育児休業制度とは?対象者や期間・給与、男性の取得についてわかりやすく解説
仕事と育児の両立を図るために、育児休業制度が法律で定められています。企業は、条件を満たした従業員から申請された場合、休業を与えなければなりません。
この記事では、育児休業について詳しく解説するとともに、対象者や必要な手続きについて紹介しています。育児休業制度は度々改正され、内容が変化していますので、最新の情報を把握しておきましょう。
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目次
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会社として、育休や介護休業の制度導入には対応はしてはいるものの 「取得できる期間は?」「取得中の給与の正しい支給方法は?」このようなより具体的な内容を正しく理解できていますか?
働く環境に関する法律は改正も多く、最新情報をキャッチアップすることは人事労務担当者によって業務負担になりがちです。
そんな方に向けて、当サイトでは今更聞けない人事がおこなうべき手続きや、そもそもの育児・介護休業法の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
また、2022年4月より段階的におこなわれている法改正の内容と対応方法も解説しているため、法律に則って適切に従業員の育児・介護休業に対応したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 育児休業制度とは?
育児休業とは、1歳に満たない子どもをもつ労働者が、養育のために休業できる制度です。
女性の社会進出や、共働き世帯の増加によって仕事と育児を両立しやすくするため、1991年に制定され翌年から施行されました。休業中は育児休業給付金が支給されるので、育児によってキャリアを中断せず働くことが可能です。
育児休業は、1歳未満の子どもを養育する労働者から申し出があった場合、取得させなければならない義務があります。
1-1. 法改正は2022~2023年にかけて段階的に実施
育児休業制度は、2021年6月に改正されましたが、実施は2022年から2023年にかけて段階的におこなわれます。
具体的には、以下の流れで法改正がおこなわれる予定です。
2022年4月1日~ | ・育児休業が取得しやすい環境を整備 ・妊娠出産の申し出があった労働者へ制度に関する個別の周知と取得意向の確認 ・有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和 |
2022年10月1日~ | ・産後パパ育休の創設 ・育児休業の分割取得 |
2023年4月1日~ | ・育児休業の取得状況公表の義務化 |
改正によって取得要件が緩和されたり、分割取得ができるようになったりなど、育児休業が取得しやすい方向へと変化していることが分かります。
1-2. 育児休暇との違いは?
育児休業と間違われやすい「育児休暇」とは、企業が独自に定める休暇のことです。導入するかどうかは企業の自由であり、取得方法や期間も異なります。
育児休業は、子どもが1歳になるまでの休業と決められていますが、育児休暇は決まりがありません。企業によっては2~3歳まで取得できるところもありますが、休暇中の給料は支給されない場合も多いでしょう。
一方、「育児休業」は、法律で定める制度であるため、育児に関する権利が法で保護されています。条件を満たしていれば、育児休業給付金が支給される点が大きな特徴です。
「育休」という言葉が世の中では浸透していますが、一般的に育休は「育児休業」のことを指しています。
1-3. 産休(産前・産後休業)との違いは?
産休とは、出産するための準備期間と、出産後に身体を回復させる期間に休業できる制度です。産休は女性のみが取得できることが育児休業との大きな違いになります。
産休期間は、出産予定日の6週間前から出産後8週間までです。産前に関しては従業員が休業を申請した場合、労働させてはならないとしていますが、産後は本人からの申請に関係なく、休業させることが法律で義務付けられています。
ただし、産後6週間を過ぎて医師から許可が出た場合に限り、8週間を待たずに復職が可能です。
2. 育児休業の対象者
それでは実際に育児休業を取得できる対象者の条件はどんな内容なのかわかりやすく解説します。一部、育児休業の対象外となるケースもありますので、注意しておきましょう。
2-1. 対象になる条件
育児休業制度を受けられる対象者は、1歳未満の子どもを養育している従業員です。この制度は、男女問わず取得できます。
また育児休業の対象となる「子」には、法的に認められた養子や血縁関係にある実子が含まれます。また、未成年後見人が養育する子供も該当します。これらの子供が実際に労働者と同居していることが前提です。同居していない場合や、短期間だけの預かりの場合は対象外となります。さらに、特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子供も育児休業の対象に含まれますが、最終的な手続きが完了していない時点では育児休業の対象とならないことがあります。さらに、養子縁組里親に委託されている子供も対象に含まれます。
ただし、育児休業制度を受けられる対象者は子どもが1歳6ヵ月を経過する日まで雇用契約があることが明らかである場合に限ります。
以前は同じ会社に1年以上雇用されていることも条件とされていましたが、現在は要件緩和により廃止されています
パートやアルバイトの短時間勤務者も対象
ただし、日雇いで働く従業員には適用されません。よって、パートやアルバイトであっても、育児休業の対象となります。
正社員でなくても、雇用保険に加入していて所定労働日が足りている場合は、育児休業給付金も支給対象です。
契約期間に定めのある有期雇用労働者も育児休業の対象です。
2-2. 対象外になる条件
基本的に1歳未満の子をもつ従業員であれば育児休業は取得できますが、労使協定で取得対象外とする条件を設けている場合、該当する労働者は取得させなくても良いことになっています。
育児休業の対象外とされる労使協定は次のとおりです。
- 雇用期間が1年未満
- 1年(1歳以降の休業の場合は6か月)以内に雇用関係が終了
- 週の所定労働日数が2日以下
育児休業の申し出があった際には、労使協定による規定がないかどうかもチェックが必要です。
3. 育児休業が取得できる期間と申請期限
育児休業は、原則として子どもが1歳になるまでの間取得することができます。一括での取得のほか、2回に分けて分割取得することも可能です。
育児休業満了の時点で保育所に入所できず復職が難しい場合、雇用継続のために必要と認められれば、1歳6か月まで延長することができます。1歳6か月の時点でも保育所が見つからない場合も延長ができますが、最長で2歳までです。
育児休業を取得するには、休業予定日の1か月前までに申請をおこなわなくてはいけません。また、育児休業を延長する場合は、延長開始日の2週間前までに申請が必要です。
4. 育児休業中の給与はどうなる?育児休業給付金とは?
育児休業期間中は、基本的に給与が支払われません。その代わりに、育児休業給付金が支給されます。この給付金は、基本的には給付対象者の過去半年間の平均賃金の50~67%が支給される形となります。育児休業が開始から6ヶ月間は、賃金の67%が支給され、その後は50%に変わります。給付金は子供が1歳になるまでの間、最大1年間支給されますが、延長が認められた場合は延長分も同様に支給されます。また、出生時育児休業給付金や社会保険料の免除などの支援制度も存在し、これにより収入が完全に途絶えることなく、育児に専念することが可能です。
4-1. 育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金とは、育児休業を取得した際に受け取れる給付金のことです。計算方法は次のとおりとなっています。
育児休業開始後180日目まで:休業開始時賃金日額×支給日数×67%
育児休業開始後181日目以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%
なお、休業開始時賃金日額は、育児休業開始前の直近6か月間に支払われた賃金の総額を180日で割った金額となります。
育児休業給付金を受け取るには、休業開始日前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あることなど一定の支給要件を満たすことが必要です。
5. 育児休業を取得させるための手続き
育児休業を取得するためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。従業員に滞りなく適切に育児休業を取得してもらうためにも、会社側は手続き方法や流れを理解しておく必要があります。
5-1. 育児休業の申し出を受けて必要書類を提出する
まずは、従業員本人からの育児休業の申し出を受けます。2022年4月からは、妊娠の申し出があった従業員には、育児休業制度に関する説明や勧奨が義務化されたため、会社側から確認した方が良いでしょう。
育児休業の申し出を受けたら、会社が必要書類を管轄のハローワークに提出します。必要書類は以下の通りです。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳や出勤簿など
- 母子手帳のコピー
これらの書類を提出すると、従業員に受給資格があるかどうかが確認されることになります。確認が取れると、ハローワークから「育児休業給付金支給決定通知書」が交付されるので、会社から従業員に渡しましょう。
この手続きによって、従業員は育児休業給付金が受け取れます。原則として支給は2か月ごとにおこなわれますが、その都度「育児休業給付金支給申請書」を提出しなければなりません。
育児休業中の1年間、何度も申請しなければならないため、従業員と会社が連携して進めていくことが大切です。
5-2. 社会保険料免除の手続きをおこなう
育児休業中の従業員は、健康保険料と厚生年金保険料の支払いが免除されます。免除制度を利用することで、本人負担分だけでなく会社負担分も免除されるため、重要な手続きです。
従業員から免除の申し出があったら、会社は「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。育児休業を延長した場合は、都度手続きをおこなわなければならないため注意しましょう。
なお、育児休業終了後は、「育児休業等取得者終了届」を日本年金機構に提出する必要があります。
5-3. 子どもが保育園に入れなかったときの手続き
育児休業は原則子どもが1歳の誕生日を迎えるまでの期間ですが、保育園に空きがなく、育休終了までに入園先が見つからないケースも多くあります。
そのようなときは、育児休業の延長が可能です。子どもが1歳6か月になるまで延長できるので、市区町村が発行した「入所不承諾通知書」を従業員に提出してもらいましょう。
会社はハローワークで、通知書と一緒に「育児休業給付に係る延長事由申出書」を提出し、申請をおこなう必要があります。なお、1歳6か月までに入園できなかった場合は、2歳まで再延長可能です。
6. 男性(父親・夫)も育児休業制度の取得が促進されている
近年、男性の育児休業取得が促進されています。これは、男女共働き家庭が増加する中で、育児の負担を分散し、より良い家庭環境を築くための重要な取り組みです。法改正により、男性も育児休業を取得しやすくなるよう様々な措置が講じられています。企業は男性の育児休業取得状況を公表する義務があり、透明性と促進力が高まっています。さらに、産後パパ育休(出生時育児休業)制度も整備され、男性でも育休を取得しやすい環境が整っています。こうした背景から、多くの家庭で育児の協力体制が整えられつつあり、育児の負担の分散に寄与しています。
6-1. 男性の育児休業等の取得状況の公表が義務化
法改正により、男性の育児休業取得状況を企業が公表することが義務化されました。具体的には、育児・介護休業法の改正に伴い、従業員が1,000人を超える会社は、2023年4月より男性労働者の育児休業取得率などの年1回の公表が義務となりました。対象の会社は「育児休業等の取得割合」もしくは「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかを年に1回公表しなくてはなりません。
参考:育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説|厚生労働省
この改正によって、企業内での男性育児休業の実績が透明化され、他の男性社員も育児休業を取得しやすい環境が整えられます。実際の男性の育児休業取得率は、「令和4年度雇用均等基本調査」で17.13%でしたが、2023年6月1日時点の「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」速報値では46.2%に増加しています。この結果からもわかるように、男性社員が育児休業を取得することが「普通のこと」として認識されるようになりつつあります。
また、「令和4年度雇用均等基本調査」において500人以上の事業所規模の男性の育休取得割合が25.36%であったことを鑑みると、「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」は1,000人以上規模が対象であるため、大企業の方が整備が進んできていると考えられます。このような背景から、男性の育児休業取得率が上昇し、家庭での育児負担の分散が期待されています。
参考:令和4年度雇用均等基本調査|厚生労働省
参考:令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査|厚生労働省
6-2. 出生時育児休業(産後パパ育休)とは?
出生時育児休業(産後パパ育休)とは、父親が産後直後の育児に参加しやすくする目的で、2022年10月から新たに導入された制度です。子の出生後8週間以内に4週間の休業を分割して2回取得することができます。育児休業とは取得できる日数に違いがあります。
また、育児休業は原則休業中に就労はできませんが、出生時育児休業では労使協定を結んでいる場合に限り、本人が同意している範囲内で休業中でも就労が認められます。
育児休業とは別に取得できるため、従業員から申請を受けた際は、混同しないよう注意しましょう。
7. 育児休業の制度化のために会社がすべきこと
また制度として従業員が 育児休業を取得できるように企業が対応すべきことをまとめます。名ばかりの制度ではなく、しっかりと従業員が育児休業制度を使用できる環境を整えるためのポイントを紹介します。
7-1. 給付金の申請手続き
育児休業給付金の申請手続きは、企業がサポートすることが求められます。従業員が育児休業を開始した際、給付金の申請書類を作成し、提出するためのサポートを行う必要があります。育児休業給付金の制度を従業員が円滑に利用できるようにするため、企業は各種申請を適切に行わなくてはなりません。
具体的には、育児休業給付金や出生時育児休業給付金の申請に必要な書類を準備し、適切な期間内に事業所を管轄するハローワークに提出することが重要です。また、社会保険料の免除を受けるためには、関連書類を整え、年金事務所や全国健康保険協会(協会けんぽ)、もしくは健康保険組合に提出する必要があります。これらの手続きを迅速かつ確実に進めることで、従業員が安心して育児休業を取得できる環境を整えることが企業の責務となります。
7-2. 就業規則などへ育休制度を記載する
会社が育児休業制度を社内で円滑に運用するためには、就業規則や社内規定に育休制度を明確に記載することが重要です。2022年に改正された育児・介護休業法では、以下のいずれか1つ以上の措置を講じることが会社に義務付けられました。
育休制度に関する研修の実施、育休制度に関する相談体制の整備(相談窓口設置)、育休制度の取得事例の収集・提供、育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知が求められています。これにより、従業員が育児休業制度を利用しやすい環境が整えられ、制度の効果的な運用が期待されます。育休制度の周知とサポートを徹底することで、従業員が安心して育児休業を取得できる体制を整えることができます。
7-3. ハラスメントへの対策
育児休業の申出や取得を理由として、会社が不利益な取扱いをすることは育児介護休業法10条や男女雇用機会均等法第9条3項などで禁じられています。また、会社には上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じる義務もあります。たとえば、育児休業を取得中に就労を強要することは許されません。また、育児休業制度の利用を申し出た従業員に対して、上司や同僚が制度利用を控えるように伝えるまたは命じることもハラスメントにあたります。取得率の向上を目的として、育児休業制度を利用していない従業員に利用を強制する行為も、ハラスメントだといえます。
現場でのコミュニケーションが正しく行われているか、会社側は注意しておかなくてはなりません。このように、育児休業制度の適切な運用とハラスメント防止策の徹底は、従業員が安心して制度を利用できる環境を整える重要な要素です。
8. 育児休業を取得しやすい労働環境を整えよう
育児休業とは、1歳未満の子どもを養育するために休業できる制度のことです。育児休暇と異なり、育児休業は法律が定める制度であるため、条件を満たしている場合は給付金が支給されます。
育児休業は男女問わず取得可能なものであり、週の所定労働日が3日以上であれば、正社員でなくても適用対象です。
法改正に伴い、育児休業の内容や条件などは変化していますので、従業員から申し出があったときに正しい対応をするためにも、しっかり理解しておく必要があるでしょう。
育児休業中は従業員とのやり取りが多くなりますので、コミュニケーションを図り、スムーズに手続きを進めることが大切です。
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