労使協定と36協定の関係や違いとは?わかりやすく解説
更新日: 2024.8.1
公開日: 2022.2.6
YOSHIDA
労使協定方式と36協定の関係や違いを正しく理解しておけば、人事業務がよりスムーズに進みます。本記事では36協定の解説を中心に、混同しやすい他の労使協定方式との違いなどを解説します。
労使間のトラブルを回避したり、円滑に業務を進めたりすることが期待できますので、ぜひお読みください。
関連記事:労使協定の基礎知識や届出が必要なケース・違反になるケースを解説
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1. 労使協定と36協定の関係
1-1. 労使協定方式とは派遣労働者の賃金を設定するもの
労使協定方式とは、企業と労働組合または労働者代表との間で締結される書面契約であり、労働条件や賃金に関する取り決めを明確にします。特に派遣労働者においては、賃金や勤務時間、休暇などの具体的な条件を設定するために労使協定が重要となります。雇用主は、労働組合や過半数を代表する者と共に、労働基準法の制約を超えて働き方を変更する場合などにおいても、労使協定を締結する必要があります。労使協定の締結においては、公正労働基準を保ちつつ、市場価格に基づいた適正な賃金設定が求められます。
1-2. 36協定とは残業や休日出勤に関するもの
36協定とは、正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といい、法定労働時間を超える労働や休日労働を命じる場合に必要な労使協定です。
この協定が締結されていない場合、企業は労働基準法で定められた労働時間を超える労働を労働者に強制することはできません。具体的には、月の残業時間の限度や休日出勤の取り扱いなどが規定されており、労働基準監督署に届け出る必要があります。特に繁忙期など、企業の生産性を維持するために36協定の有効活用が欠かせません。
1-3. 36協定は労使協定の一つという関係がある
「36協定」という言葉が有名すぎるため、勘違いが発生しやすいのですが、36協定は労使協定の一種です。36協定の呼称は、労働基準法の第36条で定められた労使協定であることに由来しています。
この36協定は、経営者や人事関係者以外にもよく知られている労使協定です。そのため、求人欄に「弊社は36協定を順守します」といった文言が書かれていることも、多く見られます。
2. 労使協定方式と36協定の違い
次に労使協定方式と36協定について解説します。派遣業に関連する企業の人事では必ず必要になる知識です。
2-1. 性質の違い
労使協定の1つである36協定は、時間外労働や休日労働に関するものでした。それに対して、労使協定方式は「派遣労働者の賃金を、同じ業務を行っている一般労働者の平均賃金と同等以上に設定する」という性質を持つ協定です。
派遣事業者は、この労使協定方式か「派遣先均等・均衡方式」のどちらかを選択する義務があります。これは2020年4月に法改正された労働者派遣法によって定められました。
36協定を含む労使協定は「正社員の労働時間や貯蓄金の管理に関する協定」で、労使協定方式は「派遣社員の給与に関する協定」です。名前は似ていても異なるものですので、混同しないように注意しましょう。
2-2. 届出の必要・不要の違い
36協定をはじめとした労使協定は、労働基準監督署への届け出が必要なものがありますが、労使協定方式では「事業報告書」にコピーを添付するだけで問題ありません。
届け出をおこなっても問題ありませんが、提出の手間が省けるので覚えておくとよいでしょう。
関連記事:労使協定方式とは?メリットや派遣労働者の賃金水準について解説
それに対して36協定は、労働基準法で定められた「法定労働時間(1日8時間、1週間で40時間以内)」を超えた労働が発生する際に必要になります。36協定が結ばれていれば、法定時間を超過した残業を命じることが可能になるわけです。
しかし、無制限に残業を命じられるわけではなく、「月45時間、年間360時間以内」という上限が定められています。
36協定の特別条項とは
ただし、特別な事情がある場合に限定して、この上限を超えた残業を命じることが可能です。これを「36協定の特別条項」や「特別条項付き36協定」といいます。
特別条項を付けても、無理な労働を強いることがないように、以下の制限が定められています。
- 年間で720時間以内
- 時間外労働+休日労働が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の2ヶ月・3ヶ月・4ヶ月・5ヶ月・6ヶ月それぞれの平均がひと月あたり80時間以内
- ひと月の時間外労働が45時間を超える回数が年6回以内
- 特別条項を適用できるのは「特別な事情が明確に予想できるとき」のみ
最後の「特別な事情が明確に予想できるとき」のみという条件は、届け出をする際にチェックされます。決算期やセール時期であることなど、具体的な理由が必要です。
36協定が必要ないケースとは?
36協定は、必ずしも締結しなくてはいけないものではありません。法定労働時間内に毎日業務が終わり、休日出勤もないのであれば、提出しなくてもトラブルにはならないでしょう。
1日8時間労働にこだわらずとも、1日7時間労働・完全週休2日制とし、1日1時間以内の残業まで認める形でも問題ありません。7時間×5日間で35時間、これに毎日1時間の残業が付いても、週の労働時間が40時間になるからです。
しかし、36協定で定めていない場合は、どのような条件下でも法定労働時間を超過することはできません。想定外の忙しさやトラブル時も例外ではないため、円滑な業務を維持するためには36協定を締結しておいた方が安心です。
3. 新様式になった36協定届の違いと注意点
36協定は届け出に必要な書類の様式が、2021年4月から変更されました。36協定の内容に変化はありませんが、届け出の際には注意が必要です。旧様式との違いと注意点を解説します。
3-1. 新様式と旧様式の違い
36協定の新様式と旧様式の違いは以下の3つです。
- 押印、署名の廃止
- 協定当事者に関連するチェックボックスの設置
- 特別条項の有無で使う様式が変わる
新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、多くの行政手続きで押印が見直されています。36協定も同様に、押印と署名が廃止されました。
ただし、36協定届とは別に「協定書」を作成する場合に限ります。
36協定届は、協定書を兼ねることも可能で、その場合は、押印か署名が必要になります。使用者・労働者双方の合意があっての締結であると、証明する必要があるからです。
「協定当事者に関連するチェックボックスの設置」は、労働者代表が要件を満たしていることを確認するためのものです。経営者と近い立場でないことや、民主的な方法で選出された人物であることなどが、改めて記載されています。
特別条項の有無で使う様式が異なるのも変更点です。旧様式では、特別条項の有無にかかわらず同じ様式でしたが、新様式では有りの場合と無しの場合で使い分ける必要があります。
3-2. 新様式では電子申請の利便性がアップ
36協定を含む労使協定の届け出は、新様式になって電子申請の利便性が上がっています。
大きな変更点は、複数の事業所がある会社の本社が、協定の一括届け出が可能になった(電子申請限定)点です。
今までは36協定を締結した各事業所が、本社に協定書を提出し、それを本社が労働基準監督署に事業所ごとに届け出をしていました。それが、新様式からは本社に届いた事業所ごとの協定を、まとめて提出できます。
さらに、e-Gov電子申請では、電子署名・電子証明書の添付が不要になりました。
3-3. 新様式の注意点
新様式で届け出をする際の注意点は、以下の2点です。
- 特別条項の有無に合わせて様式を選ぶ
- チェックボックスの確認
チェックボックスは、労働時間や労働人数などを記載する欄の下方にあります。チェックを入れ忘れると無効になってしまいますので、必ず忘れずに記入しましょう。
旧様式と同様に、記載内容の正確さももちろん必要です。
また、届け出が遅くなりすぎないようにも留意し、正しく届け出をしたうえで適正な労働時間を守りましょう。
4. 36協定は労使協定の1つ!正しく届出よう
使用者(会社)が処罰されないために重要なものですが、労働者側も36協定の順守が約束されていると安心感をもちます。正しく理解し、労働基準法を守った届け出をしましょう。
以前に届け出をしたことがある人も、2021年4月からは新様式になっています。チェックボックスや特記条項の有無に注意して、提出しましょう。
関連記事:労使協定の種類・特徴や労働基準監督署に届出が不要なケースについて解説
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