賃金台帳に必要な記載事項とは?それぞれの意味を詳しく解説
更新日: 2024.10.16
公開日: 2021.11.12
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賃金台帳は、法律によって作成が義務付けられている書類のひとつです。従業員を雇用している企業は、必要な項目がすべて記載された賃金台帳を作成し、しっかりと管理しなければなりません。
この記事では、賃金台帳に記載すべき事項やその意味、賃金台帳を作成する際の注意点などについて詳しく解説します。違反すると罰則が科せられる可能性もあるため、しっかりとチェックしておきましょう。
▼賃金台帳とは?という方はまずはこちら
賃金台帳とは?基本的な作成方法と知っておきたい法的ルール
「賃金台帳の作成方法や保管期間などがあっているか不安」
「賃金台帳を作成していない場合のリスクを知りたい」
など賃金台帳の取り扱いに関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは、『賃金台帳の作成ガイドブック』を無料で配布しております。記載する際に必要な項目や具体的な記入例をまじえながら、作成手順を詳細に解説しています。
適切な保管期間や賃金台帳の基礎ついても詳しく紹介していますので、「法律に則って適切に帳簿を管理したい」「賃金台帳の基本を確認しておきたい」という担当者の方は、大変参考になる内容となっています。ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
1. 賃金台帳に必要な記載事項とは?
賃金台帳には以下10項目を記載しなければならないことが、労働基準法施行規則(第54条)によって定められています。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 休日労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
- 基本給・手当の種類とその額
- 控除項目とその額
各記載事項について詳しく解説するので、しっかりと確認しておきましょう。
賃金台帳は、企業における法定三帳簿の一つとして位置付けられており、従業員の給与や労働状況を正確に把握するために欠かせない記録です。また、賃金台帳が整備されていない場合、法令違反として罰則が科せられることもあります。企業は労働基準法に従い、従業員一人ひとりの情報を適切に管理し、必要に応じて使用することが求められます。
1-1. 氏名
従業員の氏名を記載します。対象となるのは、日雇いスタッフなども含めたすべての従業員です。記載漏れがないよう注意しましょう。
賃金台帳では、従業員に関する情報を正確に記載することが求められます。この情報は、労働基準法に基づいて作成が義務付けられており、万が一の確認や監査の際にも重要な役割を果たします。適切な管理を行うことで、企業の信頼性向上にもつながります。
1-2. 性別
氏名と一緒に性別も記載します。賃金台帳の書式についての絶対的なルールはありませんが、最上部などにわかりやすく記載するのが一般的です。
また、性別の記載は、賃金計算や社会保険の手続きにおいても重要な情報となりますので、正確に入力することが求められます。従業員一人ひとりの性別を明記することで、将来的な労務管理や人事戦略に役立てることができます。そのため、記入内容には細心の注意を払い、情報の整合性を保つことが大切です。
1-3. 賃金計算期間
賃金計算期間とは、給与計算の対象となる期間を意味します。例えば、毎月25日締めとしている場合は「3月26日〜4月25日」などと記載します。月末締めの場合は「4月1日〜4月30日」などと記載しましょう。
賃金計算期間は、会社の状況に合わせて自由に決めて問題ありません。ただし、毎月同じタイミングで給与を支払う、毎月1回は給与を支払う、といったルールはあるため注意しましょう。
1-4. 労働日数
労働日数の項目には、賃金計算期間のうち、出勤した日数を記載します。休日出勤も含めて実際に出勤した日数を記入しましょう。労働基準法(第35条)により、従業員に対して最低でも毎週1回の休日、または4週間で4回の休日を与えなければならないと規定されています。賃金台帳の作成を通して、過剰な労働が発生していないかチェックすることも重要です。なお、有給休暇も労働したものとみなされるため、労働日数、ならびに労働時間数に忘れずに記載しましょう。記載時は有給休暇であるとわかるようにしておくことが大切です。
また、労働日数の記載にあたっては、雇用契約に基づく所定労働日数との乖離も確認し、必要に応じて調整を行うことが求められます。定期的に賃金台帳を見直し、実態に基づいた正確なには、適切な労務管理を促進し、法令遵守の確保につながります。
1-5. 労働時間数
労働日数だけではなく、労働時間数についても記載しなければなりません。労働時間数の項目には、時間外労働や休日労働の時間も含めた数値を記載します。労働基準監督官が重点的にチェックする項目のひとつであるため、間違いのないように記入しましょう。
また労働基準法(第32条)によると、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて従業員を働かせることはできません。
労働時間が基準をオーバーしている場合は、働き方や人員配置を見直すことも必要です。
1-6. 休日労働時間数・時間外労働時間数・深夜労働時間数
労働時間数のうち、休日・時間外・深夜労働に該当する数値を記入します。これらの項目は労働時間数と同様、適正な労務管理がおこなわれているか、労働基準監督官によって重点的にチェックされます。従業員ごとの時間外労働時間をしっかりと把握し、必要に応じて業務改善を図ることが大切です。
従業員に対して休日労働や時間外労働を命じるためには、36協定を締結して労働基準監督署へ届け出なければなりません。さらに時間数に応じて割増賃金を支払う必要もあるため、間違いのないように記載しましょう。
1-7. 基本給・手当の種類とその額
基本給の項目には、各種手当を含まない金額を記載します。支払った給与の総額ではないため注意しましょう。時間外割増賃金についても記入します。住宅手当、通勤手当、家族手当などについては、種類とそれぞれの金額を記入しましょう。
基本給が最低賃金を下回っていると、労働基準監督官から指摘を受けてしまいます。当然ですが、基本給を設定するときは、最低賃金の額を確認しておかなければなりません。そのほか、賞与や臨時の給与などがある場合はそれぞれ記載し、合計額も記入します。
1-8. 控除項目とその額
控除の項目には、給与から控除されるものを記載しましょう。一般的には、所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などが該当します。会社独自のルールで控除している費用がある場合は、忘れずに記載しましょう。すべての項目を記載したら、基本給や手当の合計から控除額を引いて、実際の給与額を記載します。
関連記事:賃金台帳の書き方やおすすめの書式・注意点から保管期間まで解説
2. 賃金台帳に記載すべき対象者
賃金台帳は、企業が従業員に支払う賃金を記録するための帳簿です。そのため、記載対象者にはさまざまな種類の雇用形態が含まれ、アルバイト、日雇い労働者、管理職など、すべての従業員が対象となりますが、それぞれ注意点もありますので、正しく理解しておきましょう。
2-1. アルバイトも記載対象になる
賃金台帳には、全ての従業員が記載対象となります。これには、パートやアルバイトといった正規・非正規雇用の区別はありません。そのため、もちろんアルバイト従業員も対象となります。
実際にアルバイトのスタッフが存在する場合、その情報を賃金台帳に記入しましょう。
2-2. 日雇い労働者は勤務期間に応じて内容が異なる
日雇い労働者にあたる従業員は、記載内容に一部注意が必要です。賃金台帳の記載対象として、日雇い労働者も賃金台帳への記載が求められます。しかしながら、彼らの勤務が1か月を超えない場合には、賃金計算期間の記載は不要です。
このため、日雇い労働者に関しては、氏名や労働日数などの基本情報に重点を置いて記載することが重要です。正確な労務管理と法令遵守のため、ケースに合わせた正確な記録・労務管理を整備しておきましょう。
2-3. 管理職においては記載項目が通常社員と異なる
管理職に該当する従業員は、労働基準法第41条により、労働時間、休憩、休日の規定が適用されません。そのため、賃金台帳には「労働時間数」「時間外労働」「休日労働」の記載は必要ありません。
ただし、深夜労働に関しては、深夜手当の対象となるため、深夜労働時間数は記載しなければなりません。さらに、働き方改革関連法により、労働時間の状況を把握する義務が強化され、管理職においても「労働時間の状況」を明確に記録する必要があります。このため、賃金台帳を利用し、タイムカードなどの客観的な記録と合わせて労働時間の把握を行うことが推奨されます。
3. 賃金台帳の正しい書き方
賃金台帳の書き方には特定のフォーマットはありませんが、必須記載項目が含まれていれば都合の良い様式で作成できます。ここでは具体的な書き方や書式について説明します。
3-1. 厚生労働省のフォーマット
賃金台帳の正しい書き方として、厚生労働省が提供するフォーマットが推奨されています。このフォーマットは、必要な記載事項が整然と配置されており、法令遵守のための基準に基づいています。厚生労働省が提供する「常時雇用労働者」と「日雇い労働者」向けのテンプレートを参考にし、自社に合った方法で記入すると良いでしょう。これにより、必要な情報が正確に記録され、労務管理が円滑に進むでしょう。
特に、氏名や労働日数、賃金計算期間などの項目が明確に整理されているため、従業員の給与管理が一層スムーズになります。このフォーマットを使用することで、記載漏れや不備を防ぎ、適切な労務管理が実現します。
3-2. 手書きでも問題ない?
賃金台帳は、必須の記載事項が定められているものの、特定の様式は求められていません。そのため、手書きで作成することも許可されています。ただし、現在ではエクセルなどのデジタルツールを使った管理が一般的ですので、これから作成するのであれば、システムでの管理がよいでしょう。データで管理しつつ、必要に応じて印刷して保管しておくことが望ましいとされています。自社の運営方法に応じて、最適な保存方法を選ぶことが重要です。
4. 賃金台帳の記載事項に関する3つの注意点
4-1. 一般的な給与明細では代用できない
賃金台帳は、一般的な給与明細では代用できません。給与明細には、賃金台帳に記載すべき項目が網羅されていないケースが多いからです。基準を満たしていない場合や、賃金台帳をそもそも作成していない場合は、罰則の対象となり、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあるため注意が必要です。賃金台帳の書式はとくに決められていませんが、給与明細などで代用することは避け、専用の書類として作成しましょう。
4-2. 市販の賃金台帳は基準を満たしていない可能性がある
市販の賃金台帳を利用する際にも注意しましょう。市販品は、記載すべき項目が抜けているなど、基準を満たしていない可能性があります。もちろん基準を満たしている市販品もありますが、使う前に記載すべき項目が網羅されているかチェックしておくことが大切です。
賃金台帳の基本的な様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできるため、そのまま利用するか、参考にしながらExcelなどで作成するとミスを避けられるでしょう。
参考:賃金台帳|厚生労働省
4-3. 給与を支払うたびに記入する必要がある
賃金台帳は、給与を支払うたびにその内容を記載し、更新していかなければなりません。毎月1回は給与を支払う必要があるため、基本的には賃金台帳も毎月更新していく必要があります。勤怠管理システムやタイムカードなどの情報を確認しながら正確な情報を記載していきましょう。
当サイトでは「賃金台帳のガイドブック」という資料を無料配布しております。本資料では、賃金台帳の作成方法はもちろん、記載するべき項目を実際の記載例をまじえて解説します。興味のある方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
5. 賃金台帳の記載事項を把握して労務管理を進めよう
賃金台帳は、従業員の労働状況を把握して、働き方を改善することにも役立ちます。賃金台帳の数値をもとに休日出勤や時間外労働を把握し、必要に応じて仕事配分や人材配置を変更することも重要です。
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