パート従業員の残業時間に上限はあるの?気になる法律上のルール
更新日: 2023.9.6
公開日: 2020.7.10
OHSUGI
「繁忙期に残業を強いられる」という経験をした人は多いのではないのでしょうか。しかし、度を超えた長時間労働や休日出勤が心身の健康に影響を及ぼすとして、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されました。これによって、時間外労働の上限規制が導入されたことは記憶に新しいです。
しかし、ここで疑問として浮かぶのは「この規制はパート・アルバイト従業員にも適用されるのか」という点です。働き方が多様化している現在、人事担当者としては各雇用形態ごとで規制や関連法がどこまで適用されているのかを把握しておくことが、大切になってきます。
今回は、パート従業員の労働時間と残業時間の上限、その管理方法などを解説します。
【関連記事】働き方改革による残業規制の最新情報!上限や違反した際の罰則を解説
目次
1. 残業時間の上限はパート・アルバイト従業員も月45時間
前述にある通り、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の中には、時間外労働の上限規制が設けられています。
これによって、正社員、パート・アルバイトなど雇用形態にかかわらず、すべての従業員の残業時間は月45時間、年360時間(特別な事情がある場合のみ、単月100時間未満、複数月80時間、年720時間)を超えてはならないと定められています。
当初、この規制の対象は大企業のみでしたが、猶予期間を経て2020年4月より中小企業にも適用されるようになりました。
したがって、パート・アルバイト従業員に時間外労働をさせる場合は、この上限時間に従う必要があります。時間外労働には、上限規制以外にも割増賃金のルールがあるため、不安な方はしっかりとルールを確認しておきましょう。
2. パート・アルバイト従業員に残業をさせるには36協定の締結が必要
そもそも、労働時間の上限はパート・アルバイトや正社員など雇用形態に関係なく、休憩時間を除いて1日8時間、週40時間と労働基準法で定められています。
1日8時間、週40時間という法定労働時間を超えてパート・アルバイト従業員に労働をさせる場合、つまり残業をさせる場合は36協定の締結が必須になっています。
36協定とは、労働基準法第36条をもとに作成された労使協定のことをさします。企業と従業員がこの協定を締結していない状態で法定労働時間を超える労働をさせることは禁止されています。
そのため、あらかじめ労働組合、または従業員の過半数から同意を得て選出された労働者代表と内容を協議した上で、36協定を締結する必要があります。
また、36協定を締結した場合であっても、月45時間、年360時間の規制が免除されることは原則ありません。
ただし、パート・アルバイトの従業員の労働時間に関する希望としてよくあるのが、「扶養内で働きたい」「社会保険に加入できるように働きたい」といったものです。本人の希望を聞きつつ、扶養内で働くには労働時間を月何時間におさめなければならないかを計算すると良いでしょう。なお、社会保険に加入できるのは所定労働時間が週20時間以上の場合です。
3. パート・アルバイト従業員は残業代の支給対象になるのか
時間外手当とは、労働基準法で定められた労働時間(1日8時間)を超えて労働した従業員に対して支給される手当のことです。
時間外手当には通常の時給よりも25%以上を上乗せして残業時間分を支払う必要があります。ただし、残業であっても割増分を上乗せしなくてもよい場合もあるため、注意が必要です。
なお、残業代や休日手当、深夜手当などはパート・アルバイト従業員であっても支給しなくてはならないため、きちんと計算できるようにしておきましょう。
注意ポイント① 法内残業
法内残業とは、法定労働時間(1日8時間)を超えない時間の残業のことをさします。
たとえば、9時~15時(休憩1時間を含む)を定時として定められているパート従業員の場合、1日の実労働時間は5時間となります。このパート従業員が2時間残業したとすると、この日の実労働時間は7時間です。
一見、2時間分の時間外手当が支給されるように思われますが、時間外手当は法定労働時間を超過した場合のみに適用されるため、この場合は時間外手当の支給対象にはなりません。
したがって、この2時間分の法内残業時間には割増率をかけず、時給×残業時間で残業代を支給します。
一方、先ほどのパート従業員が9時~18時まで働き3時間残業したとします。この場合、2時間分は法定内残業で割増賃金が必要ありませんが、労働時間が8時間を超えた1時間分は割増賃金の支払いが必要になり、時給×1時間×1.25という計算によって給与を計算します。
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注意ポイント② 休日と休日手当の関係性
「休日」というと、土日・祝日を思い浮かべる方が多いのではないのでしょうか。しかし、労働基準法では、週1日もしくは4週間を通じて4日以上のことを法定内休日として定められています。
したがって、休日手当とはこの法定休日に働いた場合に支給されるのです。
たとえば、毎週土曜日を休日としているパート従業員の場合、法定休日の定義である「4週間を通じて4日以上の休日」を満たしているため、日曜日や祝日に勤務した場合であっても、休日手当の支給対象にはなりません。
しかし、もともと指定していた休日(法定休日)4日のうち、どこかの土曜日に働いた場合は休日出勤としてみなされます。休日手当は、通常の時給に割増率(一般的には35%)を上乗せした賃金で支払われます。
【関連記事】休日出勤は残業に含まれる?間違いやすい賃金計算方法
注意ポイント③ 深夜手当の定義
労働基準法における深夜労働の定義は、原則として午後10時から午前5時の間の労働としており、通常の時給に25%割増して賃金を支給することが定められています。
そのため、もしパート従業員が法定労働時間を超えて働き、かつ残業時間が午後10時以降に及んだ場合は、「時間外手当(割増率25%)+深夜手当(割増率25%以上)」で50%の割増賃金を支給することが求められます。
ここまでで解説しました通り、残業には上限規制や割増賃金など様々なルールがあり、対応を誤ってしまった場合は法律違反となってしまいます。「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされないため、しっかりと法律を理解しておきましょう。
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4. パート・アルバイト従業員にも残業時間の上限はある!36協定が締結されているか確認を
正社員、パート従業員と雇用形態に関わらず法律上では、どちらも労働者と定義されるため、法定労働時間や残業時間の上限は正社員と同様の扱いになります。
また、パート従業員であっても法定労働時間を超えた労働をさせる場合は、あらかじめ労使間で36協定を締結する必要があります。
これらを踏まえて、たとえ時短勤務がメインのパート従業員であっても、労働時間の取り扱いは正社員と同様であることがわかります。
意図していなかったとしても、懲罰対象になってしまいます。そうしたことを防ぐために、従業員の勤怠管理を今一度見直してみるのはいかがでしょうか。
【関連記事】残業管理をわかりやすく簡潔にするルール作りのポイント
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