人的資本投資とは?効果や具体例・導入する際の注意点をわかりやすく解説
公開日: 2024.4.3 OHSUGI
「人的資本投資ってなに?」
「人的資本投資にはどのような効果があるの?」
「人的資本投資を取り入れるにはどうしたらいいの?」
人的資本投資という言葉を聞くようになったものの、概要や求められている背景をご存知ない方も多いのではないでしょうか。
人的資本投資とは、従業員を「資本」として企業が投資する経営の考え方です。国内では2023年に上場企業を対象として、人的資本投資の開示が義務化されています。
持続的な企業の成長を図るためには、人的資本投資に関する知識を理解したうえで、導入を進めなければなりません。
そこで本記事では、人的資本投資の効果や具体例、導入する際の注意点についてわかりやすく解説します。また、国内外における人的資本投資の動向についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人的資本投資とは|従業員を「資本」と捉え投資すること
人的資本投資とは、従業員を「資本」と捉えて価値を最大化するために投資することです。
企業の福利厚生や研修制度を充実させ、従業員の能力やスキルを高めることで、企業価値の向上につながるとされています。
これまで企業に勤める従業員は人的資源とされ、従業員の採用・雇用にかかわる資金も費用と捉えられていました。
しかし多様な働き方が求められる現在において、人材は資本として捉える考え方に変化し、投資する価値観が広まっています。
2. 人的資本投資が求められている国内外の背景
人的資本投資が求められている背景として、以下の2つが挙げられます。
- 海外の動向
- 国内の動向
2-1. 海外の動向
EUやアメリカでは、企業の人的資本投資に関する情報の開示が進んでいます。
まずEU(欧州連合)では、2024年から企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が発効されました。これは「上場企業を中心に、企業のサステナビリティ情報や人的資本などを含む持続可能性事項を開示しなければならない」というものです。
またアメリカでは、2020年から上場企業に対して企業の人的資本に関する開示が義務化されました。企業が取り組んでいる人的資本の取り組み、目標などの項目を開示するように求められています。
2-2. 国内の動向
日本国内においても、2023年より上場企業を対象として人的資本投資に関する情報開示が義務化されました。
企業の経営戦略と人的資本投資の関連性を示したうえで、ストーリー性をもって開示することが求められています。
人材育成の計画やコンプライアンスなどが、企業の目標とどのような結びつきがあるのか関係性を明確にしなければなりません。
3. 人的資本投資で得られる3つの効果
人的資本投資を実施することで得られる効果は、以下の3つです。
- 企業の生産性・エンゲージメントの向上
- 企業イメージの向上
- 投資家の信頼を得られる
3-1. 企業の生産性・エンゲージメントの向上
リスキリングや企業研修などの人的資本投資を実施することで、業務における生産性の向上につながります。
従業員の能力やスキルがアップすることで、一人ひとりの業務パフォーマンス向上が期待できるからです。
さらに主体的に業務に取り組むことで、企業への帰属意識が高まることも期待されます。
結果、従業員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。
3-2. 企業イメージの向上
従業員に対する人的資本投資の内容を充実させることで、企業イメージの向上が期待されます。
人材育成の計画が明確に提示されていることで、社会から従業員を大切にしていると認識されるからです。
また魅力的な人的資本投資の提供は、「こんな企業で働いてみたい」と憧れるきっかけとなります。
優秀な人材の確保にもつながるでしょう。
3-3. 投資家の信頼を得られる
人的資本投資の取り組みは、投資家からの信頼を得られることが期待されます。
人的資本投資の開示が義務化されたことにより、投資する判断の一つとして注目されているからです。
そのため企業は人的資本投資に真摯に取り組み、目標達成に至るまでの進捗を発信し続けることが重要とされています。
より多くの投資家から投資を受けられると、人的資本投資の充実にも期待できるでしょう。
4. 人的資本投資の具体例
人的資本投資の具体例として、以下3社の取り組みをご紹介します。
- 石油卸売業A社|リスキリングの推進
- 生活家電メーカーB社|ジョブ型マネジメントの構築
- 食品メーカーC社|多様な働き方を提示
4-1. 石油卸売業A社|リスキリングの推進
石油卸売業のA社では、脱炭素社会に向けて、企業価値の向上を図るために従業員のリスキリングを推進しています。
社外のベンチャー企業へ1年間出向するプログラムや、1ヵ月間の海外ビジネス研修など充実した研修内容が特徴です。
またキャリア形成の取り組みとして、オンライン学習サービスの利用料を一部負担しています。従業員に新しい知識やスキルを身につけてもらうことで、新規事業の創造につなげている事例です。
4-2. 生活家電メーカーB社|ジョブ型マネジメントの構築
生活家電メーカーのB社では企業が掲げる「サステナビリティ目標」の達成のため、ジョブ型人財マネジメントを導入しています。
ジョブ型マネジメントの推進のため、従来おこなっていた、職務を限定しない雇用や定年制は廃止されました。職務を明確化したうえで、仕事内容などに応じて待遇を決定する仕組みに移行しています。
また適所適財に人材を配置し、組織としてのパフォーマンスの最大化を図りました。ジョブ型人財マネジメントを基盤に、持続可能な企業として成長を目指している事例です。
4-3. 食品メーカーC社|多様な働き方を提示
食品メーカーC社では企業理念である「開かれた企業」に基づいて、従業員に対し多様な働き方を提示しています。
従業員のキャリア形成の一環として副業制度や、テレワーク・フレックスタイム勤務の制度を導入しました。全従業員に対して、多様な働き方を支援しているのが特徴です。
またライフプランの変更に伴ったコース転換制度や社内公募制度を提示し、従業員の自律性向上も目指しています。
5. 人的資本投資を導入する際の2つの注意点
人的資本投資を導入する際の注意点は、以下の2つです。
- 社内での人的資本投資に関する理解を深める
- 人的資本投資の効果測定を実施する
5-1. 社内での人的資本投資に関する理解を深める
人的資本投資の効果を発揮するために、社内での人的資本投資に関する理解を深めましょう。
従業員の理解度が低いと、人的資本投資から得られる効果(生産性の向上など)が薄まり、企業目標の達成が難しくなります。
企業が効果を得られるように、従業員に対し人的資本投資の取り組みを周知しなければなりません。
例えばリスキリング制度を導入した場合、経営陣や役員自らが制度を活用し、従業員に活用を促すことなどが挙げられます。
また制度の利用から得られるベネフィットも発信したうえで、従業員が自ら取り組める環境をつくることも大切です。
5-2. 人的資本投資の効果測定を実施する
人的資本投資によって企業の発展・改革が進んでいる指標を示すために、定期的な効果測定を実施しましょう。
効果測定する方法として、人的資本ROIの計算式を用いた人的資本投資の収益度を算出する方法があります。
人的資本ROIとは、従業員に対する投資の成果を表す指標です。国際標準化機構(ISO)が提唱している計算式を下表にまとめました。
人的資本ROIの計算式 | (売上高-(総経費-人件費)÷人件費)-1 |
ただし人的資本ROIの計算式は、人件費や研修費など明確な投資額が示されていなければ計算できません。
数字での算出が難しい項目の場合は、項目ごとのKPIを設定したうえで事業を評価し、情報開示することを検討してください。
6. 人的資本投資を取り入れて企業価値や生産性を高めよう
人的資本投資とは、これまで資源と捉えられていた人材を「資産」として捉える経営の考え方です。人的資本投資によって企業の生産性やエンゲージメント、イメージの向上が期待されています。
国内では、2023年より人的資本投資の開示が義務化されました。企業が掲げる目標と人的資本投資の結びつきを明確にし、ストーリー性を持って示しましょう。
人的資本投資を導入する際は、社内で人的資本投資に関する理解を深めることも重要です。企業の発展・改革の進捗を提示するために、定期的な効果測定を実施してください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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