静かな退職(Quiet Quitting)の意味とは?増加の原因や防止対策を解説
更新日: 2025.8.4 公開日: 2025.4.15 jinjer Blog 編集部

静かな退職とは、従業員が表向きには働き続けているものの、必要最低限の業務しかおこなわなくなる状態を指します。
静かな退職は能動的に退職するのではなく、内面的なモチベーションの低下や職場への不満などから、実質的に「やる気のない退職状態」に陥ることが特徴です。通常の退職とは異なり、表面上は業務を遂行しているため、企業側が気づかないことも珍しくありません。
しかし最近では、働き方や価値観の多様化、エンゲージメントの低下といった要因により、静かな退職が増加しています。静かな退職を選択した従業員を放置していると、企業に悪影響を及ぼす可能性があるため早急な対応が必要です。
本記事では、静かな退職の意味や発生する背景、企業に与えるリスクなどを解説します。
目次
従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 静かな退職(Quiet Quitting)とは


静かな退職(Quiet Quitting)とは、必要最低限の仕事のみをこなし、退職したような余裕をもって働く従業員のことを指します。仕事とプライベートを明確に区別し、ワークライフバランスを重視した働き方です。
表面上は業務をこなしているように見えますが、「静かな退職」を選択した従業員は、企業への忠誠心や責任感をほとんど持っていません。仕事に対し、やりがいや自己実現を求めないため「頑張りすぎない働き方」ともいわれます。
世論調査をおこなっているGALLUP(ギャラップ)社は、世界160ヶ国以上・15歳以上の労働者・12万以上を対象に、仕事への関与に対する意識調査を実施しました。調査結果では、労働者の59%が「静かな退職をしている」と回答しています。
参考:「静かな退職」は世界的な現象で、その損失は8.8兆ドル…調査対象の労働者の59%が該当 | Business Insider Japan
2. 静かな退職が増加する原因


静かな退職が増加する主な原因は、以下のとおりです。
- 就業形態の多様化
- 仕事に対する意識の多様化
- エンゲージメントの低下
ここでは、これらの原因について解説していきます。
2-1. 就業形態の多様化
テレワークやフレックスタイム制度の導入によって、従業員はより柔軟に働ける環境を手に入れました。
一方で、こうした就業形態の変化は、上司や同僚とのコミュニケーション不足を招くリスクがあります。従来のように上司が部下の様子を日常的に観察できないため、モチベーションの低下や業務姿勢の変化に気づきにくくなってしまうのです。
また、オフィスに出勤する機会が減ったことで、組織やチームの一体感が希薄になることも、静かな退職を助長する要因のひとつです。柔軟な働き方は魅力的ですが、従業員が孤立感を抱えやすくなる点には注意が必要です。
働き方の変化とともに私生活を見直し、よりプライベートを充実させたいと考える人が増えたことも「静かな退職」が増えている原因といえるでしょう。
2-2. 仕事に対する考え方の変化
仕事に対する考え方が変化したことも、静かな退職が増加する原因の一つです。かつては「会社のために尽くす」姿勢が重視されていましたが、働き方改革の影響もあり、ワークライフバランスに重きを置く人が増えました。
Job総研がワークライフバランスの理想を調査した結果、「プライベートを重視したい」と回答した人は72%を超えています。理想と現実は異なるものの、仕事よりも自分の人生を大切にしたい意識が強まっているのです。また、「ワークライフバランスが仕事のモチベーションに影響している」と回答した人は73%でした。アンケート結果からも、プライベートを重視した働き方を理想とする人が多いことが明らかといえるでしょう。
このように、必要以上に努力することや、自発的に動くことへの抵抗感が生まれやすくなったことが静かな退職を増加させる原因となっています。企業が従来の価値観のままでいると、従業員との意識のギャップが広がり、エンゲージメントの低下につながるので注意が必要です。
参考:Job総研による『2023年 ワークライフ実態調査』を実施 理想はプライベート重視7割 実際は仕事に偏りギャップ顕著 | パーソルキャリア株式会社のプレスリリース
2-3. エンゲージメントの低下
従業員のエンゲージメントの低下も、静かな退職が増加する原因の一つです。エンゲージメントとは会社にどれだけ貢献したいかの意欲を指します。
従業員のエンゲージメントが低下する要因の例は、以下のようなものがあります。
- 昇進のチャンスがない
- 新たなスキルを学ぶ機会がない
- 業務量が報酬に見合っていない
- 上司のリーダーシップが不足している
- 人事評価に透明性がない
従業員のエンゲージメントが低下すると、「必要最低限の業務をこなせばよい」と考えるようになり、積極的に仕事に取り組む意識が薄れます。組織へ貢献したい意欲がなくなると、目の前の業務をこなすだけになってしまうでしょう。
3. 静かな退職が企業に与える影響


静かな退職は、従業員個人の問題に見えがちですが、実は企業全体のパフォーマンスや組織の健全性に大きな影響を及ぼします。
やる気を失った従業員が増えると、業務の効率が落ちるだけでなく、周囲のモチベーションにも悪影響を与えることがあります。また、表面上は問題が見えにくいため、組織として対処が遅れやすく、気づいた時には生産性が低下していたり人間関係が悪化していたりするケースも少なくありません。
静かな退職を放置することで、離職率の上昇や人材流出にもつながり、長期的に見て企業の競争力を損なう恐れがあるので、どのような影響があるのかをしっかり理解しておきましょう。
3-1. 生産性の低下
静かな退職が増加すると、組織全体の生産性が低下するリスクがあります。その理由は、従業員が最低限の業務しかおこなわないと、業務効率が悪化するからです。
また、静かな退職を選んだ従業員は問題が発生しても対処する姿勢がないため、問題が放置されるケースが多くあります。小さな問題が次第に大きくなり、企業の運営に重大な影響を及ぼすリスクもあるでしょう。
組織の目標達成に向けた意欲の低下や問題解決力が不足するため、企業全体のパフォーマンスに悪影響を与えます。静かな退職を選択した従業員の存在は、熱意をもって働いている従業員のモチベーションも下げかねません。
一定の業務しかこなさない従業員が増えれば、企業の成長は見込めないでしょう。
3-2. 人間関係の悪化
静かな退職をしている従業員は、周囲とのコミュニケーションを避ける傾向があるため、チームの協力関係が損なわれることがあります。例えば会議での発言が減ったり、協力を求められても消極的な態度を見せたりすることが多くなるので、他のメンバーとの信頼関係に影響を与え、職場の雰囲気がぎくしゃくしてしまうことも少なくありません。
特にチームでの連携が重要な業務では、こうした姿勢が全体の士気を下げ、チームワークの低下につながるリスクがあります。人間関係の悪化が連鎖すると、結果的に職場全体のエンゲージメントにも悪影響を与えたり、企業全体の労働環境が悪くなったりするので、健全性が失われてしまいます。
3-3. 退職率の増加
静かな退職の状態が続くと、最終的には実際の退職に至るケースも少なくありません。
最初は「辞めるほどではない」と思っていた従業員でも、職場に対する不満や疎外感が強まることで、退職を選択するようになります。また、静かな退職者の存在により職場の雰囲気が悪化すれば他の従業員にも悪影響を与えますし、退職する従業員が増えると、残された従業員の業務負担が増え、さらに退職者が生まれる悪循環も発生しやすくなります。
人材の確保や定着が課題となっている現在の労働市場において、こうした事態は企業にとって大きな損失です。静かな退職を未然に防ぐためにも、早期のサインに気づき、職場環境を見直すことが求められます。
4.静かな退職が多い企業の特徴


静かな退職が多い企業というのは、いくつかの共通した特徴があります。もちろん企業によって特徴は異なりますが、多くの場合、従業員が働きがいを感じられなかったり公平な評価がされていなかったり、組織の仕組みや文化に問題があることが原因です。
従業員の意欲やエンゲージメントが低下しやすい環境では、静かな退職の予備軍が自然と増えてしまいます。
ここでは、静かな退職が起こりやすい企業に見られる特徴を3つに分けて解説するので、自社の状態と照らし合わせてみましょう。
4-1. 業績に対して公平な評価がない
従業員が努力して成果を上げても、それが正当に評価されなていなければ、モチベーションが下がってしまうので静かな退職につながります。評価に不公平感があると、「頑張っても評価されない」「上司のお気に入りが得をする」というような不満が生じるので、働く意欲を失ってしまうのです。
特に、評価制度が曖昧だったり、マネジメント層や管理者の主観が評価に影響していたりする企業では、不信感が強まりやすい傾向にあります。また、成果だけでなくプロセスや日々の貢献が見過ごされると、従業員は次第に最低限の業務しかおこなわなくなります。
このような事態を防ぐには、明確な評価基準を設けて、評価の透明性を高めることが重要です。さらに、定期的なフィードバックや面談を通じて、評価への納得感を持たせると、静かな退職を防ぐ効果が期待できます。
4-2. 業務範囲があいまい
業務内容や責任範囲が明確でない職場では、従業員が自分の役割を正しく理解できないため、不安や混乱が生じやすくなります。特に「誰が何をやるのか」が曖昧な環境では、業務の押し付け合いや責任逃れが起こりがちです。
このような状態は職場の信頼関係を崩すので、従業員は「無理に動いても損をする」と考えるようになります。結果として、必要最低限の仕事しかおこなわず、自発性や協調性まで失われていきます。また、役割が不明確だとキャリアパスも見えにくく、将来に希望が持てなくなります。
静かな退職を防ぐには、各部署やポジションの業務内容と期待される成果を明確にすることが効果的です。さらに、定期的に業務の見直しや調整をおこない、従業員が納得して仕事に取り組める環境を整えることも重要です。
4-3. インセンティブが少ない
インセンティブが少ない職場では、従業員のやる気を維持するのが難しくなります。ここでいうインセンティブとは、給与や賞与といった金銭的報酬だけではなく、表彰制度やスキルアップの支援、柔軟な働き方などモチベーションを高めるための仕組み全般を指します。
このような仕組みが不十分な職場では、従業員も「努力しても見返りがない」「成長の機会がない」と感じるので、業務に関わること頑張ることをやめてしまう傾向があります。
特に若年層や中堅社員は、将来性ややりがいを重視する傾向があるので、インセンティブが少ないと転職を視野に入れ始めるようになります。このような状況を防ぐためには、企業側は個々の成果に対する正当な報酬だけでなく、従業員の挑戦や努力に応じた評価制度を整えることが必要です。
5. 静かな退職をしそうな従業員の兆候


静かな退職は、突然起こるわけではありません。多くの場合、従業員の言動や働き方に徐々に変化が現れ、その兆候を見逃さずにキャッチすることが早期対応の鍵となります。日常的な観察や対話の中でこれらのサインをいち早く察知することで、離職を防ぎ、従業員の働きがいを取り戻すサポートが可能になるので兆候を把握しておきましょう。
静かな退職を考えている従業員には、以下のような兆候が見られます。
- 残業や追加業務を避ける
- ミーティングで発言が減る
- 周りの従業員の業務量が増えている
- 同僚や上司とのコミュニケーションが減る
- 社内イベントに参加しない
- 不満を口にすることが増えている
業務に対する積極性が著しく低下した従業員は、静かな退職を考えている可能性が高いといえるでしょう。このような従業員は周囲へ悪影響を及ぼす可能性もあるため、できるだけ早く対処するのがベストです。
6. 静かな退職を防止するための対策


静かな退職を防止するために、以下のような対策を講じることが有効です。
- 人事評価制度の見直し
- ワークライフバランスの推進
- キャリア成長の機会の提供
- システムを導入して業務負担を減らす
ここでは、これらの対策について詳しく解説します。
6-1. 人事評価制度の見直し
静かな退職を防止するためには、人事評価制度を見直すことが効果的です。公正な人事評価は、従業員のモチベーションに直結します。
従業員は「頑張っても評価されない」というフラストレーションがたまると、静かな退職へと傾く可能性があります。評価基準が不透明だったり、上司の主観が評価に反映されていたりすると、モチベーションの低下を招きます。
このような事態を防ぐには、公平性と納得感を重視し、目標の設定から達成度の評価、フィードバックまでを一貫性のあるプロセスで構築することが重要です。また、定期的な評価面談を通じて、従業員の成果や努力を丁寧にフィードバックすることも信頼関係の強化につながります。
透明性や公平性がない人事評価制度のままでは、企業に対する貢献意欲は向上しません。成果が認められない状況が続けば、業務に対する熱意をさらに失うので早急な見直しが求められます。
6-2. ワークライフバランスの推進
多様な働き方を導入し、ワークライフバランスを推進することも静かな退職の予防に効果的です。プライベートが充実することで、仕事に対する意欲に変化が起こる可能性があります。
長時間労働の是正や有給休暇の取得促進、フレックスタイムやリモートワークなどの柔軟な働き方の導入は、ワークライフバランスの向上に直結します。また、育児・介護の休暇制度や福利厚生の充実など、家庭の事情や個人のライフスタイルに応じた働き方を尊重することで、従業員のエンゲージメント向上も期待できます。
ここで重要なのは、制度を導入するだけでなく職場全体で利用しやすい風土を育むことです。柔軟な働き方を提供し、従業員のライフステージに変化があっても働きやすい環境を整えておけば、静かな退職を防いだり心境の変化を起こしたりすることにつながります。
6-3. キャリア成長の機会を提供
従業員のキャリア成長の機会を提供することも、静かな退職を予防する対策の一つです。
将来に希望が持てない職場では、従業員の働く意欲は失われていきます。成長の機会があることで仕事への意欲が湧き、従業員の将来の不安を軽減できます。スキルアップやキャリアアップの支援があると、企業への帰属意識が高まり、積極的に業務に携わるようになるでしょう。
例えば、定期的なキャリア面談や業務外で学べる研修制度、社内ジョブローテーションなどを通じて、従業員自身の「なりたい姿」を支援するのが効果的です。成長実感が得られる職場は、モチベーションやエンゲージメントを高める効果があります。
単なる教育ではなく、従業員が望むキャリアプランを実現できるよう、定期的な面談やアンケート調査などを実施することも有効です。
6-4.システムを導入して業務負担を減らす
業務量が過剰で余裕がない状態が続くと、やがて従業員は「なんでこんなにやらなければいけないのか」「自分だけ負担が大きすぎる」などと感じやすくなるため、静かな退職に至るケースがあります。
このような事態を防ぐには、業務の効率化が有効です。勤怠管理システムやワークフローシステム、タスク管理ツールなど、ITシステムを活用することで、業務負担を減らし生産性を向上させましょう。
また、定型的な業務や繰り返し作業をシステムで自動化することで、従業員が創造的・戦略的な仕事に集中できる環境を整えることも可能になります。効率的に働ける職場は、ストレスの軽減と満足度の向上に貢献するので静かな退職を防ぐ効果につながります。
7. 静かな退職を防げる職場環境を整えよう


静かな退職の増加は、企業にとって大きな課題です。問題を放置していると、生産性の低下や人間関係の悪化を招き、結果として退職率を増加させるリスクがあります。
静かな退職の背景には、評価制度や業務範囲への不満、エンゲージメントの低下など、職場環境に起因するさまざまな問題が潜んでいます。静かな退職は、一人ひとりの行動に現れますが、根本的な原因は組織全体の構造や風土にあるケースが少なくありません。
静かな退職を防ぐためには、従業員の満足度を高め、安心して働ける環境を整えることが大切です。具体的には、公正な評価制度の整備やキャリア成長支援、柔軟な働き方の導入、業務効率化など多角的な対策を組み合わせて実施する必要があります。また、日常的なコミュニケーションやフィードバックを通じて、信頼関係を築くことも欠かせません。
静かな退職を防止することは、従業員の定着率やモチベーションを高めるだけでなく、企業の持続的成長にもつながるので、積極的に職場環境の改善に取り組んで企業の成長を促進しましょう。



従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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