パパ・ママ育休プラスとは?条件や給付金、出生時育児休業との違いを解説

夫婦で育児休業を取得した場合、従来の育児休業期間から延長して育児休業を取得できることを知っていますか?それが「パパ・ママ育休プラス」という制度です。
この制度を正しく理解し、従業員へ的確に案内することは、円滑な手続きをおこなうだけではなく、企業の子育てサポートの姿勢を示すうえでも非常に重要です。
本記事では、人事・労務担当者が押さえておくべき「パパ・ママ育休プラス」の基本的な仕組みから、従業員に説明する際のポイント、そして実務で注意したい点までをわかりやすく解説します。制度を正しく理解して案内できるように、ぜひ参考にしてください。
目次
育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
◆この資料でわかること
- 育児・介護休業法の基本と最新の法改正について
- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
- 法律で義務付けられた従業員への個別周知・意向確認の進め方
- 子の看護休暇や時短勤務など、各種両立支援制度の概要
2025年10月施行の改正内容も詳しく解説しています。「このケース、どう対応すれば?」といった実務のお悩みをお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. パパ・ママ育休プラスとは


「パパ・ママ育休プラス」は、2009年7月の育児・介護休業法改正によって新設され、2010年6月30日から施行された制度です。
「パパ・ママ育休プラス」導入前は、原則として子どもが1歳までしか育休を取れませんでした。しかし、パパ・ママ育休プラスにより、夫婦で取得すれば最長1歳2ヵ月まで延長できるようになりました。ただし、1人の親が休める日数の上限自体は、原則の1年のままで変わらないため注意が必要です。
例えば、夫婦でバトンタッチするように時期をずらして休業することで、子どもが1歳になった後もどちらかが育児に専念できる期間を作れる、というイメージです。
保育園の入園時期に合わせたり、夫婦で協力する時間を確保したりと、家庭の事情に応じた柔軟な計画が立てられます。
1-1. 制度の目的
「パパ・ママ育休プラス」の目的は、父親の育児休業取得を促し、母親の負担を軽減しながら夫婦で育児を分担できる環境を整えることです。
育休制度導入時は、父親の育児休業取得率が極めて低く、育児の負担が母親に偏りがちでした。出産・育児によって女性が離職せざるを得ない状況も生まれ、復職やキャリアの継続に課題がありました。そこで、導入されたのが「パパ・ママ育休プラス」です。
この制度を活用すれば、母親が1歳まで休み、その後に父親が交代して育休を取ることができます。母親の円滑な職場復帰を支えつつ、父親も育児の主担当として子育ての経験を積むことができる点がメリットです。また、夫婦が同時に休む、あるいは交代して休むなど、家庭の事情に合わせて柔軟に選ぶこともできます。
こうした仕組みにより、夫婦の協力体制が強まり、子どもにとっても安心できる育児環境を整えやすくなりました。
1-2. 育児休業との違い
通常の「育児休業」は、原則子どもが1歳になるまで取得できる基本制度であるのに対し、「パパ・ママ育休プラス」は夫婦がそろって育休を取得する場合に子どもが最長1歳2ヵ月になるまで利用できる特例制度です。
この特例のポイントは、1人あたりの育児休業の日数が2ヵ月増えるのではなく、育休を取得できる期間の終点が、子どもが1歳2ヵ月になるまで延長されるという点です。
例えば、母親が1歳まで育休を取得して復職する際、入れ替わりで父親が育休を引き継ぐことで、子どもが1歳2ヵ月になるまで切れ目のない育児体制を築けます。
一方で、通常の育児休業にも「保育園に入れない」「配偶者が病気で育児できない」などのやむを得ない事由で、休業期間を1歳6ヵ月、最長2歳まで延長できる仕組みがあります。
この延長制度と「パパ・ママ育休プラス」は目的の異なる別の制度であり、2つは併用できないため、混同しないように気をつける必要があります。「パパ・ママ育休プラス」をどのように活用すればメリットが生まれるのか、その具体的なパターンは本記事の「5.パパ・ママ育休プラスの取得例」にて詳しくご紹介します。
関連記事:育児・介護休業法とは?制度や目的・改正内容と企業の対応方法をわかりやすく解説
1-3. 産後パパ育休(出生時育児休業)との違い
「産後パパ育休」と「パパ・ママ育休プラス」は、目的も利用できるタイミングも全く異なる制度です。
「産後パパ育休」は、通常の育休とは別枠で、子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる短期休業制度です。出産直後の母親を支え、父親の迅速な育児参加を促すことを目的としています。
一方、「パパ・ママ育休プラス」は、通常の育児休業に適用される特例であり、夫婦がそろって育休を取得することを条件に、休業期間の終点を子どもが1歳2ヵ月になるまで延長する仕組みです。母親の職場復帰などを支援し、1歳以降の育児を夫婦で分担するために利用される長期的な制度と言えます。
また、「産後パパ育休」と「パパ・ママ育休プラス」の2つの制度は併用が可能です。
例えば、父親が出生直後に「産後パパ育休」で短期的に休み、母親の復職に合わせて1歳以降に「パパ・ママ育休プラス」の特例を利用する、といった組み合わせが可能になります。
参考:「産後パパ育休(出生時育児休業)」とは?|両立支援のひろば
関連記事:産後パパ育休とは?育児休暇との違いや申請方法、給付金について解説
「育児休業」「産後パパ育休」「パパ・ママ育休プラス」、3つの制度の違いを表にまとめました。従業員への説明の際などにお役立てください。
| 制度名 | 概要 | 取得できる時期と期間 |
| 育児休業
(基本制度) |
基本となる育休制度
・父母ともに取得可能。 ・保育園に入れない等の場合は、1歳半、最大2歳まで延長できる。 ・父母それぞれ2回まで分割して取得可能。 |
原則、子が1歳になるまで |
| 産後パパ育休
(出生時育児休業) |
産後のための短期休業
・通常の育休とは別枠で取得できる。 ・2回まで分割して取得可能。 ・休業の申し出は原則2週間前まで。 |
子の出生後8週間以内のうち、最大4週間(28日)まで |
| パパ・ママ育休プラス
(特例制度) |
育休期間を延長する特例
・夫婦ともに育休を取得することが条件。 ・1人あたりの休業日数は増えず、休業期間の終期が延長される。 ・夫婦で時期をずらして取得することで、切れ目のない育児が可能になる。 |
子が1歳2ヵ月になるまでの期間内で、1人あたり最大1年(産後休業含む) |
2. パパ・ママ育休プラスの対象者と取得条件


「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦がともに育児休業を取得することが利用の前提となる制度です。そのうえで、休業を開始するタイミングなど、いくつかの具体的な条件をすべて満たす必要があります。ここでは、対象者と条件をわかりやすく整理します。
2-1. パパ・ママ育休プラスの対象者
パパ・ママ育休プラスは、原則として、雇用保険に加入している従業員が対象です。
雇用形態は問わないため、正社員だけでなく、契約社員、パートタイマーも雇用保険加入者であれば対象となります。ただし、企業で労使協定が結ばれている場合、入社1年未満の方や、1年以内に雇用が終わる予定の方、週の勤務日数が2日以下の方は対象外となることがあります。
また、この制度は夫婦ともに育児休業を取得することが利用の大前提です。従業員から申請があった際は、その配偶者も育休を取得できる状況かどうか、必ず事前に確認しましょう。
2-2. パパ・ママ育休プラスの取得条件
パパ・ママ育休プラスを利用するためには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。従業員から申し出があった際は、必ず確認しましょう。
- 夫婦がともに育児休業を取得すること。
- 配偶者が、子が1歳の誕生日までに育休を取得していること。
- 本人の育休開始日が、子の1歳の誕生日より前であること。
- 本人の育休開始日が、配偶者の育休開始日以降であること。
これらを満たすことで、後から取得する側の育休の終了時期を子が1歳2ヵ月になるまで延長できます。
3. パパ・ママ育休プラスの申請方法と必要書類


「パパ・ママ育休プラス」の利用に、この制度独自の申請手続きは必要ありません。通常の育児休業給付金の申請の中で、制度の適用を希望することを伝える流れになります。申出は育休開始の1ヵ月前が基本ですが、条件を満たせば途中からの申出も可能です。
先に育休を取る妻(母親)は、通常どおりの申出・給付金申請でよく、特別な追加手続きは不要です。後から取得する夫(父親)は、申出時に利用希望を伝え、妻の育休取得を証明する書類を添付する必要があります。
なお、例としては少ないですが、母が産後休業後すぐに仕事復帰し、父が先に育児休業を取得する場合、手続きの順番が逆になります。
企業は従業員からの申出を受けたら、配偶者の育休取得を確認できる書類をそろえて、ハローワークに給付金申請をおこないましょう。申請の際には、基本的な育児休業の申請書類に加え、次の書類の提出が必要となります。
- 「育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」の19欄「配偶者の育児休業取得の有無」、20欄「配偶者の雇用保険被保険者番号」の記載
※「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」の場合は27欄と28欄
- 続柄が記載された世帯全員の住民票(写し)
- 配偶者の育児休業の取得を確認できる書類
従業員から申し出があった際は、配偶者の育休を証明する書類の準備に時間かかる場合もあるため、早めに案内しましょう。
関連記事:育児休業給付金支給申請書とは?記入例や添付書類、申請方法、初回と2回目以降の違いを解説
4. パパ・ママ育休プラスの給付金


パパ・ママ育休プラスは、育児休業制度の特例の一つであるため、通常の育休と同様に雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
育児休業給付金の金額は、休業開始前の賃金を基に次のように計算されます。
育休開始から180日間:休業開始時賃金日額×支給日数×67%
育休開始から181日目以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%
育休の取得日数は夫婦で合算されません。育休を開始した日から父親・母親それぞれで個別にカウントされます。
関連記事:育児休業給付金とは?2025年4月の改正点や支給条件、申請、計算方法をわかりやすく解説!
5. パパ・ママ育休プラスの取得例


「パパ・ママ育休プラス」の活用により、母親の円滑な職場復帰や保育園の入園時期の調整、父親の主体的な育児参加など、各家庭の状況に応じた柔軟な育休計画を立てることができます。ここでは、厚生労働省の資料を参考に、代表的な3つの取得パターンをご紹介します。
- パパとママが交代で育休を取得するパターン
- パパとママが同時に育休を取得するパターン
- パパとママともに一度職場復帰し、再度育休を取得するパターン
従業員の方へ案内する際のモデルケースとして、ぜひご活用ください。
5-1. パパとママが交代で育休を取得するパターン
母親の育休復帰のタイミングで父親の育児休業にバトンタッチする例です。
1年ぶりに仕事に戻る際は、慣らし保育への対応や子どもの急な体調不良など、仕事と育児の両立に大きな負担がかかります。父親が育休を交代することで、母親は復帰後の一定期間、仕事に集中できます。このパターンでは、父親が、「ワンオペ育児」を経験することで育児のスキルを習得すると同時に、大変さも実感でき、その後の夫婦の協力体制が強まる効果も期待できるでしょう。
5-2. パパとママが同時に育休を取得するパターン
夫婦が同じ時期に育休を取得するパターンです。父親と母親が、一緒に子育てを実践しながら育児スキルを学ぶことで、育児への理解が深まり、その後も夫婦で支えあって育児と仕事の両立を実現しやすくなります。
このパターンでは、夫婦で育休を取得しはじめてから復帰時期を具体的に検討し始めるケースも多いでしょう。
パパとママが同時に育休を取得するパターンの具体例をご紹介します。2月生まれの子どもの4月入園を目指す場合、2月から4月の空白期間を埋めるために後からこの制度の利用を申し出る、というのも典型的な活用例です。このケースの場合、原則1歳までの育休を、保育園に入園しない証明をおこなわず実質的に1歳2ヵ月までつなげられるため、有効な活用法です。
5-3. パパとママともに一度職場復帰し、再度育休を取得するパターン
「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦が育休から一度職場復帰した後に、再度交代で休業するといった柔軟な使い方も可能です。
例えば、一定期間、祖父母が子どもの面倒を見てくれる間は夫婦ともに働き、その後に父親が育休を引き継ぐ、といったケースが考えられます。
このパターンは、両親だけでなく祖父母など周囲の協力も得ながら、育児と仕事のバランスを柔軟に調整したい場合に有効です。
6. パパ・ママ育休プラスの活用を促進し、育児を支援しよう


「パパ・ママ育休プラス」は、単に育休を長くできる制度ではなく、夫婦が協力して無理のない育児計画を立てるための大切な仕組みです。
母親のスムーズな職場復帰を後押しし、父親の自然な育児参加にもつながるなど、家庭と仕事の両立に役立つ効果が期待できます。従業員にこの制度をわかりやすく紹介し、それぞれの家庭に合った働き方を応援することは、従業員の安心感や働きやすさに直結する重要な仕事です。
子育てもキャリアも大切にできる魅力的な職場をつくり、優秀な人材の定着や確保へつなげていきましょう。



育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
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- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
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2025年10月施行の改正内容も詳しく解説しています。「このケース、どう対応すれば?」といった実務のお悩みをお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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