に応じて比例付与されます。有給の比例付与の対象となるのは、以下の条件に当てはまる従業員です。

・所定労働時間が週30時間未満
・所定労働日数が4日以下(または年間の所定労働日数が216日以下)

有給付与日数について詳しく知りたい方は、当サイトにて無料で配布している「3分でわかる有給徹底解説BOOK」に表でまとめて解説しておりますので、こちらからダウンロードしてご確認ください。

有給バナー画像

1-2. 有給休暇の付与だけでなく取得も義務化

有給休暇は、労働者に心身ともにリフレッシュしてもらうため付与される休暇です。日数は勤続年数によって異なりますが、法律では必ず付与しなくてはいけない「年次有給休暇」を定めています。

また、2019年4月の働き方改革法案の成立により、年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者は、付与された日から1年以内に5日の有給消化が義務付けられました。[注1]

つまり、有給休暇を消化することは労働者の権利であり、企業の義務といえます。有給休暇の消化理由は制限されることなく、休息や急病などさまざまな用途で使用することができます。

注1:厚生労働省|年次有給休暇の時季指定

関連記事:有給休暇年5日の取得義務化とは?企業がおこなうべき対応を解説

1-3. 有給休暇の買い取りは労働基準法第39条に違反する

有給休暇は労働者の権利であるとはいえ、多忙であるゆえになかなか消化できていない人が多いことも事実です。そのため、なかには有給休暇を買い取ってほしいと考える従業員もいるでしょう。

しかし、有給休暇の買い取りは労働者の休職の機会を奪うことになるため、原則禁止されています。実際、昭和30年11月30日の行政通達(基収4718号)では、労働基準法第39条(法第39条)を挙げ、以下のように言及されています。

「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である。」

引用:年次有給休暇の買上げ予約をし、年次有給休暇の日数を減じることは違法か|労働法ナビ(労働基準法第39条関係)

これにより、会社が強制することはもちろん、労働者の同意があったとしても有給休暇の買い取りは原則として違法となるのです。

買取を含め、有休の運用ルールは企業によって様々であるため、自社のルールに問題がないか不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。

当サイトでは、そのような方に向け、労働基準法に基づいた有休付与の方法や管理の効率化について解説した資料を無料で配布しております。自社の有休付与ルールが法律的に問題ないのか不安な人事担当者様は、こちらより資料をダウンロードし、ぜひご覧になってみてください。

有給バナー画像

関連記事:有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を解説

2. 有給休暇の買い取りが許されるケース

パソコンを使っている男性の手

前項で有給休暇の買い取りは原則違法と紹介しましたが、場合によっては買い取りが可能なケースもあります。ここでは、有給休暇の買い取りが違法にならない3つのケースについて説明します。

2-1. 退職時に有給が余る場合

退職するときに有給休暇が余っているときは、企業に買い取ってもらうことが可能です。この場合は、従業員と企業がよく話し合ったうえ、双方の同意があれば買い取りが違法になることはありません。

退職が決まると、引き継ぎや退職の準備で有給休暇を消化することが難しくなります。しかし、有給休暇は労働者の権利であるため、企業は退職する従業員から未消化日数分の有給休暇の買い取りを求められた場合、基本的には拒否できません。

2-2. 有給日数が法定よりも多い場合

年次有給休暇は、勤続日数に応じて6ヵ月で10日、1年6ヵ月で11日という風に毎年増えていきます。この日数は法律で定められた休日日数であるため、買い取りをすることはできません。

しかし、福利厚生の一環などにより労働基準法で定めているよりも多めに有給休暇を与えている場合は、年次有給休暇を超えた分の日数を買い取ることができます。多めに付与された有給休暇は、法律の制限を受けないものであるためです。

たとえば、年次有給休暇が10日で福利厚生として定めた休暇が5日あるときは、10日間は有給休暇を消化してもらわなければなりませんが、5日間は買い取りが可能ということになります。

2-3. 期限が切れた場合

年次有給休暇は、付与されてから2年を過ぎると消失してしまいます。1年間は繰り越せますが、繰り越しても有給休暇が余ってしまった場合は、効力を失う有給休暇を買い取ってもらうことが可能です。ただし、このケースは会社側が買い取りを拒否できます。

ただし、働き方改革法案の成立によって、企業は最低でも年間5日の有給休暇を消化させることが義務付けられました。そのため、「有給休暇が余ってしまう」ということは今後減っていくかもしれません。

なお、有給の繰り越しの仕組みや保有できる最大日数について確認しておきたい方には、以下の記事がおすすめです。

▶有給休暇の繰越とは?その仕組みや最大保有日数を解説

3.有給休暇買い取り時の企業側のメリット

メリット

ここまで有給の買い取りについて解説してきましたが、買い取りは一見すると従業員側にばかりメリットがあるように感じるかもしれません。しかし実は、企業側にも大きなメリットが2点あります。

3-1. 社会保険料の負担を軽減できる可能性がある

従業員の退職が決定したとしても、在職中、つまり有給休暇取得中は、社会保険料を負担しなければなりません。しかし、残りの有給休暇を買い取り退職を早めることにすることで、在職期間が短くなる分負担額を減らすことが可能です。

買取金額は「平均賃金」「通常の賃金」「標準報酬月額」のいずれかになりますが、あらかじめ就業規則で定めておかなければなりません。そのため、まずは自社の買取金額がいくらになるのか確認し、負担額との差額でより安く抑えられる方を選ぶのが合理的でしょう。

3-2. 労使間トラブルを回避できる

有給休暇の取得は、労使間のトラブルで起きやすい内容になります。

有給休暇取得中は雇用関係が継続しているので、従業員は労働者としての権利を有しています。そのため、従業員が退職の取り消しを求めるなどのトラブルが発生するリスクもあります。

また、未消化の日数が40日以上ある場合は、退職までにすべてを消化しきれません。

本来、有給取得に会社の許可は不要のため、そこまで未消化で残っている場合は、職場内が有給のとりづらい環境になっていることが考えられます。溜まってしまったことはしょうがないので、そのまま退社させることで起きるトラブルを考えて、どのように対処するのが最適か考えることが重要です。

例えば、有給休暇を巡って裁判沙汰になってしまうと、会社のブランドイメージの低下や本来考えなくも良い業務に追われる可能性があるでしょう。

このような問題も、有給の未消化分を買い取ることで従業員に円満に退職してもらえる可能性が高いでしょう。

4.有給を買い取る際の計算方法と金額相場

計算する様子

前項でも言及しましたが、有給休暇の買い取り額についてはあらかじめ書面で規定しておく必要があります。具体的な買い取り金額の計算方法は、以下の3パターンのいずれかであるケースが多いです。

・所定労働時間働いたときの「通常の賃金」
・労働者の過去3ヵ月から算出した1日あたりの「平均賃金」
・標準報酬月額の30分の1にあたる「標準報酬月額の日割額」

採用されることが多いのは「通常の賃金」のため、月給を勤務日数で割り引いたものを単価とします。例えば、月給が20万円で勤務日数が20日の場合は、20万円を20日で割った1万円が1日当たりの買い取り金額になります。対象者の必要な日数分を支払わなければならないことを忘れないようにしましょう。

また、あらかじめ就業規則や労使協定などで定めていれば、上記の3パターンのうち、どれを採用しても問題ありません。自社に適しているものをお選びください。

関連記事:有給休暇取得日の賃金計算で知っておきたい3つのポイント

5. 有給休暇の買い取りでよくあるトラブルと対策

クエスチョンマークのイラスト

有給休暇の買い取りを行なうときは、トラブルが生じやすいため注意しましょう。最後に、よくあるトラブルと対策法について解説します。

5-1. 買い取り可否についてのトラブル

そもそも、有給休暇の買い取りが可能かどうかを知らない従業員は多いです。あとになって「買い取りができると知らなかった」といったトラブルが生じることがないように、あらかじめ買い取りの可否についての書面を作成し、労働者と交わしておきましょう。就業規則に有給の買取について記載しておくこともおすすめです。

作成するのは合意書や誓約書、雇用契約書などの形式を問いませんが、基本的には以下の内容を記載しておく必要があります。

・買い取りの対象となる有給休暇
・有給休暇の買い取り金額
・支払日
・支払の方法

また、実際に買い取りするときは書面に条件を記載し、双方に認識の違いがないことを確認しておくことが大切です。

5-2. 買い取り金額に関するトラブル

有給休暇の買い取り金額には、法律上の決まりがありません。そのため、企業は自社の基準に沿って有給休暇の買い取り金額を決定できます。

しかし、買い取り金額を有給休暇消化時の給与よりも低く設定している場合、金額が原因でトラブルに発展する可能性が高いため、注意しましょう。

正しい計算方法については上述しておりますので、そちらをご確認ください。

5-3. 税法上のトラブル

有給休暇を買い取るときは、税務処理を間違えるトラブルが起きやすいため注意しましょう。企業は、買い取った有給の税法上の扱いを理解しておくことが大切です。

退職にともなう有給休暇の買い取りは、退職することに起因して支払われる賃金であると考えられるため、「退職所得」扱いになります。このほかのケースの場合は、「給与所得」扱いです。本来は有給休暇の消化時に支払う給与であったことを考えると、納得しやすいでしょう。

また、従業員にもあらかじめこのことを周知しておくと、混乱が生じにくくなります。

6. 有給休暇の正しい知識をつけてトラブルのない買い取りを

パソコンで仕事をしながらメモを取っている様子

労働者が休暇を取る権利である有給休暇は、原則として買い取ることができません。しかし、「退職時に有給休暇が余った」「年次有給休暇よりも多い日数を付与している」「消滅してしまう」といった場合は、買い取ることができます。

有給休暇の買い取りは、従業員と企業で認識をすり合わせておかないとトラブルが生じやすいため注意が必要です。スムーズな買い取りができるように、あらかじめ書面などで詳しい条件を提示しておくことが大切です。

関連記事:年次有給休暇とは?付与日数や取得義務化など法律をまとめて解説

自社の有休管理に不安はありませんか?

3分でわかる徹底解説BOOK「有給付与ルール」

「自社の年次有給休暇の付与や管理は正しく行われているのか確認したい」という方に向け、当サイトでは有給休暇の付与ルールから義務化、管理の方法まで年次有給休暇の法律について包括的にまとめた資料を無料で配布しております。

「自社の有休管理が法律的に問題ないか確認したい」「有給管理をもっと楽にしたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

関連タグ