【2026年10月改正】パートタイム・有期雇用労働法の全体像をわかりやすく解説!
更新日: 2026.9.9 公開日: 2021.11.24 jinjer Blog 編集部

パートタイム・有期雇用労働法は、同一労働同一賃金の実現に向け、雇用形態を理由とした不合理な待遇格差をなくすことを目的とした法律です。しかし、同一労働同一賃金のルールをはじめわかりにくい定めが多く、対応すべき事項も多岐にわたるため、具体的に何をすべきか把握できていない人事担当者は少なくないでしょう。
この記事では、人事担当者向けにパートタイム・有期雇用労働法の内容や押さえるべきポイント、企業の具体的な対応をわかりやすく解説します。
意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。
◆押さえておくべき法的ポイント
- 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
- 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
- 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要
最新の法令に対応した盤石な体制を構築するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. パートタイム・有期雇用労働法の概要をわかりやすく解説


パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇格差を禁止する法律です。正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といいます。
2020年に施行された働き方改革関連法の1つとして、大企業は2020年4月1日に、中小企業は2021年4月1日より適用されています。
総務省統計局の労働力調査によると、2025年平均の雇用者の全体数は5,828万人、非正規労働者はそのうち2,128万人で、全体の36.5%です。パートやアルバイト、契約社員はいまや働き手の大きな割合を占めています。雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保は、企業にとって欠かせません。
パートタイム・有期雇用労働法では、基本給・賞与・手当などの待遇ごとに、正社員との不合理な待遇差を禁止しています。
また、企業は短時間労働者や有期雇用労働者から正社員との待遇差の理由を問われた場合、説明の義務を負います。
関連記事:パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説
関連記事:同一労働同一賃金で各種手当はどうなる?最高裁判例や待遇差に関して
1-1. パートタイム・有期雇用労働法の目的
パートタイム・有期雇用労働法の目的は、どのような雇用形態でも十分な待遇を受けられるようにし、多様な働き方を自由に選べる社会を実現することです。
前身であるパートタイム労働法は、1993年12月に施行され、2008年4月に改正パートタイム労働法が施行されました。その後、働き方改革関連法の成立に伴い、名称および内容を改めたのが、パートタイム・有期雇用労働法です。
パートタイム労働法との違いは、次のとおりです。
|
項目 |
旧パートタイム労働法 |
パートタイム・有期雇用労働法 |
|
対象となる労働者 |
短時間労働者のみ |
短時間労働者・有期雇用労働者 |
|
通常の労働者との比較単位 |
事業所単位 |
企業単位 |
|
待遇差に関する規定 |
均衡待遇の努力義務が中心 |
均衡待遇・均等待遇を義務化 |
雇用期間の定めの有無に関係なく法の対象となった点や、待遇を比較する単位が事業所から企業全体に広がった点が違いがあります。
1-2. パートタイム労働者・有期雇用労働者の定義
パートタイム・有期雇用労働法の対象となる労働者は、次のとおり定義されています。
- 短時間労働者(パートタイム労働者):1週間の所定労働時間が通常の労働者(正社員)より短い労働者
- 有期雇用労働者:事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者
パートやアルバイト、契約社員、嘱託など、職場での呼び方は関係なく、定義に該当する場合は同法の対象となります。
なお、期間の定めがないフルタイムの契約社員(無期雇用フルタイム労働者)は、短時間労働者にも有期雇用労働者にも当てはまらないため、原則としてパートタイム・有期雇用労働法の保護対象ではありません。ただし、改正された同一労働同一賃金ガイドラインでは、無期雇用フルタイムとの契約においても、ガイドラインの趣旨をふまえて均衡を考慮する必要がある旨が明確化されています。
2. 均等待遇と均衡待遇の違い


パートタイム・有期雇用労働法では、待遇差の違法性を均等待遇と均衡待遇を基準に検討します。一見似ている用語ですが、適用する場面と求められる対応が異なるため、違いを正しく理解しましょう。
2-1. 均等待遇
均等待遇とは、正社員と同視できる短時間・有期雇用労働者に対する、待遇の差別的取扱いを禁止するルールです。次の2つがいずれも正社員と同じ労働者に適用されます。
- 職務の内容(業務の内容と責任の程度)
- 雇用関係が終了するまでの全期間における、職務の内容・配置の変更の範囲
業務や責任、転勤や配置転換の範囲が正社員と同じパート社員がいた場合、パートであることを理由に基本給や賞与を正社員よりも低く設定できません。
2-2. 均衡待遇
均衡待遇とは、正社員との間で働き方に違いがある場合に、待遇差も働き方の違いに応じたものにしなければならないとするルールです。
パートタイム・有期雇用労働法では、基本給や賞与などの待遇ごとに、不合理と認められる相違を禁止しています。不合理かどうかは、次の3要素を基準に判断します。
- 職務の内容(業務の内容と責任の程度)
- 職務の内容・配置の変更の範囲
- その他の事情(職務の成果や能力、経験、合理的な労使慣行など)
均等待遇と異なり、待遇差そのものが違法となるわけではない点がポイントです。働き方の違いに見合わない不合理な待遇差が禁止されます。
2-3. 待遇差の合理性の判断基準
待遇差の不合理性は、賃金の総額ではなく、基本給や賞与、手当、福利厚生などの待遇ごとに判断します。判断するうえでは、個々の待遇の性質と、待遇の目的に照らして、考慮すべき要素を検討しなければなりません。
具体的な判断の目安は「同一労働同一賃金ガイドライン」に示されています。主な待遇ごとの考え方は次のとおりです。
|
待遇 |
ガイドラインの考え方 |
|
基本給 |
能力・経験、業績・成果、勤続年数など、基本給の趣旨ごとに、同一なら同一の、違いがあれば違いに応じた支給をおこなう |
|
賞与 |
企業の業績などへの貢献に応じて支給するものは、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給をおこなう |
|
通勤手当 |
通勤に要する費用を補填する趣旨のため、雇用形態にかかわらず同一の支給をおこなう |
|
福利厚生施設 |
給食施設や休憩室、更衣室は、雇用形態にかかわらず利用の機会を与える |
ガイドラインは2026年10月に改正され、判断の目安がより具体化されます。改正内容を確認したうえで、必要に応じて手当を見直しましょう。
3. 【2026年10月施行】パートタイム・有期雇用労働法の改正のポイント


2026年(令和8年)4月28日に、パートタイム・有期雇用労働法の施行規則と関連告示の改正が公布されました。施行・適用は2026年10月1日です。
主な改正内容は、雇入れ時の労働条件明示事項の追加と、同一労働同一賃金ガイドラインの改正の2つです。いずれも実務に直結する改正のため、詳細を確認しましょう。
3-1. 雇入れ時の労働条件明示事項の追加
2026年10月1日以降、雇入れ時・契約更新時の明示事項に「正社員との待遇差の内容・理由などの説明を求めることができる旨」が追加されます。
労働基準法で定められた労働条件通知とは別に、パートタイム・有期雇用労働法では、短時間労働者・有期雇用労働者を雇い入れた際に明示すべき事項が定められています。追加された項目を含めると、明示すべき事項は次の5つです。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
- 待遇差の内容・理由などの説明を求めることができる旨
厚生労働省が公表している改正に対応したモデル労働条件通知書を参考に、自社の労働条件通知書を確認して、施行までに項目を追加しましょう。
3-2. 同一労働同一賃金ガイドラインの改正
同一労働同一賃金ガイドラインも、裁判例をふまえて2026年10月1日から改正されます。主な改正点は次のとおりです。
|
改正点 |
内容 |
|
賞与・退職手当の記載充実 |
労務の対価の後払いや功労報償などの性質・目的が非正規雇用労働者にも当てはまるにもかかわらず、違いに応じた支給をしない場合は不合理となりうる点を明記 |
|
手当・休暇の具体例追加 |
無事故手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇、褒賞などについて、同一の支給・付与が求められる場合の具体例を追加 |
|
「正社員人材確保論」の限定 |
正社員の人材確保・定着の目的だけでは、待遇差が不合理でないとは当然には認められないことを明記 |
|
待遇差解消の方法の明確化 |
正社員の待遇を引き下げるのではなく、非正規雇用労働者の待遇改善によって待遇差を解消すべきことを明確化 |
|
「その他の事情」の明確化 |
職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行などの具体例をガイドラインに記載 |
同一労働同一賃金ガイドラインは実務への影響が多岐にわたるうえに、合理性の判断も難しい分野です。必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談し、短時間労働者・有期雇用労働者の待遇が改正後のガイドラインに照らして問題ないか、施行前に点検しましょう。
待遇差の不合理性が争われた代表的な裁判例が、ハマキョウレックス事件です。最高裁は、待遇差の合理性は賃金の総額ではなく、手当ごとに趣旨や目的に照らして判断が必要であるという考え方を明確にしました。
改正後の同一労働同一賃金ガイドラインでも、ハマキョウレックス事件の判断をふまえて記載が追記・修正されています。待遇差の妥当性を考慮する際は判決の趣旨も考慮して検討しましょう。
関連記事:同一労働同一賃金はいつから適用された?ガイドラインの考え方や対策について
4. パートタイム・有期雇用労働法に定められた企業の義務


パートタイム・有期雇用労働法は、待遇差の禁止のほかにも、企業にさまざまな義務を課しています。雇用管理の実務に関わる主な義務を解説します。
4-1. 労働条件の明示
短時間労働者・有期雇用労働者を雇い入れたときは、次の5つの労働条件を明示しなければなりません。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
- 待遇差の内容・理由などの説明を求めることができる旨(2026年10月以降)
労働条件は、文書の交付などで明示します。労働者が希望した場合は、電子メールやFAXでの明示も可能です。
4-2. 雇入れ時や雇入れ後の説明義務
企業には、短時間労働者・有期雇用労働者に待遇に関して説明する義務があります。説明する項目は、雇入れ時と雇入れ後で異なります。
雇入れ時は労働者の希望の有無に関係なく、雇入れ後は労働者から求めがあった場合に説明が必要です。それぞれの説明事項は次のとおりです。
|
雇入れ時 |
雇入れ後(求めがあった場合) |
|
|
説明を求めたことを理由とした解雇や、不利益な取扱いは禁止されています。
4-3. 相談体制の整備
企業は、短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制を整備しなければなりません。
具体的には、人事部門を相談窓口としたり、担当者を決めて周知したりする必要があります。相談窓口は雇入れ時にも明示する必要があるため、だれがどのように対応するかをあらかじめ決めましょう。
4-4. 教育訓練・福利厚生の取り扱い
正社員に対して、職務の遂行に必要な教育訓練を実施している場合、職務の内容が同じ短時間・有期雇用労働者にも、同じ訓練を実施しなければなりません。
福利厚生は、給食施設・休憩室・更衣室の3つに関して、短時間労働者・有期雇用労働者にも利用の機会を与える必要があります。休憩室の利用を正社員に限り、短時間労働者は利用できないとする取り扱いは法律違反です。
4-5. 通常の労働者への転換の推進
短時間労働者・有期雇用労働者が正社員に転換できるよう、次のいずれかの措置を講じる義務があります。
- 正社員を募集する場合に、募集内容を雇用している短時間労働者・有期雇用労働者に周知する
- 正社員のポストを社内公募する場合、短時間労働者・有期雇用労働者にも応募の機会を与える
- 正社員への転換試験制度など、転換を推進する措置を講じる
2026年10月改正の雇用管理指針では、転換制度の内容や転換実績を労働者に明示し、定期的に公表することが望ましいとする定めが追加されました。
5. パートタイム・有期雇用労働法をふまえた企業に必要な対応


パートタイム・有期雇用労働法をふまえて、企業に必要な対応は多岐にわたります。重要な取り組みとして、待遇差の合理性を確保するための対応の手順とポイントを紹介します。
5-1. 法律の適用対象者を確認する
パートタイム・有期雇用労働法の適用対象となる労働者を確認しましょう。正社員と比べて所定労働時間の短い労働者や、雇用期間に定めのある労働者が対象です。
該当者がいる場合は「短時間・フルタイム」「有期・無期」の区分ごとに人数を把握します。区分を分けておくと、あとで待遇差の合理性を判断する際に役立ちます。雇用形態の名称ではなく、契約内容で判断する点がポイントです。
5-2. 待遇の内容と差異を洗い出す
正社員と短時間労働者・有期雇用労働者それぞれに、どのような待遇が設けられているか整理します。
基本給や賞与のほか、通勤手当や家族手当などの各種手当、休暇、教育訓練、福利厚生など、待遇ごとに内容と差異を洗い出します。
正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の間で有無が異なるだけでなく、金額や要件など、待遇に違いがある点も整理しましょう。就業規則や賃金規程を突き合わせながら進めると、抜け漏れなく洗い出せます。
5-3. 待遇差の理由を明確にする
洗い出した待遇のうち、差が設けられているものを抽出し、差の理由を明確にします。
待遇差がある場合、雇用形態そのものを理由にはできません。次のいずれかに基づいて違いの説明がつくか、待遇ごとに整理しましょう。
- 職務の内容
- 職務の内容・配置の変更の範囲
- その他の事情
理由がうまく説明できない待遇差は、不合理と判断されるリスクが高い項目です。
5-4. 待遇差が「不合理ではない」と説明できる状態にする
不合理でないと説明しきれない待遇差を見直しましょう。待遇ごとに、性質や目的、働き方の違いが対応しているか確認し、不合理でないと説明できるか判断します。
判断の結果、不合理ではない説明が弱い、または説明がつかない待遇差は、待遇そのものを見直す必要があるでしょう。
例えば通勤手当や福利厚生施設の利用など、働き方の違いと関係が弱い待遇は、差を正当化しにくい典型例です。改正後のガイドラインで具体例が追加された家族手当や夏季冬季休暇なども、重点的に確認しましょう。
5-5. 不合理な待遇格差を見直し・改善する
不合理ではないと説明がつかない待遇差を見直します。
例えば賞与の場合、次のような整理がつけば、待遇差が不合理でないと説明しやすくなるでしょう。
正社員:貢献度評価により基本給の0.5~3ヵ月分を支給する。
短時間労働者・有期契約労働者:1ヵ月分を一律支給する。
理由:正社員にはノルマを設けており、貢献度により賞与を決定している。短時間労働者・有期契約労働者は定型の業務に従事するため、一律の賞与としている。
上記の例のように、実態として業務の内容に違いがあれば合理性が認められやすいと考えられます。業務内容に違いがない場合は不合理と判断される可能性が高いため、業務内容を見直すか、賞与の支給方法を見直す必要があるでしょう。
6. パートタイム・有期雇用労働法に違反した場合の罰則


パートタイム・有期雇用労働法に定められた罰則は次の2点です。
- 雇入れ時に労働条件の明示をしない:10万円以下の過料
- 行政の助言・指導・勧告に従わない、または虚偽の報告をおこなう:20万円以下の過料
罰則以外にも、行政指導に従わないと、企業名が公表される場合があります。事業活動や採用活動への影響が大きいため、対象とならないよう適切に対応しましょう。
参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-Gov法令検索
関連記事:パートタイム・有期雇用労働法の罰則は?リスクや対策をわかりやすく解説
7. パートタイム・有期雇用労働法を遵守し雇用環境を改善しよう


パートタイム・有期雇用労働法は、雇用形態を理由とした不合理な待遇差をなくし、だれもが納得して働ける環境を求める法律です。すべての待遇差が禁止されるのではなく、働き方の違いに見合わない不合理な差が禁止されます。
待遇差の合理性は社会情勢や世間相場によっても変わります。法改正だけでなく、裁判例や他社の動向もふまえ、公平で納得感のある雇用管理を進めましょう。



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