在宅勤務中の経費に含まれるもの・含まれないものとは?
更新日: 2024.5.23
公開日: 2021.11.12
OHSUGI
在宅勤務に関係なく、従業員に対する給与も含めて、事業に必要な費用はすべて会社にとっての経費です。
しかし従業員側からすると、仕事で使った費用を経費精算してもらうのか、手当として支給してもらうのか、この双方では意味合いが大きく異なります。
それぞれで各従業員の税負担が変わってくるので、十分に注意しなければなりません。
そこで今回は、在宅勤務にかかるコストについて、従業員からの経費精算として対応すべきケースを詳しく見ていきましょう。
それではまず、経費精算の基本的な考え方を以下で解説します。
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目次
1.在宅勤務で会社支給にする場合は給与として課税
在宅勤務で経費精算にできるか否かの判断基準は、主に所有権の有無が関係しています。
基本的に経費として精算する場合、各物品の所有権は企業側になくてはなりません。
もし所有権が従業員に移るケースなら、給与に該当するため課税対象です。
例えば在宅勤務用にパソコンを購入し、完全に従業員の所有物として与える際には、給与を現物支給したものとして税金が課されます。
また買い与えはせずとも、従業員所有として購入した費用を会社が立て替える場合でも、給与に値するのでその分は課税対象です。
ちなみに在宅勤務における従業員の金銭的負担を考慮し、一定額の手当を支払うときも、純粋に従業員の給与が増えたとみなして、課税の割合は増えることになります。
2. 在宅勤務で経費と認められるのは貸与品が基本
では在宅勤務時の費用を経費精算と認めるべきケースには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
仮に在宅勤務用に新しく何か物品を購入した場合、それらをあくまで会社所有として従業員に貸与するのであれば経費精算ができます。
もし従業員側で購入した際にも、会社からの貸与品扱いにするのであれば、立て替え分は給与ではなく経費です。
たとえ業務に必要なくなるまで使い続けられるとしても、最終的に返却するなら会社所有と考えて問題ありません。
従業員側の判断によって処分できないもので、会社に返すことが前提のものは、課税対象とせずに原則は経費精算が認められます。
また経費精算ができる代表的な例には、次のようなものがあります。
2-1. 業務用ツール
先ほども出てきたパソコンをはじめ、Webカメラ・スマートフォン・携帯電話といった各種ツールは、会社からの貸与が前提であれば経費精算が可能です。
従業員自身で選定して購入した場合でも、貸与品にするなら同様に経費扱いができます。
2-2. 環境整備品
在宅勤務での円滑な業務遂行に向けて、自宅をオフィスのような環境に整えるための備品も購入する際も、会社に返却するのが前提なら経費扱いで問題ありません。
例えばデスクや椅子のほか、ブラインド・空気清浄機・間仕切りといった物品も該当します。
いずれも業務用ツールと同じように、従業員自身で買ったものを立て替える場合でも経費精算が可能です。
2-3. 事務・消耗品
事務・消耗品に関しては、ここまでの物品とは扱いが異なるため注意する必要があります。
いずれも「貸与」という条件がありましたが、事務・消耗品の場合、実質的には返却が困難です。
そのため文具や宅配・郵送用品類などは、業務上必要なものとして、会社が負担する経費にできます。
出社・外出時のマスクといった消耗品も該当しますが、あくまで通常業務を遂行する上で欠かせないものに限ります。
例えば従業員の家族用のマスクを支給した場合には、課税対象になるので気を付けておきましょう。
3. 従業員が経費負担する場合は就業規則での規定が必須
今までにご紹介した必要品については、必ず会社負担にすべきというわけではありません。
仮に会社が立て替えなくても違法ではなく、従業員の自前でも良いものです。
しかし労働基準法においては、何かしらの業務用品を従業員負担にする場合には、就業規則による定めが必要とされています。
もし在宅勤務に向けた必要物品を従業員自身でそろえてもらう際には、就業規則の確認が欠かせません。
状況に応じて就業規則を変更しなければならないので、十分に注意しておきましょう。その他にも勤務時間や残業規定の変更など、在宅勤務の導入時には就業規則の見直しが必須です。
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関連記事:在宅勤務の就業規則の在り方や見直しのポイントを解説
4. 在宅勤務での経費扱いで特に注意したいもの
ここまでにご紹介してきたのは、オフィス勤務でも必要になる有形の物品例で、白黒が分かりやすくあまり判断に困ることはないでしょう。
しかし在宅勤務になると、自宅で仕事をするからこそ発生する経費も出てきます。
特に以下のような無形コストは、取り扱いが非常に複雑なので、しっかりと社内で検討しておきましょう。
4-1. 通話・通信料金
仮に従業員本人が所有するスマートフォンを業務に使う場合、その使用料を経費精算するには、合理的かつ精密な計算方法で適切な金額を算出しなければなりません。
より詳細な規定がある場合には、各企業独自の計算でも問題はありませんが、基本的には次のような計算式に当てはめて経費額を出します。
- (1ヵ月間の基本料金+インターネット接続料の有料分)×各従業員の月の在宅日数/該当月の暦日×1/2
※上記に加え、業務に使用した分の通話料を上乗せ
通話料については、明細書にて業務に使用した分が把握できるため、その分をそのまま経費精算として問題はありません。
ただし基本料金やインターネット接続料は、私的利用分と分ける必要があるため、上記計算式に当てはめて算出します。
またインターネット接続料の有料分とは、例えば「3GBまで基本料金に含む」などの場合なら、その超過分に該当するものです。
なお1円未満は切り上げで考えます。
4-2. 電気料金
電気料金も同じように、私的利用分と分けて考慮しなければなりません。
こちらも会社独自の計算方法でも問題はありませんが、原則以下の計算式に当てはめて算出します。
- 1ヵ月間の電気料金×業務に要する床面積/自宅の総床面積×従業員の月の在宅日数/該当月の暦日×1/2
なお通話・通信量でも同じように出てくる「1/2」という比率は、1日の平均睡眠時間(8時間)を除いた、日中の労働時間の割合を示しているものです。
4-3. レンタルオフィス
やむを得ない事情で自宅に作業スペースを確保できない場合には、きちんと業務利用していることを確認した上で、経費精算ができます。
もちろんその際には、領収書などの証明書類が必要です。
4-4. 感染症対策関連
もし感染が疑われる従業員において、会社からの業務命令でホテルを利用させたりPCR検査を受けさせた場合には、交通費を含んだ各種料金は経費精算が可能です。
ただし自己判断で利用しているケースで会社が負担する際には、給与として課税対象となるので注意しておきましょう。
関連記事:在宅勤務に交通費は必要?クリアにしておきたい線引や注意点
5. 在宅勤務で経費として認められない物
在宅勤務で経費として認められない物もあります。例えば従業員が在宅ではなくカフェやコワーキングスペースで業務をした場合は注意が必要です。コワーキングスペースの使用料やカフェの飲食費は経費として認められる可能性があります。しかし、飲食をメインにカフェを利用したのであれば、飲食費が経費として認められる可能性は低いでしょう。前提として、セキュリティリスクを考慮すると従業員が独自の判断でカフェで業務をするのはリスクがあります。そのため、自宅以外でおこなう業務については社内でルールを定めておくのが望ましいでしょう。
6. より適切な処理によって快適な在宅勤務に
在宅勤務でなるべくスムーズに業務を進めていくためには、備品をはじめとしたさまざまな準備が必要です。
また状況に応じて、滞りなく仕事をしてもらうための費用負担が求められるケースも発生します。
そうした場合に備えて、手当を支給するのか経費精算で立て替えるのか、前もって十分に検討しておかなければなりません。
従業員への影響も大きいため、しっかりと計画を立てた上で、適切な処理をしていくのがベストです。
関連記事:在宅勤務手当とは?支給額の相場や支払い方法を詳しく紹介
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