組織サーベイとは?目的・種類や手順、効果的に実施するポイントを徹底解説
更新日: 2025.12.1 公開日: 2022.11.13 jinjer Blog 編集部

組織サーベイ(組織診断)とは、組織の状態を測定し、数値などで可視化する調査です。組織サーベイは単なるアンケートではなく、心理学や組織行動学に基づく設問と統計手法を用いることで、信頼性の高いデータを得られます。
近年では組織サーベイを通して従業員の本音を探り、本質的な経営課題を見出そうとする企業が増えています。本記事では、組織サーベイの目的や種類、手順、効果的に実施するためのポイントを徹底的に解説します。
従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、「従業員満足度のハンドブック」を無料でお配りしています。
従業員満足度調査の方法や調査ツール、調査結果の活用方法まで解説しているので、従業員のモチベーション向上や社内制度の改善を図りたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 組織サーベイ(組織診断)とは?


組織サーベイとは、組織の状態を可視化する調査のことです。例えば、従業員の欠勤状況や日常の働きぶりなどの目に見える情報は日頃の様子から把握できますが、心理的な状態やモチベーションは見ただけではわかりません。そういった見えにくい情報を知るために、組織サーベイが活用されます。
従業員のモチベーションやエンゲージメントを正確に知ることは難しく、もし上司に「会社への愛着はあるか」と尋ねられても、正直に答える人は少ないでしょう。また、たとえ意欲が低下していても、率直に「やる気がありません」とは答えにくいものです。
組織サーベイは匿名アンケート形式で実施されることが多く、従業員の本音を把握しやすい点が特徴です。単なるアンケートとは異なり、調査の実施から課題分析、改善施策の実行までを含むことも重要なポイントです。
関連記事:サーベイとは?代表的なサーベイの種類や注意点を紹介
1-1. 組織サーベイの目的:「潜在的な課題の早期発見」
組織サーベイの大きな目的は、従業員アンケートを通じて、エンゲージメントやモチベーションの状況を定量・定性の両面から把握し、潜在的な組織課題を早期に明らかにすることです。
従業員の心理状態や業務環境に関する課題は、日常の観察や管理者の感覚だけでは十分に捉えられないことがあります。例えば、上司との関係性の問題や業務量の偏り、評価制度への不満などが挙げられるでしょう。
しかし、組織サーベイによって数値や自由記述コメントとして可視化すれば、これまで見えにくかった情報を的確に把握できます。
1-2. 組織サーベイの主なメリット
組織サーベイを実施することで、普段は見えにくい職場の課題や問題点を明らかにし、問題が深刻化する前に兆候を捉えて早期に対策を講じることが可能です。その結果、組織の健全性を維持しやすくなります。
また、サーベイで収集した従業員の声は、経営判断に役立つ重要なデータとなります。現場の状況を定量的かつ客観的に把握できれば、経営陣と従業員の意識のギャップを埋めやすくなり、より納得感のある施策や制度設計につなげられるでしょう。
加えて、従業員の声を反映した組織運営は、エンゲージメントの向上や業績改善、離職防止にもつながります。意見が実際に組織で活かされる経験を持つことで、自発的にアイデアを出し合う文化が生まれ、組織風土もより良くなっていくでしょう。
さらに、組織サーベイは施策の効果を継続的に確認するツールとしても有効です。例えば、人事制度の改定や社内研修導入後にサーベイをおこなえば、施策がどのように受け止められ、現場にどのような変化が起きているかを定量的に把握できます。
1-3. 適性検査との違い
適性検査は、個人の性格特性や能力、適職傾向を測定し、採用・配置・育成の判断材料とする評価手法です。選考フェーズで候補者に実施されることが多い一方、既存社員の能力開発や配置検討に用いられる場合もあります。
これに対して組織サーベイは、従業員全体または部署単位を対象に職場環境やエンゲージメントを調査し、組織課題の把握や改善施策に活用されます。個人評価ではなく、組織改善が主目的である点が適性検査との大きな違いです。
1-4. 【事例】組織サーベイの活用例
組織サーベイを活用することで、年間の離職率を全従業員の10%未満に抑えた事例があります。この企業では、リモートワークの浸透により対面でのコミュニケーション機会が減少し、1on1や集合イベントなどの対策をしても、従業員の不調を早期に把握することが課題であったため、従業員の状態を定量的に把握できる仕組みとして組織サーベイを導入しました。
サーベイ結果のスコア変動を継続的に分析し、人事担当者が必要に応じて個別ヒアリングを実施したうえで、業務量の調整などデータに基づいた具体的な改善策を講じています。さらに、結果や対応内容を全社で共有することで、従業員が主体的に意見や提案を出しやすい環境を整えました。
この取り組みにより、「意見を出すのが当たり前」という心理的安全性の高い風土が醸成され、ネガティブな意見も前向きに受け止める文化が定着しました。対応の可視化を通じて信頼関係が強化され、サーベイの回答率も高い水準で維持されています。その結果、従業員が組織を自分ごととして捉える意識が広がり、ボトムアップによる改善活動の活性化やマネジメント力の向上につながっています。
2. 組織サーベイの種類


組織サーベイには多くの種類があり、目的によって使い分けることが推奨されます。代表的な組織サーベイを一覧でまとめました。
|
サーベイ名 |
主な目的 |
特徴 |
|
従業員サーベイ(Employee Survey) |
組織全体の課題把握をおこなう。 |
広範な項目で満足度・課題を総合的に把握できる。 |
|
モラールサーベイ(ES調査) |
従業員満足度を測定する。 |
働きやすさや人事制度・人間関係などへの満足度を評価できる。 |
|
エンゲージメントサーベイ |
貢献意欲・愛着の可視化をおこなう。 |
組織への信頼・仕事の意義・定着意欲を測定できる。 |
|
ストレスチェック |
精神的負荷の把握と職場改善をする。 |
労働安全衛生法に基づく法定調査。高ストレス者の把握と集団分析が可能。 |
2-1. 従業員サーベイ(Employee Survey)
従業員サーベイとは、従業員の満足度やモチベーション、職場環境に対する意識を把握するための組織サーベイの一種です。人事制度の見直しや働き方改革などを検討する際には、まず仮説を立てたうえで、それが実態と合っているかを確認する必要があります。
その検証手段として、従業員の声をデータとして集められる従業員サーベイが活用されます。従業員サーベイを実施することで、従業員の意見や課題を事実ベースで捉えられ、制度やルールの見直しをより的確に進められるでしょう。
関連記事:従業員サーベイとは?目的や実施するときの注意点を紹介
2-2. モラールサーベイ(従業員満足度調査/ES調査)
モラールサーベイとは、従業員のモラール(士気や意欲)を測る意識調査で、従業員満足度調査やES調査、社員意識調査ともよばれます。
職場環境や人事制度、給与、仕事内容などに対する従業員の満足度を測ることが目的で、働き方向上施策の基礎データとして、あるいは人事制度見直し前の実態調査の一貫でおこなわれます。
従業員サーベイとモラールサーベイは、カバーする範囲と目的の広さが異なります。モラールサーベイは主に「従業員満足度」に焦点を当てて測定するのに対し、従業員サーベイは従業員満足度を含む、より広い概念でエンゲージメントやストレス状況などを調査します。つまり、モラールサーベイは従業員サーベイの一種と解釈できるでしょう。
2-3. エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、従業員の会社や仕事に対するエンゲージメントを調査するものです。エンゲージメントの高さと企業の生産性は相関性があるため、持続的に企業が成長するためにエンゲージメント向上は必須といえるでしょう。
世界的に見ても、日本のエンゲージメントが低い点が課題視されており、従業員の働きがい・働きやすさ向上のためにも、エンゲージメントへの取り組みは重要となっています。
関連記事:エンゲージメントサーベイは無駄で意味がない?解決策とメリットを解説!
2-4.ストレスチェック
ストレスチェックは、従業員の心理的なストレスの状況を把握するために実施される法定の調査です。労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を雇用する事業場では年1回の実施が義務付けられています。
なお、2025年5月に改正労働安全衛生法が可決・成立し、今後、常時50人未満の事業場についてもストレスチェックの実施が義務化される見込みです。
高ストレス者の早期発見と個別対応に加え、集団分析によって職場環境の改善につなげることが目的です。従業員のメンタルヘルス対策の第一歩として、多くの企業が導入しています。
参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告)|厚生労働省
関連記事:ストレスチェックとは?必要性・メリット・効果を高める方法を解説
2-5. その他のサーベイ
従業員のライフサイクルや特定の目的に応じて実施されるサーベイもあります。例えば、従業員の退職時に、退職理由や企業の改善点をヒアリングする「エグジットサーベイ」や、新入社員の定着や職場適応を把握する「オンボーディングサーベイ」などが挙げられます。
これらのサーベイは、一人ひとりの経験や組織の課題を深く理解し、離職防止や定着支援、受け入れ体制の改善に役立てることができます。
3. 組織サーベイの実施手法


組織サーベイは、目的や対象に応じて実施の頻度や形式が異なります。代表的な手法として、「センサスサーベイ」と「パルスサーベイ」の2つがあります。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
3-1. センサスサーベイ
センサスサーベイは、年1回などの頻度で全従業員を対象に実施する大規模な調査です。設問の項目数が多く、職場環境や人間関係、評価制度、業務負荷など多角的な項目を網羅的に把握できる点が特徴です。
センサスサーベイは、組織全体の傾向を分析し、中長期的な改善方針を立てる際に活用されます。
一方で、調査から結果分析・施策実行までに時間がかかるため、変化のスピードが速い現場では補完的な手法と併用することも多いです。
センサスサーベイは、組織全体を俯瞰し、年単位の傾向を把握する目的でおこなわれる「従業員サーベイ」「モラールサーベイ」「ストレスチェック」などに適しています。
3-2. パルスサーベイ
パルスサーベイは、月1回や四半期ごとなどの短いスパンで実施される高頻度・短形式の調査です。パルスサーベイの「パルス」は、脈を打つことを意味する言葉で、脈を打つように短い時間で繰り返し調査するさまを表します。
パルスサーベイでは設問数を10個程度に絞り、従業員が回答する際の負担をおさえつつ、従業員の状態変化をタイムリーに把握できる点がメリットです。
また、定点的な測定が可能なため、施策の効果をリアルタイムで追跡したり、離職リスクの早期発見につなげたりする際にも有効でしょう。
短期間で変動しやすい心理状態や適応状況をモニタリングできるため、「エンゲージメントサーベイ」や「オンボーディングサーベイ」などに適しています。
4. 組織サーベイを実施する流れ


組織サーベイは、実施するためのコストや時間がかかるだけでなく、従業員にとっても回答の負担が伴います。さらに、サーベイの結果がすぐに目に見える成果として現れるわけではないため、短期間での効果を期待するのは難しいという側面があります。
そのため、組織サーベイを有効に活用するには、調査の目的や設計、実施方法を正しく理解した上で計画的に実施することが不可欠です。適切な運用によって、従業員の意識や組織文化の実態を正確に把握し、改善策に結び付けることが可能になります。
ここでは、組織サーベイを実施する一般的な流れを解説します。導入目的や予算、対象者によって実施の流れは変動するため、あくまでも参考としてご覧ください。
4-1. 組織課題を分析して目標を設定する
サーベイの効果を最大化するためには、まず「何のために実施するのか」という目的を明確に定めることが非常に重要です。目的が不明確なまま調査をおこなうと、質問項目の内容や方向性がぶれてしまったり、結果を正しく解釈できなかったりするため、せっかく実施しても改善施策に十分に活かせない可能性があります。
そのため、サーベイを実施する前には、組織が直面している具体的な課題を事前に言語化しておくことが有効です。例えば、離職率の高さや評価制度への不満、職場環境の改善ニーズなど、現状の問題点や懸念事項を整理し、それらを調査の目的と照らし合わせることで、質問設計や結果の分析がより的確になります。
4-2. 質問項目を設定する
課題を正確に把握するためには、どのような質問を設定すべきかを慎重に検討することが不可欠です。調査設計においては、目的や課題に沿った質問項目を設定することで、回答の信頼性が高まり、分析結果の有効性も確保されます。
例えば、従業員のモチベーションを把握する場合、「仕事のやりがいを感じるか」という漠然とした質問だけでなく、「日々の業務で自身の成長を感じるか」といった具体的な観点を含めることで、より実態に即したデータが得られます。
また、同じ設問を繰り返し利用することを前提に、時事的要素や一時的なトレンドに左右されにくい汎用性の高い設問を設計することが重要です。このような設問設計は、長期的な比較や傾向分析を可能にし、組織の課題解決や施策の評価に役立つ情報を提供します。例えば、従業員満足度を測る場合、毎年同じ設問を使用することで、改善施策の効果を時間を通じて正確に把握できるでしょう。
さらに、必要に応じて現状の特定課題や時事的要素を反映した補助的な設問を加えることで、現状把握の精度をさらに高められます。例えば、最近導入された新制度や業務プロセスの影響を確認するための質問を追加することで、調査結果がより実務的に活用可能になります。
4-3. 調査方法を決める
質問項目が固まったら、次に具体的な調査方法を決めましょう。調査時期(いつ)、対象者(誰に)、実施手段(どのようにして)を明確に決めることが重要です。
|
調査方法のポイント |
概要 |
|
調査時期(いつ) |
調査の目的を達成できる時期を選びましょう。回答率を高めるためにも、繁忙期を避けるなど、従業員が落ち着いて回答できる環境を整えることが大切です。 |
|
対象者(誰に) |
全社的に把握したいのか、特定の部署や従業員に限定するのかで対象を決めます。対象を絞る場合は、統計的に意味のあるサンプルサイズを確保できるよう配慮しましょう。 |
|
実施手段(どのようにして) |
オンライン、紙、面談などの手段があります。コストや手間も考慮し、必要に応じて組み合わせて実施します。 |
また、調査は、記名方式または無記名方式のいずれかで実施します。どちらの方式を採用するかによって、得られる情報の内容や分析の精度が変わるため、調査の目的や従業員の状況に合わせて最適な方法を選択することが大切です。
|
方式 |
メリット |
デメリット |
|
記名方式 |
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|
|
無記名方式 |
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|
4-4. 組織サーベイの実施・回答の収集
質問項目と調査形式が整ったら、いよいよアンケートを実施します。提出期限には十分な余裕を持たせることが大切です。部署ごとの業務量には差があるため、期限を短く設定すると、特定の部署や個人が回答できず、データに偏りが生じる可能性があります。余裕のある期限設定は、全員が無理なく回答できる環境を整えると同時に、回答の質を安定させる効果があります。
さらに、リマインドメールや進捗確認を適切に活用することも、回答率向上には欠かせません。定期的なリマインドにより、回答を忘れてしまった従業員にも対応でき、進捗確認によって、特定の部署で回答が滞っている場合に適切なフォローをおこなうことができます。
4-5. 結果の分析
集計結果は、単に数値を確認するだけでなく、調査の目的や組織課題に照らし合わせながら冷静に分析することが重要です。数字の増減に一喜一憂するのではなく、「どのように改善すれば組織の望ましい状態に近づけるか」という視点を中心に据え、実効性のある施策につなげられます。
たとえ従業員の不満が多く表れた場合でも、その結果だけに注目すると、組織全体の傾向や重要な指標を見落とすリスクがあります。特定のデータに引きずられず、複数の指標や自由記述なども含めて総合的に判断することが大切です。
さらに、結果の確認は複数名でおこない、異なる視点から解釈することで、バイアスを避けやすくなります。また、必要に応じてサーベイツールの提供者や専門家の意見も取り入れ、データの信頼性を高め、改善策の妥当性を検証しましょう。
4-6. 改善策を実行する
組織サーベイの本質は、結果を活かして組織を改善することにあります。サーベイ自体は、従業員の意識や満足度、組織文化の現状を客観的に把握するための手段に過ぎません。そのため、適切な情報を収集しただけでは組織の成長やエンゲージメント向上にはつながらず、得られたデータを改善策に反映し、具体的な行動として実行することが不可欠です。
改善策を実施する際には、従業員への丁寧な説明が重要です。何も伝えずに施策を進めると、「アンケートをしただけ」と感じられ、逆に不満や不信感が生まれる可能性があります。たとえ改善策をすぐに実行できなくても、「改善の意志がある」「現在検討中である」と従業員に伝えることで、組織への信頼や期待感を維持できるでしょう。そのため、可能な限り情報を開示し、改善プロセスや方針をわかりやすく説明することが求められます。
さらに、改善策の実施後は、その効果を定量的・定性的に評価し、必要に応じてサーベイ設計や調査方法を見直すことが重要です。例えば、施策後に再度サーベイを実施し、改善前後での従業員満足度やエンゲージメントの変化を比較することで、施策の有効性を把握できます。このようにPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回すことで、調査と改善を継続的におこない、組織サーベイの効果を確実に組織の成長やパフォーマンス向上につなげられます。
5. 組織サーベイを効果的に実施するポイント


組織サーベイは、しばしば「実施しても意味がない」と言われることがあります。その背景には、サーベイの実施後に改善策が講じられなかったり、結果が現場に共有されなかったりするなど、形式的な運用にとどまる課題があります。従業員が真面目に回答しても、状況が改善されなければ信頼を失い、回答率や情報の正確性も低下します。
組織サーベイの本質は、単なる意識調査ではなく、得られたデータをもとに組織を改善することにあります。そのため、結果を迅速にフィードバックし、現場で具体的な改善アクションにつなげることが不可欠です。最後に、組織サーベイの成果を最大化するための実施のポイントについて解説します。
5-1. 従業員の不満につながらないよう配慮する
組織サーベイを実施する際は、従業員の心理的負担や業務への影響に十分配慮することが重要です。まず、設問数が多すぎると回答者にストレスがかかり、回答率の低下や表面的な回答につながる可能性があります。そのため、調査目的に沿った最小限の設問に絞り、1回の回答で過度な時間を要さないように設計しましょう。
さらに、サーベイ導入直後は従業員の理解や関心が十分でないことが多く、初回の回答率は低くなる傾向があります。これを補うために、サーベイの目的や実施によって得られる従業員自身のメリットを繰り返し丁寧に伝えることが効果的です。
具体的には、改善施策への反映例や、過去のサーベイによる組織改善の事例を共有することで、「自分たちの声が組織に活かされる」という納得感を高められます。このような透明性と丁寧なコミュニケーションは、回答率向上だけでなく、従業員のエンゲージメントや信頼感の向上にも寄与します。
5-2. 表面的な結果だけで判断しない
組織サーベイのスコアは、従業員の意識や満足度を測る指標のひとつに過ぎません。そのため、スコアだけに一喜一憂したり、表面的な結果だけで判断したりするのは避けるべきです。
スコアが低い場合には、単純に従業員の不満が多いと結論づけるのではなく、どの質問項目でスコアが低かったのか、部署や職種ごとの違いはどうか、といった背景情報と合わせて読み解くことが重要です。
初めて組織サーベイを実施する場合、結果の解釈や改善策の立案に戸惑うことも多いでしょう。この場合、自社だけで完結させず、専門家に相談したり、サーベイツールのユーザーコミュニティを活用したりすることで、分析力を高め、より効果的な改善につなげられます。
さらに、改善策を立案する際には、スコアの数値だけでなく、従業員からの自由回答や面談で得られた定性的な意見も合わせて分析することが有効です。これにより、表面的な問題の裏にある根本原因を把握し、実行可能で持続的な改善策を策定できます。
5-3. 適切な頻度で実施を続ける
組織サーベイは、適切な間隔で継続的に実施することが重要です。1回だけの調査では、季節性や一時的な業務負荷、プロジェクトの状況、さらには人事異動や社内ニュースなどの影響を強く受けるため、組織全体の傾向や根本的な課題を正確に把握することは困難です。
さらに、サーベイを継続的に実施することで、従業員は「自分の意見が組織に反映される」という認識を持ちやすくなり、回答率が向上するとともに、より率直で建設的な意見を集めやすくなります。
このように、目的に沿った適切な間隔でサーベイを継続的に実施することが、組織の課題を正確に把握し、改善策に反映させるために不可欠です。中長期的な視点でデータを蓄積すれば、従業員の本音や組織文化の変化を把握し、より効果的な組織改善を進めることができます。
5-4. 組織診断ツールを活用する
組織診断ツールとは、組織の現状や課題を客観的に可視化し、改善アクションにつなげるための支援ツールです。多くのツールは心理学や組織行動学に基づく指標を用い、統計的手法で設計されているため、従業員の意識や組織文化を測定できます。
また、自動集計やグラフ表示、レポート生成などの機能が搭載されているため、従来は手作業で時間がかかっていた分析や報告作業を大幅に効率化できます。ただし、すべてのツールが科学的に精度の高い設計になっているわけではなく、分析結果を活かすには適切な運用や解釈が必要です。
また、組織診断ツールの導入にはライセンス費用や初期設定費、運用工数などのコストがかかります。そのため、自社の課題や目的を明確化したうえで、料金や機能、操作性、サポート体制などを複合的に比較し、最適なツールを選定することが重要です。適切なツールを活用すれば、組織改善のスピードと精度を高め、従業員満足度やエンゲージメント向上につなげられます。
6. 組織サーベイは目的によって使い分けよう


組織サーベイは、単に従業員の声を集めるための手段ではなく、目的に応じて設計し、活用することで真価を発揮するツールです。エンゲージメントの向上、職場環境の改善、人事制度の見直し、離職防止など、サーベイを実施する理由は企業によって異なります。
そのため、「どの課題を解決したいのか」「どのような変化を測りたいのか」といった目的を明確にしたうえで、適切なサーベイの種類や設問設計、実施タイミングを選ぶことが重要です。目的に合わないサーベイでは、的確な情報が得られず、かえって従業員の信頼を損なうリスクも考えられます。
組織にとって本当に必要なデータを収集し、改善につなげていくためにも、目的に応じたサーベイの使い分けを意識しましょう。



従業員の定着率の低さが課題の企業の場合、考えられる要因のひとつに従業員満足度の低さがあげられます。
従業員満足度を向上させることで、従業員の定着率向上や働くモチベーションを上げることにもつながります。
しかし、従業員満足度をどのように測定すれば良いのか、従業員満足度を知った後どのような活用をすべきなのかわからないという人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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