試用期間を契約社員として雇用することの注意点や適切な雇用方法を解説
企業の新規採用では、採用した人材のスキルや適性を見極めるために、試用期間を設けることが多いです。
試用期間中、適性がないとわかった場合は採用を見送ることも考えなければなりませんが、一度正社員として雇用すると容易に解雇できなくなります。
試用期間に合わせた有期雇用の契約社員として採用すれば、ミスマッチが発生したときのリスクを契約期間の終了で回避できます。しかし、試用期間中の人材を契約社員として雇用することに問題はないのでしょうか?
今回は、試用期間中に契約社員として雇用することは可能かどうか、その場合の問題やリスク、試用期間中の適切な雇用方法などについて解説します。
目次
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1. 試用期間は契約社員として雇用することは可能?
正社員として採用した従業員を、試用期間中は契約社員として雇用することに問題はないのでしょうか。まずはその点を明確にし、契約社員として雇用するメリットも知っておきましょう。
1-1. 可能だがトラブルに気を付ける必要がある
正社員として採用した従業員でも、試用期間中は有期雇用の契約社員として雇用することは基本的に可能です。
ただし、正社員としての契約と、契約社員としての契約を同一のものにすることはできません。
試用期間中は契約社員として雇用し、試用期間終了後は正社員として採用するという場合、まず有期雇用の契約社員として契約を締結しましょう。そして、試用期間が終了した時点で新たに正社員としての契約を結ぶ必要があります。
また、試用期間終了後に、適性がないことを理由に契約期間の終了を通達した場合、労使間のトラブルに発展するおそれがあります。このトラブルを避けるために、最初に契約社員として雇用する旨と、適性がないと判断した場合の対応を明示しておきましょう。
1-2. 契約社員として雇用することのメリット
最初から正社員として契約する場合に比べると手間はかかりますが、試用期間中のみ契約社員として雇用するケースにはメリットもあります。
最初から本採用を前提として試用期間を設けた場合、従業員は試用期間終了と同時に自動的に正社員として雇用されるものと認識しやすいです。
しかし、試用期間中は契約社員としての雇用であることと、適性がない場合は契約終了として正規雇用を見送る旨を伝えておけば、この誤認識を防ぎやすくなります。
これは企業側にだけでなく、従業員側も正しい認識で覚悟を持って業務につけるため、双方のメリットになり得ます。
2. 試用期間に契約社員として雇用することの問題・リスク
試用期間中の従業員を契約社員として雇用することには、メリットがある反面、いくつかの問題点もあります。
リスクを正しく把握しないまま試用期間中に有期雇用契約を締結すると、後のトラブルの原因となります。問題点とリスクもしっかり把握しておきましょう。
2-1. 契約期間中の解雇のハードルが高い
労働契約法第17条では、有期雇用契約について、やむを得ない事由がある場合でなければその契約期間が満了するまでの間、労働者を解雇できないと定めています。
ここでいう「やむを得ない自由」とは、当該契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず、期間満了を待たずに直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別で重大な事由を意味します。
そのため、「能力が不足しているから」「適性がないから」といった単純な理由だけでは、試用期間中の有期雇用の契約を解除できません。
試用期間の長さは企業によって異なりますが、たとえば試用期間を3ヶ月として有期雇用の契約を締結した場合、試用期間終了後の採用の有無にかかわらず、3ヶ月間は雇用し続ける必要があります。
参考:労働契約法|e-Gov法令検索
参考:有期契約労働者の期間途中解雇|厚生労働省
2-2. 試用期間とみなされる可能性がある
有期雇用契約は本来、試用期間として活用することを目的としたものではありません。
そのため、有期雇用契約終了後、ミスマッチを理由に契約更新を行わずに不採用とした場合、従業員側から有期雇用契約が試用期間だったと主張される可能性があります。
有期雇用契約が試用期間とみなされた場合、契約満了にともなう労働契約の終了は不当解雇にあたると判断されるおそれがあります。
実際、過去には、1年間の試用期間として有期雇用契約を締結した従業員の本採用を拒否し、解雇した事例について、不当解雇という判決が下されています。
こうしたリスクがあることを十分に理解し、もしも訴訟に発展した場合は有期雇用契約が確かなものであったことを証明できるようにしておきましょう。
参考:地位確認等請求事件|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会
2-3. 優秀な人材が集まりにくい
試用期間中、契約社員として雇用することを募集時に明示すると、求職者から「有期雇用期間が終了した後に、解雇される可能性がある」とみなされます。
試用期間後に本採用に至らない可能性がある職場は、就活生にとってハイリスクであるため、そもそも応募先として選ばれなくなる可能性があります。
特に優秀な人材はあえてハイリスクな職場を選ぶ理由がないため、能力のある人を採用しにくくなるという欠点があります。
3. 試用期間中の適切な雇用方法
労使間のトラブルを避けるために、試用期間中の適切な雇用方法について、以下のポイントを押さえておきましょう。
3-1. 求人に契約社員として雇用することを明記する
試用期間の代替として有期雇用契約を締結する場合は、その旨を求人に明記する必要があります。
試用期間中の数ヵ月は有期雇用契約であること、期間中に適性がないと判断された場合は本採用を見送る可能性があることをきちんと求人に記載することが重要です。記載がないと従業員との間でトラブルに発展する可能性があるため、要注意です。
また、求人に記載するだけでなく、採用面接の際にも念を押し、誤解や食い違いが生じていないかどうか確認することも大切です。
3-2. 有期雇用期間と試用期間の違いについて説明する
試用期間の代替として有期雇用契約をする場合、当該従業員には試用期間と有期雇用契約の違いについて十分な説明をしなくてはいけません。
というのも、試用期間は本来、解約権留保付労働契約に該当し、有期雇用契約とは契約形態が異なるためです。
解約権留保付労働契約は、一般的な解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められる契約ですが、解雇する場合は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされるものでなくてはなりません。
一方の有期雇用契約は、契約更新をおこなわないことについて、あらかじめ労使間で明確な合意を得ていれば、雇い止めすることが認められます。
両者の違いを認識せず、有期雇用契約を解約権留保付労働契約(試用期間)と誤認されていた場合、労使間のトラブルに発展する可能性があります。
採用面接の際は、当初締結するのはあくまで有期雇用契約であり、解約権留保付労働契約ではないこと。前項目1に従って、契約満了の際は更新しない(本採用しない)可能性があることをきちんと説明しておきましょう。
3-3. 本採用の可否は早めに伝える
試用期間の代替として有期雇用契約を締結する場合は、本採用の可否について早めに従業員に伝えることが大切です。
なぜなら、本採用を見送る場合、従業員は有期雇用契約期間の満了後、直ちに今後の身の振り方を決めなければならないからです。
契約社員の場合、本採用の可否にかかわらず、原則として契約期間満了までは雇用する決まりになっているため、その間に今後の身の振り方を考えられるようになるべく早めに結果を伝えるようにしましょう。
4. 契約社員にも試用期間を設けることは可能?
ここまで正社員として雇用する従業員の試用期間を、契約社員としての雇用することについて解説してきました。
では、はじめから契約社員として有期契約をする従業員に対し、試用期間を設けることは可能なのでしょうか。
結論から伝えると、契約社員であっても試用期間を作ることは可能です。ただし、正社員のように3ヵ月~6ヵ月、あるいは1年以上の試用期間を設定することには問題があります。
契約社員の契約期間は、短い場合は数ヵ月であることも多いです。その場合、長い試用期間を設定すると契約期間の半分以上が試用期間になってしまうことも考えられます。
そのため、契約社員に試用期間をつける場合は契約期間と試用期間のバランスがいびつにならないように注意し、就業規則や雇用契約書にも試用期間について明記しなくてはいけません。
5. 試用期間に契約社員として雇用する際はトラブルに注意しよう
試用期間に代えて、数ヵ月間を有期雇用契約、すなわち契約社員として雇用することは可能です。
ただ、契約時点で有期雇用契約であること、契約期間が満了した時点で本採用に至らず、契約を終了する可能性があることについて、あらかじめ合意を得ておかないと、後のトラブルの原因になる可能性があります。
特に本来の試用期間にあたる解約権留保付労働契約と有期雇用契約の違いを誤認していると、不当な解雇と訴えられるおそれがあります。
また、契約社員に試用期間をつける場合は、契約期間と試用期間のバランスに注意しましょう。試用期間に関連するトラブルは少なくありません。従業員側が誤解しないように、契約の際はきちんと説明し、正しく理解してもらえるよう努めましょう。
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