人件費削減で起こる悪循環とは?悪循環に陥った事例や見直すべきポイント
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.3.3
FURUYA
企業経営にはさまざまなコストがかかりますが、中でも大きな割合を占めるのが人件費です。
財務省がまとめたデータによると、売上高に対する人件費比率は製造業・非製造業ともに10%を超えており、営業利益を押し下げる原因となっています。[注1]
そのため、多くの企業がさまざまな手段で人件費削減に取り組んでいますが、誤った方法でコストカットすると、経営に支障を来すような悪循環に陥ってしまうおそれがあります。
人件費削減に取り組む際は、全体に与えるリスクを考慮しながら、見直すべきポイントを模索することが大切です。
今回は、人件費削減で起こり得るリスクや、実際に悪循環に陥った事例、正しい方法で人件費削減するためのポイントをご紹介します。
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1.人件費削減で起こる悪循環
誤った方法で人件費削減を行った場合に想定される悪循環のケースを3つのポイントに分けて解説します。
1-1.従業員のモチベーション低下
賃金カットやリストラなどによって人件費を削減すると、既存従業員のモチベーションが著しく低下します。
仕事への意欲が失われると、必然的に労働生産性も落ち込み、売上や業績の悪化や機会損失などを招く原因となります。
営業利益が減少すると、再びコスト削減を迫られることになり、さらなる人件費削減、従業員のモチベーション低下という悪循環に陥る可能性があります。
関連記事:やってはいけない経費削減は?正しく実践する方法ややるべき経費削減を解説
1-2.労働力の不足
リストラを実行したり、安易な賃金カットが原因で従業員が離職したりすると、深刻な人手不足に陥る可能性があります。
離職にともなう人手不足の場合、新たな人材を採用して補うという方法もありますが、人材採用には手間とコスト、時間がかかります。
すぐに優秀な人材を確保できなかった場合、人件費削減の効果が薄れる可能性があります。
労働力が不足したまま業務を進めると、せっかくのビジネスチャンスを逃したり、サービスの質が低下したりと、さまざまな障害が発生しやすくなります。
また、売上や業績に悪影響をもたらすのはもちろん、場合によっては会社やブランドのイメージを損ねることもあるので要注意です。
人手が不足しているにもかかわらず、以前と同じ業務量をこなそうとすると、ヒューマンエラーが頻発して損害を被るリスクも高くなります。
1-3.時間外労働の増加
人件費削減によって労働力が不足すると、既存の従業員1人あたりにかかる負担が大きくなります。
その結果、勤務時間内で終わらなかった業務を残業または休日出勤でカバーせざるを得なくなり、時間外労働が大幅に増加してしまう可能性があります。
時間外労働の増加は従業員の健康リスク上昇やモチベーション低下につながり、労働生産性の減少および離職率の上昇など、新たな問題を生み出す原因となります。
また、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、それぞれ時間外労働の上限規制が設けられることになりました。
定められた上限を超えて従業員に時間外労働させると、労働基準法違反となり、使用者(事業者)は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性がある点にも注意が必要です。[注2]
2.人件費削減で悪循環に陥った事例
人件費削減に取り組んだ結果、残念ながら悪循環に陥ってしまった事例は決して少なくありません。
同じ過ちを犯さないためにも、失敗例を教訓にして適切なコスト削減方法を模索しましょう。
ここでは、人件費削減で悪循環に陥ってしまった事例を2つご紹介します。
2-1.リストラによって人手不足が深刻化し、内部崩壊を招いたケース
ある小売業では、人件費削減の一環として、高齢者の雇い止めを実施しました。
高齢従業員の割合は決して少なくなかったため、雇い止めの実行後、現場は深刻な人手不足に陥りました。
そこでトップは、1人が複数の業務を請け負うマルチタスク制を導入しましたが、対応できる人とできない人に二分されてしまい、業務の遂行に顕著な差が出るようになりました。
また、マルチタスクが負担になったため、一つひとつの業務を雑にこなすケースが頻発し、ヒューマンエラーにともなうクレームも増えれば新たな問題に対応する手間も増加してしまいます。
さらに、マルチタスク制を導入後も従業員の待遇を改善しなかったことが反感を買い、相次ぐ離職によってさらに人手不足が深刻化する結果になりました。
企業を支えてくれていた高齢の従業員や、マルチタスクに一生懸命対応してくれた従業員をないがしろにしたことが、内部崩壊を招いた典型例といえます。
2-2.労働環境を変えずに時間外労働を削減し、サービス残業が横行したケース
ある金融機関では、それまで常態化していた長時間労働を是正すべく、従業員に定時退社を命じました。
残業が当たり前になっていた職場の雰囲気は変わり、従業員1人ひとりが意識的に定時までに仕事を終わらせようと努力するようになりましたが、一方で労働環境や業務量そのものは変わらなかったため、どうしても定時で仕事が片付かないケースもしばしばありました。
しかし、会社は業務の進行度にかかわらず、定時での退社を命じたため、終わらなかった仕事が翌日に持ち越されるようになり、だんだん雪だるま式に膨れあがっていきました。
その結果、終わらなかった仕事を自宅に持ち帰ったり、翌日にいつもより早く出社し、タイムカードを打刻しないまま仕事を始めるなどのサービス残業が横行するようになってしまいます。
会社からすれば、時間外労働のコスト削減には成功しましたが、サービス残業の横行は従業員のモチベーション低下につながり、職場の雰囲気の悪化、離職率の向上、労働生産性の低下など、さまざまな悪影響をもたらすことになってしまいました。
3.人件費削減による悪循環を防ぐために見直すべきポイント
人件費削減による悪循環を防ぐために、企業が見直すべきポイントや、実践すべき取り組みを4つご紹介します。
3-1.業務の効率化
新たな人材を採用せず、かつ既存従業員に負担をかけずに業務を遂行するためには、業務の効率化が必要不可欠です。
たとえば、ペーパーレス化を推進して紙資料の作成や管理の手間を省く、経費精算システムや勤怠管理システムの導入により、手入力や二重入力をカットするなどです。
業務が効率化されれば、人手が少なくても仕事に支障を来すリスクが少なくなりますし、従業員1人あたりにかかる負担の低減にもつながります。
また、システムを上手に活用すると、手入力にありがちなヒューマンエラーが起こりにくくなるため、正確かつ迅速な業務の実現にも役立ちます。
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3-2.業務フローの見直し
日々行う業務フローに無駄があると、業務効率や労働生産性の低下につながります。
わずかな無駄であっても、毎日積み重なればトータルで大きな損失を招くことになりますので、一度現在の業務フローを見直してみることをおすすめします。
新たなシステムやツールの導入によって省ける工程があれば積極的に試してみて、業務を問題なくこなせるかどうかチェックしてみましょう。
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3-3.既存従業員の教育やスキルアップを目指す
既存従業員のスキルをアップさせれば、新たな人材を採用するよりも大きな戦力となります。
外から講師などを招いてセミナーを開くのもひとつの方法ですが、コストをかけずに教育したいのなら、教育マニュアルの最適化や、情報共有のスムーズ化に取り組み、必要な情報や技術をすばやく、かつ確実に入手できる体制を整えましょう。
従業員のスキルが向上すれば、1日にこなせる仕事量が増え、残業や休日出勤などの時間外労働を減らすことができます。
時間外労働は別途手当が必要になりますので、残業や休日出勤が減少すれば、人件費の削減にもつながります。
3-4.他のコストの節約
企業が負担する経費は人件費だけではなく、オフィスの地代家賃や水道光熱費、通信費、さらには営業で使う交通費や出張費なども含まれます。
これらの固定費は毎月発生するものですので、根本的な見直しを行えば、月々のコストを節約することができます。
たとえば、賃料の安いオフィスに引っ越す、照明をLEDに変える、最も安価な交通ルートで移動するなどがあります。
ただ、引っ越しや設備投資にはそれなりのコストがかかりますので、高い費用対効果を見込めるかどうかをきちんとシミュレーションしてから実行することをおすすめします。
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4.誤った人件費削減は経営に支障を来す原因になる
人件費削減は会社の経費を大幅に減らす有効な手段ではありますが、誤った方法を採用すると、従業員のモチベーション低下、人手不足、時間外労働の増加など、さまざまな問題を生み出す原因となります。
会社のために人件費削減に取り組んだ結果、新たな壁や問題が発生してしまうのは本末転倒ですので、業務効率化や人材育成の見直しなど、なるべく経営に悪影響を及ぼさない方法を採り入れることをおすすめします。
人件費だけでなく、他の経費削減にも取り組み、人件費削減にともなう影響を最小限に抑えるのも有効な手段のひとつです。
[注2]厚生労働省|時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 p.4
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