パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説
パートタイム・有期雇用労働法では雇用形態による一切の待遇差別を禁止し、同一の労働に従事する従業員には同一の賃金や賞与などを用意するよう求めています。賞与の場合、支給目的を明確にしたうえで、雇用形態を理由に不合理な待遇差となっていないか確認することが大切です。
この記事では、人事担当者向けにパートタイム・有期雇用労働法による賞与規定と注意点、待遇差の解消に必要な取り組みを解説します。
▼パートタイム・有期雇用労働法と併せて知りたい「同一労働同一賃金」についてはこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
目次
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1.パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定
パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では、第8条で「基本給、賞与その他の待遇」に不合理な差を設けてはいけないと規定しています。[注1]
[注1]短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov法令検索
1-1.同一労働・同一賃金の賞与の考え方
先に、賞与の考え方を厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」より確認します。[注2]
同ガイドラインでは「会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。」としています。
そのため、賞与の目的が労働者の貢献度に応じた手当である場合、正社員と短時間労働者や有期雇用労働者の労働内容が同一であり、なおかつ正社員にのみ賞与を支給しているのであれば、差別的取り扱いであると考えられます。
なお、賞与の支給目的は企業により異なるため、雇用形態別の支給が全て差別的取り扱いになるとは限りません。
目的によっても不合理であるか否かが変わってきます。
関連記事:同一労働同一賃金で賞与はどうなる?就業規則や罰則についても解説
1-2.均衡待遇規定と均等待遇規定
同一労働・同一賃金を考える上で判断基準となるのが「均衡待遇規定」と「均等待遇規定」です。
具体的には下記となります。
均衡待遇規定:不合理な待遇差の禁止は下記3点の違いに応じ、待遇を決定します。
- 職務内容(内容および責任の程度)
- 職務内容・配置の変更の範囲
- その他の事情
均等待遇規定:差別的取扱いの禁止は下記2点が同じ場合、待遇も同じ取扱いになります。
- 職務内容(内容および責任の程度)
- 職務内容・配置の変更の範囲
これら2つの考え方を元に、賞与に合理的ではない差があるなら、解消する必要があります。
2.パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定の注意点
パートタイム・有期雇用労働法の賞与規定は、賞与に差を設けること自体を禁止している訳ではありません。
また、従業員から差がある理由を聞かれた場合は、回答する義務が生じる点に注意しましょう。
さらに、正社員の賞与を廃止する場合、労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。
2-1.賞与の合理的な差は認められる
パートタイム・有期雇用労働法では、賞与の合理的な差は認めています。
そのため「有期雇用労働者などにも必ず正社員と同様の賞与を支給しなければいけない」と、規定しているわけではありません。
例えば正社員はノルマ制、短時間労働者・有期雇用労働者は定型業務に従事している場合、それぞれの貢献度に応じた差を設けることは合理的と考えられます。
ただし、賞与の目的が会社への貢献に対する手当にもかかわらず、正社員には一律で支給し、有期雇用労働者などには支給していない場合は不合理な格差と考えられます。
それぞれのケースに応じて、合理性を判断しましょう。
2-2.従業員から賞与の差について説明を求められた際は回答が必要
パートタイム・有期雇用労働法では、賞与などの待遇差の説明を従業員から求められた際は、回答する義務が生じます。
また、回答を得られない場合は、従業員からの申し出で、裁判外紛争解決手続き(ADR)を利用し待遇差の説明を求めることも可能となりました。
そのため、合理的な差を設けている場合は、事前に説明資料などを用意しておくとよいでしょう。
また、説明を求めたために減給や解雇など、不利益な対応をすることは禁止されています。
さらに、同一労働同一賃金ガイドラインが設けられたことにより、待遇格差について細かく区分され、不合理な待遇差に対する考えが厳しくなったので注意が必要です。当サイトでは、上記のような法改正の内容やそもそもとなる基礎知識、説明責任に関する具体的な内容までを解説した資料を無料で配布しております。説明責任に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説
2-3.労使トラブルがあれば裁判外紛争解決手続き(ADR)が無料・非公開で利用できる
給与規定など、労使間でトラブルが発生すれば、都道府県労働局に申し出ることで、無料・非公開の労働紛争手続きが利用できるようになりました。
この手続きは、会社からの申し出だけでなく、従業員からの申し出でも利用できます。
また、待遇差の説明を求めることも可能となりました。
そのため、不合理な賞与格差が続く場合、今後は裁判外紛争続き(ADR)などが増加する可能性もあるため、改善に努めましょう。
2-4.正社員の賞与廃止は不利益変更に該当する
正社員と短時間・有期雇用労働者の賞与格差を解消するため、正社員の賞与を一律廃止とするなどは「労働条件の不利益変更」に抵触する可能性が高いため注意しましょう。
使用者の一方的な労働条件の改悪は無効となる他、変更する際は合理的な理由が必要です。
実際の変更では、労使の合意と就業規則の変更も必要となります。
また、万が一変更できた場合もモチベーションの低下などにも注意が必要です。
3.パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を守るには?
パートタイム・有期雇用労働法の賞与規定を守るためにも、まずは雇用形態別に賞与に差を設けているか確認しましょう。そのうえで、差が合理的か否かを判断します。
不合理な差である場合は、できるだけ早急に解消に努めましょう。
3-1.短時間労働者・有期雇用労働者を雇用しているか確認する
まずは企業で短時間・有期雇用労働者を雇用しているか確認しましょう。
もし、従業員全員がフルタイム正社員などの場合は、今回の規定は対象外となるため、ここで確認は終了です。
3-2.雇用形態別に賞与の差があるか確認する
正社員、短時間・有期雇用労働者を雇用している場合は、賞与に差が設けられているか確認しましょう。
賞与額の差だけでなく、賞与が支給されているか否かも、合理性判断の基準となります。
もし、全従業員一律で賞与を不支給としている場合は、ここで確認は終了となります。
3-3.賞与に差を設けている場合は、合理的かどうか判断する
雇用形態に応じて、賞与に差を設けている場合は、その差が合理的といえるか判断しましょう。
差を設ける基準は以下の通りです。
- 業務の内容と責任の程度
- 配置転換や転勤、昇給の有無
- 保有資格、勤続年数
これらと、均衡待遇規定と均等待遇規定を元に、総合的に判断します。
例えば、パートタイム労働者に賞与を支給していない理由が「業績への貢献度を計る基準を設けていないため」などの場合は、不合理な待遇差といえます。
3-4.不合理な待遇差は改善をする
確認の結果、賞与の差が不合理であると判断された場合は、労使との話し合いなども行い早めに改善しましょう。
その際は、短時間・有期雇用労働者の業務の見直しや、賞与の支給などにより対応するとよいでしょう。
4.賞与は支給目的を明確にし、差を設けることが合理的か判断しよう
パートタイム・有期雇用労働法では、合理的理由が存在するのであれば、賞与支給額に差を設けることを認めています。
そのため、同一労働なら正社員か短時間労働者かにかわらず、ノルマの達成状況に応じて賞与に差を設けているならば合理的と考えます。
賞与の額だけ確認するのではなく、支給目的と雇用形態別に差を設けることに合理性があるか否かを判断しましょう。
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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