残業代の単価の出し方と計算方法をわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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残業代の単価の出し方と計算方法をわかりやすく解説

計算する様子

労働者が定められた労働時間を超えて勤務したり、休日・深夜に働いたりした場合、会社は残業代を支払わなければいけません。残業代を正しく支払うには、1時間あたりの単価(基礎賃金)を正しく算出する必要があります。

今回は、労働基準法に基づきながら、残業代の単価の出し方や計算方法を詳しく解説します。

残業代の未払い問題を発生させないよう、単価について正しく押さえましょう。

関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!

残業管理や残業代の計算、 正しく対応できていますか?

残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。

当サイトでは、時間外労働の定義や上限に加え、「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 残業代単価の計算方法

コインとブロック

残業代の単価とは、残業代を計算する際に必要な1時間あたりの賃金額を指します。1時間あたりの賃金額に残業時間を掛ければ、残業代の合計金額が算出できます。賃金体系ごとの計算方法は、次の表のとおりです。

賃金体系

残業代の単価

月給制

月給 ÷ 年間の月平均所定労働時間

日給制

日給 ÷ 1日の所定労働時間

時給制

時給

歩合給

歩合給 ÷ 総労働時間

単価の算出が誤っていると、残業代を正しく計算できず、割増賃金の未払い・過払いの問題が発生します。それぞれの単価の正しい出し方を確認しましょう。

1-1. 月給制の場合

月給制の残業代単価は、月給の額を年間の月平均所定労働時間で割って算出します。

月給制とは、月の労働日数にかかわらず、月単位で額が決まっている賃金体系です。日本の正社員の場合、多くの会社で月給制が採用されています。

次の労働条件の方を例に、月給制の残業代単価の計算方法を確認しましょう。

  • 月給:300,000円
  • 1日の所定労働時間:8時間
  • 年間の労働日数:240日

この労働者の残業代の単価は、次のように計算します。

残業代の単価の計算方法

  1. 月の平均所定労働日数:240日 ÷ 12ヵ月 = 20日/月
  2. 年間の月平均所定労働時間:8時間 × 20日/月 = 160時間
  3. 残業代の単価:300,000円 ÷ 160時間 = 1,875円

1-2. 日給制の場合

日給制は、日単位で賃金の額が決まっており、働いた日数に応じて月の賃金額が決まる勤務体系です。日給制の場合、日給の額をその日の所定労働時間で割った値が残業代の単価になります。

例えば日給10,000円の労働者の労働時間が8時間の場合、残業代の単価は次の式のとおりです。

10,000円 ÷ 8時間 = 1,250円/時

1-3. 時給制の場合

時給制は1時間単位で賃金額が決まる勤務体系です。時給制の場合は時給そのものが残業代単価となるため、計算の必要はありません。

例えば時給が1,000円であれば残業代の単価も1,000円となります。

なお、時間帯によって時給が変わる場合は、残業をおこなった時間帯の時給が残業単価となります。

1-4. 歩合給の場合

歩合給とは、生み出した成果に連動して支払われる額が決まる賃金体系です。「出来高払制」「請負制」などともよばれます。歩合給の残業代単価は、歩合給の額を総労働時間で除して算出します。

歩合給の額が150,000円、総労働時間が120時間の方の場合、残業代単価の計算方法は次のとおりです。

150,000円 ÷ 120時間 = 1,250円/時

賃金の額が成果によって決まるとはいえ、「歩合給であれば残業代の支払いは不要」というわけではありません。法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合、歩合給の労働者にも残業代を支払う必要があります。

2. 残業代単価の計算に含める賃金

時計とコイン

残業代の単価を計算する際は、ベースとなる賃金の範囲も重要です。原則としては基本給だけでなく、労働者に支払われる諸手当すべてを計算に含める必要があります。

例外的に、次の手当は除外されます。

  • 通勤手当
  • 住居手当
  • 家族手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説

2-1. 住宅手当の取り扱いに注意

残業代単価の計算から除外できる賃金のうち、住宅手当の取り扱いには注意が必要です。

除外できるのは、住宅の購入・管理費用や賃貸の費用に応じて支払額が決まる仕組みの住宅手当で、一律に定額が支払われる場合は計算に含める必要があります。

計算から除外できる賃金と計算に含める住宅手当の例は、次のとおりです。

残業代単価の計算から除外できる住宅手当

残業代単価の計算に含める住宅手当

  • 家賃やローンの月額の60%を支給
  • 家賃が10万円未満の場合は2万円、10万円以上の場合は3万円を支給
  • 全員に一律15,000円を支給
  • 賃貸居住者には2万円、持ち家居住者には3万円を支給
  • 東京都在住者には3万円、埼玉県在住者には2万円を支給

全労働者への一律支給の場合や、地域ごとの支給額が定額の場合は、住宅手当でも残業代単価の計算に含めなければいけません。住宅手当として支払われていても、必ず残業代の単価から除外できるわけではない点に注意しましょう。

3. 残業代の計算方法

はてなマーク

残業代を計算するには、残業代の単価の出し方だけでなく、残業の種類ごとの割増率の違いなども押さえておく必要があります。残業代の計算方法を手順ごとに解説します。

3-1. 1時間あたりの残業代単価を算出する

まずは1時間あたりの残業代単価を算出しましょう。勤務形態ごとの計算方法の違い、単価の計算に含まれる手当の範囲などを、正確に把握する必要があります。

残業の計算方法が正しくても、単価そのものが間違っていれば正しい残業代は算出できません。残業代の計算の手順の中で最初に計算が求められる部分のため、労働者一人ひとりの単価を慎重に算出しましょう。

3-2. 残業にあたる範囲の時間を集計する

残業代の単価が算出できたら、その月の残業時間を集計します。

残業時間を集計する際は、所定労働時間を超過した実労働時間のみを対象としましょう。

休憩時間や有給休暇の取得日、遅刻・早退など、勤務していない時間は残業時間に含まれません。業務に従事していない時間は除外して残業時間を集計する必要があります。

残業時間を集計する際は、残業の種類ごとに分けて算出することが重要です。残業には次の3種類があります。

残業の種類

概要

残業代の割増率

時間外労働

法定労働時間(※1)を超えた労働

25%

休日労働

法定休日(※2)におこなった労働

35%

深夜労働

22時から翌5時までの労働

25%

※1:1日8時間または週40時間

※2:週に1日または4週4日の休日

残業の種類については関連記事で詳しく解説しています。

関連記事:残業手当とは?割増率や計算方法、残業代の未払い発生時の対応を解説

3-3. 残業代単価と残業時間を用いて種類ごとの残業代を計算する

残業代の単価と残業時間が算出できたら、残業の種類ごとに割増率を乗じて、残業代を計算しましょう。種類ごとの残業代の計算方法は次のとおりです。3種類すべての残業代を合算すると、支払う残業代が算出できます。

残業代の計算方法

時間外労働(※):残業代単価 × 時間外労働の時間数 × 125%
休日労働:残業代単価 × 休日労働の時間数 × 135%
深夜労働:残業代単価 × 深夜労働の時間数 × 125%

 

※法定内残業(1日8時間または週40時間以内の残業)は割増賃金の対象外のため、割増率は乗じません。

4. 残業単価を用いた残業代の計算例

電卓で計算する

月給制の労働者を例として、残業単価を用いた残業代の計算例を確認しましょう。労働条件は次のとおりとします。

労働条件

  • 基本給:300,000円/月
  • 住宅手当:30,000円/月(※)
  • 通勤手当:15,000円/月
  • 年間の月平均所定労働時間:165時間
    ※:賃貸居住者に一律で支給

この労働者の残業代の単価は、基本給と住宅手当を合計した額を、年間の月平均所定労働時間165時間で割ると求められます。

残業代の単価 = (基本給 + 住宅手当)÷ 年間の月平均所定労働時間

= (300,000 + 30,000) ÷ 165時間

= 2,000円

通勤手当は計算に含まれませんが、住宅手当は賃貸居住者に一律で支給されているため、単価の計算に含める必要がある点に注意しましょう。

残業代単価が計算できたら、月の残業時間を確認し、種類ごとの残業時間にそれぞれ割増率を乗じて、残業代を計算します。

種類ごとの残業時間と割増率は、次のとおりとします。

残業の種類

残業時間

割増率

時間外労働

30時間

25%

休日労働

8時間

35%

深夜労働

2時間

25%

残業の種類ごとに残業代を算出した結果は、次のとおりです。

  • 時間外労働:2,000円 × 30時間 × 1.25=75,000円
  • 休日労働:2,000円 × 8時間 × 1.35=21,600円
  • 深夜労働:2,000円 × 2時間 × 1.25=5,000円

それぞれの残業代を合算すると、1ヵ月の総残業代は101,600円です。

5.残業代の単価に関するよくある質問

Q&Aと手

残業代の単価を算出する際には、ほかにも細かい注意点がいくつかあります。代表的なよくある質問を3点ご紹介します。

5-1. 端数の処理方法は?

残業代の単価を計算すると、小数点以下の端数が発生する場合が多くあります。

端数が生じた場合、原則としては端数も含めて計算する必要がありますが、残業代の単価は0.5円(50銭)未満を切り捨て、0.5円(50銭)以上は1円に切り上げて計算する方法も認められています。

参考:Q10 残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。|鹿児島労働局

なお、端数を切り上げる処理をおこなっても問題ありませんが、切り捨てる処理は労働者にとって不利となるため認められません。

5-2. 残業代の単価は毎月変わる?

残業代の単価は毎月変わるわけではありません。ただし、賃金体系によって次のとおり変動するタイミングがあります。

賃金体系

残業代の単価が変わるタイミング

共通

昇給・降給したとき

支給される手当(※)に増減があったとき

月給制

年間の月平均所定労働時間が変わったとき

日給制

1日の所定労働時間が変わったとき

時給制

歩合給

総労働時間数が変わったとき

※残業単価の計算に含めない手当を除く。

特に月給制の場合に注意しましょう。年間の所定労働日数は平日や土日祝日の日数によって変動する会社がほとんどです。所定労働日数が変われば年間の月平均所定労働時間も変わるため、賃金の額に変動がなくても、残業代の単価が変わる可能性があります。

会社の年度が変わる際には残業代の単価を計算し直す必要がないか、確認しておきましょう。

5-3. 固定残業代は単価に含まれる?

固定残業代は、残業代の単価の計算には含まれません。

固定残業代とは、一定時間の残業が発生することを見込み、一定額の残業代を基本給とは別の手当として支払う制度です。例えば次のような手当が固定残業代にあたります。

業務手当:30,000円(時間外労働20時間分)

実際の時間外労働の時間が、固定残業代で設定された時間外労働の時間に満たなくても、固定残業代は全額支払う必要があります。また、実際の労働時間が設定された時間外労働時間を超えた場合は、超過した時間分の残業代を支払わなければいけません。

固定残業代はいわば残業代の前払い制度のため、残業代の単価の計算には含まれません。ただし、固定残業代の額が、設定された時間分の時間外労働をおこなった場合に支払われる残業代に満たない場合は、固定残業代として認められない可能性があるため注意しましょう。

固定残業代の仕組みや注意点は関連記事をご覧ください。

関連記事:固定残業代とは?制度の仕組みやメリット・デメリット、導入のポイントをわかりやすく解説

6. 残業代の単価を正しく算出し、給与計算のミスをなくそう

電卓で計算する男性

残業代を正しく支給するには、残業代の単価の正確な算出が欠かせません。単価を正しく算出するには、勤務形態ごとの計算方法を正しく理解しておくことが重要です。

残業代の単価が誤っていると、残業代が正しく計算できず、未払い・過払いに気づかないケースもあります。

特に残業代の未払いが発生している場合、労働者から3年前まで遡って請求されるおそれがあります。残業代の単価が誤っていて、多くの労働者から未払賃金の請求を受けた場合、経営に与える金銭的な影響は計り知れません。人事担当者は残業代の単価や計算方法を見直し、支給している残業代に誤りがないか確認しましょう。

残業管理や残業代の計算、 正しく対応できていますか?

残業時間の管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が割増にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。

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