労働保険の保険関係成立届とは?書き方など手続きを詳しく解説
更新日: 2025.9.29 公開日: 2025.7.2 jinjer Blog 編集部

「労働保険の保険関係成立届とは何か知りたい」
「従業員を採用したときの保険の手続きを詳しく知りたい」
採用活動や雇用手続きを進めるにあたって、上記のような疑問を持つ方もいるでしょう。労働保険の保険関係成立届は従業員を雇った際に必要な書類で、提出が義務づけられています。
提出を忘れると行政からの指導が入ったり罰則を課されたりするおそれがあるため、提出方法を理解しておくことが大切です。
本記事では、労働保険の保険関係成立届の書き方や提出先、作成時の注意点などを解説します。従業員の雇用にまつわる手続きの参考にしてください。
入退社のたびに発生する書類作成、行政機関への提出…。
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1. 労働保険の保険関係成立届とは


労働保険の保険関係成立届とは、企業が初めて労働保険の対象となる従業員を雇った際に提出する書類です。
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の総称であり、それぞれ次のような目的があります。
| 労災保険 | 雇用保険 | |
| 目的 | 業務中や通勤中のケガや病気などを補償する | 失業者や休業者の生活を保障する |
| 対象従業員 | 役員などを除く原則すべての従業員 | 週20時間以上働いており31日以上の雇用見込みがある従業員 |
労災保険や雇用保険の対象となる従業員を雇った場合には、雇用人数や雇用形態にかかわらず、届出の提出が法律で義務付けられています。
一人でも従業員を雇用した場合は、雇用した日の翌日から10日以内に、所轄の労働基準監督署に提出しましょう。
2. 労働保険の保険関係成立届の書き方


労働保険の保険関係成立届の主な記入事項は、以下のとおりです。
| 項目 | 記載方法 |
| 会社名 | 法人名または個人名を記入 |
| 住所 | 実際に事業をおこなっている場所を記入 |
| 事業名 | 屋号や事業所名などを記入 |
| 事業内容 | 「飲食店の運営」「建築工事」など簡潔に記入 |
| 業種 | 「飲食業」「建設業」などを記入 |
| 労働保険 | すでに加入している場合のみ記入 |
| 雇用日 | 最初の従業員の雇用日を記入 |
| 従業員数 | 雇用保険の対象となる人数を記入 |
| 年収見込み | 基本給・手当・賞与を含めた年間見込み額を記入 |
保険関係成立届の用紙は、提出方法により入手先が異なります。
- 紙で提出する場合:労働基準監督署やハローワークの窓口で配布
- オンライン提出の場合:電子申請サービス「e-Gov」から作成・提出
届出書には特殊な用紙を使用しているため、インターネットからのダウンロードはできません。郵送での取り寄せも可能ですが、提出期限に間に合うよう、余裕を持って手配しておきましょう。
3. 労働保険の保険関係成立届の提出方法


労働保険の保険関係成立届は、自社の事業が「一元適用事業」か「二元適用事業」のいずれかに該当するかによって、提出方法が異なります。
一元適用事業とは、建設業など一部の業種を除くほとんどの事業が当てはまる事業です。労災保険と雇用保険はまとめて管理されるため、保険関係成立届は所轄の労働基準監督署にのみ提出します。
一方、二元適用事業とは以下に該当する事業です。労災保険と雇用保険をそれぞれ別に手続きしなければなりません。
- 建設事業
- 農林漁業
- 都道府県や市町村によっておこなわれる事業
- 地方公共団体などによっておこなわれる事業
- 六大港湾における港湾運送事業
労災保険の保険関係成立届を労働基準監督署に、雇用保険の保険関係成立届をハローワークに提出する必要があります。
4. 従業員を雇用した際に必要なその他の書類


従業員を雇用した際は、ほかにも以下の書類などの提出が必要です。
- 概算保険料申告書
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 健康保険・厚生年金被保険者資格届
- 特別徴収切替届出(依頼)書
- 扶養控除等(異動)申告書
4-1.概算保険料申告書
概算保険料申告書は、一年間の見込み労働保険料を申告するための書類です。
労働保険料は、従業員を新たに雇った際や年度初めに、当年度分を前払いで納付する必要があります。
年度が終わった後に、実際の賃金額に基づいて差額を精算するため、「確定保険料申告書」を別途提出します。
概算保険料申告書は、従業員を雇用した日の翌日から50日以内に提出してください。提出先は、所轄の労働基準監督署、都道府県労働局、または日本銀行のいずれかです。
4-2. 雇用保険適用事業所設置届
雇用保険適用事業所設置届は、初めて雇用保険の対象になる従業員を雇った際に必要な書類です。
届出によって、事業所が雇用保険の適用対象として正式に登録され、雇用保険への加入手続きが可能になります。
提出期限は、雇用保険の対象になる従業員を雇った日の翌日から10日以内です。所轄のハローワークに提出してください。
4-3. 雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の対象となる従業員を雇用した際に必要な書類です。
週20時間以上働くなど、加入条件を満たす従業員を雇用した場合は、翌月10日までに所轄のハローワークへ提出しましょう。
4-4. 健康保険・厚生年金被保険者資格届
健康保険・厚生年金被保険者資格届は、従業員の社会保険加入手続きに必要な書類です。
届出がおこなわれていないと、健康保険の保険証が発行されず、医療費の自己負担が高くなるおそれがあります。
健康保険被保険者資格届は、健康保険組合または協会けんぽへ提出します。厚生年金被保険者資格届は、所轄の年金事務所に提出してください。
いずれも、従業員を雇用した日から5日以内が提出期限です。
4-5. 特別徴収切替届出(依頼)書
特別徴収切替届出(依頼)書は、従業員の給与から住民税を天引きするために必要な書類です。
もともと従業員が自分で住民税を納めていた場合に、特別徴収切替届出書で切り替えをおこないます。
提出期限は自治体により異なりますが、一般的には天引きを始める月の前月10日までです。
従業員の住んでいる自治体ごとの提出期限を確認し、なるべく速やかに各自治体へ提出しましょう。
4-6. 扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書は、従業員が扶養する家族の人数や収入に応じて税金の控除を受けるために必要な書類です。
法律上は、税務署長や市区町村長に提出するとされていますが、通常は会社が年末調整の際に保管しておく書類です。そのため、提出を求められない限り、自ら提出する必要はありません。
必要なときに備えて、会社で大切に保管しておきましょう。
5. 労働保険の保険関係成立届に関する注意点


労働保険の保険関係成立届に関する注意点は以下のとおりです。
- 提出期限までが短い
- 提出を忘れると罰則を課されるおそれがある
- パートやアルバイトも提出の対象
5-1. 提出期限までが短い
労働保険の保険関係成立届は、従業員を雇用した日の翌日から10日以内に提出しなければなりません。提出期限が短いため、従業員の採用活動を始めた時点で書類準備をスタートすることがおすすめです。
紙面で提出する場合、用紙は労働基準監督署やハローワークの窓口で受け取るか、郵送で取り寄せましょう。郵送は一週間程度かかる可能性があるため、余裕を持って手続きすることが大切です。
提出期限に余裕がない場合は、「e-Gov」を通してオンラインで提出もできます。オンラインでの手続き方法は厚生労働省のホームページを参考にしてください。
5-2. 提出を忘れると罰則を課されるおそれがある
労働保険の保険関係成立届を提出し忘れた場合、労働保険料の未払いに加えて、追徴金を課されるおそれがあります。
ただし、提出期限を過ぎたからといって、すぐに罰則が課されるわけではありません。まずは行政庁から指導が入るので、指導を受けた場合速やかに手続きしましょう。
指導後も提出しない場合、未払い分の労働保険料と追徴金の徴収が発生します。
トラブルを避けるためにも、採用関係のマニュアルを作成し、労働保険の保険関係成立届について記載しておくとよいでしょう。
5-3. パートやアルバイトも提出の対象
労働保険の保険関係成立届は、正社員だけでなく、パート・アルバイト・日雇い労働者など非正規社員も提出の対象です。
雇用形態や労働期間に関係なく、労働保険の対象となる従業員を一人でも採用した時点で、必ず届出をおこなう必要があります。
提出漏れが発生しないよう、人事担当者などを対象に労働保険に関する手続きの研修をおこないましょう。
社内の人的リソースが足りない場合、社会保険労務士などの専門家からサポートを受けるのもおすすめです。
関連記事:人事担当者必見!労働保険の対象・手続き・年度更新と計算方法をわかりやすく解説
6. 労働保険の保険関係成立届は期限内に提出しよう


労働保険の保険関係成立届は、新しい従業員の保険関係成立について国に報告するために必要な書類です。
正社員だけでなく、パートやアルバイトなど、労災保険・雇用保険の対象となる従業員が1人でもいれば、必ず提出する必要があります。
提出期限が短く、提出漏れは罰則の対象でもあるため、確実に提出できるよう手続きのフローや内容をしっかり把握することが大切です。
担当者への研修や、手続き内容をまとめたマニュアルの整備を通じて、確実な運用を心がけましょう。



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