【入社手続きのチェックリスト】従業員が入社する際に会社側が準備すること
更新日: 2025.12.1 公開日: 2020.12.14 (特定社会保険労務士)

新しい従業員を迎える際、会社には多くの準備や手続きが必要になります。準備の内容は多岐にわたるため、担当者が個人の経験や記憶に頼って進めてしまうと、漏れやミスが発生しがちです。
そこで役立つのが「入社手続きチェックリスト」です。入社前と入社後に分けて必要な対応を整理し、スムーズな受け入れを実現しましょう。本記事では、入社手続きチェックリストにあわせて、入社手続きの流れと用意する書類について解説します。
目次
入社手続きは確実に対応する必要がありますが、社会保険の資格取得手続きや雇用契約の締結など対応しなくてはならない項目が多く、漏れや遅れが発生してしまうこともあるのではないでしょうか。
当サイトでは、入社手続きに必要な書類や入社手続き業務のフローをまとめた「入社手続き完全マニュアル」を無料配布しております。
◆この資料でわかること
- 新卒・中途採用で異なる必要書類の整理術
- 社会保険・雇用保険手続きの正確な手順と提出先
- 担当者が押さえておくべき法的な留意点
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1. 会社がやるべき従業員の入社手続きチェックリスト


入社手続きは「内定後」「入社前」「入社後」の3段階に分けて整理すると、漏れなく対応しやすくなります。次のチェックリストを活用して、従業員の受け入れ準備をスムーズに進めましょう。
| No. | 項目 | タイミング | 区分 |
| 1 | 採用通知書(内定通知書)の交付 | 内定後 | 採用・内定手続き |
| 2 | 入社誓約書(入社承諾書)の交付・記載依頼 | ||
| 3 | 入社案内の連絡 | ||
| 4 | 年金手帳 | 内定者に用意をお願いする書類 | |
| 5 | 雇用保険被保険者証 | ||
| 6 | マイナンバーカード または 通知カード | ||
| 7 | 給与振込先の届書 | ||
| 8 | 前職の源泉徴収票 | ||
| 9 | 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | ||
| 10 | 健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届(扶養家族がいる場合) | ||
| 11 | 卒業証書や運転免許証などの証明書(採用に必要な資格がある場合) | ||
| 12 | 在留カード(外国人の場合) | ||
| 13 | 雇用契約書・労働条件通知書の交付 | 入社日まで | 入社前の社内準備 |
| 14 | 貸出物・備品の準備 | ||
| 15 | 社会保険手続き | 入社後 | 入社後に必要な手続き |
| 16 | 雇用保険手続き | ||
| 17 | 税金の手続き | ||
| 18 | 雇入れ時健康診断 | ||
| 19 | 早期適応の支援 | ||
| 20 | 法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)の作成・保存 |
2. 入社手続きに必要な書類


入社手続きでは、会社側が準備すべき書類と、内定者に提出を依頼する書類の双方があります。ここでは、それぞれの書類の目的やポイントを整理して解説します。
2-1. 採用通知書(内定通知書)
採用通知書(内定通知書)は、応募者に対して正式に採用を伝えるための書類です。通知書には次のような内容を記載します。
- 通知書の発行日
- 採用決定のお知らせ
- 入社予定日
- 配属部署・勤務場所
- 賃金・雇用形態・試用期間の有無など
口頭での通知だけでは誤解が生じやすく、トラブルの原因となるおそれがあります。書面または電子データで発行すると良いでしょう。あわせて入社誓約書(入社承諾書)も交付し、提出期限を明確に伝えておくと手続きがよりスムーズに進みます。
2-2. 入社誓約書(入社承諾書)
入社誓約書(入社承諾書)は、内定者が入社の意思を正式に示すとともに、就業規則を遵守し誠実に勤務することを誓約する書類です。
一般的には、秘密保持義務や競業避止義務などの項目も盛り込みます。効力を確保するためには、本人の署名・押印(または電子署名)を得ることが重要です。トラブル防止の観点からは、労働条件通知書や雇用契約書とあわせて入社初日に提出してもらうのが望ましいでしょう。
関連記事:誓約書とは?【人事向け】入社・退職時の書き方と電子化のポイントを解説
2-3. 労働条件通知書
労働条件通知書は、労働基準法第15条により義務付けられている労働条件を明示するための書類です。明示が必要なのは、次の労働条件です。
- 労働契約期間
- 有期契約を更新する場合の基準
- 勤務場所・従事する仕事
- 所定労働時間(始業・終業時刻)・休憩時間
- 残業の有無
- 休日・休暇
- 賃金(決定、計算・支払方法、締日・支給日、昇給)
- 退職・解雇
- 退職手当・賞与
- その他の労働条件
書面または電子交付が可能で、近年はクラウド型システムでの運用も一般的です。また、内容に変更があった場合は、都度再交付ができるよう、管理体制を整えておきましょう。
2-4. 雇用契約書
雇用契約書は、会社と従業員の双方が合意した労働条件を証明する契約文書です。労働条件通知書と内容は似ていますが、労使双方の署名・押印をもって法的な契約が成立する点が異なります。法的義務ではありませんが、トラブル防止やリスク管理の観点から作成しておくことが望まれます。
記載内容は労働条件通知書と重なる部分が多いため、「雇用契約書兼労働条件通知書」として一体で交付する会社もあります。後日の紛争を防ぐため、署名済みの控えは双方で保管し、電子契約サービスを利用する場合は保存期間にも注意しましょう。
関連記事:雇用契約書の製本・捺印(契印)方法とは?手順と電子化のメリットを解説
2-5. 条件によって必要な書類
外国人を雇用する際は、在留カードの写しを提出してもらい、在留資格および就労可能な範囲を必ず確認する必要があります。
在留資格によって認められる職種や就労条件が異なるため、誤って雇用すると不法就労助長罪に問われるおそれがあります。確認した在留カードはコピーを保管し、適切に管理しておきましょう。
また、入社後には「外国人雇用状況届出書」をハローワークへ提出する義務があります。採用段階から在留期間や更新時期を把握し、継続的に管理できる体制を整えておくことが大切です。
関連記事:外国人を雇用する際に必要な書類は?注意点や確認するポイントを解説
2-6. 内定者に用意をお願いする書類
入社時には、会社が受け取る必要のある従業員側の書類もあります。主な書類は次のとおりです。
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- マイナンバーカード または 通知カード
- 給与振込先の届書
- 前職の源泉徴収票
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届(扶養家族がいる場合)
- 卒業証書や運転免許証などの証明書(採用に必要な資格がある場合)
これらの書類は、社会保険や税務の各種手続きに直結する重要なものです。入社日に確実に提出してもらえるよう、内定後の段階で早めに案内・提出依頼をしておくと安心です。
3. 入社前に会社側が準備すること


入社手続きはチェックリストで見るとシンプルですが、実際には多くの確認や準備に時間を要します。
ここでは、従業員が入社する前に会社が準備しておくべき事項を解説します。
3-1. 内定者に入社案内の連絡
まずは内定者へ、入社日や集合時間、持参書類、服装、初日のスケジュールなどを記載した「入社案内」を早めに連絡しましょう。メールや郵送で送付するほか、最近ではオンライン入社ガイドを活用する会社も増えています。
連絡時には、不安を軽減するために担当者の連絡先や問い合わせ窓口も明記しておくことが大切です。また、提出書類の提出期限や入社初日の流れを明確に伝え、入社当日の混乱を防ぎ、スムーズな受け入れにつなげましょう。
3-2. 必要書類の準備と案内
前章で解説したとおり、入社時には、会社と従業員の双方が用意すべき書類が多くあります。
会社側では採用通知書(内定通知書)や入社誓約書(入社承諾書)、労働条件通知書、雇用契約書などの準備が必要です。一方、従業員には、年金手帳や雇用保険被保険者証、マイナンバー、前職の源泉徴収票などの提出を依頼しましょう。
また、資格職の場合は合格証明書や免許証の写し、給与支給のためには給与振込先申請書を求めます。必要に応じて住民票や身元保証書、前職での健康診断結果、各種手当の申請書(通勤手当・住宅手当など)も案内しておくとスムーズです。
3-3. 雇用契約書・労働条件通知書の交付
雇用契約書と労働条件通知書は、入社時に交付すべき重要な書類です。雇用契約書は、法的義務ではありませんが、労使双方の認識を一致させ、トラブルを防ぐために作成が望まれます。
一方、労働条件通知書は、労働基準法第15条により、一部の条件は書面での交付が義務付けられています。労働契約期間や勤務場所、業務内容、賃金の決定・計算・支払い方法など、労働基準法で定められた事項を記載しましょう。
なお、雇用契約書も労働条件通知書も記載する事項が重なるため、「雇用契約書兼労働条件通知書」として一体で交付することも可能です。また、2019年4月以降は、従業員の希望があれば電子メールやクラウド上での交付も可能になりました。署名済みの控えは双方で保管し、電子契約サービスを利用する場合はデータの保存期間にも注意しましょう。
3-4. 貸出物や備品の用意
従業員が入社後すぐに業務を始められるように、貸出物や備品の用意も必要です。
具体的にはデスクや椅子、パソコン、事務用品、制服、社員証、名刺、社内アカウントなどが挙げられます。あわせて「貸与品リスト」を作成し、受け渡し時に双方で確認・署名をおこなうと、後日のトラブル防止につながるでしょう。
また、初日に使用するシステムのログイン情報やマニュアルも事前に準備しておくとスムーズです。
4. 入社後に会社側が実施すること


入社後に会社がおこなうべき手続きは、社会保険や雇用保険、税金など、主に行政への届出に関するものが中心です。届出には期限が定められているため、漏れや遅れがないよう計画的に進めましょう。
ここでは、その他の社内手続きも含め、入社後に会社が実施することを解説します。
4-1. 社会保険の手続き
社会保険には、健康保険(介護保険)と厚生年金保険が含まれます。
週の所定労働時間など一定の要件を満たす従業員が入社した場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を年金事務所に(健康保険組合に加入する会社では健康保険組合にも)提出します。手続きは、従業員の雇用開始日から5日以内におこなう必要があります。
期日を過ぎても手続きは可能ですが、遅延理由書など追加書類の提出を求められる場合もあるため、余裕をもって期限内に対応しましょう。
4-2. 雇用保険の手続き
雇用保険の加入対象となる従業員を採用した場合、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。提出期限は、従業員を雇用した翌月10日までです。期日を守って確実に手続きをおこないましょう。
4-3. 税金の手続き
新しく従業員を雇用した際には、所得税や住民税に関する手続きも必要です。
所得税は、初めて給与を支給する日までに従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、申告内容に基づいて給与計算時に所得税を源泉徴収します。また、年末調整に向けて、前職の源泉徴収票の提出も早めに依頼しておきましょう。
住民税は、会社が給与から天引き(特別徴収)をおこなう場合、「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」または「特別徴収切替届出(依頼)書」を市区町村へ提出します。
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4-4. 雇入れ健康診断の実施
労働安全衛生法では、「雇入れ時健康診断」の実施が会社に義務付けられています。新たに採用した従業員の健康状態を把握し、業務に支障がないか確認するためのものです。
健診項目は、身長・体重や視力・聴力、血圧、尿検査、血液検査、胸部エックス線など、定められた11項目を受診しなければなりません。実施後は、健康診断個人票を作成し、5年間保存する義務があります。
なお、入社前3ヶ月以内に実施された健康診断の結果を会社に提出することで、省略も可能です。
4-5. 早期適応の支援
入社後のフォロー体制も、会社側の重要な役割です。オリエンテーションを実施して会社のルールや理念を共有し、職場に早くなじめるようサポートしましょう。
また、上司や教育担当によるOJT(職場内訓練)や、メンター制度の導入も効果的です。
入社後1か月・3か月といった節目で面談をおこない、不安や課題を早期に把握することで、定着率の向上にもつながります。
「入社手続きが終わったら完了」ではなく、「職場への適応支援」までが入社対応の一環と考えることが大切です。
関連記事:オンボーディング施策とは?ポイントやメリット、プロセスを解説
4-6. 法定三帳簿の作成
労働基準法では、会社に対して「法定三帳簿」の作成と保管を義務付けています。「法定三帳簿」とは、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つです。
- 労働者名簿
各従業員の氏名・住所・性別・業務の種類・入社や退職年月日などを記載しなければなりません。 - 賃金台帳
勤務日数や勤務時間数、残業時間数と合わせて、基本給や手当の種類と額、控除項目と額を記載しなければなりません。雇用形態にかかわらず、すべての巡業員の賃金記録が必要です。 - 出勤簿
法的に定められた必須項目はありませんが、タイムレコーダーの記録や残業命令書、労働時間報告書などが一例として示されています。ただし、近年は労働時間の適正把握が義務となっていますので、クラウドシステムを利用するなどして客観的な勤怠記録を残しておくように準備しましょう。
なお、法定三帳簿の保存期間は、5年間(当分のあいだは3年間)と定められています。
5. 入社手続きに関するよくある質問


入社手続きでは、従業員本人の書類や番号の確認が必要になるため、提出が遅れたり紛失していたりするケースも少なくありません。ここでは、入社時に従業員から問い合わせが頻出する内容と、その際に会社側がどのように対応すべきかを解説します。
5-1. 年金番号がわからない
基礎年金番号は、社会保険の資格取得手続きに必要な情報です。従業員が年金手帳や基礎年金番号通知書を紛失している場合は、本人から年金事務所にて、基礎年金番号の照会をおこなってもらうよう案内しましょう。
なお、現在はマイナンバーから基礎年金番号を照合できる仕組みが導入されており、マイナンバーを会社に提出している場合は、社会保険の手続きで基礎年金番号を記載する必要はありません。
5-2. 雇用保険被保険者証をなくした
雇用保険の資格取得手続きには、雇用保険被保険者番号の記載が必要です。
従業員が雇用保険被保険者証を紛失している場合は、ハローワークへ「雇用保険被保険者証再交付申請書」を提出することで再発行が可能です。
ただし、前職の会社名や勤務期間がわかれば、被保険者番号がなくても手続きを進められる場合があります。そのため、まずは前職情報を確認して手続きを進めるとスムーズです。再交付には数日かかるため、早めの対応を心がけましょう。
5-3. 前職の源泉徴収票をもらえない
前職の源泉徴収票は、年末調整の計算に必要な重要書類です。退職時に前職から交付されていない場合は、本人から前職の会社へ再発行を依頼してもらいましょう。
もし入手が難しい場合は、会社で年末調整をおこなえず、本人に確定申告をしてもらう必要があります。年末調整の時期が迫っている場合は、提出期限を明確に伝え、早めの提出を促すことが大切です。
5-4. 健康保険証が早く欲しい
健康保険の資格取得手続きをおこなってから、実際にマイナ保険証が利用できるようになるまでには、通常1週間ほどかかります。従業員がすぐに医療機関を受診する場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得証明書」を発行することで、保険証の代わりに受診が可能です。
なお、マイナンバーカードを所持していない従業員はマイナ保険証を利用できないため、資格取得手続きの際に「資格確認書」の発行が必要です。この手続きが漏れると発行までに時間を要するため、事前に確認しましょう。
6. 入社手続きをスムーズにおこなって働きやすい環境を整えよう


入社手続きには、多くの書類や対応が必要であり、ひとつひとつを確実に進めることが重要です。会社が手続きを円滑におこなえば、従業員は安心して新しい環境でのスタートを切れます。
従業員数が増えたり、人の出入りが激しかったりする職場では、手続き業務も煩雑になりやすいでしょう。しかし、入社手続きのシステム化によって、ミスの防止や作業効率の工場が期待できます。システム導入のメリットや注意点は、こちらの記事もご覧ください。
関連記事:入社手続きを電子化するメリット・デメリットを徹底解説
入社手続きをスムーズにおこない、すべての従業員が安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。



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