法人で赤字が出た際に免除される税金・されない税金は?赤字決算での法人税の取り扱いも紹介
更新日: 2024.5.27
公開日: 2022.8.10
jinjer Blog 編集部
法人が赤字決算になると、法人税をはじめとした税金の取り扱いに大きな違いが出てきます。免除される税金もあるため、税負担を軽くすることも可能です。
黒字を目指すためにも重要な知識ですので、正しく知っておきましょう。
こちらでは赤字で免除される税金や、法人税の取り扱いなどについて詳しく解説します。
目次
1. 法人で赤字が出た場合に免除される税金、免除されない税金
法人が納める税金は、法人税や法人住民税、法人事業税などです。これらの税金の中には、赤字決算になると免除されるものが存在します。
免除の有無を正確に理解し、少しでも税負担を軽くしましょう。
1-1. 赤字だと免除される税金
赤字決算になった場合に免除される税金は次のとおりです。
- 法人税
- 法人住民税の法人税割
- 法人事業税
※ただし、法人事業税は資本金や業種によっては税金が発生することがあります。この例外については、次項で解説していますので、合わせてお読みください。
それぞれの税金が免除される理由も知っておきましょう。
1-1-1. 法人税
法人税は会社の利益(課税所得金額)に対して課税されるものです。法人税の計算式も「課税所得金額×法人税率」となっているため、利益がなければ法人税も発生しません。
1-1-2. 法人住民税の法人税割
法人住民税には「均等割」と「法人税割」の2種類があります。このうち、法人税割は法人税を元に算出されるものです。
赤字決算により法人税が免除される場合は、自然と法人住民税の法人税割もゼロになります。
1-1-3. 法人事業税
法人事業税には「付加価値割」「資本割」「所得割」の3種類があります。
資本金が1億円以下の会社の場合、課されるのは所得割のみです。法人税・法人住民税の法人税割と同様に、赤字決算の場合は所得がゼロとみなされ、法人事業税の所得割も免除され、法人事業税が一切発生しなくなります。
ただし、資本金が1億円を超える企業は、法人事業税がまるごと免除されるわけではありません。
関連記事:法人税とは?特徴や対象となる法人、種類や計算方法を紹介
1-2. 赤字でも免除されない税金
赤字決算でも免除されない税金は次のとおり
- 消費税
- 法人住民税の均等割
- 一部法人の法人事業税
免除されない理由を見ていきましょう。
1-2-1. 消費税
消費税は消費者から預かった税金であり、企業の利益に関係なく納めなければいけません。赤字決算になった場合も同様です。
特定の条件を満たした場合は、免税事業者としてその年の納税義務がなくなりますが、基本的には免除されません。
1-2-2. 法人住民税の均等割
法人住民税の均等割は、所得に関係なく会社の規模に応じて納税額が決まります。そのため、赤字決算でも決められた税額を納めなくてはいけません。
1-2-3. 一部法人の法人事業税
資本金が1億円を超える会社には、法人税の所得割に加えて「資本割」と「付加価値割」が課せられています。これらは所得に関係なく発生するため、免除されません。電気やガスの供給事業のように「収入割」が発生する事業の場合も同様です。
2. 法人で赤字が出た場合の法人税の取り扱い
赤字になった場合は法人税が免除されることが分かりました。しかし、その他にも赤字になったらできる特殊な取り扱いがあります。
2-1. 赤字分を翌年度以降に持ち越して法人税を減らすことができる
赤字決算になった場合、赤字分は翌年度以降に繰越て処理することが可能です。税務会計上で「繰越欠損金」として取り扱えるため、黒字分と相殺して課税所得を減らすことができます。
繰り越しが可能な年度数は最大で10年です。そのため、赤字分を上回る黒字が出るようになるまで残しておき、税負担を軽くすることもできます。
関連記事:法人税の繰越欠損金とは?控除によるメリットや適用要件も解説
2-2. 中小企業は法人税の還付を受けられる
資本金が1億円以下の中小企業の場合、赤字決算になると前期に納税した法人税の還付をうけられます。これを「欠損金の繰戻による還付」といいます。
還付金額は次のような式で算出可能です。
前期法人税額 ×(当期欠損金額÷前期所得金額)
ただし、前期と当期連続して青色申告をしていることが条件です。
3. 法人で赤字が出た際にすべき対応
赤字決算は必ずしもデメリットになるわけではありません。赤字だからこそのメリットを活かし、早く赤字を脱するためにするべき対応をお話します。
3-1. 欠損金の繰戻による還付の請求をおこなう
前述した赤字決算になった際の法人税の還付は、自動的におこなわれるものではありません。
国税庁が定めている請求書を使い、欠損金の繰戻による還付の請求をおこなう必要があります。
請求書のダウンロードやより詳しい手続き方法・対象者は下記国税庁のホームページから確認できます。
参考:国税庁 | 欠損金の繰戻しによる還付の請求
3-2. 早めに資金調達方法を考える
会社の赤字は必ずしも経営が不安定で、倒産の危機があることには繋がりません。しかし、赤字が続いて資金が足りなくなる可能性がある場合は、早めに資金調達を考えなくてはいけません。
赤字が続く会社は、基本的に金融機関からの信用を失います。赤字決算が連続するほどに融資を受けにくくなってしまうため、一時的な赤字や創業時の赤字でない場合は早めに動いた方がよいのです。
3-3. 利益を増やし、コストの削減を目指す
赤字を脱するには利益を増やすことが重要です。それと同時にコストの削減をおこない、無駄を省きましょう。
プラスを増やしてマイナスを減らすことは、とてもシンプルですが赤字を減らすために非常に重要です。
コストは人件費や原材料費などだけでなく、税金も含みます。節税対策を徹底的におこない、黒字化を目指してください。
4. 法人で赤字が出た際に税金以外で注意すべき点
赤字決算には翌年以降の法人税を減らせることや、法人税の還付を受けられるなど、税務上はメリットになる部分も多いです。しかし、税金以外に目を向けると注意点があります。
4-1. 金融機関からの信用がなくなる
赤字決算になった際に一番に気を付けたいのは、金融機関の信用です。赤字決算をした会社には、経営不振や経営の不安定さなど、マイナスのイメージをどうしてももたれてしまいます。
赤字が一過性のものであり、それを証明できるのであれば信用度は落ちにくいですが、赤字が連続したり、大きくなったりする場合は危険です。
金融機関からの信用を一度失ってしまうと、融資が受けにくくなります。資金調達の選択肢が減ってしまうため、大きく信用度を下げないように注意しましょう。
4-2. 税務署に不正を疑われる可能性がある
法人税をはじめ、赤字決算をすると企業に課される税金を抑えることが可能です。そのため、計画的に赤字にしたり、不正をおこなって赤字にしたりする企業も少なくありません。
もしもそのような疑いをもたれてしまった場合は、家宅捜索がおこなわれ、不正な税務処理が見つかった場合は逮捕される可能性もあります。
赤字だからといって疑われないわけではありません。
4-3. 累積赤字が増えれば倒産の可能性も
累積赤字が増えてしまうと、未払い金や借り入れ金などが膨らんで、最終的に債務超過に陥る可能性があります。
そうなると会社を清算して自主廃業をするのではなく、倒産という道しか選べなくなってしまうでしょう。
倒産の場合は経営者の個人破産もセットになることが大半であるため、多くのものを失ってしまいます。
累積赤字が膨らまないように、くれぐれも注意しましょう。
5. 赤字決算は税務上のメリットを活かして早めに黒字化を目指そう
赤字は法人税の免除や還付を受けられることをはじめ、税務上でのメリットがあります。しかし、一過性の赤字でない限り、デメリットの方が大きいです。早めに赤字を脱出できるように、コストカットや利益アップを検討しましょう。
経費を削減したい場合は、会計業務にかかる労力を別の場所に回すことも効果的です。会計ソフトや外部システムを活用し、会計処理を迅速化しましょう。
収支や税金も分かりやすくなるため、経営を立て直す方針も見えてくるはずです。
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