従業員サーベイとは?目的や成果につなげる分析・活用方法を紹介
更新日: 2025.12.1 公開日: 2022.11.14 jinjer Blog 編集部

従業員サーベイとは、職場環境や業務満足度、組織への信頼感など、従業員の意識や感情を把握するために会社が実施するアンケート調査です。これにより、経営層や人事部門は現場の実態を客観的に理解し、組織改善や人材施策に活かすことが可能になります。
本記事では、従業員サーベイの目的やメリット・デメリット、実施プロセスについて解説します。また、サーベイを効果的に運用するための質問項目の設計方法や分析手法についても具体的に紹介します。
従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 従業員サーベイとは?


従業員サーベイとは、会社が従業員を対象に、職場環境や仕事内容への満足度、上司や組織への信頼感、働き方に関する意識などを把握するために実施するアンケート調査です。従業員が日々の業務や組織運営をどのように感じているかを定量的に把握することで、経営層や人事部門が現場の実態を客観的に理解できます。
サーベイの結果は、人事制度や就業規則の改定、職場環境の改善、マネジメントの見直しなど、幅広い領域の意思決定に活用されます。単なる意見収集にとどまらず、組織全体の課題を明らかにし、改善の方向性を定めるための重要なデータとなります。
なお、「従業員サーベイ」という言葉の定義や範囲は会社によって異なるのが一般的です。人事部が実施する全社的な意識調査を指す場合もあれば、特定テーマ(エンゲージメント、コンプライアンス、心理的安全性など)に焦点を当てた調査を含む場合もあります。目的や設計思想に応じて、最適なサーベイ手法を選定することが重要です。
関連記事:サーベイとは?代表的なサーベイの種類や注意点を紹介
1-1. 従業員サーベイは無意味?メリット・デメリットとは
従業員サーベイは無意味という見方をされることもありますが、その背景にはさまざまな理由があります。ひとつは、調査結果を活かしきれていないことです。なぜなら従業員サーベイは、結果を分析して課題を明確化し、改善アクションへつなげることで初めて効果を発揮するためです。調査を実施して報告書をまとめて終わりにしてしまうと、当然ながら成果は得られず「やっても無駄」と感じられてしまうのです。
また、サーベイは業務時間中におこなわれるため、設問数や実施時期を誤ると従業員の負担になる場合があります。さらに、調査結果を非公開にしたり、改善方針を共有しなかったりすると、従業員の信頼を損ねるおそれもある点に留意が必要です。
一方で、従業員サーベイを実施しなければ、従業員の本音や職場の実態を正確に把握することは困難です。待遇や業務環境が適切かどうかを検証しないままでは、モチベーションの低下や生産性の停滞を招く可能性があります。したがって、従業員サーベイは「無意味」ではなく、組織の健全性を維持・向上させるために欠かせないプロセスといえます。
従業員サーベイは、組織の現状を客観的に可視化し、エンゲージメント向上や生産性改善を促す有効な手段です。サーベイ結果を活かして継続的な改善を重ねることで、従業員の満足度向上や人材定着、さらには業績向上へとつなげることが可能になります。
関連記事:エンゲージメントサーベイは無駄で意味がない?解決策とメリットを解説!
2. 従業員サーベイの目的


従業員サーベイの主な目的は、人事や管理職が立てた仮説をデータで検証し、今後の施策に活かすことです。そのほかにも、次のような目的があります。
- 会社と従業員との間のずれを知る
- 従業員のリアルな声を聞く
- 人事戦略に活用する
ここでは、それぞれの目的について詳しく解説します。
2-1. 会社と従業員との間のずれを知る
従業員サーベイを実施することで、会社と従業員の間に存在する認識のずれを明らかにできます。例えば、会社側が「従業員が喜ぶだろう」と考えて社員旅行を福利厚生の一環として実施したとします。しかし、実際には多くの従業員が参加に消極的で、仕方なく参加しているケースもあります。
この場合、会社が直接「社員旅行についてどう思うか」と尋ねても、多くの従業員は正直に「行きたくない」と答えません。これは、会社に悪く思われたくない、評価に影響したくないという心理が働くためです。心理学ではこれを「社会的望ましさバイアス」とよびます。
一方、匿名で実施される従業員サーベイでは、こうした心理的抑制が軽減され、従業員の本音をより正確に把握できます。もしサーベイの結果、社員旅行に魅力を感じていない従業員が多いことがわかれば、費用を別の福利厚生に回すなど、より効果的な施策に改善することが可能です。
このように、従業員サーベイは会社の施策に対する従業員の本音を知り、認識のずれを解消するための有効な手段となります。
2-2. 従業員のリアルな声を聞く
従業員のリアルな声を聞くことも、従業員サーベイの目的です。例えば、「自分は頑張っているのに正当に評価されていない」と感じる従業員がいる場合、この不満は離職意図の高まりに直結するリスクがあります。
この不満の原因のひとつに、人事評価制度の理解不足があります。管理職と一般職で制度への理解度に差がある場合、たとえ公正に評価されていたとしても、従業員が納得できないことがあります。
しかし、多くの従業員は職場で率直に不満を表明しにくく、問題が表面化しないことが一般的です。心理的安全性が十分でない環境では、納得できないまま業務を続けることが少なくありません。こうした状況が長く続くと、離職の可能性は高まります。
従業員サーベイを活用すれば、従業員が抱える不満や考えを可視化できます。匿名性や集計の工夫により、表面化しにくい問題も把握可能です。そして、得られたデータを分析し、改善策に反映させることで、早期に課題を発見し、離職リスクを軽減することができるようになります。
2-3. 人事戦略に活用する
従業員サーベイは、単に実施すること自体が目的ではなく、人事戦略に活用してこそ意味があります。サーベイを実施することで、従業員が抱える課題や不満が明らかになることは確かですが、そのまま放置してしまっては何の効果も生まれません。重要なのは、得られたデータを分析し、組織や人事施策に反映させることです。
そのため、従業員サーベイはあくまで「組織の現状を把握するための手段」であり、結果を分析して具体的な施策に結びつけるプロセスがあって初めて、その価値が発揮されます。サーベイを正しく活用できている会社は増えてきていますが、依然として形だけ実施し、改善に結びつけられていない会社も存在します。組織がサーベイを実施する際には、結果を戦略的に活用し、従業員の声を反映させるための継続的な取り組みが不可欠です。
これらが従業員サーベイを実施する目的です。従業員のことを深く知り、よりよい会社を作っていくために従業員サーベイは存在しています。従業員の気持ちを理解しているつもりでも、実は不満を抱いているかもしれません。従業員サーベイを実施して、客観的に従業員のことを分析してみてください。
とはいっても、具体的にどのように活用すればよいのかわからないといったお悩みをお持ちの人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。当サイトでは、そのような方に向けて、従業員サーベイを活用する方法を例を用いて解説した資料を無料でお配りしています。
調査結果の運用方法を検討している方は、こちらから「従業員満足度のハンドブック」をダウンロードして参考にしてみてください。
2-4. 【事例紹介】従業員サーベイの活用例
従業員サーベイを活用し、調査結果に基づいた最適な人事異動を実現した飲食店の事例があります。経営規模の拡大に伴い従業員数が増加する中、社員データベースがリアルタイムで更新されず、現場と本部で把握している情報に差があることが課題となっていました。こうした背景から、従業員サーベイが導入されました。
従業員サーベイの導入により、A支店とB支店の従業員におけるストレスや業務上の課題の違いなど、面接だけでは把握しきれなかった本音が明らかになりました。これにより、組織全体の課題が可視化され、適切な改善策を講じられるようになりました。
具体的には、サーベイ結果をもとに1on1ミーティングを実施し、従業員一人ひとりに合わせたフィードバックをおこなっています。また、調査結果を参考にした人事異動で、従業員の適材適所の人材配置を実現しています。
3. 従業員サーベイの種類


従業員サーベイにはさまざまな種類がありますが、主に次の4つが挙げられます。
- エンゲージメントサーベイ
- モラールサーベイ
- パルスサーベイ
- 組織サーベイ
ここでは、これらのサーベイについて解説していきます。
3-1. エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、従業員の会社への愛着心や仕事への熱意、さらには自発的に貢献しようとする意欲など、従業員エンゲージメントの状態を測定する調査です。従業員の感情や考えを直接把握できる点から、多くの会社で採用されています。
例えば「やりがいを持って働けているか」「上司との関係は円滑か」といった質問項目を通じて、従業員の会社に対する意見や感情を収集し、組織の課題を可視化することが目的です。
また、経営側の認識とのギャップを明らかにすることで、サーベイ結果をもとにした適切な改善策の検討や施策立案につなげられます。ただし、サーベイ単体では改革は自動的におこなわれるわけではなく、結果の分析と具体的なアクションが不可欠です。
関連記事:エンゲージメントサーベイは無駄で意味がない?解決策とメリットを解説!
3-2. モラールサーベイ
モラールサーベイは、従業員の士気(モラール)や組織への満足度、不満点を幅広く把握することを目的に実施されます。職場環境や労働条件、人間関係など、多角的な視点から従業員の意識を明らかにし、組織改善につなげられます。
調査方法としては、面接形式とアンケート形式の双方が用いられます。アンケート形式では、定量的に分析できる「はい」「いいえ」や評価尺度を用いた閉鎖的質問が中心となります。
一方、面接形式では、従業員が自由に意見を述べられる環境を整えることが不可欠です。自由回答からは、定量調査だけでは把握できない心理的背景や具体的な問題点を引き出すことが可能です。
こうして収集されたデータは、単に集計するだけでなく、分析を通じて課題を特定し、改善施策に結びつけることが求められます。例えば、上司とのコミュニケーション不足が士気低下の要因であることが明らかになれば、教育研修や面談の仕組みを見直すなどの具体的なアクションにつなげられます。
3-3. パルスサーベイ
パルスサーベイとは、従業員が短時間で回答できる簡単な設問を用い、週1回や月1回など短い周期で繰り返し実施する意識調査のことです。高頻度での実施により、従業員の意識変化や施策の効果を迅速に把握できるのが特徴です。
この仕組みによって、組織は問題を早期に発見したり、改善策の効果をリアルタイムで測定したりすることが可能になります。設問は数問〜10問程度の簡単な内容で構成されることが多く、従業員の負担は比較的軽く抑えられます。
ただし、実施頻度が高すぎると回答疲れや形式的な回答が増えるリスクがあるため、設問設計や実施タイミングには注意が必要です。また、パルスサーベイだけでは長期的な組織文化や従業員満足度の傾向を十分に把握できないので、半年〜年単位のサーベイと併用することが望ましいとされています。
関連記事:パルスサーベイとは?目的や実施するメリットをわかりやすく解説
3-4. 組織サーベイ
組織サーベイとは、組織の現状を可視化し、潜在的な課題や改善点を明らかにするための調査です。組織には、会社側から把握しやすい「見えやすい状況」と、従業員の心理やチーム内の関係性など把握しにくい「見えにくい状況」があります。
見えにくい状況に問題があると、従業員のモチベーション低下や離職意向の増加、職場環境の悪化など、組織全体のパフォーマンスに影響するリスクがあります。調査では、職場環境の快適さ、上司・同僚とのコミュニケーション、企業理念やビジョンへの理解・共感など、従業員のリアルな声を幅広く収集します。
分析により、表面的には見えにくい課題や改善の優先順位を明確にでき、得られた知見は人事施策やリーダーシップ開発、組織文化の改善など、具体的なアクションプランに活用されます。これにより、組織の健全な成長と従業員満足度の向上が期待できます。
関連記事:組織サーベイとは?実施する目的や種類、メリット・デメリットを徹底解説
4. 従業員サーベイの流れ


従業員サーベイは、正しい手順で設計・実施しなければ、期待される効果を十分に得られません。ここでは、従業員の本音を的確に把握し、組織改善につなげるためのサーベイ実施の流れを詳しく解説します。
4-1. 従業員への質問項目を設定する
従業員サーベイを実施する際には、まず目的を明確にすることが不可欠です。サーベイは単に意見を集めるだけでは意味がなく、会社が抱える課題を特定し、それを解決するための意思決定に活用するための手段です。
例えば、人事評価制度の理解度や職場環境への満足度、業務モチベーションの実態など、解決したい課題を具体的に洗い出しておくことで、調査結果を有効に活用できます。
次に、その課題に沿った質問項目の設計をおこないます。質問は調査目的に直結する内容にすることが重要です。「従業員が現状の待遇に満足しているか」「業務への意欲やモチベーションはどの程度か」といった具体的な観点を明確にし、回答から得たい情報を明確化します。
既存のサーベイフォーマットを利用する場合も、目的に合わない項目は削除・修正し、精度の高いデータが得られるよう調整しましょう。調査設計の妥当性は、サーベイの結果の信頼性に直結します。
質問項目の設定後には、テストサーベイを実施して、質問内容のわかりやすさや回答の妥当性を確認します。テストは担当部署や管理職でおこなっても構いませんが、専門機関の支援を受けると、質問の表現や回答形式の精度を高められ、より有効な調査項目を設定できるでしょう。
4-2. 従業員アンケートを実施する
質問項目が決まったら、次にアンケートの実施時期と方法を計画します。アンケートのタイミングは、回答の信頼性や回答率に大きく影響します。例えば、繁忙期や期末業務が集中する時期にアンケートを実施すると、従業員が十分な時間を確保できず、回答率の低下や形式的な回答が増える可能性があります。そのため、従業員の業務負荷が比較的軽い時期を選び、計画的に実施することが重要です。
アンケートの実施方法も、オンラインフォーム、紙面、面接形式など、従業員の特性や職場環境に応じて適切に選択する必要があります。方法の選択は、回答のしやすさや率直な意見の収集に直結するので、慎重な検討が求められます。
さらに、アンケートを記名と無記名のどちらでおこなうかも重要な判断ポイントです。記名アンケートは回答者を特定できるため、個別対応やフィードバックが容易で、責任ある回答が期待できます。しかし、回答が人事評価に影響するのではという心理的制約から、従業員が本音を出しにくくなる傾向があります。
一方、無記名アンケートは匿名性が保証されるため、従業員が率直な意見や不満を表明しやすく、組織の課題や改善点を把握するうえで非常に有効です。ただし、匿名性ゆえに軽率な回答や誇張表現が出ることもあり、調査結果の解釈時には注意が必要です。
4-3. アンケート結果を分析する
アンケートの回答が集まった段階では、まず結果を体系的かつ多角的に分析することが重要です。この分析の目的は、従業員が抱える不満や課題を明らかにし、その原因を特定したうえで、組織改善や人材施策に結びつく実効性の高い対策を導くことにあります。
分析の際は、単に表面的な傾向を捉えるだけでなく、原因を多層的に考察することが求められます。例えば「業務がスムーズに進まない」という回答があった場合、単純に「本人の努力不足」と評価するのではなく、次のような複数の視点から原因を検討します。
- 個人要因:従業員のスキルや知識、経験の不足
- 組織要因:業務の割り振りやプロセス設計の不備
- 環境要因:使用するシステムやツールの制約
このように原因を整理することで、施策もより具体的かつ適切に設計できるようになります。
4-4. 課題解決のアクションプランを策定・実行する
従業員サーベイの分析結果をもとに、明らかになった課題に対して具体的なアクションプランを策定し、実行することが重要です。改善策を計画したら、必ず行動に移す必要があります。行動を伴わなければ、サーベイは単なる情報収集にとどまり、課題解決にはつながりません。また、従業員にとってアンケートの目的が不明瞭なままとなり、不満や不信感を招く可能性があります。
アクションプランの実行後は、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて修正や改善をおこないます。加えて、改善内容や進捗状況を従業員に適切に共有することで、「何が改善されるのか」を透明化し、組織全体の信頼感を高められるでしょう。
さらに、効果が確認された施策は標準化・継続し、効果が不十分な施策は原因を再分析して改善に反映します。このフィードバックプロセスを次回のサーベイや改善活動に組み込むことで、継続的な組織改善サイクルを形成できます。単に結果を見るだけで終わらせず、改善のアクションにつなげることが、従業員サーベイの価値を最大化する鍵です。
5. 社内アンケートの質問項目と設計のポイント


社内アンケートは、組織の課題を可視化し、従業員のモチベーション低下や離職といった問題を防ぐための重要な起点です。
しかし、その起点となる質問が適切でなければ、得られるデータも表層的なものに留まってしまいます。
ここでは、実践的な組織改善につながる質問項目と、その設計ポイントを具体的に解説します。
5-1. 質問設計の視点:課題を深掘りし、解決へ導くために
効果的な社内アンケートの質問は、組織が抱える課題の深掘りをおこない、具体的な解決策を導き出す視点を持って設計するべきです。
従業員の「不満」を特定するだけでなく、「何がモチベーションを上げているのか」というポジティブな側面も把握するため、フレデリック・ハーズバーグの二要因理論を参考に、次の2つの視点から質問を設計すると良いでしょう。
動機付け要因の把握
従業員が仕事で「やりがい」や「成長」を感じる要素に焦点を当てます。これらの要因は、従業員の能動的な貢献意欲やエンゲージメントを高めるうえで不可欠であると考えられています。
衛生要因の評価
給与、職場環境、人間関係など、不満につながりやすい要素を評価します。これらが解消されないと、従業員の離職リスクが高まる可能性があるでしょう。
5-2. 具体的な質問項目例
社内アンケートにおいて、次のようにカテゴリを網羅した質問をおこなうことで、従業員の多様な意見を収集できます。
|
質問カテゴリ |
概要(把握できること) |
質問項目例 |
|
基本的な従業員情報 |
回答の傾向を属性別に分析するための項目 |
所属部署、職種、勤続年数、性別、年代など |
|
仕事内容・やりがい |
業務へのモチベーションや満足度、達成感 |
「現在の業務にやりがいを感じますか?」 「仕事を通じて自身のスキルや能力が向上していると実感しますか?」 |
|
上司・マネジメント |
上司との関係性や、指導・育成、コミュニケーションの質 |
「上司からのフィードバックは、自身の成長に役立っていますか?」 「上司には、業務上の悩みや困り事を気軽に相談できますか?」 |
|
職場環境・人間関係 |
チームや部署内の人間関係、物理的な環境の快適さ |
「職場の人間関係は良好で、お互いに協力し合える雰囲気がありますか?」 「業務をおこなううえで、必要な設備やツールは十分に整っていますか?」 |
|
企業文化・ビジョン |
会社の理念や目標への共感度、組織の一体感 |
「会社のビジョンや目標に共感し、その実現に貢献したいと感じますか?」 「会社全体のコミュニケーションは円滑だと感じますか?」 |
|
処遇・福利厚生 |
給与、評価制度、各種手当など、待遇への納得度や満足度 |
「現在の給与や評価体系に、納得していますか?」 「会社の福利厚生は、従業員のニーズを満たしていると思いますか?」 |
|
ワークライフバランス・健康 |
仕事と私生活の調和、業務量、心身の健康状態への配慮 |
「現在の業務量で、仕事とプライベートのバランスが取れていると思いますか?」 「心身の健康を保つために、会社は十分な配慮をしてくれていますか?」 |
質問は、5段階評価などの定量的な形式に加え、具体的な意見を引き出すための自由記述欄を組み合わせることが重要です。
5-3. 質問設計のコツ:本音を引き出し、落とし穴を回避する実践的ノウハウ
従業員の本音を引き出し、有効なデータを収集するためには、次の戦略的なポイントを意識した質問設計をおこないましょう。
- 「問い」と「意図」の明確化:各質問が「何を測りたいのか」という意図を明確にし、その意図が従業員に伝わるよう、シンプルでわかりやすい言葉で表現します。曖昧な質問は、期待する回答を得られない原因となります。
- ポジティブとネガティブのバランス:不満点ばかりを問う質問では、従業員はネガティブな感情を抱きやすくなります。「会社の良い点」や「もっと伸ばしたい点」といったポジティブな側面も問うことで、より建設的な意見を引き出せます。
- 具体的な行動を問う質問:抽象的な「満足度」だけでなく、「具体的にどのような時に」「どのような行動をおこなうか」といった行動ベースの質問を含めると、より具体的な改善策につなげられます。
- 匿名性と信頼性の担保:従業員が安心して本音を語れるよう、アンケートの匿名性が徹底されていることを繰り返し伝え、その仕組みを明確に提示します。
- 適切な質問数と回答時間:従業員の負担を最小限におさえるため、質問数を絞り、回答にかかる時間の目安を事前に伝えましょう。
これらの戦略的なポイントを実践することで、社内アンケートは、従業員の真の声を捉え、組織改善につながる貴重なデータを収集できるでしょう。
6. 従業員サーベイの結果を読み解く分析手法


従業員サーベイは、組織の現状や従業員の意識を把握するうえで非常に有効ですが、単純に集計結果を見るだけでは課題の本質を捉えられません。
結果を効果的に活用するためには、適切な分析手法を用いて、傾向や背景を多角的に理解することが重要です。ここでは、代表的な分析手法を具体例とともに紹介します。
6-1. 属性別クロス集計
属性別クロス集計とは、年齢、性別、部署、勤続年数などの属性ごとに回答を分けて集計する手法です。これにより、組織全体の平均値だけでは見えにくい、グループごとの傾向や課題を明らかにできます。
例えば、従業員サーベイで「仕事のやりがい」を質問した場合、単純な平均値では把握できない属性ごとの違いを確認できます。
属性別クロス集計をおこなう際は、分析に関連性の高い属性を選ぶことが重要です。課題と関係の薄い属性を加えると、ノイズが増えて結果がわかりにくくなる可能性があります。
また、年齢や勤続年数などの区切り方によって結果が大きく変わることがあります。カテゴリを細かくしすぎると、サンプル数が少なくなり、統計的に信頼できない結果になる点にも注意が必要です。
6-2. 時系列比較(定点観測)
時系列比較(定点観測)は、同一のサーベイを定期的に実施し、過去の結果と比較することで、組織や従業員意識の変化を把握し、施策の効果を検証する手法です。
例えば、前回調査と比較して「仕事のやりがい」の評価が上昇していれば、研修や配置変更などの施策が一定の効果を発揮している可能性が考えられます。一方で、「残業時間の満足度」が低下している場合は、業務負荷の偏りや業務プロセスの改善が必要であることが示唆されます。
時系列比較を正確におこなうためには、比較対象を統一することが重要です。対象者や回答者が変わると、結果の変化が実際の意識変化ではなく「母集団の変化」に起因する可能性があるため、解釈を誤るリスクがあります。
また、回答率に差が生じる場合も、傾向の比較が不正確になりやすいため注意が必要です。
必要に応じて、回答者属性の補正や重み付けをおこなうことで、より正確な比較が可能になります。
6-3. 相関分析
相関分析とは、複数の質問項目の間にどの程度関連性があるかを数値的に確認する手法です。従業員サーベイでは、各質問項目が従業員の満足度やモチベーションとどの程度関係しているかを把握する際に活用されます。
例えば、「上司のサポート」と「仕事の満足度」に高い相関が見られる場合、この2つの項目は関連性が強く、改善の優先対象として注目できます。これにより、組織としてどの分野に重点的に取り組むべきかの判断材料が得られるでしょう。
ただし、相関があるからといって必ずしも因果関係があるわけではありません。つまり、「上司のサポートを改善すれば必ず満足度が上がる」とは断定できません。
それでも、相関の強い項目を重視して施策を検討することで、改善の効果が現れる可能性は高まります。また、相関分析はほかの分析手法と組み合わせることで、より実効性の高い施策の検討に役立ちます。
6-4. 定性データ(自由記述)
自由記述欄(定性データ)は、数値化された定量データだけでは把握できない従業員の心理や現場の実態を理解するうえで非常に重要です。従業員アンケートでは、定量評価によって組織全体の傾向や課題の大枠を把握できますが、その背後にある具体的な理由や現場の声までは十分に見えません。
自由記述欄を分析することで、なぜそのような評価が生じたのか、どのような具体的課題や成功事例が存在するのかを明らかにできるため、施策設計や改善策の精度を高めることが可能です。
特に大量の自由記述を効率的に分析するには、テキストマイニングやキーワード分析などの自然言語処理技術が有効です。これにより、頻出するテーマや課題、感情傾向を体系的に整理でき、目視では見落としやすいパターンを抽出できます。
このように、自由記述欄の分析は定量データの結果を補完する役割を果たし、従業員の実態に即した課題抽出や施策立案を可能にする、理論的にも妥当性の高い手法です。
7. 従業員サーベイを成功に導くためのポイント


従業員サーベイは、アンケートの実施や分析で終わらせるのではなく、得られた結果をもとに具体的なアクションプランを策定し、組織改善につなげることが最も重要です。ここでは、従業員サーベイを成功に導くためのポイントを紹介します。
7-1. 現場を巻き込み結果を共有し対話を深める
従業員サーベイの成果を組織改善につなげるためには、アンケート結果を経営層だけで分析するのではなく、現場の従業員も巻き込むことが重要です。現場の理解と主体的な関与があることで、改善施策は現実的かつ実効性の高いものになります。
サーベイ結果は、数値だけでなく傾向や課題の背景も示し、グラフや図表などを活用して分かりやすく伝えることが有効です。部署別の比較や時系列の変化を示すことで、従業員は自分たちの状況を具体的に把握でき、課題の認識が深まります。
結果を一方的に伝えるだけでなく、ワークショップや小グループディスカッションなどの対話の場を設け、現場の声を反映させることも重要です。従業員自身が課題を整理し、改善策のアイデアを出すプロセスは、主体性と納得感を高め、実行力のあるアクションにつながるでしょう。
さらに、改善策を実施した後は、進捗や効果を定期的に現場と共有することが推奨されます。改善の成果が可視化されることで、従業員は自分たちの意見が組織に反映されていると実感でき、次回以降のサーベイへの参加意欲も向上します。
7-2. サーベイ実施と改善を継続しておこなう
従業員サーベイは単発で実施して終わるものではなく、継続的に実施し、改善のサイクルを回すことが重要です。組織や従業員の状況は時間とともに変化するため、単回の調査では現状把握や施策の効果検証に限界があります。また、サーベイの設問内容や分析手法も、組織の変化や課題に応じて適宜見直す必要があります。
さらに、サーベイ結果の分析後は、明確に特定された課題に基づき具体的なアクションプランを策定し、実行することが大切です。そのうえで再度サーベイをおこない、施策の効果を検証することで、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを効果的に回すことが可能となります。このように、継続的な調査と改善のプロセスを循環させることが、組織改善を定着させるための鍵となります。
7-3. サーベイの乱立を防ぐ
従業員サーベイ以外にも、さまざまな種類のサーベイが存在します。近年では、インターネットを活用したサーベイツールの普及により、簡単にアンケート調査を実施できるようになりました。しかし、この利便性の高さが裏目に出て、アンケートが乱立してしまうリスクもあります。
アンケートの数が過剰になると、従業員の業務に支障を与えたり、回答の質が低下したりする可能性があります。また、結果を集計・分析する担当者の負担も増え、せっかく得られたデータを十分に活かせなくなるおそれもあるでしょう。
特に従業員規模の大きな会社では、このような問題が顕著になりやすいので、実施するサーベイは目的を明確にし、優先度の高いものを厳選しておこなうことが重要です。
8. 従業員サーベイを理解して大切な財産を守ろう


従業員サーベイは、社内の風通しをよくするために欠かせません。
会社にとって従業員は何よりの財産なので、職場環境や人間関係、仕事内容に不満がないかを把握することはとても大切なことです。また、モチベーションや満足度を高めるためにも従業員サーベイは必要不可欠です。
従業員の不満を把握して解消できれば、離職率を下げるだけでなく生産性の向上にもつながります。
会社の規模を大きくするうえでも従業員サーベイは役立つので、このツールを活用してよりよい職場環境を構築していきましょう。



従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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