人件費削減の方法とは?具体的な方法や失敗しないためのポイント
更新日: 2024.10.8
公開日: 2022.3.3
jinjer Blog 編集部
企業が負担する経費にはさまざまな項目がありますが、中でも大きな割合を占めるのが人件費です。
売上高や営業利益を増やすためには、人件費削減が必要不可欠となります。しかし、行き当たりばったりの施策をおこなうと失敗する可能性があるので要注意です。
今回は、人件費削減の目的や基本的な考え方、具体的な方法、失敗しないためのポイントについて解説します。
関連記事:やってはいけない経費削減は?正しく実践する方法ややるべき経費削減を解説
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目次
1.人件費とは?その目的と考え方
そもそも人件費とは、会社に属している人の給与や保険などの法定福利費をあわせた費用のことをいいます。
人件費は他の経費と比べて費用が大きく、また毎月発生する経費のため経費の項目の中でも多くの比重を占める経費項目の一つです。そのため他の経費と比べて、人件費は経営状態へのインパクトが大きい傾向があります。
人件費削減は企業経営に必要な取り組みですが、明確な目的を定めないままプランを実行すると失敗する可能性が高くなります。まずは、なぜ人件費削減が必要なのか、その目的を明確にした上で、自社に合った人件費削減プランを策定・実行することが大切です。
ここでは、人件費削減の主な目的や基本的な考え方を2つご紹介します。
1-1. 売上高人件費比率の低下を目指す
売上高人件費比率とは、その会社の売上高に占める人件費の割合を表したものです。
(人件費÷売上高)×100(%)で計算され、売上高人件費比率が高ければ高いほど、売上高に対する人件費の割合が多いことを示しています。
そのため、企業は売上高人件費比率の低下を目指す必要がありますが、人件費を削減した結果、売上高まで減少してしまっては、売上高人件費比率を下げることはできません。
特に従業員の賃金カットやリストラをおこなった場合、人件費の大幅削減によって一時的に売上高人件費比率は向上します。しかし、従業員のモチベーションが下がって労働生産性に悪影響を及ぼしやすいため、長い目で見ると売上高人件費比率が上昇してしまう可能性があります。
人件費削減の目的はあくまで売上や営業利益を増やすことですので、本質を見失ったプランや施策の策定・実行は避けなければなりません。
1-2. 人件費を増やさずに売上を伸ばす工夫を採り入れる
人件費削減というと賃金カットやリストラのイメージが強いですが、今あるものを減らすことだけが人件費削減の唯一の手段ではありません。
たとえば、業務効率をアップして時間外労働を減らしたり、労働環境の改善によって離職率を低下させ、人材の採用・教育にかかる費用をカットしたりするのも、立派な人件費削減の手段となります。
こうした取り組みは従業員のモチベーションアップにもつながるため、売上の増加や優秀な人材の定着など、副次的な効果も期待できます。
1-3.人件費削減のメリットとリスク
人件費削減をおこなうことであらゆるメリットがあります。最も影響が大きいのは会社の経済状況の改善です。経済状況が改善されることで融資が受けやすくなったり、会社の株価が上昇するケースがあります。また人件費で浮いた資金で会社の設備投資にあてられたり、新規事業の立ち上げに役立てることができます。
こういったメリットがある一方、リスクもあります。特に影響が大きいのは従業員のモチベーションの低下と会社のイメージダウンです。従業員のモチベーションは労働生産性と密接な関係があります。仕事への意欲が低下すると、業務効率の低下につながり、中長期的には売上・業績ダウンにつながる可能性があります。また給与・賞与カットやリストラによる人件費削減をおこなうと、会社の業績が不振に陥っていると外から判断される可能性があり、投資家などからの評価が低下するおそれもあります。
関連記事:人件費削減とは?人件費削減のメリット・デメリットも網羅的に解説
2.人件費削減の計算方法とは
そもそも人件費とは基本給・通勤手当などの従業員へ支払う給与と、社会保険などの法定福利費を足して計算します。法定福利は各種保険によって料率は異なりますが、例えば給与が合計で50万円、法定福利費の料率が30%であれば、
500,000(給与)×30%(料率)=150,000(法定福利費)
という計算になります。よって
500,000(給与) + 150,000(法定福利費)=650,000(人件費)
で65万円が人件費となります。
3.人件費削減の具体的な方法
どのような方法を用いて人件費をカットするかは会社によって異なりますが、ここでは一例として、人件費削減の主な取り組み方を3つご紹介します。
3-1. 既存社員のパフォーマンスを向上させる
新たな人材を1人確保すると、採用コストや教育コストがかかるほか、給与や賞与といったランニングコストが発生します。
業務過多に陥ると、安易に人材採用を検討してしまいがちです。人件費を削減したいのなら既存社員のパフォーマンスを向上させ、業務効率および労働生産性をアップさせた方が効率的です。
既存社員のパフォーマンスを向上する取り組みとしては、研修や講習によるスキルアップ、マニュアルの構築・見直し、適材適所の人材配置などが挙げられます。
研修・講習に関してはすでに取り組んでいる企業も多いかと思いますが、移動や宿泊をともなう研修・講習はかなりの手間とコストがかかる上、研修中は人手不足に陥りやすいという欠点があります。
オンライン講習にして各々の事業所の会議室などから参加できるようにすれば、移動や宿泊にかかるコストを削減できますし、研修が終わった後はすぐに業務に復帰できるので一石二鳥です。
3-2. 業務フローの見直し
会社では、部署ごとに決まった業務フローが存在しますが、あらためて見直してみると、改善の余地が見つかることもあります。
まずは現在の業務フローを見える化し、不要な業務や作業はないか、徹底して洗い出しましょう。その上で、不要な業務はカット、あるいは代替策を取り入れ、業務全体のスリム化を図ります。
なお、一見無駄なように見えても、実は必要な業務というのは少なくありませんので、業務フローを見直すときは現場の声にもきちんと耳を傾けることが大切です。
関連記事:経費削減の成功事例を紹介!経費削減の方法や実現させるポイントを解説
3-3. ITシステムの活用
業務効率や労働生産性の向上には、便利なITシステムの導入が欠かせません。
経費精算業務を例に挙げると、通常なら以下のような一連のプロセスが必要です。
・従業員が経費を立て替え払いする
・領収書を添えて経費精算書を作成し、経理に提出する
・経理が精算書の内容をチェックし、承認する
・従業員に経費の払い戻しを行う
経費精算システムを導入すれば、領収書をスマホで撮影・システム登録することで2の手順を省くことができますし、3の手続きも自動仕分機能の活用によって短縮化されるので、経費を使った従業員・経理担当者両方の手間と労力を削減することができます。
ITシステムやツールの導入にはコストがかかりますが、業務効率や労働生産性がアップすれば時間外労働が減り、間接的に人件費を削減できるので、長い目で見ると高い効果が期待できます。
また、ITシステムは人件費以外にも、紙や印刷といったコストも削減できます。人件費の削減はむやみにおこなうと、最悪の場合労働基準法違反になる可能性もあるリスクが高い施策なので、注意しましょう。
本当に人件費以外の経費で削減できるものはもう無いでしょうか?「経費削減アイデアブック」では、想定している経費削減とは違う意外な削減方法についてご紹介しています。
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関連記事:営業活動の経費削減方法とは?重要な考え方や取り組む際の注意点について
関連記事:経理で経費削減が必要な理由とは?注意点や成功させるコツを解説
4.人件費削減で失敗しないためのポイントと例
人件費削減をおこなうにあたって、失敗のリスクを低減するために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
4-1. 徹底したシフト管理をおこなう
人材採用に頼らず、今いる従業員のみで業務を回すためには、徹底したシフト管理をおこなわなければなりません。
特に飲食店などはパートやアルバイトの割合も多いので、シフト管理がしやすい環境にあります。
必要な時に、必要な場所に、必要なだけの人材を配置すれば、人件費を無駄に浪費せずに済みます。
これまで培ってきたデータを分析すれば、いつ・どこに・どれだけの人材を配置すれば無駄がないか判断しやすくなるでしょう。
4-2. 無駄な残業代がないかチェックする
従業員に法定労働時間を超えた残業や休日出勤を命じる場合、労働基準法第37条に基づき、割増賃金を支払う必要があります。[注1]
時間外労働の割増賃金は、通常の賃金の25~50%以下で定めることが法律で義務づけられているため、時間外労働が増えるほど人件費もかさんでいきます。
時間外労働が常態化している企業では、本来なら必要のない残業をだらだら続けているケースも少なくありませんので、業務効率を上げて時間外労働を減らす工夫を採り入れると共に、無駄な残業代が発生していないかどうかしっかりチェックしておきましょう。
[注1]e-Gov法令検索:労働基準法
4-3. 従業員に情報を開示する
人件費削減に取り組むと、業務フローの見直しやITシステムの導入により、普段の業務に大幅な変更が加えられることがあります。
何の前触れもなく人件費削減プランを実行した場合、現場が混乱して従業員に負担をかけたり、業務に支障を来したりする原因になります。
人件費削減は会社のトップだけでなく、会社全員で取り組むべきものですので、何らかの施策をおこなう場合は、あらかじめ従業員に「いつ・どこで・どんな施策を実行するのか」「なぜこのような取り組みをおこなうのか」などの情報を開示することが大切です。
また、人件費削減に取り組んだ結果、どのような成果を得られたのか、あるいはどんな課題・問題点が見つかったかも周知させると、社内一丸となって人件費削減に取り組む体制を整えることができます。
4-4.人件費を削減する際の伝え方
人件費の削減を実行する際は従業員に納得いただくことが最も重要になります。そのため従業員と時間をとり、人件費を削減する理由をしっかり伝える必要があります。また従業員に納得していただくために、人件費を削減する根拠を伝えることも重要です。会社の経営状況や従業員の課題など、正確に伝えられるよう事前に準備しておきましょう。
5.人件費削減は、既存社員に負担をかけない方法を模索するのがポイント
人件費削減というと、賃金カットやリストラをイメージしがちですが、既存社員のモチベーション低下につながる施策は、一時的な効果は望めても、長い目で見ると経営に大きなダメージをもたらします。
人件費を削っても、労働生産性の低下によって売上も減ってしまっては意味がありません。人件費削減に取り組むときは、なるべく既存社員に負担をかけない方法を模索することが大切です。
具体的には、研修やマニュアルの見直しなどによって既存社員のパフォーマンスを高める、ITシステムを活用して業務効率を向上するなどの方法が挙げられます。
こうした取り組みは労働環境の改善にもつながることから、従業員の反感を買いにくく、人件費削減をスムーズに進めやすくなるでしょう。
ただ、何の前触れもなく、いきなりITシステムの導入や業務フローの見直しをおこなったりすると現場が混乱する恐れもあります。必要な情報はしっかり開示し、従業員の負担をなるべく軽減するよう努めましょう。
関連記事:人件費削減で起こる悪循環とは?悪循環に陥った事例や見直すべきポイント
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