中小企業が残業時間の上限規制について知っておくべきポイントを解説
更新日: 2025.11.21 公開日: 2020.7.13 jinjer Blog 編集部

働き方改革関連法が2019年4月1日に施行されてから、大企業の残業規制はより明確になり、労働に関する捉え方などに変化が見えてきました。
そして2020年4月1日、この法案は大企業だけではなく中小企業にも適用範囲が広がり、原則月45時間・年360時間を超える残業はできなくなりました。特別条項を結んだ場合でも年720時間が上限で、単月100時間未満かつ複数月平均80時間以内という条件が加わります。
そのため、中小企業も大企業と同じように残業に関する考え方や認識を、規制をもとに見直す必要があります。そこで今回は、働き方改革関連法の残業規制に関して、中小企業が知っておくべきポイントについて解説していきます。
関連記事:働き方改革で残業の上限規制はどう変わった?わかりやすく解説!
目次
人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、働き方が多様化したことで管理すべき情報も多く、管理方法と集計にお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな担当者の方には、集計を自動化できる勤怠システムの導入がおすすめです。
◆解決できること
- 打刻漏れや勤務状況をリアルタイムで確認可能、複雑な労働時間の集計を自動化
- 有給休暇の残日数を従業員自身でいつでも確認可能、台帳の管理が不要に
- PCやスマホ・タブレットなど選べる打刻方法で、直行直帰やリモートワークにも対応
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1. 中小企業の残業時間の上限とは?

2020年4月から中小企業に適用される「働き方改革関連法」で何がどのように変化するのか、中小企業の人事担当者は把握しておくことが求められます。
ここでは、残業に関して必ず押さえておきたいポイントについて詳しく解説します。
1-1. 上限規制が中小企業にも適用
もともと、労働時間に関しては「労働基準法」による規制がすでに施行されていました。1日8時間、週40時間を上限とした法定労働時間が定められていることは、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。
また、残業時間に関しても、あらかじめ労使間で労使協定(36協定)を締結することで、月45時間、年360時間を上限に残業をすることが可能になる仕組みがあります。さらに、特別条項付きの36協定を結ぶことで、年間6ヵ月であれば時間の上限なく残業が可能でした。
そのため、長時間労働による過労死などが発生し、社会問題になったのです。「働き方改革関連法案」は、こういった長時間労働を是正するために制定されました。
具体的な変更点は以下のとおりです。
| 項目 | 新36協定 | 旧36協定 | |
| 有効期間 | 最大1年間 | 最大1年間 | |
| 残業時間上限 | 通常 | <通常>
月45時間、年360時間 <1年変形> 月42時間、年320時間 法的拘束力有り |
<通常>
月45時間、年360時間 <1年変形> 月42時間、年320時間 法的拘束力無し |
| 特別条項付き | ・年間6回(6ヵ月まで)
・年間720時間まで ・休日勤務含め、「複数月の平均が80時間以内、単月100時間未満」まで 法的拘束力有り |
・年間6回(6ヵ月)まで
・時間数の上限無し 法定拘束力無し |
|
| 罰則 | 36協定を結ばずに時間外労働をおこなわせた、上限を超えた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金 | 36協定を結ばずに時間外労働をおこなわせた、上限を超えた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金 | |
働き方改革や36協定に関しては把握している方が多いかもしれませんが、残業時間の定義になるとわからないという担当者もいるかもしれません。ここを理解せず残業管理をしてしまうと、気づかないうちに上限を超えてしまう可能性があります。当サイトでは、残業管理のおおもとになる各用語の定義から、本記事の本題である残業時間の上限規制についてまとめた資料を無料で配布しております。残業時間に関して不安な点が少しでもある方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:残業時間に関わる「36協定」について基本をわかりやすく解説
1-2. 残業の割増賃金率が引き上げ
2023年4月からは、大企業のみ適用されていた「月60時間を超える残業の割増賃金率50%」が、中小企業にも適用拡大されました。これにより例えば、月65時間の残業をさせた場合、60時間までは25%、残りの5時間に対しては50%の割増率を乗じた残業手当を支払わなくてはいけません。
適用以前は25%の割増率だったことを考えると、割増率が2倍に上昇したことになります。さらに深夜残業も発生すると75%の割増となり、もとの倍近い賃金の支払いが必要です。
経営を圧迫しかねない大きな負担増加となるため、今後ますます労働時間の適正な管理が求められるでしょう。
1-3. 残業時間上限が規制された背景
従来の残業に関するルールでは、特別条項付き36協定の場合、年6ヵ月であれば残業時間に上限が設けられていませんでした。そのため、改定前の36協定では「特別条項をつけることで無制限に残業させることができる」という認識を持つ企業が増え、長時間残業をなくすことができませんでした。
この現状にメスを入れたのが、働き方改革関連法です。改正された36協定には法的拘束力が生まれ、かつ特別条項付きの残業時間にも上限時間が設けられました。この追加には、従来から問題視されていた「過労死」「超過労働による心身の崩壊」などを抑止することにつながります。
残業時間の上限は当初は大企業のみで、中小企業は猶予期間が設けられていました。しかし、中小企業の従業員に対しても「過労死」「超過労働による心身の崩壊」を抑止するため、2020年4月から残業時間の上限規制がスタートしたのです。
2. 残業時間の上限規制に対し中小企業がおこなうべきこと

法案の範囲拡大にともない、中小企業がおこなわなければならないのは下記の2点です。
- 労働時間の適切な管理
- 労働時間管理体制の見直し
ここでは、これらの点について解説していきます。
2-1. 労働時間の適切な管理
残業時間の規制を守るためには、政府発表の指標と照らし合わせて自社の労働時間管理が適切におこなわれているかどうかを確認するため、「個人の労働時間の把握」を重点的におこないましょう。
「個々の労働時間の把握」に関しては、各部門や個人単位で現状を把握することが重要です。その日の残業している人数や個々の累計残業時間、残業発生が多い部門や時期、個々の仕事量などを統合して、残業が多い原因を探ることから始めると、残業時間抑制に対する策も立てやすくなり、適切な管理をおこなえるようになります。
なお、労働安全衛生法により、労働時間の適正な把握が使用者に義務付けられているため、タイムカードやPCなど客観的な方法によって労働時間を記録する必要があります。
2-2. 労働時間管理体制の見直し
いくら残業時間を抑制しようとしても、具体的にどのような枠組みで管理をすればいいのかを明確にしておかないと、管理する側にも混乱を招いてしまうでしょう。
そのため、労働時間の適切な管理と並行して労働時間管理体制の見直しもおこなう必要があります。例えば、上述した36協定の残業時間上限規制をもとに管理体制を構築したり、業務プロセスの見直しやITツールの導入による生産性向上を図ったりすることで残業を抑制できるようになります。
また、勤怠データを定期的に分析し、長時間労働の傾向や原因を特定して改善策を検討してみるのもいいでしょう。従来の働き方で改善が難しいようであれば、テレワークや時差出勤など柔軟な働き方を取り入れて、残業時間の上限を超えない労働時間管理体制を構築していくことが重要です。
関連記事:残業管理をわかりやすく簡潔にするルール作りのポイント
3. 労働時間を正確に把握する方法


労働時間を正確に把握するには、労働基準法第36条や厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に沿った管理が必要です。このガイドラインでは、自己申告制のみでの把握は原則不可とされ、客観的記録による管理が求められています。
具体的な管理方法としては、タイムカードやICカード、PCログオン・ログオフ記録などが挙げられますが、より正確に把握するには勤怠管理システムが有効です。勤怠管理システムは、打刻データの自動集計やアラート機能により、残業時間の上限規制超過を早期に検知できます。
さらに、出張やテレワークなど多様な働き方にも対応していたり、位置情報による打刻や不正防止機能を備えた機能が搭載されている製品もあります。正確な労働時間把握は、残業規制の遵守、割増賃金の適正支払い、労務トラブル防止にも関わってくるのでシステムの導入を検討するのがおすすめです。
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
4. 勤怠管理システムを導入するメリット


従業員の労働時間を把握するには、タイムカードだけではなくパソコンの使用時間や起動時間、ログアウト時間なども含めるようにし、不正や隠ぺいが無いようにするのが得策です。
勤怠管理システムであれば、不正、隠ぺいの防止だけでなく、従業員がどれだけ残業しているかを自動で集計してくれます。従業員の残業時間をリアルタイムで把握できるため、残業時間の上限超過を防ぐ管理が可能ですが、他にもメリットがあります。
- 従業員の打刻漏れを一括で確認できる
- 有給休暇の管理ができる
- スマートフォンやタブレットで打刻ができる
ここでは、これらのメリットについて解説していきます。
4-1. 従業員の打刻漏れを一括で確認できる
従来の紙やエクセル管理では、個別に勤務表を照合しなければならず確認作業が煩雑でしたが、システム化により確認作業の負担を大幅に軽減できます。勤怠管理システムは、全従業員の打刻状況を一覧で表示し、打刻漏れや未承認申請を一括確認できます。
一括確認できると、労働時間記録の欠落や不正修正を防いだり、正確な勤怠データを保持したりすることが可能です。
また、システムによっては打刻漏れがあれば自動で通知する機能が搭載されているので、管理者は迅速に是正できます。打刻漏れが放置されると残業時間の集計誤差や賃金計算のミスにつながり、労務トラブルの原因となります。
勤怠管理システムはトラブルのリスクを低減するのはもちろん、労働時間の記録精度を向上させ、時間外労働の集計や法定労働時間遵守のための判断も正確におこなえるようになります。
4-2. 有給休暇の管理ができる
労働基準法第39条により、使用者は年に10日以上の有給休暇が付与されている従業員に対し、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられています。そのため、担当者は従業員の有給休暇取得状況を正確に把握していなければなりません。
勤怠管理システムは、有給休暇の付与日数や残日数、取得状況を自動で集計することができるので、未取得者を簡単に把握することができます。従業員の数によっては、有給休暇取得状況の管理はかなり負担になりますが、システムを導入すれば法定取得義務の未達成による罰則や行政指導を回避することができるのです。
また、システム上で有給休暇取得の申請・承認が完結するため、紙の申請書紛失や確認遅延のリスクもなくなります。繁忙期の計画的取得や時季変更権の行使もスムーズにおこなえるだけでえなく、休暇管理の効率化と法令遵守を同時におこなえるのは大きなメリットといえるでしょう。
4-3. スマートフォンやタブレットで打刻ができる
勤怠管理システムであれば、スマートフォンやタブレットでの打刻も可能です。そのため、外出することが多い営業職や建設業、物流業の勤怠管理もより正確におこなえるようになります。
さらに、勤怠管理システムを位置情報と連動させれば、不正打刻防止と勤務場所の記録が同時におこなえますし、直行直帰や出張時もリアルタイムで勤怠記録が反映されるため、申請や修正の手間を軽減することも可能です。
従来の打刻機やパソコン専用打刻では、出社しないと記録できない制約がありましたが、モバイル打刻は移動中や現場先からでも記録可能です。さらに、通信環境のない場所でもオフライン打刻機能を利用できるシステムもあるので、多様な勤務形態や業務現場に柔軟に対応できます。
外出先で打刻ができれば、打刻のためにわざわざオフィスに戻る必要もなくなるので、従業員の負担を軽減できるというメリットも得られます。
関連記事:中小企業向け勤怠管理システム|導入前の課題、導入後の効果とは
5. 残業時間の上限に関する見直しを今から始めよう!


中小企業に対する残業時間の上限制限は、法改正により厳格に適用されています。違反が発覚すると、是正勧告や罰則の対象となるため、早急な対応が必要です。
まずは自社の労働時間実態を把握し、36協定の内容が法令基準を満たしているか確認した上で、勤怠管理システムの導入や運用改善により、残業時間の集計精度と管理体制を強化するのがおすすめです。
また、繁忙期の労務計画や業務分担の見直しも同時に進めていけば、長時間労働防止にもつながります。法令遵守は、企業の信頼性を向上させるだけでなく、従業員の健康保持にも役立つので、残業時間の上限を把握して持続可能な労働環境を実現していきましょう。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!



人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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