雇用契約を締結する際に押さえておくべき6つのチェックポイント
新しく従業員を雇う場合、労働契約として労働者と使用者の間で合意の上、雇用契約書を締結するのが一般的です。この雇用契約書は労働基準法に則った内容でないと、労使間のトラブルになりやすく裁判に発展するケースもあります。
本記事では雇用契約書を締結する際に押さえておくべき6つのチェックポイントと、トラブルになりやすいポイントについて解説します。
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従業員を雇い入れる際は、雇用(労働)契約を締結し、労働条件通知書を交付する必要がありますが、法規定に沿って正しく進めなくてはなりません。
当サイトでは、雇用契約の手順や労働条件通知書に必要な項目などをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しておりますので、「雇用契約のルールをいつでも確認できるようにしたい」「適切に雇用契約の対応を進めたい」という方は、是非こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
2024年4月に改正された「労働条件明示ルール」についても解説しており、変更点を確認したい方にもおすすめです。
1. 雇用契約を締結する意義
雇用契約は労働者を守る契約で、労働の対価に雇用主から金銭を受け取る約束を双方がするものです。給与内容や労働時間、就業場所、昇給や退職に関連する労働条件など、労働と賃金に関連する内容が中心の契約になります。
こうした雇用契約を締結する意義は、労働のルールを定めることで労働者と雇用主の双方を守ることにあります。雇用主の一方的な都合で労働者に不利益を与えたり、反対に労働者が雇用主に従わずに業務が停止したりする問題を防ぐことが可能です。
なお、雇用契約の締結は雇用契約書や労働条件通知書などによっておこないます。
2. 雇用契約を締結する際の6つのポイント
雇用契約の締結は、口約束のような軽いものではありません。雇用契約書の作成は義務ではないものの、労働基準法施行規則第5条によって書面による交付が義務とされている項目もあります。
雇用契約を締結する際に留意したいチェックポイントを6つ見ていきましょう。
2-1. 労働契約の期間
まず非常に重要なポイントは、労働契約の期間です。
有期雇用か無期雇用かという点が重要ですが、期間に関連する規定がある場合は必ず知らせなければいけません。
とくに有期雇用の場合は細かく条件を記載する必要があります。どのような条件で更新や契約の打ち切りが判断されるのか、その通知はどのようにされるのかなど、必要事項を網羅するようにしましょう。
2-2. 就業の場所と業務内容
実際に労働者が働く場所と、どのような業務に従事するかを記載します。
募集要項や面接時と業務内容が異なる場合は、トラブルに発展することがあります。実際に業務を始めたら想定よりも幅広い仕事があったり、一時的な転属があったりするケースも多々ありますが、そのような可能性がある場合は事前に説明し、理解を得ておくことが重要です。
2-3. 就業時間、時間外労働、休憩時間、休日
雇用契約には始業・終業時間だけでなく、時間外労働の有無や休憩時間についても書いておかなければなりません。3交代などの交代制の業務の場合には転換に関する事項も必須です。
とくに時間外労働や休日出勤、休憩時間の取り扱いは労使間で勘違いが発生しやすい部分です。明確でわかりやすい表記を心掛け、特殊な形態を採用している場合は十分に説明をおこないましょう。
2-4. 賃金
労働者にとって賃金は非常に重要なポイントです。賃金の計算方法や決定方法、支払い方法など関連する項目は網羅するようにしましょう。
賃金の締め日、支払いの時期についてもはっきり労働者に知らせなければなりません。
2-5. 退職
雇用契約を締結する際には、退職についても従業員に知らせる必要があります。退職金が支払われる範囲や計算・支払い方法に加え、解雇に至る事由や条件なども提示します。
2-6. 口頭による明示が可能なポイント
賃金や労働条件は書面による交付が労働基準法によって義務付けられていますが、それとは別に口頭による明示がおこなえる項目もあります。
書面にする必要はないものの、以下のようなお金にかかわる事柄は、労働者に対して明示しなければなりません。
- 昇給
- 退職手当
- 賞与
- 臨時に支払われる賃金
さらに、以下の項目についても口頭で知らせるべきでしょう。
- 安全・衛生に関する事柄
- 職業訓練
- 災害補償
- 疾病扶助
2024年4月からの変更点
2024年4月からは労働条件明示のルールが4つ追加されます。
- 就業場所・業務変更の範囲
- 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
- 無期転換申込機会
- 無期転換後の労働条件
このうち1はすべての労働契約締結時と、有期労働契約の更新時に明示しなければいけません。2は有期労働の締結時と更新時、3~4は無期転換申込権が発生する契約の更新時に明示が必要です。
記載すべき事項を押さえたところで、実際に労働条件通知書(兼雇用契約書)のサンプルがほしいという方向けに、当サイトでは社労士が監修した労働条件通知書のフォーマットを配布しています。
令和6年に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットで、雇用契約書として兼用することもできる雛形です。「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
3. 雇用契約の締結後にトラブルになりやすいこと3選
雇用契約を締結する場合には、締結後のトラブルをできるだけ避ける必要があります。雇用契約では以下3点がトラブルになりやすいため注意しましょう。
3-1. 時間外労働の時間
雇用契約で大きなトラブルになりやすいのが時間外労働です。求人や面接では残業がないとされていたのに、実際に働き始めると時間外労働があると労働者は不満を抱えます。
さらに固定残業代を導入している企業は注意が必要です。
たとえば残業手当を含む30万円を月給にするという記載がある場合、30万円のうちのいくらが残業代に該当するのか労働者には理解できません。
労使トラブルの原因になるため、給与内の固定残業代の金額についてしっかり明示するよう心がけましょう。
3-2. 契約更新の有無
正社員ではなく、契約社員をはじめとした有期雇用社員との間で起こりがちなのが更新に関連する問題です。
雇用契約では契約期間を明示しなければなりませんが、契約更新の判断基準が不明瞭な雇用契約書を作成してしまう企業もあります。このようなケースでは契約を打ち切ることになった場合などに大きなトラブルになる可能性があります。
労働者も契約更新の基準が明確でなければ不安になることでしょう。そのため、出勤率や勤務態度、ミスやクレームの回数など、誰もが納得できる契約更新の基準を明示しトラブルを未然に防ぎましょう。
また、有期雇用と無期雇用の社員の間で不合理な労働条件の違いが生じることは、改正労働契約法によって禁止されています。非正規社員と雇用契約を結んでいる場合、契約更新以外にも気をつけるべき内容があります。
3-3. 有給休暇の取得
毎週与えられる休日については雇用契約書に記載されているものの、有給休暇については明示されていないケースもあります。労働基準法により、労働者は雇用形態にかかわらず有給休暇を取得することができます。
具体的には勤務期間が6ヵ月以上で、定められた労働日の8割以上出勤していることが条件です。
当サイトでは、雇用契約書の作成方法や雇用契約の結び方、「無期雇用の従業員でも毎年契約を結ぶ必要があるの?」などといったよくある疑問をまとめた資料を無料で配布しております。この1冊で雇用契約に関して網羅的に学べる「雇用契約マニュアル」のような資料であるため、雇用契約業務に不安な点があるご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
4. 雇用契約を締結して労使ともに安心して働ける環境を維持しよう
雇用契約では雇用主が労働者に文書や口頭で明示しなければならないチェックポイントがいくつもあります。複雑に思えますが、雇用契約は雇用主も労働者も安心して仕事をしていくうえで非常に重要なものです。
また、雇用契約の際に必須である労働条件通知書は、電子化が可能です。新入社員が多い、従業員の出入りが激しいなどで手続きに手間を感じている方は、システム化を進めることでスムーズに作成・交付を行うことができます。
ぜひ相手の身になって雇用契約を考え、労使ともにトラブルなく働けるような契約を締結しましょう。
関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
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