パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説

パートタイム

パートタイム・有期雇用労働法では雇用形態による一切の待遇差別を禁止し、同一の労働に従事する従業員には不合理な差のない賃金や賞与などを用意するよう求めています。賞与の場合、支給目的を明確にしたうえで、雇用形態を理由に不合理な待遇差となっていないか確認することが大切です。

この記事では、人事担当者向けにパートタイム・有期雇用労働法による賞与規定と注意点、待遇差の解消に必要な取り組みを解説します。

▼パートタイム・有期雇用労働法と併せて知りたい「同一労働同一賃金」についてはこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

◆押さえておくべき法的ポイント

  • 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
  • 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
  • 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要

最新の法令に対応した盤石な体制を構築するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定

ボーナスのブロック

パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では、第8条で「通常の労働者」との間で「基本給、賞与その他の待遇」に不合理な差を設けてはいけないと規定しています。[注1]

[注1]短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov法令検索

1-1. 同一労働・同一賃金の賞与の考え方

先に、賞与の考え方を厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」より確認します。

ボーナス(賞与)であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。

引用:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

このガイドラインの規定から、賞与の目的が労働者の貢献度に応じた手当である場合、正社員と短時間労働者や有期雇用労働者の労働内容が同一であり、なおかつ正社員にのみ賞与を支給しているのであれば、差別的取り扱いであると考えられます。

なお、賞与の支給目的は企業により異なるため、雇用形態別の支給が全て差別的取り扱いになるとは限りません。

目的によっても不合理であるか否かが変わってきます。

関連記事:同一労働同一賃金で賞与はどうなる?就業規則や罰則についても解説

1-2.均衡待遇規定と均等待遇規定

同一労働・同一賃金を考える上で判断基準となるのが「均衡待遇規定」と「均等待遇規定」です。
具体的には下記となります。

均衡待遇規定:不合理な待遇差の禁止は下記3点の違いに応じ、待遇を決定します。

  • 職務内容(内容および責任の程度)
  • 職務内容・配置の変更の範囲
  • その他の事情

均等待遇規定:差別的取扱いの禁止は下記2点が同じ場合、待遇も同じ取扱いになります。

  • 職務内容(内容および責任の程度)
  • 職務内容・配置の変更の範囲

これら2つの考え方を元に、賞与に合理的ではない差があるなら、解消する必要があります。

2. パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定の注意点

ビックリマーク

パートタイム・有期雇用労働法の賞与規定は、賞与に差を設けること自体を禁止している訳ではありません。

また、従業員から差がある理由を聞かれた場合は、回答する義務が生じる点に注意しましょう。

2-1. 賞与の合理的な差は認められる

パートタイム・有期雇用労働法では、賞与の合理的な差は認められています。

そのため「有期雇用労働者などにも必ず正社員と同様の賞与を支給しなければいけない」と、規定しているわけではありません。

正社員はノルマ制、短時間労働者・有期雇用労働者は定型業務に従事している場合、それぞれの貢献度に応じた差を設けることは合理的と考えられます。

ただし、賞与の目的が会社への貢献に対する手当にもかかわらず、正社員には一律で支給し、有期雇用労働者などには支給していない場合は不合理な格差と考えられます。

それぞれのケースに応じて、合理性を判断しましょう。

2-2. 従業員から賞与の差について説明を求められた際は回答が必要

パートタイム・有期雇用労働法では、賞与などの不合理な待遇差の説明を従業員から求められた際は、回答する義務が生じます。

また、回答を得られない場合は、従業員からの申し出で、裁判外紛争解決手続き(ADR)を利用し待遇差の説明を求めることも可能となりました。

そのため、合理的な差を設けている場合は、事前に説明資料などを用意しておくとよいでしょう。

また、説明を求めたために減給や解雇など、不利益な対応をすることは禁止されています。

さらに、同一労働同一賃金ガイドラインが設けられたことにより、待遇格差について細かく区分され、不合理な待遇差に対する考えが明確化されたので注意が必要です。当サイトでは、上記のような法改正の内容やそもそもとなる基礎知識、説明責任に関する具体的な内容までを解説した資料を無料で配布しております。説明責任に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。

関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説

2-3. 労使トラブルがあれば裁判外紛争解決手続き(ADR)が無料・非公開で利用できる

給与規定など、労使間でトラブルが発生すれば、都道府県労働局に申し出ることで、無料・非公開の労働紛争手続きが利用できるようになりました。

この手続きは、会社からの申し出だけでなく、従業員からの申し出でも利用できます(都道府県労働局による紛争解決援助・あっせん)。

また、待遇差の説明を求めることも可能となりました。

そのため、不合理な賞与格差が続く場合、今後は裁判外紛争続き(ADR)などが増加する可能性もあるため、改善に努めましょう。

2-4. 正社員の賞与廃止は不利益変更に該当する

正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の賞与格差を解消するため、正社員の賞与を一律廃止とするなどは「労働条件の不利益変更」に抵触する可能性が高いため注意しましょう。

使用者の一方的な労働条件の改悪は無効となる他、変更する際は合理的な理由が必要です。

実際の変更では、労使の合意と就業規則の変更も必要となります。また、万が一変更できた場合もモチベーションの低下などにも注意が必要です。

2-5. 労働条件として賞与の有無を事前にを明示する

新たに人を雇い入れる際に、労働条件通知書を作成して労働者に交付することを労働基準法によって使用者に義務付けています。

書面に明示する労働条件もあらかじめ決められていますが、パートタイム・有期雇用労働法では「賞与の有無」「昇給の有無」「退職手当の有無」「相談窓口」も加えて明示しなくてはいけません。正社員の場合と異なり、賞与の有無も含め明示事項が多い点に注意が必要です。

なお、これに違反した場合は、パートタイム・有期雇用労働法に基づき10万円以下の過料が科せられるため、賞与の有無を含めた労働条件を正確かつ漏れなく通知書に明示することが不可欠です。

3.パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を守るには?

従業員を守る様子

パートタイム・有期雇用労働法の賞与規定を守るためにも、まずは雇用形態別に賞与に差を設けているか確認しましょう。そのうえで、差が合理的か否かを判断します。

不合理な差である場合は、できるだけ早急に解消に努めましょう。

3-1. 短時間労働者・有期雇用労働者を雇用しているか確認する

まずは企業で短時間労働者・有期雇用労働者を雇用しているか確認しましょう。もし、従業員全員がフルタイム正社員など「通常の労働者」である場合は、今回のパートタイム・有期雇用労働法に基づく規定における待遇差の合理性が問題となることはないため、ここで確認は終了です。

一方、短時間労働者・有期雇用労働者を雇用している場合は、賞与やその他の待遇における差を正当化するための具体的な根拠を持つ必要があります。

また、賞与の支給基準が正社員と同じ条件であるか確認し、それに基づき明確な説明ができるように準備することが重要です。

この作業は、企業が法令を遵守するだけでなく、従業員との信頼関係を強固にするための第一歩ともいえるでしょう。労働者が不平等感を感じないよう、透明性のある運用を心がけ、適切な評価をおこなうことが求められます。

3-2. 雇用形態別に賞与の差があるか確認する

正社員、短時間労働者・有期雇用労働者を雇用している場合は、賞与に差が設けられているか確認しましょう。賞与額の差だけでなく、賞与が支給されているか否かも、合理性判断の基準となります。

もし、全従業員一律で賞与を不支給としている場合は、ここで確認は終了となります。

一方、雇用形態によって賞与額が異なる場合は、その理由を明確にすることが求められます。具体的には、業務内容や貢献度に基づいた合理的な根拠が必要です。

3-3. 賞与に差を設けている場合は、合理的かどうか判断する

雇用形態に応じて、賞与に差を設けている場合は、その差が合理的といえるか判断しましょう。

差を設ける基準は以下の通りです。

業務の内容と責任の程度

配置転換や転勤、昇給の有無

保有資格、勤続年数

これらと、均衡待遇規定と均等待遇規定を元に、総合的に判断します。

パートタイム労働者に賞与を支給していない理由が「業績への貢献度を計る基準を設けていないため」などの場合は、不合理な待遇差といえます。

3-4. 不合理な待遇差は改善をする

確認の結果、賞与の差が不合理であると判断された場合は、労使との話し合いなどもおこない早めに改善しましょう。

その際は、短時間労働者・有期雇用労働者の業務の見直しや、賞与の支給などにより対応するとよいでしょう。ただし、正社員の賞与を不利益に変更する際は、労働条件の不利益変更の手続きを慎重におこなう必要があります。

また、具体的な基準を設けて透明性を確保することが、従業員の信頼を得るためにも重要です。定期的に報酬制度の見直しを行い、従業員への説明責任を果たすことで、より良い職場環境を整えることが可能になります。

4.賞与は支給目的を明確にし、差を設けることが合理的か判断しよう

分かれ道

パートタイム・有期雇用労働法では、合理的理由が存在するのであれば、賞与支給額に差を設けることを認めています。
そのため、同一労働なら正社員か短時間労働者かに関わらず、ノルマの達成状況に応じて賞与に差を設けているならば合理的と考えます。

賞与の額だけ確認するのではなく、支給目的と雇用形態別に差を設けることに合理性があるか否かを判断しましょう。

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

◆押さえておくべき法的ポイント

  • 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
  • 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
  • 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要

最新の法令に対応した盤石な体制を構築するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

jinjer Blog 編集部

jinjer Blog 編集部

jinjer Blogはバックオフィス担当者様を支援するため、勤怠管理・給与計算・人事労務管理・経費管理・契約業務・帳票管理などの基本的な業務の進め方から、最新のトレンド情報まで、バックオフィス業務に役立つ情報をお届けします。

人事・労務管理のピックアップ

新着記事