社会保険の資格喪失届とは?必要な手続きや書類を解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2022.3.25 jinjer Blog 編集部

従業員が退職した場合や労働時間が短くなった場合など、従業員が社会保険の資格を失ったときは、資格喪失届の提出が必要です。
資格喪失届の手続きを怠ると、本来かからない社会保険料を徴収されたり、退職した従業員の資格情報が更新されなかったりと、トラブルの元になりかねません。
この記事では、社会保険の資格喪失届を届け出るケースや手続きの方法、資格を喪失する従業員への案内事項を解説します。資格喪失届の仕組みを正しく理解し、不要なトラブルを避けましょう。
▼社会保険の概要や加入条件、法改正の内容など、社会保険の基礎知識から詳しく知りたい方はこちら
関連記事:社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
目次
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
- 年金制度改正法成立によって、社会保険の適用条件はどう変わる?
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 社会保険の喪失届とは


社会保険の喪失届の正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」です。
「資格を喪失する」とは、従業員が健康保険や厚生年金保険の被保険者でなくなる状態を指します。
資格を喪失した従業員は、給与や賞与から徴収される社会保険料がかからなくなる一方、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられなかったり、将来受け取れる年金の額が少なくなったりします。
社会保険全般の解説は関連記事をご覧ください。
関連記事:社会保険とは?企業や従業員の加入条件や手続き方法、適用拡大など注意点を解説
2. 社会保険の被保険者資格喪失届が必要なケース


被保険者資格喪失届を作成・届出が必要なケースは、主に次の4つです。
- 退職したとき
- 適用条件を満たさなくなったとき
- 資格喪失年齢(70歳・75歳)に達したとき
- 死亡したとき
それぞれのケースを解説します。
2-1. 退職したとき
従業員が退職したときは、社会保険の資格喪失届を作成・届出する必要があります。
健康保険・厚生年金保険は「被用者保険」ともよばれる、会社で雇用されている人が加入する公的保険です。働いている会社を経由して被保険者となるため、退職すれば当然に被保険者資格も失われます。
2-2. 適用条件を満たさなくなったとき
厚生年金保険や健康保険には、次の適用条件が定められています。
- フルタイムの通常の従業員
- 週の所定労働時間が通常の従業員の3/4以上
- 次の要件をすべて満たす
- 社会保険の被保険者が51人以上の会社で勤務している
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 雇用契約が2ヵ月を超えるまたはその見込みがある
- 学生でない
フルタイムから短時間のパート・アルバイトに変わった場合など、適用条件を満たさない雇用契約に変更した場合は社会保険の資格を喪失します。
2-3. 資格喪失年齢(70歳・75歳)に達したとき
70歳と75歳に到達した場合、それぞれ次の社会保険資格を喪失します。
- 70歳:厚生年金保険
- 75歳:健康保険
70歳に到達したときは年金機構が資格喪失の処理をするため、資格喪失届を提出する必要はありません。一方、75歳に達した場合は資格喪失届の提出が必要です。
なお、年齢に到達した日とは、誕生日の前日を指します。誕生日当日ではないので注意しましょう。
2-4. 死亡したとき
従業員が死亡した際も、資格喪失届を提出します。
喪失原因欄は「死亡」を選択します。誤って「退職等」を選ぶと、年金機構や健康保険組合では亡くなった事実を認識できず、本人あての通知が発出される場合もあります。ご遺族とトラブルになる可能性もあるため注意しましょう。
3. 社会保険の資格喪失に必要な書類


社会保険の資格を喪失するときは、喪失届だけでなく、添付書類も必要です。必要な書類を解説します。
3-1. 被保険者資格喪失届
被保険者資格喪失届は、従業員が社会保険資格を失う際に届け出る書類です。正式には「被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」といい、年金機構のホームページからダウンロードできます。
加入している健康保険が協会けんぽの場合、被保険者資格喪失届は年金機構のみに提出すれば問題ありません。健康保険組合に加入している場合、健康保険の資格喪失届は健康保険組合に、厚生年金保険の資格喪失届は年金機構にそれぞれ提出します。
健康保険組合の資格喪失届は、各健康保険組合のホームページなどから入手できます。
参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き | 日本年金機構
関連記事:健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届とは?提出方法や記入例を解説
3-2. 添付書類
添付書類は、加入する健康保険が協会けんぽか健康保険組合かで、次のとおり異なります。
3-2-1. 協会けんぽの場合
次のいずれかが交付されている場合、従業員から回収して協会けんぽへ郵送します。従業員が紛失したなど、回収できない場合は「資格確認書回収不能届」の添付が必要です。
- 資格確認書
- 高齢受給者証
- 特定疾病療養受療証
- 限度額適用認定証
- 限度額適用・標準負担額減額認定証
参考:7-1:資格確認書の添付を必要とする届書提出時に添付ができないとき|日本年金機構
3-2-2. 健康保険組合の場合
協会けんぽの場合と同様、従業員に交付されている各証を回収し、郵送します。
なお、健康保険組合に加入している場合も、厚生年金保険の資格を喪失するため、年金機構にも資格喪失届を提出する必要があります。年金機構への届出には添付書類は不要です。
4. 社会保険の被保険者資格喪失届の手続き


社会保険の被保険者資格喪失届は、書類の正確な作成はもちろん、資格の喪失理由や喪失日など、必要な情報の確認が重要です。手続きの流れを説明します。
4-1. 資格喪失理由と喪失日を確認する
資格喪失届を作成する前に、喪失の理由や喪失日を確認しましょう。喪失理由によっては届出が不要な場合もあります。協会けんぽの場合、資格喪失届が必要となる喪失事由は次のとおりです。
- 退職など
- 死亡
- 75歳到達(健康保険のみ)
- 障害認定(健康保険のみ)
- 社会保障協定
資格喪失日は原則として事由が発生した日の翌日です。同日得喪など、事由発生日に別の社会保険の資格を取得した場合は、事由発生当日が喪失日になるため注意しましょう。
4-2. 資格喪失届を入手する
資格喪失理由や喪失日が確認できたら、資格喪失届を準備します。社会保険の被保険者資格喪失届は、年金機構の公式ホームページからダウンロード可能です。手書き用のPDFファイルのほか、直接入力できるExcel形式のデータもあります。
健康保険組合は年金機構とは異なる様式が用意されています。各組合のサイトなどから入手しましょう。
4-3. 資格喪失届に必要事項を記載する
被保険者資格喪失届の様式が手に入ったら、必要な項目を正確に記入しましょう。年金機構の場合、記入する項目と内容は次のとおりです。
|
項目 |
記入内容 |
ポイント |
|
事業所の名称・住所、事業主氏名 |
事業所の正式名称と住所、事業主の氏名 |
|
|
被保険者整理番号 |
資格取得時に発行された従業員固有の番号 |
資格確認通知書などで確認できます。 |
|
氏名 |
住民票に記載された従業員の名前 |
漢字やカタカナの表記を間違えないように注意しましょう。 |
|
生年月日 |
従業員の生年月日 |
|
|
個人番号・基礎年金番号 |
従業員の個人番号または基礎年金番号 |
基礎年金番号は左詰で記入します。 |
|
資格喪失年月日 |
資格を喪失した日付 |
|
|
喪失原因 |
該当する番号に○ |
退職や死亡の場合は日付も記入します。 |
|
資格確認書回収 |
回収した枚数、回収できなかった枚数 |
|
|
70歳不該当 |
70歳以上の被保険者が資格を喪失する場合にチェック |
「不該当年月日」欄には、不該当になった(資格を喪失した)日付を記入します。 |
記入後は、提出前に誤りがないか確認しましょう。
参考:記入例 | 日本年金機構
4-4. 資格喪失届と添付書類を提出する
被保険者資格喪失届が完成したら、協会けんぽの場合は年金機構の各事務センターか管轄の年金事務所へ提出します。提出先は協会けんぽではないため注意しましょう。
提出は直接持参のほか、郵送や電子申請も可能です。
保険者が健康保険組合の場合、健康保険の資格喪失の書類を組合へ送付します。年金機構にも厚生年金保険の資格喪失届を提出する必要があるため、手続き漏れに注意しましょう。
4-5. 資格確認書を郵送する(該当する場合のみ)
電子申請で届け出た場合は、回収した証書を郵送します。現物を送る必要があるため、郵送した記録を残しておきましょう。
5. 社会保険の資格を喪失した従業員への案内事項


傷病手当金など、継続して受けている給付は社会保険の資格を喪失したら受けられなくなるのか、資格喪失後に自身でおこなう手続きがあるかなど、資格喪失後に何をすべきかわからず、不安を感じる従業員もいるでしょう。資格を喪失した従業員に案内すべき事項を3点ご紹介します。
5-1. 資格喪失後に受けられる保険給付
社会保険の資格を喪失した後でも、一定の要件を満たせば、次の給付を受けられます。
|
給付 |
要件 |
支給期間・支給額 |
|
傷病手当金 |
|
支給開始から1年6ヵ月まで |
|
出産手当金 |
|
出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から産後56日まで |
|
出産育児一時金 |
|
一児につき50万円 |
|
埋葬料 |
|
5万円 |
傷病手当金や出産手当金は、資格喪失前から継続して支給を受けている必要があります。特に傷病手当金は、退職日に出勤して継続給付が受けられなくなるケースが多いため注意しましょう。
5-2. 資格喪失後に加入する医療保険制度
健康保険の資格を喪失したあと、従業員が加入できる医療保険は次の4つです。
|
社会保険 |
概要 |
加入要件 |
所管 |
|
国民健康保険 |
被用者保険や後期高齢者医療制度に加入していない人向けの医療保険 |
ほかの制度に加入していない |
各市区町村 |
|
任意継続被保険者 |
在職中の健康保険に継続加入する(最長2年) |
資格喪失から2週間以内に申し出る |
会社が加入する健康保険の保険者 |
|
家族の被扶養者 |
家族の扶養に入る |
家族と生計維持の関係にある、年収が130万円未満など |
家族が加入する健康保険の保険者 |
|
後期高齢者医療制度 |
75歳以上の人が全員加入する医療保険 |
75歳に達するか、65歳以上で一定の障害を有する |
各市区町村 |
制度によって給付の内容や社会保険料の決まり方は異なります。どの医療保険に入るのが良いかは人それぞれです。
人事担当者は4つの選択肢がある点を押さえ、任意継続被保険者制度以外の詳細は従業員から各所管に問い合わせるよう案内しましょう。
5-3. 資格喪失後の年金制度
厚生年金保険の資格を喪失したあとは、原則として国民年金制度に加入します。国民年金の被保険者には年齢要件があり、年齢ごとの取り扱いは次のとおり異なります。
- 60歳未満:国民年金の被保険者
- 60〜65歳:国民年金に任意加入するか、被保険者にならない
- 65歳以上:年金受給者(原則として被保険者にならない(※))
※昭和40年4月1日までに生まれ、老齢基礎年金の受給権がない場合は70歳に達するまで特定として任意加入が可能。
任意加入とは、国民年金の受給資格がない人や、満額受給できず増額を希望する人が、65歳になるまで国民年金の被保険者を継続できる制度です。
国民年金制度の手続きは資格を喪失した本人がおこなう必要があるため、手続きの詳細は申込み窓口へ確認するよう案内しましょう。申し込み窓口は市区町村や年金事務所です。
6. 社会保険の資格喪失届に関するよくある質問


社会保険の資格喪失届は、どの会社でも手続きが必要な分、イレギュラーな対応が必要なケースも多くあります。資格喪失届に関連するよくある質問を紹介します。
6-1. 資格喪失届の提出期限はいつまで?
資格喪失届の提出期限は、事実発生日から5日です。事実発生日とは、資格喪失に該当した日を指します。
期限が短いうえに、年金機構では事実発生日より前の届出は受け付けてもらえません。従業員が資格を喪失したらすみやかに届け出しましょう。
当サイトでは、社会保険手続きの期限や手続きで必要な書類、担当者が気を付けるべきポイントなどをまとめた資料を無料で配布しております。社会保険の手続きで不安な点がある場合は、こちらから「社会保険手続きの教科書」をダウンロードしてご覧ください。
6-2. 提出が遅れた場合の罰則は?
資格喪失届の提出が遅れた場合、6年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。
提出が遅れるとすぐに罰則が科されるわけではありません。最初は行政指導が入り、それでも対応しない場合に罰則が科されるケースが一般的です。
しかし、資格喪失の届出をしないと、退職した従業員の社会保険料が徴収され続けたり、転職先で新しい資格を取得できなかったりと、トラブルの原因になる場合があります。
事務作業を増やさないためにも、資格喪失の手続きはすみやかにおこないましょう。
6-3. 喪失届の手続きに誤りがあった場合の対応は?
喪失届を出したあと、誤りに気づいた場合は訂正が必要です。
- 年金機構や健康保険組合から決定通知が届く前
提出した喪失届を取り消し、正しい内容で再提出します。年金機構や健康保険組合に問い合わせ、取り消しがまだ可能か確認しましょう。
- 年金機構や健康保険組合から決定通知が届いたあと
訂正届を提出する必要があります。資格喪失届に次の3点を追記して届け出ましょう。
- 様式上部に「訂正届」と赤字で記入
- 正しい情報を黒字、訂正前の情報を赤字で記載
- 備考欄に訂正理由を記入
訂正届は紙で手続きする必要があり、完了まで時間がかかります。訂正処理に時間を取られないよう、最初の届出の際に誤りがないか確認しましょう。
6-4. 資格喪失した従業員に被扶養者がいた場合は?
資格を喪失した従業員に被扶養者がいた場合、従業員と同時に被扶養者も資格を失います。
扶養は被保険者に紐づく制度のため、被扶養者のみが健康保険に加入することはできません。
被扶養者の資格喪失日は、被保険者の資格喪失と同日です。被扶養者としておこなう手続きはなく、被保険者の資格喪失届を出すだけで問題ありません。
資格確認書が発行されている場合は、被保険者分と合わせて回収するのを忘れないようにしましょう。
6-5. 定年退職後に再雇用された従業員の手続きは?
定年退職後に再雇用され、労働条件が変更になり給料が下がる場合、資格喪失届と資格取得届を同時に出す手続きが可能です。この手続きを同日得喪といいます。
再雇用後、社会保険料の基準となる標準報酬月額が退職前のままだと、給料が減少しているにもかかわらず、社会保険料は変わらず負担が重くなりがちです。
同日得喪の手続きをすると、標準報酬月額が再雇用後の給与を基準に再設定され、社会保険料の負担を抑えられます。
同日得喪の手続きは必須でははないものの、従業員にとって有利な制度のため、手続きを怠るとトラブルになりがちです。「定年再雇用になると社会保険料が下がる」と認識している人もいるため、制度の存在は把握しておきましょう。
参考:60歳以上の方を、退職後1日の間もなく再雇用したとき | 日本年金機構
6-6. 従業員の退職時に必要なほかの手続きは?
従業員が退職したとき、社会保険の資格喪失以外に必要な手続きは、主に次の3点です。
- 雇用保険の資格喪失(離職票の発行)
雇用保険とは、退職したあと次の就業までの期間の給付などをおこなう公的保険制度です。会社を退職すると雇用保険の被保険者資格も失うため、健康保険や厚生年金保険と合わせて資格喪失の手続きをしましょう。
- 源泉徴収票の発行
源泉徴収票とは、会社が従業員に支払った給与・賞与、源泉徴収した所得税、社会保険料などの総額が記載された書類です。退職した従業員には、源泉徴収票を交付する必要があります。
- 住民税の特別徴収の切り替え
住民税の特別徴収とは、給与から住民税を月割りで天引きする徴収方法です。退職後は本人が直接納付する方法(普通徴収)に切り替える必要があります。
各手続きの詳細は関連記事をご覧ください。
関連記事:退職手続きにおける雇用保険の扱いとは?企業側のフローや注意点を解説
関連記事:源泉徴収票とは?発行すべき対象者とタイミング・利用場面をわかりやすく解説
関連記事:住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いや手続きの流れを解説
7. 社会保険の資格喪失届の仕組みを理解し、手続きをスムーズに進めよう


社会保険の資格喪失届は、従業員が退職したときなどにおこなう重要な手続きです。届出をしないと社会保険料が徴収され続け、正しく給与計算ができなかったり、会社に不要な費用がかかったりするおそれもあります。
手続き漏れや誤りを発生させないよう、資格を喪失する仕組みを押さえ、正確に手続きを進めましょう。



従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
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