退職手続きで会社側はいつまでに何をする?手続き一覧と流れをくわしく解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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退職手続きで会社側はいつまでに何をする?手続き一覧と流れをくわしく解説

オンラインで説明を受ける様子

従業員が退職を申し出てきたら、退職前・退職日・退職後に分けて着実に手続きを進める必要があります。社会保険や雇用保険、税金関係の手続きには期限があるため、対応が遅れると退職者に不利益が生じるおそれがあります。

また、貸与物の回収や業務引き継ぎ、離職票の要否確認、最終給与の精算など、社内で確認すべき事項も少なくありません。

本記事では、退職手続きで会社側がおこなうことを時系列で整理し、期限や実務上の注意点をくわしく解説します。

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1. 退職手続きで会社側がやること一覧

電子書類

退職手続きは、退職前・退職日・退職後の3つの段階に分けると整理しやすくなります。まずは、会社側がやることと期限の全体像を一覧表で押さえておきましょう。

社会保険や税金の手続きは期限が短く、遅れると退職者の生活にも影響しかねません。次の章からは、それぞれの手続きを時系列に沿ってくわしく解説していきます。

時期

会社側がおこなう主な手続き

期限・目安

退職前

退職願の受理、退職日・退職理由の確認

退職の申し出後すみやかに

退職前

競業避止義務・秘密保持義務の確認

退職日まで

退職前

有給休暇の残日数、最終出勤日、社内公表日の調整

退職日まで

退職前

業務引き継ぎ、社内外への連絡範囲の整理

最終出勤日まで

退職前

書類送付先、離職票の要否、(必要なときは)離職票本人確認欄への署名、退職後の連絡方法の確認

退職日まで

退職前

必要に応じ退職面談の実施

最終出勤日まで

退職日

資格確認書、社員証、PC、スマートフォン、制服、名刺などの回収

退職日または最終出勤日

退職日

勤怠、最終給与、退職金、経費、立替金などの確認

退職日から最終給与計算まで

退職後

健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き

事実発生から5日以内

退職後

雇用保険の資格喪失手続き

被保険者でなくなった日の翌日から10日以内

退職後

源泉徴収票の交付

退職後1ヵ月以内

退職後

住民税の特別徴収に関する異動届の提出

退職等があった月の翌月10日まで

退職後

退職証明書の交付

請求があった場合は遅滞なく

2. 退職前に会社側が確認・準備すること

リスクのブロック

退職の申し出を受けてから退職日までの間に、会社側が確認・準備しておくことは意外と多いものです。この章では、退職願の受理と退職理由の確認から、競業避止義務などの確認、有給休暇の調整、業務引き継ぎの整理、書類送付先の確認、退職面談の実施まで、退職前に押さえておきたい6つの準備を順番に解説します。

2-1. 退職願を受理し、退職日と退職理由を確認する

従業員から退職の申し出があったら、まずは退職願を受理し、退職日と退職理由を確認します。口頭のやり取りだけでは認識の食い違いが生じやすいため、書面やワークフローなど記録に残る形で受け取っておきましょう。

退職日の調整では、民法のルールを押さえておくことが重要です。期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条により、従業員は退職を申し出てから2週間が経過すれば退職できます。就業規則で「退職は1ヵ月前までに申し出ること」と定めていても、期間の定めのない雇用契約では、2週間後の退職の申し入れを会社側が一方的に拒むことは難しいでしょう。

民法のルールを踏まえたうえで、実務上は業務引き継ぎや有給休暇の取得、貸与物の返却、社内外への連絡などを考慮し、本人と退職日を調整することが一般的です。

また、退職理由に労務リスクがありそうな場合は、以後の手続きに注意が必要です。例えば、退職勧奨、ハラスメント、長時間労働、体調不良、賃金不払いなどが背景にある場合、事実関係を確認し、以後の手続きを慎重に進める必要があります。

退職理由は離職票の離職区分や失業給付の内容に影響するため、本人の認識と会社の認識がずれていないかも確かめておくと安心です。

関連記事:労働基準法上は退職2週間前通知で大丈夫?スムーズな手続き方法

2-2. 競業避止義務や秘密保持義務の有無を確認する

退職者が営業情報、顧客情報、技術情報などに触れていた場合は、競業避止義務や秘密保持義務の有無を確認します。特に役職者、営業担当者、開発担当者などで、退職後に同業他社へ転職したり、独立されると事業運営や競争力に影響する場合があります。

そのような退職者については、退職時に誓約書を取り交わしておくと、本人の意識付けやトラブルの防止につながります。

ただし、競業避止義務は従業員の職業選択の自由に関わるため、無条件には認められません。制限の目的、対象者、地域、期間、業務範囲、代償措置の有無などを踏まえて、合理的な範囲かどうかが問題になります。内容が広すぎると有効性が争われるおそれがあります。

秘密保持義務についても、何を秘密情報として扱うのかを明確にすることが重要です。単に「会社の情報を漏らさないこと」と書くだけではなく、顧客情報、取引条件、営業資料、技術資料、個人情報、社内システムの情報など、対象を具体化しておくと有効性が高まるでしょう。

関連記事:退職時の誓約書とは?目的や効力・拒否された場合の対処法を解説

2-3. 有給休暇の残日数と最終出勤日を調整する

退職日が決まったら、有給休暇の残日数と最終出勤日を確認します。退職日までに有給休暇の取得希望がある場合、会社側は退職日までの取得を前提に調整する必要があります。

時季変更権は、従業員に別の日に有給休暇を取得してもらうための制度ですが、退職日を過ぎると労働契約が終了し、有給休暇を取得する余地がなくなるためです。そのため、退職日までに引き継ぎ日程と有給休暇の取得予定を早めに調整しておきましょう。

会社によっては、退職情報の公表タイミングもここで決めます。本人、直属上司、人事で、社内公表日、取引先への連絡日、後任者への引き継ぎ開始日を整理しておくとよいでしょう。

退職日までに有給休暇をすべて取得できない場合、例外的に未消化分を買い取る運用が検討されることもあります。ただし、会社があらかじめ買い取りを前提に取得を妨げることはできません。有給休暇の買い取りを検討する際は、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:有給休暇の買い取りは違法?認められる例外と実務対応、トラブル事例を解説

2-4. 業務引き継ぎと社内外への連絡範囲を整理する

退職前には、担当業務、進行中の案件、取引先、社内承認中の事項、保管資料、使用しているシステムなどを棚卸しします。引き継ぎ内容を本人任せにすると、重要な業務が抜け落ちることがあるため、上長や後任者も確認できる引き継ぎチェックリストを作成し、やることを洗い出して進捗を見える化しましょう。

チェックリストには、退職者に案件名、対応状況、次回対応日、関係者、保存場所、未対応リスクなどを記載させます。退職日または最終出勤日に本人と会社双方で確認するとよいでしょう。

社外への連絡範囲も整理が必要です。取引先に退職を知らせるか、後任者をどのタイミングで紹介するか、メールの転送設定や共有フォルダの権限をどうするかを決めておきます。特に営業など顧客接点が多い職種では、退職者個人の連絡先に業務連絡が残らないようにしましょう。

2-5. 退職後の書類送付先と本人希望を確認する

退職後には、源泉徴収票、離職票、健康保険資格喪失証明書、退職証明書などを送付することがあります。退職後は連絡が取りにくくなるケースもあるため、送付先の住所やメールアドレス、電話番号を退職前に確認しておきましょう。

あわせて、離職票の要否も確かめることが大切です。転職先がすでに決まっている場合など、本人が希望しなければ離職票の交付手続きは不要ですが、希望があれば必ず対応する必要があります。さらに、離職証明書には離職理由に対する本人の確認欄(異議あり・なし)があるため、離職理由の認識合わせと本人確認欄への署名も退職前に済ませておくと、発行後の訂正や争いを避けやすくなるでしょう。

また、離職票の離職理由は退職者にとって重要です。会社側が自己都合と考えていても、本人は退職勧奨や労働条件の相違を理由にした退職と認識している場合があります。退職前に離職理由の本人確認をおこない、異議の有無を記録しておくと、後日のトラブル防止につながります。

2-6. 必要に応じ退職面談を実施する

退職面談は、退職理由や職場課題を把握し、今後のエンゲージメント向上や定着率改善に生かすためにおこないます。退職者本人にとって不利益な場にならないよう、面談の目的を「引き止め」や「責任追及」ではなく、職場改善のためのヒアリングであると伝えることが大切です。

率直に答えてもらえるかどうかは、会社の風土や退職者との関係性に左右されますが、なるべく率直に答えてもらうための工夫をしましょう。

  • 直属の上司ではなく、人事担当者が面談する
  • 引き止めや評価の場ではなく、会社をよくするための場だと最初に伝える
  • 回答を強制せず、答えたくない質問は飛ばせるようにする
  • 聞いた内容の共有範囲を明確にし、不利益な取り扱いをしないと約束する

質問項目は、退職理由、入社前後のギャップ、業務量、人間関係、評価制度、給与・待遇、上司とのコミュニケーション、改善してほしい点などに絞ると整理しやすくなります。

また、近年はアルムナイ(退職者のネットワーク)を運営する会社も増えています。再雇用制度や退職後の情報提供について案内をしておくと、退職者と良好な関係を保ちやすく、将来の出戻り入社や人材紹介につながる可能性もあるでしょう。

退職面談において、退職理由は本音と建前が分かれやすいのが実情です。「家庭の事情」「キャリアアップ」といった表向きの理由の裏に、人間関係や評価への不満が隠れているケースは少なくありません。それでも面談を実施する価値は十分にあります。

退職者が本音を語ってくれたとすれば、それは退職者自身に何の得もないなかで、「会社に良くなってほしい」という思いがあるからこそです。ごく個人的でやむを得ない事情であれば致し方ありませんが、退職理由としてよく挙がる項目が出てきた場合は、その声に真摯に向き合うべきでしょう。

一方で、本来は退職という結論に至る前に、組織サーベイや定期的な面談などを通じて兆候を早期に掴み、対処できる仕組みを整えておくことが望ましいといえます。退職面談はあくまで最後の機会であり、そこに頼りきらない体制を構築しましょう。

解説:社会保険労務士 迫 まり恵

3. 退職日に会社側がおこなう手続き

ポイントのブロック

退職日もしくは最終出勤日には、貸与物の回収、最終給与・退職金・未精算金の確認、業務引き継ぎの完了確認という3つの対応をおこないます。本人が出社する最後の機会になることが多いため、当日に慌てないよう準備しておきましょう。

3-1. 資格確認書や社員証などの貸与物を回収する

退職日には、会社が貸与・支給していた物品を回収します。代表的な回収物は、資格確認書、社員証、入館証、PC、スマートフォン、制服、名刺、社用車、鍵、USBメモリ、マニュアル、業務書類などです。資格確認書は社会保険の資格喪失手続きにも関わるため、扶養家族分も含めて回収対象を確認します。

有給休暇の取得などにより、最終出勤日と退職日が異なる場合は、最終出勤日に貸与物の返却を受けることもあります。その場合も、退職日まで回収しないものと、最終出勤日に回収できるものを分けて整理し、回収漏れがないようチェックリストで管理しましょう。

なお、従来の健康保険証は2025年12月2日以降、現在は使用できなくなっています。そのため、健康保険証そのものの回収は基本的には不要です。一方、マイナ保険証を持っていない従業員には「資格確認書」が交付されており、有効期限内の資格確認書は被扶養者分も含めて回収のうえ、資格喪失届に添付して返却しなければなりません。紛失などで回収できない場合は「資格確認書回収不能届」を添付しましょう。

ただし、健康保険組合に加入している場合は組合により取り扱いが異なることがあるため、方針に沿って回収・返却方法を確認することが大切です。

3-2. 最終給与・退職金・未精算金を確認する

退職日には、最終給与について通常と異なる点があれば説明しておきます。例えば月末退職では、最終給与から2ヵ月分の社会保険料を控除するケースがあり、事前の説明がないと本人からの問い合わせやトラブルの原因になりかねません。

また、退職時期によって、未徴収の住民税の扱いが異なります。6月から12月に退職する場合は、最終給与や退職金から一括徴収するか本人の希望を確認します。1月から4月に退職する場合は、原則として残額を一括徴収する扱いになるため、あらかじめ伝えておくことが必要です。

退職金がある場合は、支給額・支給日・支給方法を確認し、「退職所得の受給に関する申告書」を本人から受け取っておくとスムーズです。具体的な税額計算や申告書の記載内容に迷う場合は、税理士や管轄の税務署へ確認すると良いでましょう。

さらに、立替経費の精算、社宅費や貸付金の残額、社内預金の返還など、会社と本人の間に未精算のお金がないかも洗い出しておきましょう。

3-3. 業務引き継ぎの完遂を確認

退職日または最終出勤日には、業務引き継ぎが完了しているかを確認します。引き継ぎ資料の作成だけでなく、後任者が説明を受け資料の保存場所や次におこなう対応を理解しているかまで確認しましょう。

引き継ぎが不十分なまま退職日を迎えると、退職後に本人へ何度も連絡せざるを得なくなったり、取引先対応に支障が出たりする可能性があります。

特に退職者しか把握していない業務がある場合は、上長も内容を確認し、後任者を適切に指導できる状態にしておくことが大切です。万一、後任者が急に不在になった場合でも、業務手順や判断基準、資料の保存場所などをチーム内で確認できるようにしておきましょう。

4. 退職後に会社側がおこなう社会保険の手続き

KEY POINT

退職後は、健康保険・厚生年金保険、雇用保険、離職票、退職証明書などの手続きを進めます。期限が決まっているものが多いため、スケジュール管理が重要です。

4-1. 健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き

従業員が退職したら、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)へ提出します。健康保険組合に加入している会社では、健康保険組合への届出も必要です。資格喪失日は退職日の翌日で、例えば、3月31日退職であれば、資格喪失日は4月1日になります。

提出期限は退職日の翌日から5日以内と短いため注意が必要です。資格確認書が交付されている場合は、届出の際に添付も忘れないでください。

退職する本人には、退職後の健康保険の選択肢も案内しておくと親切です。再就職しない場合の主な選択肢は3つです。

  • 家族の被扶養者になる
  • 国民健康保険に加入する(退職日の翌日から14日以内に本人が手続き)
  • 協会けんぽや健康保険組合の任意継続被保険者になる(退職日の翌日から20日以内に本人が申請)

あわせて、国民年金への切り替え(14日以内)が必要になることも伝えておきましょう。

退職者から国民年金や家族の加入する健康保険の扶養申請のために健康保険資格喪失証明書の提出を求められることがあります。

健康保険資格喪失証明書は保険者が発行する場合と、会社が発行する場合があります。どちらの対応となるかは保険者に確認しておきましょう。

関連記事:健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届とは?提出方法や記入例・書き方を解説

4-2. 雇用保険の資格喪失手続き

雇用保険の被保険者が退職した場合、会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」を管轄のハローワークへ提出します。離職票が必要な従業員には、離職票もあわせて提出します。

提出期限は退職日の翌日から10日以内です。

離職票には、退職理由を確認できる資料が必要です。契約期間満了であれば全期間の労働条件通知書など、「雇用保険事務手続きの手引き」や管轄のハローワークへの問い合わせで対応する添付資料を確認します。

提出が遅れると、退職者が失業給付の手続きを進められない可能性があります。退職者の生活に関わる手続きであるため、退職後すみやかに対応しましょう。

関連記事:雇用保険被保険者資格喪失届とは?必要になるケースや書き方・提出方法を解説!

参考:雇用保険事務手続きの手引き|厚生労働省 ハローワーク

4-3. 離職票が必要なケースと不要なケース

離職票は、退職者が失業給付の手続きをおこなう際に必要となる書類です。転職先が決まっている場合など、本人が離職票を希望しないときは、原則として離職証明書の提出は不要です。

ただし、59歳以上の退職者については、本人が希望するかどうかにかかわらず離職証明書の提出が必要です。また、いったん離職票を不要とされた場合でも、内定取り消しや早期退職などの事情で後から退職者に請求されることがあります。そのため、後日請求された場合でも対応できるようにしておきましょう。

なお、2025年1月20日からは、条件を満たせば退職者がマイナポータルで離職票を直接受け取れるようになりました。本人のマイナンバーがハローワークに登録されていること、本人が離職前にマイナポータルと雇用保険WEBサービスを連携していること、会社が電子申請で離職手続きをおこなうことの3つが条件です。

参考:2025年1月から、「離職票」をマイナポータルで受け取れるようになります!|厚生労働省

4-4. 退職証明書を請求された場合の対応

退職者から退職証明書を請求された場合、会社は遅滞なく交付する必要があります。労働基準法第22条では、労働者が在籍期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由などについて証明書を請求したときは交付しなければならないとされています。

また、退職証明書には、退職者が請求していない事項を記載してはいけません。例えば、退職者が「在籍期間のみ」を希望している場合、退職理由など他の項目まで記載することは避けましょう。

5. 退職後に会社側がおこなう税金・給与関係の手続き

作業する様子

退職後は、社会保険や雇用保険だけでなく、所得税、住民税、退職金、最終給与の精算も必要です。給与計算と労務手続きが連動するため、人事・労務担当者と給与担当者で情報を共有しましょう。

5-1. 源泉徴収票を退職後1ヵ月以内に交付する

退職者には、退職後1ヵ月以内に給与所得の源泉徴収票を交付します。源泉徴収票は、退職者が転職先で年末調整を受ける場合や、自分で確定申告をおこなう場合に必要です。

源泉徴収票には、その年に支払った給与、賞与、社会保険料、源泉徴収税額などを記載します。退職後に最終給与や賞与を支払う場合は、その金額も含めて作成する必要があるため、最終の支払いの確定時期と交付期限をあわせて管理しましょう。

5-2. 住民税の特別徴収に関する異動届を提出する

退職者が住民税を給与から特別徴収されていた場合、会社は「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を市区町村へ提出します。退職などの異動があった月の翌月10日までの提出が求められています。

退職時期によって、未徴収の住民税の扱いが異なります。6月から12月に退職する場合は、本人の希望により普通徴収へ切り替えるか、最終給与や退職金から一括徴収するかを確認します。1月から4月に退職する場合は、原則として残額を一括徴収する扱いになるため、給与計算時に注意が必要です。

住民税の処理を誤ると、退職者に納付書が届かなかったり、退職後に会社へ問い合わせが入ったりすることがあります。退職日、最終給与支給日、未徴収税額、本人希望を確認し、異動届に正しく反映しましょう。

5-3. 退職金がある場合は退職所得の源泉徴収票を確認する

退職金を支給する場合は、給与所得とは別に、退職所得として税務処理をおこないます。退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかを確認し、退職所得の源泉徴収票の作成・交付に必要な情報を整理しておきましょう。具体的な税額計算や申告書の記載判断に迷う場合は、税理士や管轄の税務署へ確認すると安心です。

さらに、令和8年1月1日以後に支払う退職金からは、税務署への源泉徴収票の提出範囲が「役員のみ」から「すべての受給者」に拡大されました。一般の従業員分も提出が必要になっているため、退職金を支払う際の事務フローを見直しておきましょう。

参考:No.7421 「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

5-4. 最終給与で支給・控除の未精算がないことを確認する

最終給与を支払う際には、支給と控除の両面で精算漏れがないかを最終チェックします。確認しておきたい項目は次のとおりです。

  • 残業代や各種手当に漏れがないか
  • 社会保険料の控除月数(月末退職では2ヵ月分控除になるケースあり)が正しいか
  • 住民税の一括徴収額が反映されているか
  • 立替経費の精算や、貸付金・社宅費、社内預金などの精算が済んでいるか

最終給与の処理を誤ると、退職後に本人へ連絡して返金や追加の支払いをお願いすることになり、双方の負担が増えてしまいます。複数担当者でダブルチェックできる体制にしておくと安心です。

6. 会社側が退職手続きを滞りなくおこなうポイント

ポイントのブロック

ここまで見てきたとおり、退職手続きは関係する法律も提出先も多く、部署をまたぐ対応が必要となることもあります。この章では、対応漏れを防ぐポイントとして、労務管理や電子申請システムの活用と、チェックリストの作成という2つの方法を紹介します。

6-1. 労務管理や電子申請システムを活用する

社会保険や雇用保険の退職手続きは、e-Govなどを通じた電子申請が可能です。資本金が1億円を超える法人など特定の法人では、一部の社会保険手続きの電子申請がすでに義務化されており、紙からオンラインへの移行は今後も進んでいくでしょう。

労務管理システムを導入すると、登録済みの従業員情報をもとに資格喪失届などの書類を自動で作成し、そのまま電子申請まで進められます。手書きや転記によるミスを減らせるうえ、手続きの進捗や期限をシステム上で一元管理できるため、担当者の負担軽減と対応漏れの防止につながるはずです。

退職者が重なる時期でも安定して処理できる体制を作るうえで、システムの活用は有効な選択肢といえます。

6-2. チェックリストを作成する

退職手続きをチェックリスト化し、だれが・いつまでに・何をするのかを明確にしておきましょう。

退職手続きには、退職する従業員の上長、人事、労務、給与担当、情報システム担当など複数の担当者が関わることが多いです。明確に分担を決めておかないと、お互いに「やってくれているはず」と思い込み、抜け漏れが起きやすくなるので注意が必要です。

チェックリストには、1章の一覧表のように手続き名・期限に加えて、担当者と確認者、完了日の欄を設けておくと進捗管理しやすくなり、後日問い合わせがあった場合にも対応しやすくなります。

7. 退職手続きで会社側が注意すべきケース

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基本の流れに加えて、イレギュラーな対応が求められるケースもあります。この章では、5つのケースを取り上げます。

7-1. 財形貯蓄制度や従業員貸付制度を利用している場合

財形貯蓄制度を利用している従業員が退職すると、給与天引きによる積み立ては続けられません。本人には、解約するか、転職先に制度があれば移して継続するかを選んでもらいましょう。

転職先で継続するには退職後2年以内の手続きが必要とされているため、早めに案内しておくと親切です。

従業員貸付制度とは、会社からお金を借りることができる制度のことです。 退職者がこの制度を使っていた場合、残債の精算方法を本人と取り決めます。

7-2. 退職代行から連絡があった場合

退職代行サービスから退職の連絡を受けるケースも、近年は珍しくなくなりました。突然の連絡に驚くかもしれませんが、対応のポイントは次のとおりです。

  • 運営元を確認する(弁護士、労働組合、民間業者で対応できる範囲が異なる)
  • 委任状や本人名義の退職願など、本人の退職意思を確認できる書類の提示を求める
  • 退職日や未払い賃金などの「交渉」は、弁護士資格のない民間業者はできないものと認識する
  • 貸与物の返却方法と、離職票など退職後の書類の送付先を文書で取り決める

弁護士資格のない民間業者が報酬を得て会社と交渉することは、弁護士法が禁じる非弁行為にあたります。非弁行為が絡む合意は弁護士法上問題となるおそれがあり、後日の紛争リスクも残るため、条件面の交渉は本人または弁護士とおこなうのが安全です。

なお、本人への直接連絡を控えるよう求められることが多いものの、書類のやり取りなど必要な連絡まで妨げられるわけではないため、郵送や書面を活用して着実に手続きを進めてください。

また、退職代行の背景にハラスメント、長時間労働、未払い賃金などの問題がある場合は、退職理由や本人の主張を記録し、社内調査や専門家への相談も検討しましょう。

関連記事:労働基準法上は退職2週間前通知で大丈夫?スムーズな手続き方法

7-3. 外国人従業員が退職する場合

ハローワークへの外国人雇用状況の届出は、外国人の雇入れ・離職時に対応すべき手続きです。

雇用保険の被保険者である外国人の場合は、雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで、外国人雇用状況の届出をおこなった扱いになります。この場合、離職日の翌日から起算して10日以内に手続きをおこないます。

一方、雇用保険の被保険者でない外国人の場合は、外国人雇用状況届出書をハローワークへ提出します。この場合の届出期限は、離職日の翌月末日までです。在留カードやパスポートなどで、氏名、在留資格、在留期間、在留カード番号を確認し、届出内容に誤りがないよう注意しましょう。

関連記事:外国人従業員の雇用保険手続きは必要?加入条件や手続きの流れを解説

7-4. 退職関連書類の保存期間を管理する

退職手続きが完了した後も、退職関連書類をすぐに廃棄してよいわけではありません。労働基準法などの法律で保存義務が定められています。

また、退職願、雇用契約書、労働条件通知書、退職理由の確認記録、貸与物の返却記録などは、後日の問い合わせや紛争対応で必要になることがあります。書類ごとに保存期間と保存場所を決め、人事・労務担当者が確認できる状態にしておきましょう。

書類の種類

保存期間

主な根拠

労働者名簿、賃金台帳、退職に関する書類

5年(当分の間は3年)

労働基準法

雇用保険の被保険者に関する書類

4年

雇用保険法施行規則

健康保険・厚生年金保険に関する書類

2年

健康保険法施行規則など

扶養控除等申告書などの税務関係書類

7年

所得税法施行規則など

7-5. 退職後、給与を通常の支払日より前に請求された場合

退職者から「最終給与を早く支払ってほしい」と請求された場合、会社は通常の給与支払日を待たずに対応する必要があります。

労働基準法第23条では、労働者が退職した場合に、権利者から請求があったときは7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還することが定められています。金額に争いがある場合でも、会社が異議のない部分は7日以内に支払う必要があります。

給与計算の締日や通常の支払日だけを理由に対応を遅らせると、法令上問題になる可能性があるため注意しましょう。違反した場合は、30万円以下の罰金が科されるおそれもあります。

なお、退職金は、就業規則などであらかじめ支払時期を定めていれば、その時期に支払えば足りると解されています。

8. 退職手続きは期限とやることを整理して対応漏れを防ごう

書類と虫眼鏡

退職手続きで会社側がおこなうことは多く、対応が遅れると退職者が失業給付の受給や健康保険の切り替え手続きを進められなかったり、未払い賃金をめぐってトラブルになるおそれがあります。

退職が決まった時点でチェックリストを作成し、人事、労務、給与、経理、情報システムなど担当者ごとの役割を明確にしておくことが大切です。労務管理システムや電子申請を活用すれば、期限管理や進捗確認もしやすくなります。

退職者との関係を良好に保ち、退職後の問い合わせにも落ち着いて対応できるよう、期限と実務の流れを整理しておきましょう。

退職届を出されたら、何から手をつけるべき? トラブル回避のためのポイント

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