源泉徴収簿を作成する必要性やその手順・注意点を解説
更新日: 2024.12.3
公開日: 2021.11.16
OHSUGI
源泉徴収簿は、源泉徴収票と異なり会社内部で使用する書類です。法律として提出の義務はないものの、源泉徴収簿があると従業員ごとに源泉徴収がスムーズに行えます。源泉徴収簿はエクセルや専用のソフトで無料作成が可能です。国税庁からも源泉徴収簿の書式が提供されているため、ぜひ使ってみてください。
本記事では、源泉徴収簿の特徴や作成方法、注意するべき点を見ていきましょう。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式でケース別の具体的な年末調整の対応方法を解説していますので、すぐに使える年末調整のガイドブックが欲しいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 源泉徴収簿とは
源泉徴収簿とは、正確に源泉徴収を行うために必要な帳簿です。給与・賞与などの所得や社会保険などの控除額を記入し、所得税を算出するために使用されています。
会社員はもちろん、アルバイト・パートの場合でも、事業者はそれぞれの給与所得で発生する所得税をあらかじめ差し引き、給料を振込するのが一般的です。これが「源泉徴収」であり、この仕組みがあることで被雇用者は所得税を手間なく納められています。
源泉徴収簿を作成する際は、国税庁より提供されている「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」の書式をダウンロードして使用すると便利です。しかし、源泉徴収簿は法令で定められている帳簿ではないので、国税庁提供の書式でなくても問題はありません。
毎月の源泉徴収税額を正確に記録した給与台帳があれば、それを基に源泉徴収簿が作成できます。
1-1. 源泉徴収簿と源泉徴収票の違い
源泉徴収簿と源泉徴収票が混同してしまうケースはとても多いですが、役割は全くの別物です。
源泉徴収票とは、1年分の給与・賞与・源泉徴収税額などを集計し、従業員に交付する帳票で所得税法では会社が発行する所得税証明書と定められています。会社は従業員に対し、翌年1月末までに、退職者には退職後1ヵ月以内に源泉徴収票を発行する義務があるのです。
一方で源泉徴収簿は源泉徴収票を不備なく発行するための帳簿で、あくまで源泉徴収票の発行や年末調整関係の処理を正確に行うためにあります。源泉徴収簿は従業員・国税庁に提出する義務はありません。
源泉徴収簿と源泉徴収票にはこのような違いがありますが、どちらも年末調整をする際に企業が作成しなければならない書類です。しかし、名前が似ているため、扱いや記載例などの分別が難しいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当サイトでは、企業が作成すべきそれぞれの書類の書き方や提出方法をまとめた資料を無料でお配りしています。源泉徴収簿と源泉徴収票について基礎から解説しているため、年末調整の書類についてわかりやすい解説資料が欲しい方は、こちらからダウンロードしてご活用ください。
2. 源泉徴収簿を作成する必要性
上記でお話ししたように、源泉徴収簿の作成・記録は法的に義務付けられているものではありません。1年間の給与を集計してどれだけの所得税を納付したのかを示す証明書である「源泉徴収票」とは異なり、国税庁や従業員に対して提出する必要性はないのです。
しかし源泉徴収簿がないと、従業員の給与や賞与・源泉徴収税額などが曖昧になってしまい、正確な源泉徴収が行えない恐れがあります。間違った計算をおこなえば、従業員からの信用を失うことにもなりかねないでしょう。
源泉徴収簿は、正確な源泉徴収を行って所得税をきちんと納めるために、必要な帳簿なのです。
また源泉徴収簿は内部書類であるため、税務署などに提出する必要はありません。しかし源泉徴収簿が年末調整の根拠となる場合は、7年間の保存をする決まりがあります。
7年が経過したら、個人情報の取り扱いに注意しながら速やかに処分しましょう。
3. 源泉徴収簿の基本的な作成方法
源泉徴収簿は特に定められている書式はありませんが、多くの会社は国税庁の発行する源泉徴収簿を利用しています。
ここでは国税庁発行の源泉徴収簿の書き方を見ていきましょう。
3-1. 個人情報を記述する
まずは被雇用者の個人情報を記入しましょう。記入欄には所属・職名・住所・氏名・整理番号があります。整理番号には確定申告をした際に税務署が割り当てる番号を記載しましょう。
ただし提出する必要がない書類なので、必ず記入しなければいけないというわけではありません。事業者が利用する場合、税務署の割り当てる番号ではなく社員番号などを記入すると便利です。
3-2. 給与情報・賞与を記入する
次に給与・手当等の欄を記載しましょう。支払った月ごとに記載しますが、各月で2行分の記入欄があるため、給与以外に通勤手当・残業代などを分けて記載が可能です。また賞与の欄には、ボーナス金額などを記入しましょう。その年に支払う予定の賞与がある場合は、その分も記入します。
さらに、月ごとの支給額や賞与に応じた社会保険料等の控除額や社会保険料等控除後の給与等の金額も忘れずに記入してください。
いずれも給与明細で確認できるので、転記するだけでOKです。月ごとの記入・記録を行うため、支払われた給与に対して納めている所得税が月ごとで明確になります。
3-3. 給与所得控除後の給与等の金額を算出
年度末に、給与所得控除後の給与金額の合計を算出し記入してください。年度ごとに計算式が変更されることもあるため、その都度確認が必要です。
年度ごとの計算式は国税庁のホームページで確認してください。
3-4. 扶養親族の情報を参考に控除額を計算する
扶養控除などの申告がある場合は、扶養控除等の申告という欄に申告の有無・控除対象者の種類・人数を記入します。
給与・手当等の欄にも月ごとに扶養親族の数を記入すると、それを基にして算出税額が計算できるのです。
3-5. 保険料控除申告書の情報を記載する
給与から天引きされている社会保険料や被雇用者が任意で加入している保険料も、支払金額が控除対象です。
年末調整で提出されている保険料控除申告書や証明書を確認して記入しましょう。
3-6. 算出所得税額を計算する
ここまでで明確になった控除から、課税給与所得金額を求めて算出所得税額を計算します。所得税は課税所得金額に応じて税率・控除額が異なるため、注意してください。
3-7. 1年分の税額を計算する
源泉徴収簿で算出された税額は、実際に納める金額ではありません。算出所得税額に102.1%を上乗せした金額が正式な税額です。
源泉徴収簿の年調年税額に記入したら、実際の税額がわかるでしょう。
4. 源泉徴収簿作成で注意すること
源泉徴収簿の作成で注意するべき点は以下の3つです。
4-1. 個人情報は慎重に扱う
源泉徴収簿を作成した場合、まず気を付けなくてはいけないのが個人情報の取り扱いです。源泉徴収簿には、多くの個人情報が記載されています。
万が一、外部に個人情報が漏れてしまえば、会社として大きな問題となり責任を負わなくてはなりません。
慎重に扱い、外部に情報漏洩することがないように気を付けてください。
4-2. 記入漏れがないようにする
源泉徴収簿で注意したいのが、記入漏れです。扶養控除の金額・社会保険料控除の金額などが記入漏れになっていると、正しい税金が計算できません。
記入漏れはうっかりミスで起こりやすいため、必ずすべての項目が埋まっているかをチェックしましょう。
4-3. 7年間保存する
源泉徴収簿は、給与所得者の扶養控除等申告書などと一緒に、7年間は保存しましょう。税務署に提出する必要がないとはいえ、税額を計算する際に使った資料として、調査に入ったときには必要になるのです。
また社会保険の調査時にも必要になる場合があります。
5. 源泉徴収簿は正確な源泉徴収を行うために役立つ帳簿
源泉徴収簿は、法律で作成が定められている書類ではありませんが、正確な源泉徴収を行うために役立つ帳簿です。1人1人の従業員の給与計算・源泉徴収などをしなくてはならないとき、源泉徴収簿がないと情報が整理できず、ミスが起こりやすくなります。
ぜひ源泉徴収簿を作成して、スムーズかつ正確な源泉徴収を行いましょう。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
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