電子署名を片方の会社だけ導入している場合の対処法とは?
更新日: 2023.1.20
公開日: 2021.11.21
HORIUCHI
契約の際、電子署名を用いた電子契約サービスを導入する企業も増えていますが、取引先によっては従来の書面での契約を希望する企業もいることでしょう。
取引先から電子契約を受け入れてもらうためには、電子契約が紙の契約書同等の法的効力を持つこと、電子契約にはコスト削減や時間短縮といったメリットがあることを丁寧に説明する必要があります。
今回は、電子契約での取引の際、相手方が電子契約サービスを導入していない場合や、双方の使用する電子契約サービスが異なる場合の対処法について解説します。
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目次
1.そもそも契約は書面でなくても成立する
ビジネスで取引をする際、契約書を交わすことは重要な業務です。しかし、日本の法律では、法で定められた一部の契約を除き、契約締結に書面の交付は必要ありません。[注1]契約は意思表示と合致と口頭の取り交わし(申込)で成立します。これを諾成契約といいます。
たとえば、友人間で金銭の貸し借りがあった場合、「貸す」「返す」という口約束をしていれば、契約書にサインをしていなくても、でその契約は成立するということです。
契約に書面の作成・交付が重要事項となっている理由は、申込みと意思表示の合致だけでは契約内容の証拠が残らないため、契約不履行などのトラブルがあった際に不利になることがあるからです。
[注1]e-Gov法令検索民法五百二十二条「契約の成立と方式」
関連記事:電子署名とは?仕組みや法律、クラウド型サービスなどをわかりやすく解説!
2.取引先から電子契約への理解を得るには?
2021年9月にデジタル改革関連法が施行されたことで、従来の書面での契約から電子契約に移行する流れがますます進んでいます。多くの企業が契約書の電子化を導入していますが、電子契約を不安視する企業が根強く残っているのも現状です。
取引先によっては電子契約を拒否し、書面で契約書を交わすことを求められるケースもあるでしょう。
取引先から電子契約への理解を得るためには、次の2つのポイントが大切です。
2-1.電子契約が法的効力を持っていることへの理解
まずは電子契約が書面契約と同等の法的効力を持つことを説明し、理解してもらいましょう。
電子契約は、電子データに電子署名とタイムスタンプを付与することで、署名・押印した書面の契約書同等の法的効力が発生します。
電子署名は、なりすましでないこと、データに改ざんがないことを証明するもので、電子署名法第3条により、法的効力を持つものとされています。電子署名の正当性は、認証局という機関が発行した「電子証明書」が付与されることで証明されます。電子証明書は公開鍵暗号基盤という暗号技術を使った、インターネット上における身分証明書のようなものです。
電子契約には、電子署名のほか、正確な時刻を証明するためのタイムスタンプが刻印されます。第三者(時刻認証局)がタイムスタンプを付与することで、タイムスタンプの時刻に電子データの存在していること、内容が改ざんされていないことを証明します。
2-2.電子契約のメリットへの理解
電子契約に法的効力があることを理解してもらったあとは、電子契約を導入することで得られるメリットについて詳しく説明しましょう。
電子契約の利用で得られる主なメリットには、次の3つがあります。
● 署名や押印のための対面・郵送の手間がかからない
● 契約締結までにかかる時間を短縮できる
● 印紙代を負担しなくてよい
書面で契約を交わす場合、署名・押印をもらうために直接対面したり、書類を郵送してやりとりしなければならないため、どうしても手間と時間がかかってしまいます。
電子契約であれば、契約書の確認から電子署名、契約締結と、全てオンラインで完結するため、相手方に余計な手間をかけず、契約手続きがスピーディーに完了します。
また、電子契約は印紙代が非課税となるため、書面の契約書で負担しなければならなかった印紙代分の費用を削減できるというメリットもあります。
当サイトでは、本章で解説した電子契約のメリットに加え、電子契約の法的根拠についても、図を用いながら解説した資料を無料で配布しております。取引先に電子契約について説明する際の資料としても活用できますので、電子契約の概要について確認したい方はこちらから「電子契約の始め方ガイドブック 」をダウンロードしてご確認ください。
3.電子契約の導入に消極的な取引先への対応方法
電子契約の法的効力やメリットを説明しても、「電子契約についての判例がない」などの理由で、取引先が導入に消極的なケースもあるでしょう。そのような場合は、次の2つの対応策を提案してみましょう。
3-1.取引先が保管する原本を紙で、自社で保管する原本を電子で締結する
紙の契約書を1通だけ作成して署名・押印し、取引先が保管する分の原本として渡す方法です。自社が保管する分の原本は、書面と同じ契約書を電子データで送信し、電子契約で同意してもらいます。
この方法であれば、取引先の要望に応えながら、自社保管分の原本は電子契約で締結できます。
3-2.押印後の書面の原本は相手先に、自社はコピーをPDF化して保管する
紙の契約書と電子契約用の電子データを、それぞれ作成する手間を省くための方法です。原本となる紙の契約書を1通作成し、自社と取引先が合意のうえ押印したあと、現本は相手方に、自社は原本のコピーをPDF化し、電子データとして保管する方法です。
自社に原本が残らないため多少のリスクは生じますが、いざというときには相手方に契約書の原本を提出してもらえば問題ありません。
・電子契約の活用に伴う電子署名の管理規程の制定
・印章管理規程とは別で電子署名専門の管理規定の制定
・電子署名の制定、改廃、署名や管理に関する事項の管理 など
※電子帳簿保存法における適正事務処理要件の規程作成用のテンプレートではありません。 ⇛無料で資料をダウンロードして読んでみる
4.取引先が異なる電子契約サービスを使用している場合
取引先が既に自社と異なる電子契約サービスを利用している場合は、相手と相談のもと、次のような対策案で折り合いをつける必要があります。
4-1.どちらか一方の電子契約サービスを使用する
最もスタンダードな対策案としては、自社と取引先、どちらか一方の電子契約サービスを選択する方法です。どちらの電子契約サービスを選ぶかはお互いの関係によって変わってきます。
いずれにせよ、慣れ親しんだシステムと異なるサービスを採用するとなると、締結権限者のITリテラシーによっては抵抗を覚えたり、混乱を招く可能性もあることを理解しておきましょう。
また契約書を電子契約サービス内で管理していた場合は、管理台帳を別に作成したり、電子契約サービスのオプションを採用するなど、サービス変更に伴う別の業務が発生します。
4-2.それぞれが使用しているサービスで電子署名後、PDFを交換する
双方で現在使用している電子契約サービスをどうしても継続したい場合は、自社と取引先それぞれが使用している電子契約サービスでPDFで電子署名し、そのPDFを交換して保管する方法です。
自社の原本と相手方のPDF両方を管理・保管しなければなりませんが、1の案のように、慣れない電子契約サービスを使用する必要はなくなります。
4-3.どちらかの署名済みPDFへ電子署名をする
3つめは、自社か取引先、どちらかが使用する電子契約サービスでPDFで電子署名したのち、PDFをもう一方の当事者に送付し、送られてきたPDFにもう一方が自社で使用している電子契約サービスで電子署名を付与する、という方法です。
この方法であれば、1つ目と2つ目の選択肢にあるデメリットを解消することができます。ただし、使用している電子契約サービスによっては、最初の電子署名が確認できなくなるケースもあります。実行する前に、各電子契約事業者に確認をした方がよいでしょう。
5.電子契約サービスを使用する際は双方が納得いく対策を立てることが大切
電子契約サービスはインターネット上で契約を完了できる便利なシステムですが、日本ではまだ電子契約を導入していない企業や、導入を不安視する企業も存在します。取引先が電子契約サービスの使用を拒否する場合は、まず電子契約の法的効果やメリットを説明し、相手方の不安を取り除くことが大切です。
説明をしても電子契約に消極的な場合は、相手の要望になるべく応えつつ、電子契約サービスを上手く使用する対策を立てましょう。
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