外国人雇用契約書とは?必要な理由や記載すべき内容を解説
更新日: 2025.6.9
公開日: 2025.6.9
jinjer Blog 編集部
「外国人を採用する際、どのような契約書が必要なのか分からない」
「ビザ申請に必要な書類は何を用意すればいい?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
外国人労働者を雇用する際には、双方のトラブルを防ぐために「外国人雇用契約書」の作成が欠かせません。とくに、在留資格の取得を前提とした雇用では、契約書の内容がそのままビザ審査資料として利用されることも多いです。
本記事では、外国人雇用契約書の基本的な役割や記載項目、作成手順、注意点についてわかりやすく解説します。
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
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1. 外国人雇用契約書とは
外国人雇用契約書とは、企業が外国人労働者を採用する際に取り交わす正式な契約書です。雇用条件を明確にし、両者の合意を証明するための重要な書類となります。
特に就労ビザが必要な外国人の場合、外国人雇用契約書は在留資格の審査資料としても使われることがあるため、正確な記載が必要です。
2. 外国人雇用契約書の作成が必要な理由
外国人雇用契約書の作成が必要な理由は以下のとおりです。
- 口約束による誤解やトラブルを防ぐため
- 労働条件を正確に理解してもらうため
- 就労ビザの申請に必要となるため
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
2-1. 口約束による誤解やトラブルを防ぐため
外国人との雇用契約は、必ず書面で交わすようにしましょう。言語や文化の違いによって、意思疎通にズレが生じる可能性があるためです。
例えば、相づちを打っていても内容を十分に理解しておらず、「そのような条件は聞いていない」と後から主張される可能性もあります。
また、国によっては、契約内容が書面に記載されていないと無効とされる文化もあるため注意が必要です。
日本では口頭契約でも法的には有効とされますが、証拠が残らないため、万が一のトラブル時に不利になるおそれがあります。
2-2. 労働条件を正確に理解してもらうため
外国人を雇用する際は、労働条件を正確に理解してもらう必要があります。契約内容の誤解が原因で、勤務後にトラブルへ発展するおそれがあるためです。
例えば、勤務時間や休日、残業の有無、給与の支払日などは、日本人にとっては当たり前とされる情報です。しかし、文化や制度の違いにより、外国人には伝わりにくい場合があります。
トラブルを避けるためにも、雇用契約書には詳細な内容を正確に記載しましょう。可能であれば英語や母国語など、相手が理解できる言語で併記するのが理想です。
2-3. 就労ビザの申請に必要となるため
就労ビザの申請にあたっては、在留資格の種類によって雇用契約書が必要になる場合があります。
入国管理局がビザの審査をおこなう際に、雇用契約書をもとに勤務条件や仕事内容を確認するためです。
例えば「特定技能」など一部の在留資格では、契約書の提出が義務づけられており、契約内容に不備があればビザが発給されないケースもあるため注意が必要です。
3. 外国人雇用契約書に必ず記載すべき項目
外国人雇用契約書には、日本人と同様の基本情報(労働期間、勤務内容、賃金、就業規則など)に加えて、在留資格に関する条項も必ず盛り込む必要があります。
項目名 | 記載内容 |
---|---|
労働契約の期間 | 契約の開始日と終了日 |
就労場所・業務内容 | 具体的な勤務地と職務内容 |
労働時間・休日 | 始業終業、休憩、休日 |
賃金・支払方法 | 基本給、手当、締日、支払日など |
退職・解雇条件 | 退職申出期限、解雇事由・予告期間 |
就業規則 | 賞与、昇給、懲戒、休暇などの社内ルール(就業規則の条文に基づく) |
在留資格取得条項 | 「取得できなければ契約無効」または「在留資格取得をもって契約が有効となる」と明記 |
とくに「在留資格が取得できなかった場合は契約が無効となる」旨を明記しておくことが大切です。ビザが下りなかった場合の法的トラブルや不法就労を防ぎ、雇用者側のリスクを最小限に抑えられます。
4. 外国人雇用契約書の作成から交付までの流れ
外国人雇用契約書の作成から交付までの流れは以下のとおりです。
手順 | 内容 |
---|---|
1.労働条件通知書の作成 | 雇用契約書のもとになる労働条件通知書を作成する |
2.雇用契約書の原案作成 | 通知書をベースに署名欄や在留資格に関する条項などを追加し、契約書を作成する |
3.契約内容の確認・説明 | 被雇用者に理解できる言語で内容を丁寧に説明・確認する |
4.最終版の作成 | 内容確認・調整後に、正式な契約書を2通作成する |
5.署名・押印および交付 | 双方が署名・押印し、それぞれが1通ずつ保管する |
各ステップを丁寧に進めることで、言語や文化の違いによる誤解を防ぎ、契約内容の理解不足によるトラブルを未然に防げます。
5. 外国人雇用契約書のサンプル
外国人雇用契約書は厚生労働省および出入国在留管理庁からテンプレートが提供されています。
- 厚生労働省の多言語モデル労働条件通知書
- 出入国在留管理庁の特定技能雇用契約書
- 一般的な外国人雇用契約書のサンプル
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
5-1. 厚生労働省の多言語モデル労働条件通知書
厚生労働省は、外国人労働者向けに多言語の労働条件通知書を提供しています。
上記はあくまで「労働条件通知書」ですが、記載内容は雇用契約書とほぼ同じ項目を含んでいるため、ベースとして雇用契約書に転用することも可能です。
署名欄や在留資格に関する文言を加えれば、外国人との正式な雇用契約書として活用できます。
5-2. 出入国在留管理庁の特定技能雇用契約書
特定技能の在留資格で外国人を雇用する場合、出入国在留管理庁が提供する「特定技能雇用契約書」および「雇用条件書」のサンプルを活用するのが一般的です。
書類名 | WORD形式 | PDF形式 |
---|---|---|
特定技能雇用契約書 | ダウンロード | ダウンロード |
雇用条件書 | ダウンロード | ダウンロード |
これらの書類は、在留資格の申請時に提出が求められる公式書類です。
記載内容に不備があると在留許可が下りない可能性があるため、企業側が責任を持って、必要事項を正確かつ漏れなく記載する必要があります。
5-3. 一般的な外国人雇用契約書のサンプル
以下は、一般的な外国人雇用契約書に記載すべき基本項目と、実際の記載例です。
実際の契約書を作成する際は、雇用形態や職種、在留資格に応じて調整が必要となります。
項目名 | 記載例 |
契約当事者 | 雇用主:株式会社〇〇
労働者:〇〇(〇〇国籍) |
契約期間 | 2025年4月1日~2026年3月31日(更新の可能性あり) |
就業場所 | 東京支店 |
業務内容 | 在留資格「技術・人文知識・国際業務」に基づく翻訳業務 |
労働時間 | 9:00〜18:00(休憩1時間) |
休日 | 土日祝日休み |
賃金 | 月給250,000円、交通費別途支給 |
社会保険 | 健康保険、厚生年金、雇用保険加入あり |
契約解除条件 | 在留資格を喪失した場合、本契約は終了する |
雇用契約書には、在留資格の条件と労働法上の規定を両方満たす明確な記載が求められます。
入管法と労働法の内容を照らし合わせながら、記載内容に漏れや誤りがないよう十分に確認しましょう。
6. 外国人向け雇用契約書ならではの注意点
外国人との雇用契約では、言語の違いや在留資格の制約など、日本人との契約にはない注意点があります。
見落としがあると、契約トラブルやビザ申請での不備につながる可能性があるため、以下の点に留意して作成を進めましょう。
- 外国人が理解できる言語で作成する
- 就労ビザの取得が条件であることを明記する
- 研修期間がある場合は内容を明記する
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
6-1. 外国人が理解できる言語で作成する
外国人労働者は、外国人労働者が理解できる言語(英語や母国語など)で作成することが重要です。
特に法律用語や労務用語は、日本語に不慣れな外国人労働者にとって誤解を招きやすく、正しく理解できないおそれがあります。
在留資格の審査では、本人が契約内容を理解していることも求められます。
署名前には翻訳や口頭での補足説明をおこなったうえで、本人が正しく理解しているかを確認しましょう。
6-2. 就労ビザの取得が条件であることを明記する
外国人雇用契約書には「就労ビザ(在留資格)の取得を雇用の前提とする」旨を必ず記載しましょう。
在留資格で認められた範囲を超えて外国人に業務をさせた場合、本人が不法就労となるだけでなく、雇用主も不法就労助長罪に問われる恐れがあるからです。
そのため、契約書には「在留資格の取得をもって契約が有効となる」と停止条件付きの条項を盛り込むことが重要です。
こうした条項があることで、ビザが不許可となった場合でも契約そのものが無効となり、不法就労などのリスクを回避しやすくなります。
6-3. 研修期間がある場合は内容を明記する
業務に必要な研修がある場合は、研修の内容や期間、実施場所を契約書に明記しましょう。
とくに「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格では、業務との関連性が重視され、単純作業を含む研修は認められない場合があります。
研修内容が不適切と判断されると、在留資格の取得に影響が出る可能性も否めません。業務との関係性が明確に伝わるよう、具体的に記載することが重要です。
7. 外国人雇用契約書の作成方法を理解して採用トラブルを防ごう
外国人との雇用では、文化や言語の違いからくる誤解や書類の不備がトラブルの原因になりがちです。
こうしたリスクを防ぐには、契約内容を文書で明確に示し、必要な項目を正しく記載することが欠かせません。
外国人雇用契約書は、採用後のトラブルを防ぐために不可欠な書類です。本記事で紹介したポイントを押さえて雇用契約書を作成し、外国人労働者との安心・安全な雇用関係を構築しましょう。
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
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